2024年03月05日
【事件】旧統一教会問題終わらず 鈴木エイトさん講演 文科相に新疑惑も=古川英一
1年半余り前の安倍元首相銃撃事件をきっかけにクローズアップされた統一教会の問題。昨年末には不十分ながら被害者救済法が成立し、「忘れやすい日本人」からは関心が薄れつつあるとの懸念も。しかしこの問題は継続し、さらに自民党の裏金問題とも繋がっているのではないか。こうした問題意識でNHKとメディアの今を考える会が主催、JCJも共催して1月末にフリージャーナリストの鈴木エイトさん=写真=の講演会を開いた。
鈴木さんはまず「統一教会問題は宗教の問題ではなく家庭や、人生を破壊するカルトの問題。正体を隠した偽善勧誘などが止められなかったのは、日本への進出の時から大物政治家の後ろ盾があったから」とズバリ指摘した。
安倍政権との癒着
「統一教会は嫌いなんだよ」06年当時、安倍晋三首相はそう語っていたという。それが第2次安倍政権以降は菅官房長官とツートップで関係を深めていく。「安倍政権の集団的自衛権の保持に反対したSEALDsに対抗して科『ユナイト』という学生グループを結成し、安倍政権支持を訴えた」と2世信者の当時の動きを紹介。この頃鈴木さんは「安倍カルト内閣」として取材を続けたが出版を持ちかけても通らず、メディアもほとんど報道をしなかった。一方で、苦しむ2世信者に衝撃と絶望を与えたのが安倍元首相の統一教会の集会へのビデオメッセージだったという。
銃撃事件以後の統一教会をめぐる報道で、鈴木さんは自分の持っているデータを惜しみなくマスコミに提供。取材はパズルのピースを埋めていくようなもので1人では埋めきれない。大手メディアの組織力をいかして報道してほしいからだ。そして自民党の自主点検についてはとても調査と言えるものではないと手厳しい。アメリカのトランプ前大統領やペンス前副大統領が安倍元首相と同じような集会でメッセージを寄せて現金を受け取ったとされているのに、安倍元首相には金銭が渡っていないのか、など実態の解明はされていないとして、本来なら第三者機関が調査するべきだという。
裏金との関係は
自民党安部派を中心にした政治資金の裏金問題は政権を激震させているが、鈴木さんは、この問題も統一教会の問題と別のものではないと指摘する。「安部派の国会議員の中には選挙の時に統一教会の人間が派遣されたとされる。思った以上に食い込んでいるので、派閥のパーティ券を統一教会の信者が購入することもあったのではないか。裏金問題と統一教会との関係はもっと追及されるべきだ」と強い口調で述べた。そして私たち市民ができることは有権者として、投票率を向上させ、選挙でカルトの影響を排除していくことだと呼びかけ「有権者の投票行動に必要な情報を提供していくのが私の役割です」と講演を結んだ。
講演後、2月に入り新たに、統一教会問題を主管する盛山正仁文科相が21年の衆院選で教団の関連団体から支援を受けていたことが明るみに出た。鈴木さんが繰り返し語るように統一教会の問題はまだ決して終わっていない。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年2月25日号