2024年04月23日

【JCJ北海道支部トークイベント】「ドキュメンタリーが面白い! テレビ局はなぜ映画を作るのか 道内民放3局の制作者が語る」5月26日(日)午後5時30分から8時 札幌市

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 道内民放3局が制作したドキュメンタリー映画が、昨年から今年にかけて相次いで公開されました。HBC北海道放送の「ヤジと民主主義」、UHB北海道文化放送の「新根室プロレス物語」、HTB北海道テレビ放送の「奇跡の子 夢野に舞う」。いずれもテレビドキュメンタリーとして放送した作品を映画化し、高い評価と人気を得ました。日ごろライバル関係にある3作品の制作者が、放送局の垣根を越えてドキュメンタリーの面白さや映画化の難しさ、その意義と可能性などを語り合います。最初に3作品の予告編を上映します。

〈開催要項〉
■開催日時 :2024年5月26日(日)午後5時30分〜8時(終了予定)※オンラインでの中継はありません

■登壇者:
 ・「ヤジと民主主義 劇場拡大版」監督------山ア裕侍さん 
HBC報道部デスク。主な作品に「命をつなぐ〜臓器移植法施行から10年・救急医療の現場から〜」「赤ひげよ、さらば」「クマと民主主義」「ネアンデルタール人は核の夢を見るか」「性別は誰が決めるか〜『心の生』をみつめて〜」「閉じ込められた女性たち〜孤立出産とグレーゾーン〜」など。民間放送連盟賞、ギャラクシー賞、文化庁芸術祭賞、放送文化基金賞、文化庁芸術選奨など受賞。

 ・「新根室プロレス物語」プロデューサー------吉岡史幸さん
UHB取締役・株式会社オーテック社長。主な作品に「平成開拓民」「誰が命を救うのか〜揺れる医師法17条」「浅草レッサーパンダ事件の深層」「石炭奇想曲」「ニュースの現場」「バッケンレコードを越えて」「聴覚障害偽装事件」「17歳の先生」など。民間放送連盟賞、ギャラクシー賞、放送文化基金賞、地方の時代映像祭、FNSドキュメンタリー大賞など受賞。

 
 ・「奇跡の子 夢野に舞う」監督------沼田博光さん
HTB報道部デスク。主な作品に「カムイの鳥の軌跡」「聞こえない声〜アイヌ遺骨問題 もう一つの150年」「アイヌの誇り胸に〜受け継がれしエカシの言葉〜」「たづ鳴きの里」など。科学放送高柳賞最優秀賞、科学技術映像祭内閣総理大臣賞、ギャラクシー賞、NYフェスティバルド・キュメンタリー部門優秀賞、独ワールドメディアフェスティバル・ドキュメンタリー部門銀賞など受賞。

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2024年04月22日

【焦点】ガザで実証済みAI兵器 イスラエル新興輸出へ 民間人犠牲者の急増必至=橋詰雅博

 AI技術先進国のイスラエルでは新興企業が自ら開発した各種AI兵器の輸出に乗り出している。これらの兵器はパレスチナ自治区ガザでハマスと戦闘を続けるイスラエル軍に提供したもので、実証済みであることがセールスポイントだ。
 例えばスマートシューター社の代表製品は、標的を自動識別する装置。イスラエル軍は「ハブソラ(福音)」と名付けており、英陸軍は小型のものを小銃に装着してドローン撃墜する訓練を行っていると英BBCは報じている。

 空爆・砲撃の標的を自動的に数多く設定する「ハブソラ」はどれほどの威力なのか。イスラエルが「鉄の剣」作戦と名付けた今回のガザ戦争について1月13日JCJオンラインで講演した元朝日新聞記者の中東情勢ウオッチャー・川上泰徳氏はこう語った。
 イスラエルネットメディア「+792マガジン」の調査報道によると、イスラエルがガザを攻撃した過去の事例では、08年の1日平均標的数は155カ所、14年は122カ所、21年136カ所だったが、23年は429カ所。過去3回の1日平均138カ所に対して今回はその3・11倍にもなる。
 情報部員は「数万人の情報部員では処理できなかった膨大な量のデータを処理するハブソラはリアルタイムで標的を示す」「ハマス幹部への攻撃の巻き添えで許される民間人の死者は数百人にまで増加した」と述べた。
 
