2023年06月29日

【JCJ神奈川支部7月例会】「横浜港で進む戦争準備〜ノースドックへ米部隊配備」7月9日(日)午後2時から4時 県民センター

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 横浜港の北部、みなとみらい地区の向かいにある瑞穂ふ頭にある米軍基地、ノースドック =写真=。終戦直後に米軍に接収されて以来、米陸軍の輸送拠点となっている。
 ベトナム戦争の時代には、相模原の補給廠で修理された戦車が、ノースドックから戦地へ送られ、それに反対する市民運動が高揚したのは歴史に刻まれている。
 そのノースドックでは今年4月、米陸軍小型揚陸艇部隊の配備が開始された。長年にわたり利用されないため一部が返還されるなどしていたノースドックでは、最近ではオスプレイの発着が確認されるなど、使用拡大の動きを見せている。 
 日本ジャーナリスト会議(JCJ)神奈川支部では、米軍基地の状況をウォッチし続けているピースデポの木元茂夫氏を講師に、歴史的経緯を踏まえながらノースドックの現状と揚陸艇配備などの新たな動きについてお聞きする。

■講師・木元茂夫さん(ピースデポ理事)プロフィール
1955年横浜生まれ。「すべての基地にNO!を ファイト神奈」、「原子力空母の横須賀母港問題を考える市民の会」などに所属。ピースデポ(平和資料協同組合)理事。著書に『アジア侵略の百年』

■会場 かながわ県民センター 301会議室
(横浜駅西口徒歩5分、ヨドバシカメラ裏)
■参加費 500円
■主催 JCJ神奈川支部 連絡先 保坂 080−8024−2417(fdhosaca@theia.ocn.ne.jp)
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2023年06月28日

【月刊マスコミ評・出版】 自民党と公明党 ケンカの底流=荒屋敷 宏

自民党と公明党の選挙協力が解消 されると次の総選挙はどうなるか? 次期衆院選の小選挙区10増10減をめぐり、公明党が東京で自公選挙協力を解消したことが政界に激震を引き起こしている。
 『週刊ポスト』6月18日号は、内部資料スクープ入手と銘打って、「『創価学会票』消滅で落選危機の自民議員20人」との記事を掲載した。

 同誌が入手したのは、自民党選挙対策本部が分析した「第49回衆議院議員総選挙結果調」の表題がある164ページの資料だ。全国289選挙区で公明党依存度≠ェ最も高かったのは、東京都八王子市を主な選挙区とする東京24区だった。東京24区選出の萩生田光一自民党政調会長は、同党の東京都連会長で、4万3736票も公明党に依存しており、次期は「接戦」となる確率が高いという。八王子市は、創価大学や創価学会東京牧口記念会館、東京富士美術館など学会の施設が多い。激戦の沖縄3区、島尻安伊子衆院議員も3万9091票を公明党に依存しており、次期は「落選危機」という。

 『サンデー毎日』6月18日号では、鈴木哲夫氏が「自民党とケンカした公明党の深謀 震源地は東京より大阪」と指摘している。東京で自民と公明がもめるのは「いつものこと」らしい。舞台裏は、公明が大阪で日本維新の会に敗れる可能性があるため、東京で議席を一つ確保したいというのが今回のケンカの発端だという。公明党にとって、総選挙の前哨戦で敗れたかたちとなったから、面白かろうはずがない。
  党利党略に明け暮れる公明党の党勢の衰えには、長期にわたって賃金が上がらず、経済成長をしない中、決して裕福とは言えない創価学会員にも消費税増税や社会保険料値上げ、憲法9条破壊の軍備拡大を押しつけてきたツケが回ってきたというべきかもしれない。
 同じ『サンデー毎日』誌に掲載された「『国民負担率』48% 稼ぎの半分がブンどられる増税ビンボーから脱出する家計再建の秘策」の記事を公明党支持者はどんな思いで読むだろうか?

 国民の所得に占める税金や社会保障の割合である「国民負担率」は、47・5%(2022年度)になる見込みだと財務省が発表した。「10万円稼いでも手元に残るのは5万2000円。どんなに一生懸命働いても、半分近くは徴収されてしまう」(森永卓郎氏)というから、もはや、江戸時代の年貢だ。
これで岸田政権を支持しろという方が難しい。 
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年6月25日号
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2023年06月27日

【JCJ 沖縄オンラインシンポジウム】新たな戦前≠ノジャーナリズムはどう対峙するのか 〜広島、長崎、沖縄からの問いかけ 7月15日(土)午後2時から4時

 
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 沖縄戦、広島・長崎への原爆投下から 78 年目。広島サミットに参加した G7 首脳らは原 爆の悲惨さではなしに抑止力としての必要性を強調し、被爆者を落胆させた。ロシアによ るウクライナ侵攻は泥沼と化し長期化の様相だ。北朝鮮はミサイルを発射し、台湾を挟ん で中国と米国は覇権争いを続けている。
 そうした中、日本政府は「台湾有事は日本有事」を喧伝し、南西諸島の島々に自衛隊ミサイル基地を造った。安保関連3文書の改定にはじまった軍備強化はとどまるところを知らず、専守防衛は形骸化している。圧倒的多数の議席を背景に、政府は次々と「戦争がで
きる国」へ法改正を進めている。
 ジャーナリストはそんな時代にどう対峙すべきなのか。政府と一体になり国民の不安をあおった結果、無謀な戦争へと突き進んだかつての時代から何を学ぶべきか。戦中、戦後を知る先輩たちが、今を生きる私たちへ問い掛ける。

