JCJ広島支部は、岸田政権が「安保三文書」を閣議決定して丸1年となった昨年12月16日に「2023不戦のつどい」を広島市内で開いた。「岸田『大軍拡』を問う〜海上自衛隊呉基地『強靭化』の実態〜」をテーマに、呉地区平和委員会事務局長の森芳郎さんの講演などがあり、オンライン視聴を含め60人が参加した。
森さんの講演に先立ち、支部幹事の難波健治さんが「安保三文書が意味するもの」と題して問題提起。これは「日米安保体制をまさに臨戦態勢に持っていくための指針」であり、具体的には@日本が「戦争する国になった」と国内外に宣言するA自衛隊を本格的に「戦力化」し、実態として戦争できる軍隊に仕立てるB私たち国民に対して日本はもう「平和国家」ではない、「戦争国家」に変わったということを認知させる―という三つの狙いがあると指摘した。
軍事増強が具現化
続いて登壇した森さんは、安保三文書によって推し進められる敵基地攻撃能力の保有や軍備増強の動きが、海自呉基地にはどう具現化してきているかを解き明かした。
それによると、呉基地には最新鋭ステルス戦闘機「F35B」の発着も可能にする空母化≠ノ向けた改修工事が進む護衛艦「かが」をはじめ、大型輸送艦、潜水艦、音響測定艦など48隻が配備されている。保有艦船数では現状も海自最大の基地だが、ここへ新たに「海上輸送群」司令部が置かれることになった。軍事要塞化の進む南西諸島などに戦車や弾薬を運ぶための部隊を、海自だけでなく陸自、空自からも要員を出して100人規模で創設する。その司令部を呉に置き25年3月に発足する予定だ。
防災対策を名目に
一方で、敵基地を攻撃すると当然反撃される、核兵器が使われることも想定し、それに耐えうるよう全国約300の自衛隊基地や防衛省関係施設を強靭化する計画が進行しており、呉地方総監部も対象施設に入っている。23年度予算で「防災対策」を名目に20億円が計上されており、太平洋戦争末期、当時の海軍司令部が米軍の空爆に備えて造った地下壕が再整備・活用されるのではないか。
また、敵基地攻撃には欠かせない長射程ミサイルを保管するための大型弾薬庫を35年までに全国で約130棟設置する計画もあり、呉湾内にある大麗女島がその一つ。戦時中は海軍の弾薬庫が置かれていた島で、現在も海自の弾薬庫になっているが、ここを改修してトマホークなどを保管できるようにしようと、23年度から2年かけて調査するための2億円の予算が付いた。既に測量等の調査を請け負う業者も決まり、具体化に向けて動き出しているという。
市長講和にも抗議
最後に、折から発覚した広島市の松井一実市長が就任翌年の2012年以降、毎年の新入職員研修で戦前の「教育勅語」を引用して講話していた問題を取り上げ、松井市長に対して「断固抗議し今後の絶対不使用を求める」声明を参加者一同で採択した。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年1月25日号