 この結果、どうなったか。世界保健機構によると、08年、14年、21年の女性・子どもの死者は38%から41%で、非戦闘員の男性が60%に対して23年は女性・子どもの死者は69%に達し、男性が30%で、過去3回と逆転している。

 ハマスを「人間の顔をした動物」(ガラント国防相)ととらえるイスラエルのガザ攻撃は民間人も対象にした「ジェノサイド(集団殺害)だ」と川上氏は断罪した。
 AI標的システムの拡大は紛争地での民間人の犠牲者を大きく増やすことになるだろう。

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2024年04月21日

【JCJオンライン講演会】出稼ぎ売春現代のからゆきさん℃タ態と今後 5月11日(土)午後2時から4時 講師:松岡かすみ(フリーランス記者)

  
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■開催趣旨: 求人サイトを介して米国やオーストラリア、カナダなどへ日本人女性の売春をあっせんした男4人が警視庁に4月逮捕された。その女性の数は2021年ごろから3年間で200から300人に及ぶという。エスコートガールなどの名前で募集するこうした悪質業者を通さないで、独自で広げた富裕層の外国人顧客を相手に高収入を得る女性や現地のマッサージ店で日本の性風俗店の何倍も稼ぐ人も少なくない。
不法就労・国外退去の危険をおかしてまで海外に行くのはなぜなのか。衰退する日本を映し出す「出稼ぎ売春現代のからゆきさん℃タ態と今後」について『ルポ 出稼ぎ日本人風俗嬢』(朝日新聞出版新書2月刊行)の著者のフリーランス記者・松岡かすみ氏が報告する。

■講演者プロフィール:松岡 かすみ (フリーランス記者・まつおか・かすみ) 
1986年高知県生まれ。同志社大学社会学科卒業。PR会社、出版社勤務を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。21年からフリーランスとして、雑誌や書籍、ニュースサイト、ウェブマガジンなどのメディアを中心に活動。著書に『ルポ 出稼ぎ日本人風俗嬢』(朝日新書)。
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■参加費:500円
当オンライン講演会に参加希望の方はPeatix(https://jcjonline0511.peatix.com/)で参加費をお支払いください。zoomにてオンライン 記録動画の配信有り
※JCJ会員は参加費無料。
jcj_online@jcj.gr.jp に支部名を明記の上お申し込み下さい
■主催:日本ジャーナリスト会議(JCJ)
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2024年04月20日

【出版界の動き】読書バリアフリーに関する声明そして「本屋大賞」を考える=出版部会

 ◆日本ペンクラブなど3団体共同で
 芥川賞を受賞した市川沙央『ハンチバック』に、痛烈な出版界への批判が書かれている。
<出版界が障害者に今までしてきたことと言えば、1975年に文芸作家の集まりが図書館の視覚障害者向けサービスに難癖を付けて潰した、「愛のテープは違法」事件ね、ああいうのばかりじゃないですか>
 この「文芸作家の集まり」が日本文藝家協会。「愛のテープは違法」事件が解決するのは、35年後の2010年。この年に改正著作権法が施行され、公共図書館でも録音図書を製作する障害者サービスが著作権者の許諾なしにできるようになった。
 さて市川沙央さんの問題提起を真剣に受け止めた日本ペンクラブ会長・桐野夏生さんらは、2023年11月20日、市川沙央さんとオンライン対論<読書バリアフリーとは何か――読書を取り巻く「壁」を壊すために>を行った。
 これを機に他の2団体にも呼び掛け、4月9日、日本ペンクラブ、日本文藝家協会、日本推理作家協会の3団体が、読書バリアフリーに関する共同声明を発表した。 
 「障害者にとって『読書』をする手段は100年以上も前からあったにもかかわらず、未だに読みたい本を読むために長く待つことを強要されたり、読む手段を奪われたりすることさえあります」と問題提起。
 表現に携わる者として、読書バリアフリー法(19年6月施行)、改正障害者差別解消法(24年4月施行)、障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法(22年5月施行)に賛同の意を表するとし、「私たちは出版界、図書館界とも歩調をあわせ読書環境整備施策の推進に協力を惜しみません」と宣言している。
 声明の意義は、極めて大きい。文字や表現に携わる者が読書バリアフリーに目を向け努力する契機となり、歴史的意味を持つものと言える。