■パネリスト:[広島]平岡  敬さん(元中国新聞編集局長・元広島市長)
      :[長崎]関口 達夫さん(元長崎放送記者)
      :[沖縄]高里 鈴代さん(「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」共同代表)

■コーディネーター :[JCJ沖縄世話人]黒島 美奈子(沖縄タイムス論説副委員長)・金城 正洋(琉球朝日放送)
■参加費:500円
当オンライン講演会に参加希望の方はPeatix(https://jcjonline0715.peatix.com/)で参加費をお支払いください。
(JCJ会員は参加費無料。jcj_online@jcj.gr.jp に別途メールで申し込んでください)

■主催:日本ジャーナリスト会議(JCJ)、JCJ沖縄、JCJ広島支部、長崎マスコミ・文化共闘会議

■お問い合わせ:jcj_online@jcj.gr.jp

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2023年06月26日

【おすすめ本】柳広司『南風に乗る』―沖縄現代史を彩った男たち 傑作ノンフィクションノベル=鈴木耕(編集者)

 たまたま入った書店でこの著者の『ジョーカー・ゲーム』をなんとなく購入したのがもう15年ほど前か。以来、柳広司という名前を見るとすぐに購入してしまう、私のお気に入りの作家である。その新作が、沖縄現代史に真正面から取り組んだ力作。おお、私の見立ては間違ってはいなかった。この著者が弱者の視点、もしくは抑圧される側への共感を持っていると感じていた私の感覚は正解だったのだ。

 本書の主人公は3人。詩人の山之口獏と政治家の瀬長亀次郎は沖縄出身者、もうひとりは英文学者の中野好夫。その3人が本書の中で互いに関係を持つわけではない。小説とはいいながら、まるでノンフィクション作品のように、淡々とその生き方を記述していく。なぜこのような小説の形をとったのか。多分、それは妙なフィクションを混ぜれば彼らと沖縄との関わりに濁りが生じてしまうと、著者が思ったからだろう。沖縄を出て、東京の貧乏暮らしの中で詩を書き続ける山之口、米軍支配に屈せず、ひたすら沖縄住民の熱い意志の代弁者になろうと奮闘する亀次郎。そして東大の英文学教授を辞し、沖縄へ心を寄せて本土にはなかった「沖縄資料センター」を創設して沖縄の現状を発信し続けた容貌魁偉で叡山の僧兵とあだ名された中野。この3人の行動が、交互に記述される。

 人間的魅力の塊のような3人が、それぞれ別の空間で沖縄と関わろうとする姿は、こういう形式でなければ表現できなかったのかもしれない。ノンフィクション・ノベルというジャンルがあるのなら、その傑作だ。
(小学館、1800円)鈴木耕(編集者)
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2023年06月25日

【焦点】核のゴミ処分「南鳥島」最適地  静岡知事が小池都知事に提案 地質学者との対談が引き金=橋詰雅博

 東京の都道府県会館で5月末に開かれた関東地方知事会議で静岡県の川勝平太知事が注目される発言をした。高レベル放射性廃棄物いわゆる「核のごみ」の最終処分場を都の南東約2千`にある日本最南端の南鳥島(小笠原村の一部)を候補地として検討すべきだと、小池百合子都知事に提案したのだ。静岡県には浜岡原発(5基のうち1、2号基は廃炉、3,4、5基は長期停止中)がある。核のゴミに関心を持つのは当然だけれども、唐突感は否めない。川勝知事がこんな提案をした理由は、同県清水市に施設を構える東海大学海洋研究所の平朝彦所長(地質学者)と、同県発行の雑誌での対談が引き金になっている(今年1月の総合情報誌「ふじのくに」に掲載)。対談で平所長はこう述べている。

 「南鳥島は太平洋プレート(太平洋の海底の大部分を占める岩盤)上にある唯一の日本領土で、周囲6`bの国有地。最大の特徴は地質的な安定性です。地震、火山活動はまず起きない。これは確信を持って断言できます。なおかつ、住民がおらず漁業権など、いろいろな権利が設定されていない。地下へ数`bのボーリングをして、使用済み核燃料を処分するキャニスター(核のゴミの廃液をガラス原料で溶かし合わせたものが入ったステンレス容器)を入れて、セメントで封印することもできます。地球上で最高レベルの安定性があるので、壊れる不安はまずありません」「最適な核廃棄物処理方法だと信じて疑いません」

 川勝知事は「国難を救える島」「モデルケースを日本が提供できれば、世界に誇れる提言にもなりますと」と平所長の研究を称えた。
川勝提案に対し小池都知事は「国がしっかりと対応すると考えている」とそっけない答えだった。
 実は平所長は、南鳥島は核のゴミの地層処分(地下深く埋める)の最適地とローカル局の北海道放送(HBC)からの取材で3年前に提言している。経産省にもこの提言を伝えたが、返事はないそうだ。

 核のゴミの地層処分計画を進める政府は、北海道の寿都(すっつ)町と神恵内(かもえない)村で文献調査を進めている。また長崎県の離島・対馬市は核のゴミの最終処分受け入れ誘致に向けて動きだしている。

 地震大国・日本には10万年以上も核のゴミを封じ込める適地はないと言われている状況下で、南鳥島にスポットライトが当たった。筆者は早速、平所長に取材を申し込んだ。残念ながら「南鳥島での地層処分をさらに研究したい」と断られた。

