◆「政治とカネ」をめぐる問題に関連し、「裏金」の使途が問われている。自民党の二階俊博元幹事長の資金管理団体「新政経研究会」は、2020〜23年の政治資金収支報告書を1月に訂正した。その報告書によると、17種類の書籍を27,700冊・総額3,470万円の支出が追加されていた。
とりわけ大量に購入した本は、大仲吉一『ナンバー2の美学 二階俊博の本心』(ブックマン社・2020年12/8刊)である。これを2021年に5,000冊・1,045万円も購入している。ほかに購入した6冊も、二階氏が主役≠フ<ヨイショ本>である。
総選挙があった2021年には、15,800冊・総計2,264万円も書籍代として支出している。二階氏の資金管理団体・支出総額の54%を占める。日本の公共図書館が1年間に購入する図書費は、1館あたり平均836万円、それの約3倍近い金額を二階氏は使っていることになる。何の目的のために購入したのか。誰しも疑問に思うだけでなく、自分の当選に向けて使ったと判断するのは、しごく当然ではないか。
著者も出版社も、買い切りを前提に返品のリスクもなし、印税も売り上げも確実、儲かればよいで済むのだろうか。もし「裏金」などが充てられているとしたら、<汚いカネのマネー・ロンダリング>に手を貸したことにならないか、疑問は尽きない。
◆今年に入って書店の閉店・廃業の深刻な状況は驚くばかり。書店数の減少はここ20年近く続き、年間で500〜600店が閉店に陥っている。その流れは2023年も食い止められず、2023年の閉店または廃業した書店は669店にのぼる。今年2024年には売場をもつ書店の数が7000店台に突入するのは確実な状況となっている。
紙媒体の市場規模が急速に縮小し、とくに雑誌と紙コミックの売上げ低下が、大きな影響を及ぼしている。書店数の減少は、配送効率の低下を引き起こし、出版物流の根幹を揺るがす深刻な状況になっている。
◆23年12月の出版物販売金額887億円(前年比8.94%減)、書籍483億円(同7.5%減)、雑誌404億円(同10.0%減)。月刊誌354億円(同8.8%減)、週刊誌50億円(同17.9%減)。返品率は書籍29.1%、雑誌40.3%、月刊誌38.5%、週刊誌50.4%。相変わらず週刊誌の落ち込みが続く。週刊誌の売り上げは前年比マイナス20%に加え、返品率が最悪な状況になっている。
おそらく今年は月刊誌だけでなく週刊誌の休刊も続出する気配が濃厚だ。
◆紙の雑誌・書籍の売上げは1996年2兆6,564億円をピークに減り続け、全国の書店も2000年の2万1654店舗から2020年には1万1024店舗へと20年で半減した。さらに今年は物流の2024年問題にも直面する日本の出版業界である。
ところが世界の書籍出版業界は、2019年に約859億ドルと評価され、2020〜2027年には2%以上の成長率が見込まれる成長市場だという。なのに日本では、なぜそうならないか。そこには業界平均で約40%という「返本率の高さ」があると指摘されている。
こうした出版業界の課題に立ち向かうために、ブックセラーズ&カンパニーが組織された。大手書店の紀伊國屋書店、TSUTAYAや蔦屋書店などを運営するCCC、取次の日販が共同出資して設立された。
現在、同社の事業に約1000書店が参加し、出版社との直接取引をまとめ、流通の効率化を支援する。このほど出版社4社と直取引で合意し、3月から順次スタートする。
◆トップカルチャーの連結決算が発表され、当期純損失13億7600万円、減収損失の決算となった。メインである「蔦屋書店事業」は売上高179億6500万円(前年比12.2%減)、その他の部門でも全てがマイナス。日販からトーハンへの帳合変更によりトーハンの筆頭株主となり、26年までに売上高181億円を目ざす。そのためには「TSUTAYA」を減らさざるを得ない状況が続く。
トップカルチャーは1987年からCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)とフランチャイズ契約を締結し、CCCは1都9県に書店「TSUTAYA」74店舗を展開している。 その閉鎖が止まらない。1月には30年の歴史を持つ東京・世田谷の象徴的な店舗も閉鎖。この10年で半数近くが消えた。書店ビジネスの再生や東京・渋谷のスクランブル交差点に面した新型「TSUTAYA」の開発など、再構築を進めるが、果たして成功するかどうか問われている。