◆本屋大賞の意義が進化遂げる
 2024年の本屋大賞に宮島未奈『成瀬は天下を取りにいく』(新潮社)が受賞。25万部を増刷し、発行部数41万5000部となる。続編『成瀬は信じた道をいく』も増刷し、2冊の累計発行部数は55万部を超える。
 中学2年生の主人公・成瀬あかりが、破天荒な言動を続けて周囲を驚かせる。自分を偽らないで突き進む成瀬の言動が、読者の共感を呼んでいる。そこには「女による女のためのR-18文学賞」が果たしている役割も見逃せない。
 女性による作品が、続々とノミネートされ、書店員の思いを込めた作品が本屋大賞を受賞している。これまで文学賞といえば、出版社が強烈にプッシュした作品が受賞し、人気作家に権威を与える賞になっていた。それに対抗するかのように発足した「本屋大賞」が、いまや書店員も読者も作者も誰もが幸せな気持ちになる賞へと進化している。

◆貧弱な学校図書館の公的援助
 2023年度の学校1校あたりの年間図書費は小学校46万円・中学校61万円。あまりにも貧弱ではないか。学校図書館用の新聞購読費については「予算化している」が44.5%。学校司書の配置については予算化しているが69.3%。残り30%は学校司書を配置していない現状が浮かび上がった。
 また学校図書館が「電子書籍」や「電子新聞(有料デジタル版)」の購入費を予算化しているかについては、いずれも「今年度予算化の予定はない」が94%を占めた。

◆電子コミック驚異的な伸長!
 3月の電子書籍の総流通額は前年同月比14.2%増となった。ジャンル別では「縦スクロールコミック」の伸びが驚異的で同214.8%増となった。2022年4月期から配信を始めてから大きな成長率が続いている。
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2024年04月19日

【オピニオン】裏金事件の裏側では 戦争のできる国へ着々=丸山重威

 安倍派出席幹部らの弁明は、「知らなかった」「記憶にない」の大合唱。岸田文雄首相と自民党が「国民への説明」とうたった衆参両院の政治倫理審議会は、開催や誰が出るのか綱引きを含め裏金事件「幕引き」狙ったセレモニーすぎなかった。その間にも秘密保護法の特定秘密を拡大し、罰則付きで民間も対象とする経済安保保護法案や、安保3文書に基づく大軍拡路線推進が狙いの新有識者会議の初会合(いずれも本紙2月号参照)など、看過できない様々の動きが進んだ。
 その代表的な事例が、日本が英国、イタリアと進めている「次期戦闘機共同開発」であり、イスラエルからのドローン導入などだ。日本はポツダム宣言以降、常に「軍事紛争不介入」の憲法原則世界に訴えてきた。だがこれらは防衛費を5年間でGDPの2%にするなどの軍拡路線下でこれまでの日本の憲法原則を大きく逸脱した決定だ。
 しかし、こうした具体的な「政策」が、議論もなく進められ、メディアはそれをチェックしてではなく、決まったきとをただ報じているだけに陥っていることこそ大問題だろう。

戦闘機共同開発
兵器輸出国へ
 戦闘機の共同開発問題は、実は2022年12月に発表され、23年には事業管理の国際機関(GIGO)設立条約に署名が行われた。与党間協議で、「共同開発した武器を直接第三国に売れるかどうか」がさすが問題になり、公明党が難色を示した。しかし、結局「次期戦闘機の共同開発は我が国の安全を確保する上で中核となる」とし「防衛装備品移転3原則」と運用指針を改定、「限定的」といいながら、殺傷兵器の開発、輸出にも道を開いた。