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2023年06月24日

【おすすめ本】猪熊律子『塀の中のおばあさん 女性刑務所、刑罰とケアの狭間で』─受刑者の貴重な体験活写 背景に広がる「孤独」「孤立」=小西暁和(早稲田大学教授)

 現代の日本社会が抱える大きな課題の一つが「孤独」・「孤立」だ。近年、日本社会では、新自由主義的価値観のもと、人々が〈自己決定/自己責任〉の論理の中に組み込まれてしまっている。その結果、他者との間の結び付きも分断され、経済的・精神的に「ひとり」となった多くの人々が貧困やストレスによって疲弊しているように思われる。
 こうした社会の姿を映し出しているのが刑務所であると言える。現在、刑務所では、社会において居場所を失い「ひとり」となった多くの高齢者や障がいのある人達が「結果的に」収容されてしまっている状況が見られる。

 本書において、著者は、女性刑務所に焦点を当てて、「塀の中」に大きく映された「塀の外」の真の姿を克明に描写している。女性刑務所の現状は、日本社会において女性を取り巻く構造的な格差が存在していることをも示唆している。男女間でケア責任・雇用形態・賃金などの不均衡が依然としてあり、著者の専門である社会保障の見地からも問題点が指摘される。こうした構造的な問題が、女性の、とりわけ「おばあさん」の「孤独」・「孤立」の背景にも見られることを丹念な取材から浮き彫りにしている。

 著者は、女性刑務所の様々な受刑者や刑務所職員へのインタビューを通じて、受刑に至った事情などを明らかにしている。刑務所内で当事者の声を直接聞くという大変貴重な取材の結果が示されている。
 我々がこうした「生きづらさ」を抱えた日本社会を変えていくためにも、是非、本書を読んでいただきたい。(角川新書940円)
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2023年06月23日

【南西諸島視察・報告】「有事」は仮定の話 沖縄から市民の声を上げる 我部政明さんにインタビュー=聞き手・黒島美奈子

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 いわゆる「台湾有事」は現在、沖縄県内にさまざまな波紋を呼んでいる。地元紙は連載や企画を相次いで展開。市民による平和集会が繰り返し開催されているほか、県内経済界は有事を想定した独自の調査研究チームを発足させた。一方、有事とはどういう状態を指すのか。どんな過程をたどり有事となるのか。実態はあいまいだ。沖縄から見える有事について国際政治学者の我部政明さん(琉球大名誉教授)=写真=に聞いた。   

 ―今年初め、主宰する沖縄対外問題研究会(対外研)から台湾有事に関する声明を発表した。
 「主眼は復帰50年の節目に立ち、今後の沖縄の対外関係の目指す方向を示す提言だ。その議論の中で出てきたのが前年12月の台湾有事に関する安倍発言だった。それを契機として沖縄や日本で鳴り響く『台湾有事』論議を批判することから、東アジアの平和と安定は生まれると判断した」
 ―対外研はこれまでも節目に主張(声明)してきた。
 「活動を始めたのは1999年5月。沖縄の対外関係について相互批評し、時代の変化に合わせ沖縄の声を発信することが目的だ。2001年に誕生したブッシュ米政権が初期の『アーミテージ報告』に基づいて在日米軍基地強化を唱えたことに問題提起し、2005年から2006年にかけての米軍再編報告についても主張を発表した」

 ―沖縄から発信する理由は?
 「沖縄は当事者だからだ。当事者を抜きにした話し合いについて発言することは不可欠で、今回の台湾有事に関する提言もその一環だ。台湾は、大国の狭間で存在しなければならない沖縄と類似的な存在であり、そうした台湾と沖縄にとって自己決定の保障は重要だ」
 ―昨年は「『台湾有事』を起こさせない・沖縄対話プロジェクト」の発足につらなった。
 「市民が声を上げるための機会として発足した。台湾有事には沖縄や日本、台湾、中国、米国という国や地域が関わる。対話するには、まず互いを知らなければならないだろう」

 ―市民の関心は高い。
 「緊張が高まっていることが背景にあるだろうが、危険な兆候でもある。なぜなら緊張が高まると人はやがて自分のことしか考えなくなる。国民保護計画が注目を浴びている現状がまさにそれだ。不安だから自分たちの安心安全に傾倒する。そこで止まればいいが不安は不安を呼ぶ。いずれ自分を守るため戦争は『やむなし』となり、自覚のないまま戦争は『不可避』になってしまう」
  「避難計画の必要性は分からなくもないが、それより先にやるべきことがあるのではないか。台湾危機によって沖縄が戦場となるのはなぜか。答えを自ら探ることが、意図せず私たちがつくり出す非常事態への道から脱することにつながると考える」
 「避難の困難さはウクライナをみても分かる。国境を越えて避難した人がいる一方、大部分が国にとどまっている。沖縄戦でも大勢の県民が疎開しなかった。とどまる合理的な理由があるはずで、それを知りもせずに私たちは避難計画を空想していないだろうか」

 ―有事の不安が募る一方、戦争のリアルが見えていないと。
 「繰り返すが安全保障上の緊張がないわけではない。けれど有事という危機が指摘されるのは、いずれも仮定形だ。中国が武力侵攻を『したら』から始まる仮定が恐怖を煽っている」
 ―戦争への道を私たち自身がつくり出しているとすれば、今どうすべきか。
 「考えることだ。おそらく考えるほど、戦争に出口はないと気づき、戦争をはじめるべきではないとなる。有事の正体は曖昧模糊としていることに気づくはずだ」
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年5月25日号

