科学的な認識や事実,知性への信頼をもたない首長が、自らが率いる政党の利権と勢力を拡大する手段としたのが,巨大イベントの万博である。大阪市の公式記録には夢洲誘致は松井知事の独断と記されている。しかも、博覧会というイベントそれ自体が,もはや「時代遅れ」で開催の意義すら見いだせずにいる。
それだけではない。会場の夢洲は、高度処理を要する管理型廃棄物処分場として(夢洲1区),大阪湾口の浚渫土砂と建設残土の処分場(二・三・四区)として造成されてきた。数多くの海底活断層が存在し直下型地震と津波の「巣」と言われる大阪湾。工業地・準工業地として活用が目論まれていたので,商業用地として高層ビルを建設することなど,想定しない護岸設計なのである。
津波がくれば,脆弱な護岸が破壊され,甚大な被害が想定される。計画によれば、災害のリスクは認識されているものの、その対策は皆無である。
藤永のぶよは、夢洲の現状をつぶさに描き、計画の荒唐無稽さを明らかにする(第一章)。
ところが、批判に目もくれず、維新府政・市政によって無謀な計画が強行される。維新府政・市政への圧倒的な府民・市民の支持が背景にあるのは事実である。
では、なぜ維新は支持されるのか、内田樹が批判的に分析を行う(二章)。
そして、第三章で経済学者の金子勝が、維新政治を打ち破る展望を語る。
西谷文和の巧みなリードで「崩壊」から復活の展望が示された好著であり、幅広い読者にぜひ、お読みいただきたい。
(せせらぎ出版1300円)