 岸田政権は3月22日にも閣議決定する予定だという。
 同政権は昨年12月には、日本企業がライセンスを得て生産した地対空ミサイル「パトリオット」を米国に輸出可能としており、救難、輸送、警戒、監視、掃海の5類型について、殺傷兵器の輸出を認めている。
共同開発の戦闘機輸出については公明党は「政府の方針が国民に届いていない」と「抵抗」したが、押し切られたという。
もともと、22年末の安保3文書改訂を受けた「武器輸出3原則」は国会論議もなく決められ、「軍事産業支援法」ができて、日本は「世界の兵器廠」路線を歩もうとしている。それで本当にいいのだろうか。

イスラエル製
ドローン導入
 3月12日の参院外交防衛委員会で、共産党の山添拓氏は政府がイスラエルから、小型無人攻撃機(攻撃型ドローン)の導入を計画している事実を明らかにし「ジェノサイド(集団殺害)が指摘される中、イスラエルの軍需産業を支えるなど絶対にやってはならない」と批判した。
 これは、今年1月下旬から2月に、日本が実証のための実機として7機のドローン導入を契約。うち5機がイスラエル製だったというもの。  
 防衛省は、「実証で求める機能・性能を満たし、一般入札で競争性を担保した」と答弁したが、中には、落札額1円のものもあったという。 

 3月末までの実証試験に約100億円の税金が使われるといい、イスラエルを潤していることになる。報道によると、このイスラエル製ドローンの輸入代理店には、「日本エヤークラフトサプライ」「海外物産」「住商エアロシステム」「川崎重工」などが代理店契約をしており、日本商社の兵器ビジネスは広がっている。
           JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年3月25日号
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2024年04月17日

【シンポジウム】メディアの姿勢問うシンポ 沖縄の声 全国に届けよ=古川英一 

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 2月の沖縄はもう上着がいらないような温かさ、辺野古・大浦湾の海は薄曇りながら穏やかできらきらと輝いていた。しかしその海の一角に埋めたてのための平たい作業船が視界に入る。去年の12月に福岡高裁が国の代執行を認める判決を出し、これを受けて今年から大浦湾での工事が始まった。1年ほど前に訪れた時、こうした光景だけは見たくないと強く思ったのだか・・
  ◇
 昨年夏、地元の環境グループや米軍基地に反対する市民らが立ち上げた「沖縄・琉球弧の声を届ける会」。活動の柱は、基地問題を始め沖縄の抱える問題を、メディアにもっと全国に発信するよう求めていくことだ。だから会のスローガンも「メディアは全ての人権のため隠された真実を暴け」といまのメディアの姿勢を厳しく問うている。JCJもその呼びかけに応じ、賛同団体に加わっている。
 今回の沖縄訪問は、同会が2月18日に開催した「辺野古新基地問題を考えるシンポジウム」参加が目的。その前日企画のバスツアーで辺野古を巡った。