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2023年06月22日

【南西諸島視察・報告】「分断」に苦悩の地元 保守優位政治と利害絡む=米倉外昭

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 今回の宮古島、石垣島訪問で、自衛隊基地建設・増強に反対する市民運動をしている人たちに実際に起きていることを教えていただくとともに、戦争の準備が進むことに対して市議会議員や地元メディア関係者(宮古、八重山には、それぞれの地域をエリアとする「地域紙」と呼ばれる日刊新聞が2紙ずつある)からも話を聞いた。住民の危機感や「本音」を聞きたいと思ったからだ。
 それぞれの新聞は、人口5,6万人の地域で賛否が対立する問題に対して論調を明確にすることは簡単ではない。しかし、反対運動の動きも丁寧に報じており、地域紙の責任を果たそうとしている。
 地域分断と報道の難しさの背景にはいくつもの事情がある。第1に、基地建設やミサイル配備、安保関連3文書の閣議決定など、事態の進展が早すぎて、住民がじっくり考えたり議論したりできていない。また、不安はあるが、まさか本当に戦争にはならないだろうという正常性バイアスが働いている。

 背景には長年にわたる地域の状況がある。尖閣問題の地元として中国脅威論または中国への不安は根強い。これも働いて政治的に保守が優勢で、保守系市長が4選しており議会も保守系が多数だ。さらに、離島としてさまざまな政策支援を受けており、政府が決定すれば従わざるを得ないという雰囲気が強い。
 自衛隊と米軍の違いもある。沖縄本島が米軍の訓練や事件事故の被害にさらされているに比べ、自衛隊に親近感がある。災害時などの自衛隊の救難活動が期待できるという意見もある(日常の急患搬送は、宮古では自衛隊、八重山では海保が担ってきた)。また、自衛隊関係者が地域に増えれば批判しにくくなるだろうという地元紙記者の声があった。

 経済的事情も無視できない。基地建設、住宅建設の工事関係のほか、隊員の家族らが増えることで経済効果がある。住民避難のためのシェルター建設さえも、新たな公共工事として期待する業者がいるという。

 しかし、今の流れでは、米国の出方次第で、あるいは偶発的な出来事によっても、戦争は起きてしまう。住民避難も、住民を保護できるだけのシェルター建設も非現実的すぎる。さらに戦場が南西諸島にとどまる保証はなく、日本全体、さらに米国を全面核戦争にエスカレートする可能性も否定できない。戦争を起こさないためにどうすべきか、という立場に立った報道、論説が、地元以外のジャーナリズムにこそ求められているのではないだろうか。   
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年5月25日号
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2023年06月20日

【焦点】神宮外苑事業取り消し訴訟第1回口頭弁論、地裁103号法廷で29日(木)午前11時から開く=橋詰雅博

                        
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 東京・神宮外苑再開発再開事業をめぐり周辺住民や学者、研究者ら約62人が、東京都が認可した事業取り消しと判決確定までの認可執行停止を求め東京地裁に提訴した第1回口頭弁論が今月29日(木)、午前11時から地裁103号法廷で開かれる。
 2月28日に提起された主な訴えの内容は以下の通り。
@神宮外苑再開発事業が行われることにより、いちょう並木をはじめとした景観が大きく阻害され、多様な生態系や神宮外苑の環境を大きく毀損する。
A認可に先だって行われた環境影響評価は、事業者の不十分な情報公開、虚偽の報告のままでの環境影響評価など重大な瑕疵が認められる。
B再開発事業を可能にしているまちづくり指針による再開発事業は、都市計画法の本旨を逸脱又は認容されたものであり違法である。
C神宮外苑の歴史的価値・文化的価値が毀損され、景観利益、騒音や風害や日照権など、周辺住民に様々な被害がもたらされる。また13年にも及ぶ工事期間は住民生活を長期にわたり不便、不利益を与える。
主要な原告は ロッシェル・カップ(オンライン署名発起人・経営コンサルタント)、ロバート・ホワイティング(野球スポーツライター)、明日香壽川(東北大学教授・気候変動)、斎藤幸平(東京大学大学院准教授・経済思想家)、竹内昌義(建築家・東北芸術工科大学教授)、小野りりあん(ファッションモデル・気候アクティビスト)、原有穂(高校生・FFF Yokosuka)、外苑周辺住民。当日はカップさん=写真=らが意見陳述を行う。

 裁判終了後、午後3時30分から衆院第二議員会館1F多目的会議室で報告集会を5時30分まで行う。2時45分から会館入り口で入館証を配布。
■ 第1回弁論の報告
■「神宮外苑再開発の問題点」岩見良太郎氏(埼玉大学名誉教授=都市工学、工学博士=)講演
(報告集会はオンライン参加もできます)
*詳しくはこちらまで
https://www.savejingugaien.com/%E7%A5%9E%E5%AE%AE%E5%A4%96%E8%8B%91%E8%A8%B4%E8%A8%9F%E3%81%AE%E9%96%A2%E9%80%A3%E8%B3%87%E6%96%99/問い合せ先:訴訟団事務局 2012t.road @ gmail.com (長谷川)(送信の時、スペースを消して下さい)
https://www.savejingugaien.com/
 103号法廷は傍聴者が100人近く入る大法廷。ぜひ満席にして裁判官にプレッシャーをかけましょう。なお傍聴希望者が多い場合、抽選になるかも。

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2023年06月19日

【出版界の動き】 新聞メディアが自社以外での執筆・言論・著作活動に規制=出版部会

●23年4月の出版物販売金額865億円(前年比12.8%減)、書籍483億円(同11.6%減)、雑誌382億円(同14.2%減)。月刊誌324億円(同15.1%減)、週刊誌57億円(同8.9%減)。返品率は書籍31.9%、雑誌42.3%、月刊誌41.2%、週刊誌47.9%。
各部門とも、前月から2倍以上の大幅な減となり、村上春樹の6年ぶりの長編小説『街とその不確かな壁』(新潮社)・重版合わせ35万部の発行は上半期書籍ベストセラー第1位となったが、出版界の低迷打破の起爆剤とはならず。

●KADOKAWAの連結決算─売上高2554億円(前年比15.5%増)、営業利益259億円(同40.0%増)は共に過去最高額。当期純利益126億8千万円(同9.9%減)。要因は「ゲーム事業」の好調による。売上高303億円(同55.7%増)、営業利益142億(同173.4%増)の数字が如実に示す。

●日販グループ35社の連結決算では売上高4440億円(前年比12.1%減)、営業損失4億円(前年は28億4000万円の利益)、取次・小売店事業が減収・営業赤字により全体を押し下げた。
日販単体の売上高3551億(同12.9%減)、当期純損失22億9700万円(同4億8500万円の利益)。「書籍」「雑誌」「コミックス」「開発商品」の全4分野で減収。市場全体が縮小し、取引書店の閉店や帳合変更も大きく影響、前年の売上高から約523億円減少。

●公立小中学校の学校図書館を充実させるため図書の購入費用として、文科省は220億円を各自治体に交付したが、図書購入に使われたのは6割弱の約126億円(57%)にとどまる。財政難などを理由に他の目的に回され、図書購入費は7年連続で減少している。
 学校規模に応じた蔵書数を示す「学校図書館図書標準」を達成している学校の割合は、小学校71%、中学校61%にとどまる。

●絵本作家・田島征彦(ゆきひこ)さんが、長年の取材の集大成として「沖縄戦」を描いた絵本『なきむしせいとく─沖縄戦にまきこまれた少年の物語』(童心社)が、第54回講談社絵本賞を受賞。
 絵本の内容は、1945年戦争末期の沖縄を舞台に、8歳の男の子である泣き虫せいとくの視点から、沖縄での空襲や艦砲射撃、そして地上戦……。家族を失い、死体を踏み越えて逃げ、味方と避難場所を奪い合う沖縄戦など、悲惨な現場を絵本に仕上げ、戦争を見せて怖がらせるのではなく、平和の大切さを伝える画期的な労作。

●廣嶋玲子『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』(全20巻・偕成社)が、2013年5月に刊行されて以降からロングセラーを続けている。累計発行部数400万部を突破。とりわけ2020年9月にNHK教育テレビで放映され、小学生だけでなく中学生にも人気のシリーズとなった。「銭天堂」の内容的なエグさ、登場人物の身につまされる内面描写は、中学生をも惹きつける魅力がある。

●新聞労連が「言論機関の言論の自由を考える」と題するシンポジウムを開催(6/3)。そこで「社外での言論活動」に関するアンケート結果が公表され、会社による規制強化の進行が報告された。 社外執筆の禁止事例8件、講演ダメ3件、出版ストップ1件、形式上「届け出制」でも不許可の事例も出ているという。「慰安婦問題など見解が割れるもの、政治家から反論があったものなどに、規制強化の傾向がある」という。
 日刊ゲンダイDIGITAL(6/5付)によると、シンポジウムではTBSのキャスター・金平茂紀氏が「米NYタイムズや英BBCなどは社員にSNS発信や社外活動を推奨している。むしろ社外言論が会社の価値を高めるとの判断だ」と発言。元共同通信記者のジャーナリスト・青木理氏は「言論・報道の自由の担い手たるメディアが言論・報道の自由を守れなければ、社会に流通する情報が減る。誰が被害を受けるのか自明ではないか」と話した。「新聞社が萎縮すれば権力の思うツボ。これでは21世紀の大政翼賛会になってしまいます」(政治評論家・本澤二郎氏)と指摘する。
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2023年06月18日

【おすすめ本】大山眞人『瞽女(ごぜ)の世界を旅する』─<盲目の女旅芸人>に寄り添い訪ね歩いた四季折々の旅=渡辺裕子(瞽女ミュージアム高田)

 テレビを付けると「今日は盲導犬の日」(4/26)だと、その意義を伝える映像が流れてきた。1900年代初頭のヨーロッパで盲導犬の育成が始まり、それを記念して定められたという。
 さて1900年代といえば日本は明治時代。その時代に、瞽女(ごぜ)という盲目の女性旅芸人がいた事実を知る人は、どの位いるだろうか。瞽女とは三味線を携え音曲を奏で喜捨の旅で生計をたてていた、盲人女性の職業名である。瞽女の起源は古く室町時代まで遡れる経緯まで知る人となれば、極めて少ないであろう。

 本書で詳述される上越高田の地に生きた高田瞽女の歴史は、江戸時代に始まり昭和まで続く。筆者が縁あって高田瞽女を紹介する仕事に就いたとき、手にした本が本書の著者が刊行した「高田瞽女三部作」だった。光を 失った瞽女の世界が輝いて見えた。
 瞽女を特別視しない著者の視線が、人間瞽女をくっきりと浮び上がらせていた。13年もかけて高田瞽女の元に通い、ありのままの姿に向き合い結ばれた絆。あれから時は流れたものの、瞽女と過ごした体験や感懐を、新たに一冊の本にした。三部作では語り尽くせなかった思いが、本書にはあふれている。