 辺野古新基地 
 建設巡り討議

 沖縄大学でのシンポジウムでは各分野の4人が、辺野古新基地を多角的に論じ合った。その要旨を紹介する。
●真喜志好一さん(沖縄平和市民連絡会共同代表)政府は普天間飛行場の危険性を除去するために、辺野古への新基地移転が唯一の解決策だと主張している。しかし米軍の文書を調べると米軍が1966年当時、米軍には辺野古に基地を作る構想があった。一方、普天間飛行場は、「滑走路のそばのクリアゾーンに住宅などがあってはならない」とする米軍の安全基準にも合わない。2006年、当時の伊波・宜野湾市長はこれを指摘し、「安全不適格宣言」を発した。
 私たちは日米両政府から騙されてはならない。普天間の危険性の除去は普天間の運用を停止しかない。そのための交渉を米政府と行うことが、私たち沖縄の主張だ。
●吉川秀樹さん(ジュゴン保護キャンペーンセンター)米国政府は辺野古をどう見てきたかの視点から考えたい。辺野古・大浦湾海域は、米国のNGOがホープスポットに認定したほどのジュゴンやアオサンゴなど約260種類の絶滅危惧種を含む約5300種が生息する生物多様性の宝庫。7万1千本の杭を軟弱地盤に打ち込む工事が環境に影響がないわけがない。また、米軍自体が「いつできるかわからない基地は戦略的なものにはならない」と懸念を示していることが情報公開でわかった。
 代執行が行われても「ポスト代執行」の取り組みが展開できる。日本政府や米の連邦議会、国際社会に辺野古・大浦湾の生物多様性を守る重要性を訴えていきたい。
●浦島悦子さん(ヘリ基地いらない二見以北十区の会共同代表)闘いは辺野古・大浦湾から始まった。30年近く地を這うような声を出し続けてきた。当初反対運動の先頭にいたおばぁたちの多くは旅立ってしまった。「海は命の恩人。基地に売ったら罰が当たる」「子や孫たちに戦争の哀れは二度とさせたくない」という言葉を引き継いでいかなければならない。自然は未来世代の生きる基盤である。
●徳田博人さん(琉球大学人文社会学部教授)辺野古訴訟では、日本は本当に民主的法治国家なのかと疑問がわく。日本国憲法は統治者が人々を支配する道具としての法を否定し、法の支配の原則を取り入れている。しかし代執行の取り消しを求めた沖縄県への去年12月の福岡高裁の判決は、政府の辺野古新基地建設強行への追随で司法の機能不全を示している。そして国自身が法の支配の原則を破壊している。
 最高裁での上告審では、憲法問題として審理を促し、玉城知事に意見陳述の機会を与えてほしい(*その後3月1日までに最高裁は沖縄県の上告を退け、沖縄県の敗訴が確定した)。辺野古新基地阻止の闘いは、政府や裁判所の問題点を暴露し、沖縄から日本、東アジアの平和をも実現するもので、追い込まれているのは日本政府なのだ。

 メディアへの
 憤りと期待と

 当日会場に集まった110人あまりの市民は(オンラインでの参加は約70人)、パネラーの話に熱心に聞き入っていた。 
 最後に、「届ける会」共同代表の桜井国俊さんが挨拶に立った。「いま沖縄は新たな戦前に直面している。米軍基地だけでなく、自衛隊の基地や施設も作られていく。有事の際は、日本が沖縄を捨て石にしようとしている。沖縄戦の再来は許されない。こうしたことの原因の一つに日本のメディアの状況があるのではないか。政府へのメディアの忖度、沖縄の厳しい現状に本土の人たちはまるで知らんふりだ。状況を変えていかなくてはならない。メディアをターゲットにした活動を続けていきたい」

 桜井さんの言葉からは全国メディアの不甲斐なさへの憤りと、痛いほどメディアへの期待が伝わってきた。本土でメディア・ジャーナリズムの一端に携わる者として、何をしていくべきなのか、ずしりと重い宿題が課せられている。
       JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年3月25日号
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2024年04月16日

【寄稿】「テレビ輝け!市民ネットワーク」の挑戦 政権が圧力 萎縮する一方 市民が株主 局を支える 定款への追加など提案=前川喜平さん

 
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 昨年9月、大阪の弁護士・阪口徳雄氏から1通のメールが来た。民間テレビ局に政権への忖度をやめさせる運動を起こすから参加しないかという。私は全面的に賛同し、田中優子・法政大学前総長とともに「テレビ輝け!市民ネットワーク」(以下「市民ネットワーク」)の共同代表に就いた。今年2月5日には、田中氏と私、事務局を務める梓澤和幸弁護士が設立発表の記者会見をした=写真=。

民主主義は
回復不能に

 運動の背景には、近年のテレビが報道機関の役割を果たしていないという問題意識がある。政府が隠そうとする真相を抉り出し、真剣な議論を喚起するような報道をしてほしいのだが、政権の圧力を受けてテレビの報道はどんどん委縮してきた。報道の自由の危機は平和と民主主義の危機だ。現状を放置すれば、政府はさらに戦争準備を進め、この国の民主主義は回復不能に至る恐れがある。

 市民ネットワークでは、テレビ各局の幹部・労働者と市民・視聴者との対話を重ねるとともに、市民が株主となって具体的な株主提案を行い、応答を求めていく。メディアに株主提案を行う運動は日本で初めての試みだ。