 高田瞽女は、男を組織に入れない強靭な掟を守り、生き抜いてきた。その終焉の時を迎え、高田瞽女・最後の親方である杉本キクエが、男たる著者に託した熱い願い。著者との気の置けない時の中、瞽女がゆっくりと肩の荷を下して行く姿に、心が揺さぶられた。
 もう高田瞽女の姿に会うことはできないが、その心の豊かさは、本書が確実に伝えてくれる。座右に置くべき高田瞽女のバイブルである。(平凡社新書960円)
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2023年06月17日

【軍事】「日本壊滅」最悪シナリオ 安保政策大転換を読み解く 防衛ジャーナリスト・半田滋さん講演=山田寿彦

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  北海道支部は防衛ジャーナリスト(元東京新聞記者)の半田滋さんを招き、安保3文書改定と安保政策の大転換を読み解く講演会「日本が『戦争で滅ぶ国』になる!」を4月29日、札幌市で開いた。半田さんは敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有から「日本壊滅」に至る最悪のシナリオを提示し、「日本の軍事力強化は東アジアの不安定化を呼び込む」と警鐘を鳴らした=写真=。

 北海道新聞労組の後援を得て市民約150人が参加した。安保3文書の最上位に位置付けられる『国家安全保障戦略』(昨年12月閣議決定)は「スタンド・オフ防衛能力等を活用した反撃能力」の保有を「侵攻抑止の鍵」として初めて明記した。
  同文書は「戦後最も厳しく複雑な安全保障環境」を強調し、国民に対しても「安全保障政策に自発的かつ主体的に参画する」ことを求めている。しかし、敵基地攻撃を可能にする「スタンド・オフ防衛能力」(18大綱に明記)の保有目的をめぐる政府の説明は誠実さを欠いてきた。

反撃に核兵器も
 「自衛隊員の安全を確保しつつ、相手の脅威圏の外から対処(するため)」との当初説明は「反撃能力」にすり替わり、専守防衛からの逸脱を既成事実化する「真っ赤な嘘」(半田さん)だった。
半田さんによると、米軍の統合防空ミサイル防衛(IAMD)に参加することにより、米国から購入する巡航ミサイル「トマホーク」を用いて敵基地攻撃を行う軍事的オプションが可能になる。

 国内法の地ならしは集団的自衛権行使の要件として「存立危機事態」を規定した安保法制で行われた。米軍への攻撃を日本政府が「存立危機事態」と見なし、米軍防衛を自国防衛にすり替えて米軍の交戦国に対して軍事行動を起こすことが想定される。「集団的自衛権行使が、国際法では許されない先制攻撃に該当することがあるという矛盾をはらむことになった。反撃には核兵器も想定され、通常兵器でも原発が損傷すれば日本は壊滅的な打撃を受ける」と半田さんは指摘する。
 そのようなシナリオが現実味を帯びるのが台湾有事だ。中国が「内政問題」として台湾の武力侵攻に踏み切ったとしても、日本領土への侵攻は想定しにくい。
 しかし、米国が武力介入した場合は在日米軍基地への攻撃が想定され、「日本有事」に発展する可能性が高い。「存立危機事態の発令による日本の参戦」(半田さん)が中国から「先制攻撃」と見なされ、報復されるという最悪のシナリオだ。
 米国は2027年までに台湾有事が起きると想定し、沖縄県の離島では「戦場化」を前提とした日米共同訓練が繰り返されている。

におう政治案件
 台湾有事を念頭に置いた自衛隊の戦争準備が進む中で、安保政策の大転換を担保する装備品はトマホークなど米国製の「爆買い」により調達される。
 NATO並みに対GDP比を2%とする防衛費は5年間で17兆円増の43兆円。23年度当初予算で米政府からの有償軍事援助(FMS)は過去最高だった19年の2倍を超える1兆4768億円に膨れ上がった。
 米国からの兵器購入では退役が決まっている旧式の無人偵察機3機に629億円を支払うなど、不合理な契約を押し付けられている例があり、官邸主導のいかがわしい「政治案件」のにおいも漂うという。
 半田さんは香田洋二・元自衛艦隊司令官の「今回の計画からは自衛隊の現場のにおいがしない。日本を守るために最も必要で有効なものを積み上げたものなのだろうか」との見解を紹介。「プロの目でもおかしいと言っている。100%同意する」と賛意を示した。

  膨張する防衛費の財源に増税は避けられない。半田さんは問いかける。「私たちは重い負担を引き受ける軍事力強化を望むのか。台湾有事の戦場は日本と台湾であり、米国や中国(本土)ではない。敵基地攻撃能力を持ち、対米支援は自滅を選ぶのに等しい」
 半田さんの結論は「平和は軍事力ではなく、命がけの外交によって実現する」。市民が政治に関心を持ち、政治家に外交努力の覚悟を求めることこそが戦争回避の道になることを強調した。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年5月25日号

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2023年06月16日

【シンポ】 NHKとメディアの今を考える会 第7回シンポジウム「メディアに口出す政府を許すな〜総務省「行政文書」問題から何を学ぶか〜」25日午後2時から4時(JCJが共催)