電波停止は
大臣が判断

 私は2022年11月、「市民とともに歩み自立したNHK会長を求める会」の推薦するNHK会長候補になったが、今回は民放について同じ思いで運動に参加している。
 放送法4条は放送番組の編集に当たって拠るべき規範として「政治的に公平であること」などの4項目を掲げている。これらは本来放送事業者が自律的に遵守すべき規範だが、政権はそれを放送を取り締まる根拠にしようとする。それは一連の高市早苗総務大臣(当時)の答弁に表れた。
 2015年5月の参院総務委では「一つの番組のみ」でも「極端な場合」には「政治的に公平であることを確保しているとは認められない」と答弁。16年2月の衆院予算委では、放送事業者が放送法に違反した場合の電波の停止について「可能性が全くないとは言えない」「その時の大臣が判断をする」と答弁した。
 この「電波停止」発言には、田原総一朗、岸井成格、鳥越俊太郎、大谷昭宏、金平茂紀、青木理の各氏が異例の記者会見で抗議のアピールを行った。

 高市大臣の一連の答弁の背景に、14年から15年にかけて磯崎陽輔首相補佐官(当時)から総務省への強引な圧力があったことは、23年3月に流出した総務省の行政文書で判明した。磯崎氏は安倍首相の意を受け、個別の番組に干渉できる法的根拠を作ろうとしたのだ。

報道自由度
ランク68

 日本の悪状況は国際的にも認識されてきた。
 2017年6月には、国連人権理事会でデービッド・ケイ特別報告者が「日本では政府当局者がメディアに対して直接・間接的な圧力をかけることができる」として、報道の独立性を確保する法律改正の必要を指摘した。
 国境なき記者団が作る報道自由度ランキングで日本は2010年の11位から23年には68位まで落ちた。アジアでは台湾(35位)、韓国(47位)、パプアニューギニア(59位)よりも下だ。
 免許事業であるテレビ放送に政権が放送法の「政治的公平」を振りかざして干渉する時には、テレビ局が委縮することなく報道の自由を守って本来の使命を全うできるよう市民がテレビ局を支える必要がある。その役割を果たそうとするのが市民ネットワークだ。

当面の対象
テレビ朝日

 当面の対象をテレビ朝日にしたのは、この10年での状況の悪化が著しいからだ。それは早河洋氏が会長兼ⅭEOとして君臨する時期と重なる。早河氏は安倍氏や菅義偉氏と昵懇の仲だ。
 2015年3月27日の報道ステーションで事件が起きた。コメンテーターの古賀茂明氏が「菅官房長官をはじめとして官邸の皆さんからものすごいバッシングを受けてきた」と発言したのだ。早河会長らの意向で降板することを暴露し、同番組のプロデューサー(松原文枝氏)が更迭されることも明かした。安倍政権を批判して「I am not ABE」と書いたフリップを掲げた。
 この事件を問題視した自民党情報通信戦略調査会は、テレビ朝日の幹部を呼びつけて事情聴取した。聴取後同調査会の川崎二郎会長は「政府は停波の権限まである」と威嚇的な発言をした。
 経済部長に更迭された松原氏は、その後も報道ステーションで「独ワイマール憲法の”教訓”」という特集を制作してギャラクシー賞の大賞を受賞したが、老後資金問題で麻生太郎金融担当大臣の責任を追及したりしたため、ついに19年7月、イベント事業を担当する部長職に左遷された。

資質に疑問
見城委員長

 古賀氏の降板と松原氏の更迭・左遷は、政権の圧力が目に見える形で表れた一つの典型例だ。
見城徹・幻冬舎社長はテレビ朝日の放送番組審議会委員長を10年もやっている。安倍氏の熱烈な支持者で、数々の安倍PR本を幻冬舎から出している。早河氏と安倍氏の間をとりもったのも見城氏だと言われる。
 テレビ朝日が出資するAbemaTXには「徹の部屋」という見城氏の番組があった。17年10月衆院選公示日の2日前に見城氏は安倍首相を番組に招き「日本の国は安倍さんじゃなきゃダメだ」などと礼賛した。
 このような人物が居座っていること自体、テレビ朝日の政治的な公平性を疑わせるに十分だ。
 さらに見城氏には、番組を幻冬舎の本の宣伝に使っている疑いもある。
 テレビ朝日の株主総会ではこれまでも、見城氏の資質や松原氏の人事について、一部株主が質疑で追及してきた。今度は株主提案までやろうというのが市民ネットワークだ。株主提案に必要な300単元(3万株)の株式は確保されている。6月下旬の総会に向けて4月半ばごろに株主提案を行う予定だ。次のような議案を検討している。