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6月25日 (日) 14:00〜16:00 zoomによるオンライン(申込者には後日録画配信あり)
  3月2日、小西洋之参議院議員が公表した総務省「行政文書」によって、安倍政権時代、官邸(安倍元首相の側近・礒崎陽介総理補佐官)が総務省に圧力をかけ執拗に放送法の「政治的公平」の解釈変更を迫った内幕が詳細に明らかになりました。これはあからさまな権力による放送メディアへの介入です。その後の国会論戦の末、小西議員の厳しい追及により総務省は、「政治的公平」の解釈変更を事実上撤回するに至りました。
 シンポでは、以下論点を議論。
 ●小西議員が公表した総務省「行政文書」の核心は何か
 ●国会の論戦で明らかになったこと
 ●「放送法解釈変更」が放送メディアの報道内容や制作現場に与えた影響
 ●「権力のメディア介入」を繰り返させないために、独立行政委員会制度導入の可能性を含め今後の放送行政はどうあるべきか

■パネリスト:小西洋之氏(参議院議員・立憲民主党)
      :砂川浩慶氏(立教大学教授・社会学部長)

■オンライン参加費:500円  Peatix(https://peatix.com/event/3613160)からお申し込み下さい。
※今企画はJCJ会員も有料での参加となります。

■主催:NHKとメディアの今を考える会(http://sjak-800.cocolog-nifty.com/blog/) 
    立教大学社会学部メディア社会学科・砂川ゼミ
■共催:NHKとメディアを語ろう・福島
   :日本ジャーナリスト会議
   :日本ジャーナリスト会議・東海
   :放送を語る会
   :メディアを考える市民の会ぎふ

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 (問い合わせ先)小滝一志:kkotaki@h4.dion.ne.jp
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2023年06月15日

【映画の鏡】真の「保守」とは何か『ハマのドン』「主役は横浜市民、俺は脇役」=鈴木賀津彦

  都内と横浜で5月5日から公開され連日満員の好スタートだが、映画館に足を運んで気になったのは、これを「反政府」の映画だと受け止めている人が予想以上に多いことだ。
 政府が推進するカジノを含むIRという国策に19万人超の署名を集め住民投票を求めた横浜市民や、カジノ反対の市長が誕生した2021年夏の横浜市長選挙を追っている。映画のパンフにも「主権は官邸にあらず、主権在民。」と打ち出し、政府の問題点を鋭く追及しているから、そう受け止められるのかもしれない。

 しかし、「ハマのドン」と呼ばれる藤木幸夫にしても、「解説役」のように登場する元参院議員の斎藤文夫や元横浜市議会議長の藤代耕一ら自民党の重鎮たちも、保守の本流を歩んできた人たち。良き時代の「ミスター自民党」の面々が、今の自民党政権の間違いを正そうと発言する姿に拍手を送りたくなる。カジノ誘致で税収増になると考えている政権与党なんて、どう考えても許せないのだ。

 藤木が「主役は市民、俺は脇役」と強調する姿から、松原文枝監督は「藤木さんの覚悟が人を動かし、人と人がつながっていく。人を大切にし、地域を大事にし、時代をつなげていく。それが本来の保守ではないだろうか。安倍政権時代から、意見が違えば、異論を唱えれば『敵だ、見方だ』と分断する風潮が広がった。だが、保守とは意見の違いがあっても受け入れていく包容力があったはずだ」と述べている。

 自民党はこの映画を「党員必見」と指定し、「真の保守とは何か」を学ぶ最適な教材にしてみてはどうだろう―。保守を自認する人たちにこそ見てほしい作品なのだ。
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年5月25日号
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2023年06月14日

【支部リポート】広島 核兵器へ一歩も サミット祭り≠ノさせない=井上俊逸

 広島支部は、原爆被爆地広島での開催(5月19〜21日)となった先進7カ国首脳会議(G7サミット)が、被爆者をはじめ多くの市民が願う核兵器廃絶の道へと向かうのではなく、逆に「核抑止力」を肯定、助長する場になるとの強い懸念を抱く支部内外の人たちと議論を重ね、浮かび上がった問題に対する意見の発信やヒロシマの声をG7首脳らに届けるための活動を展開してきた。
G7広島サミットが正式決定されて以降、支部では毎月の幹事会などを通じて、ロシアとウクライナの戦争が長期化し、核兵器の使用も現実の脅威になる中、広島選出の岸田文雄首相が議長となって開かれるG7サミットをどう見るか、「歓迎」が際立つ地元メディアの報道にも疑問の目を向けながら論議を続けた。

  結果、日本以外はすべてNATO加盟国というG7のサミットが対ロシアで結束力を強めるばかりか、力対力の論理、すなわち核抑止論の正当性を世界にアピールするための「貸座敷」にヒロシマが利用されてはならないという問題意識を共有。今年に入ってから支部としてできる具体的な取り組みに踏み出した。

  主には二つあり、第一は、広島サミットのG7首脳共同声明に核廃絶の方向へ一歩でも進む文言を盛り込むよう促すために、G7各国の政府関係者はもとより、世界から広島に集まってくる市民運動グループやメディア関係者らに対し、核被害(被爆)の実相をリアルに知るのに役立つ機会や資料、情報の提供。
 そこで思いついたのが地元紙、中国新聞の労働組合が被爆50周年の1995年に「もし被爆直後の惨状を伝える新聞が翌日発行されていたなら」と想定し、作成した「ヒロシマ新聞」と、60周年の2005年に新聞労連が作成した英語版の「ひろしま・ながさき平和新聞」。同労組と労連に協力を求めて無償提供を受け、「みんなの市民サミット2023」(4月16・17日)と「世界の核被害者は問う G7首脳へ」(5月13日)の二つの集会で参加者に配布した。

 第二が、同じように「広島サミットを単なる政治ショー、あえて言えばお祭り≠ノしてはならない」と考えるTBS報道特集特任キャスターの金平茂紀さんらが企画した「核廃絶を求めるG7サミット直前広島イベント」(5月17日)に支部として後援団体に名を連ね、この集いの準備・運営に参画。200人規模の参加実現に寄与したことだ。 
   JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年5月25日号
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2023年06月13日

【選挙】地方でも女性トップ当選 愛知・安城 野場華世市議=鈴木賀津彦

                      
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  女性の当選は、杉並区などの都心部で注目されがちだが、地方でも大きな動きが起きている。愛知県安城市でトップ当選した女性候補(保守系)の選挙戦を取材した。
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 「どうしてこんなにたくさんの人が私のこと知ってたの!」。4683票を獲得し、2位に1000票以上の大差をつけてトップ当選を果たした安城市議の新人、野場華世さん(41)の喜びの声は驚きに満ちていた。

 そんな驚きの言葉が出たのもうなずける。野場さんが生まれ育った故郷の安城市に引っ越してきたのは、選挙のたった4か月前。さらに定数28人に対して38人が立候補した激戦区の上、野場市議の支持基盤となる北部地域からは新人女性が3人も出馬し三つ巴の戦いとなった。
 SNSを利用したネット選挙を制して票を集める候補も出てくる中で、野場さんはツイッターもインスタグラムも使用しなかった。利用したのはnoteというブログサイトのみだ。なぜSNSを積極的に利用しなかったのかを彼女に問うと、意外な答えが返ってきた。

 「私はプライベートと選挙活動を含めた政治活動の線引きについて、まだ結論が出せていません。だから、結論の出せていないものには手をださい。そして、表面的な発信をすることにも意味を感じていません。発するなら文章でしっかり発信することこそ誠意だと考えたからです」
 彼女には5歳と3歳の息子がおり、私生活をさらしすぎることへの危機感を持っていると教えてくれた。そして彼女の考え方はある意味戦略として正しかったという。選挙後、選挙中の一週間のブログ解析をすると、閲覧回数は1万回を超えており、市民の彼女への関心の高さがうかがえた。彼女のブログがなぜ人々に響いたのか、それは彼女が街頭演説で語った言葉に答えがあると話す。

 「私は1週間で街頭演説と個人演説会を合わせて50か所以上で開催しました。私が話したことは、提言する政策の裏付けとなる実体験です。子どもの能力を伸ばしたいという思いの裏にある、自分が受けたかった教育。子供の居場所を作りたいという裏にある、ヤングケアラーでいじめられっ子だった幼少期。誰かに助けてもらいたかった経験があるからこその、助けてあげられる環境の整備。そして新聞記者として培った行政や政治を見る目。すべて自分の言葉で語りました。泣いてくださる聴衆の方にたくさん出会いました」

 ブログには、彼女の率直な語り口で、本音の思いがつづられている。いま、彼女のもとには同世代の40代から「政策実現の手伝いをしたい」という声も届き始めたそうだ。
 「これまで政治に無関心だった世代は、ただ自分の思いに寄り添い共感してくれる同世代の代弁者を探していたのではないか」、彼女はこう選挙戦を振り返った。

 20年間も故郷を離れて舞い戻ってきた新人女性を圧倒的な支持で受け入れた安城市民。彼女は共感者を集めて政策チームを作るという。この4年間でどんな政策が実現していくのか注目しよう。   
  JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年5月25日号
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2023年06月12日

【おすすめ本】櫻井義秀『 統一教会 性・カネ・恨(ハン)から実像に迫る』―異形の教団の全体像 信者の思い、組織の行方 =藤森研(代表委員)

 統一教会(現名称は世界平和統一家庭連合)を30年以上注視してきた宗教社会学者(北大大学院教授)の渾身の著だ。
 統一教会は、教祖がメシヤを自称するキリスト教系新宗教の一つだが、韓国の民衆宗教の影響も強い。初期には性的な「血分け」も行われたという。

創始者の文鮮明は、初期信者によると「人心収攬の術に天賦の才」を持つ人物だったようだ。
 日本の統一教会員が霊感商法を行い、信者に高額献金を迫る契機は、文鮮明の世界巡回や勝共活動に多額の資金を必要としたことだと見る。
 「地上天国実現のため、財を神の世界に戻す」という教えが信者の良心を麻痺させた。韓国植民地化への教祖らの恨(ハン)と日本人の贖罪意識も、韓国本部のための苛烈な金集めを正当化した。
 「統一教会による霊感商法は、日本宗教史における最大規模の詐欺事件となってもおかしくはなかった」と書く。だが、「販社の販売員がしたことで、宗教法人は関与していない」と教団は主張した。幹部人事など実際は一体だが、捜査の壁になったと著者は見る。
政治との密着は、選挙の電話がけ、ポスター貼り、演説会などに人を派遣してくれる教団が、政治家には有難い存在だからだ。

 国際合同結婚で渡韓した日本人女性信者は約7000人。著者は韓国でインタビューしている。教団に疑問を持つ人は少なくないが、「子供は韓国人として育ったから」と、韓国で生き続けるしかないと覚悟している人もいた。
 社会的批判を受け、世代交代も進む統一教会は、今後どうなるのか。著者は3つのシナリオを挙げるが、あとはぜひ本書を。
(中公新書960円)
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