 定款への追加が三点。第一は、役員と職員が干渉に屈せず報道の自由を守る努力をすること。第二は、政治の介入が疑われる事態があった場合は第三者委員会で調査し結果を公表すること。古賀氏の降板のような事態だ。第三は、放送番組審議会の委員と委員長の在任期間に上限を設け、番組制作に関与する者を選任しないなど第三者性を確保すること。見城氏のような特定の人物の影響力の増大を防ぐためだ。
第四の議案は、前川喜平を社外取締役にすること。政権に忖度、迎合、屈服しない経営が目的だ。
 1単元100株を買えば株主総会で議案に投票できる。多くの市民株主の参加を期待している。
   JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年3月25日号
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2024年04月15日

【おすすめ本】村山 浩昭 葛野 尋之 編『再審制度ってなんだ? 袴田事件から学ぶ』無実で死ぬ地獄看過できず 胸に響く伝説の裁判官の論考=梓澤和幸(弁護士)

 捜査機関による証拠ねつ造でえん罪が作られる。まさか!袴田事件第二次再審の静岡地裁決定、と差し戻し後の東京高裁決定はそれを指摘した。本書は裁判官出身の2名の弁護士と刑事訴訟法の研究者が具体的な事件をあげてえん罪の原因と再審法の改正をアピールする。必読の基本書だ。証拠開示、検察官抗告の禁止、裁判官の思い込みの解明、自白偏重の是正など。編者葛野尋之による、再審申立人への刑の執行停止(特に死刑)の提言は死刑再審の場合切実だ。本人が誰よりも知る無実のまま、命を奪われる地獄は看過できない。

 読者に問う。刑事裁判の報道論評で、裁判官の過ち批判の筆にためらいはないか。
 大川原化工機という事件(本書96ページ)では、無実を訴え続けた3人の被告が300日以上自由を奪われた。一人は癌を患い、獄中で他界した。検察の起訴取り消しでえん罪は明白となった。人質司法の、これはむごい一例だ。

 誰の責任か。警察、検察の捜査の過ちはメデイアで論評される。しかし勾留決定を繰り返し、医療のために有効な保釈申請を複数回却下したのは裁判官である。そこに踏み込み令状裁判官に取材を試みたジャーナリストは管見の限りいない。袴田事件の一審以来の確定判決の裁判官たち、再審請求を却下してきた裁判官たちに「どうお考えか。」と真摯に問いかけたジャーナリストはおられるか。

 判例時報2566号袴田事件特集号の巻頭に木谷明元裁判官の論考が掲載された。袴田再審の各審級の裁判長や、著名刑事裁判官の実名をあげて、裁判官の内面にまで筆を及ぼしている木谷明元裁判官の文章は、おそらくはご自身への内省もあるのではないか。胸をうつ文章である。
歳月が作り上げた袴田さんの苦渋の表情と突き抜けるような姉上の笑顔が語るお二人の人生の真実に思いを馳せよう。私たちの姿勢も体当たりのものにならざるを得ない。(岩波ブックレット960円)
      
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2024年04月14日

【オピニオン】広島平和公園との姉妹協定 真珠湾 まさに戦争記念館 戦争づくしの地ならし=山根岩男(広島支部)

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                   潜水艦博物館
 昨年6月29日市民や市議会に何の説明もなく広島平和記念公園とハワイ真珠湾の「パールハーバー米国立公園」の姉妹公園協定が結ばれた。平和公園の象徴「原爆ドーム」の世界遺産登録に強く反対した米国がなぜ、広島に姉妹公園協定申し入れをしてきたのか――。

 私を含め5人のメンバー広島県被団協(佐久間邦事長)平和公園ガイド団有志は1月20日から24日、「パールハーバー米国立公園」を訪れた。
 百聞は一見に如かず。米国ハワイ州の同公園所在地は米国インド太平洋軍のパールハーバー・ヒッカム統合基地で、各施設はまさに「戦争記念館」だった。旅行会社の案内にも「軍事施設の一部」とあった。「入館」にあたっては、兵士のチェックを受けた。荷物の持ち込みは原則禁止(財布やスマホは透明な小袋に入れる)。ビジター・センターに入ると地面には世界地図が描かれ、音声ガイドは、「米国の命運は真珠湾にかかっている」と戦争に備える軍事態勢の重要性を強調していた。

 アリゾナ記念館は旧日本軍の真珠湾攻撃で海底に沈んだままの戦艦アリゾナの真上に、ちょうど十字の形になるように海面に浮かび、東京湾で戦争終結の調印をした戦艦ミズーリ号と向き合っていた。米国にとっての太平洋戦争の「始まり」と「終わり」を示しているかのようだ。

 太平洋潜水艦博物館には疎開学童が乗った「対馬丸」を撃沈した潜水艦ボーフィン号を係留され、艦橋には沈めた数が「日の丸」で描かれていた。館内には冷戦時代から現在、そして未来への核兵器・核ミサイル開発の歴史展示。目についたのは「WAR」の文字だ。「原爆の子の像」のモデルになった佐々木貞子さんの「折り鶴」もあったが、広島・長崎への原爆投下も放射線被害のの記述もなかった。 
 日ごろ核兵器のない世界をめざし広島平和公園で修学旅行生などに「ノーモア・ヒロシマ」「核兵器廃絶で平和を」と訴えている私たちガイドは、広島とパールハーバーの違いを痛感した。

 両公園の姉妹協定は、米政府が5月のG7サミットを機に強く広島市に締結を求めてきたものだ。広島市はサミット前に平和学習の教材から『はだしのゲン』と「第五福竜丸事件」を削除した。G7広島サミット開催を前に平和学習の教材から削除した。公園の姉妹協定締結後は、「未来志向の和解」を強調し、2024年度から若者・被爆者の「交流」を始めようとしている。
 広島市。教材改訂によって、米国による原爆投下の責任を棚上げにしたばかりか、広島市長は過去12年間にわたり、職員研修で「教育勅語」を引用してきた事実も明らかになった。

 この一連の動きは米国の原爆投下責任を免罪にして日米軍事同盟を強化し、現実に日米一体の戦争態勢づくりを進めるための地ならしにほかならない。広島市長による過去12年にわたる「教育勅語」の職員研修への引用と併せて市民への説明が求められる。

 JCJ広島支部は市民討論会を3月31日に開き、この姉妹公演協定を問う。討論は、教科書問題を考える市民ネットワーク・ひろしま、核兵器廃絶をめざすヒロシマの会(HANWA)とともに行い、後日、内容を詳報する。
     JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年3月25日号

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2024年04月13日

【好書耕読】ハンセン病者の現実と抒情=上丸洋一(ジャーナリスト)

  こんなはずではなかった。記者生活を終えたら、もっとのんびりと、肩のこらないエッセー集でも読んで日を送るつもりだった。
 ところが南京虐殺事件に手を出したために、それどころではなくなった。3年半かかって『南京事件と新聞報道』(朝日新聞出版)にまとめ、一息ついたところへこの欄への寄稿を依頼された。
 手にとったのが阿部正子編『訴歌』(皓星社)。『ハンセン病文学全集』(全10巻、2010年完結)に収録された短歌、俳句、川柳から3300余の作品を選んで出版された。購入したまま本棚に眠っていた本の一つだ。

 家族との別離、療養生活の喜怒哀楽、隔離と差別……。
 【またくると中折帽子をふりし父を待ちつづけきぬこの三十年】松島朝子
 【ひきつりし鏡の中の我がかほは憎しと思ふいとしとおもふ】柚木澄
 【再会を云はず夏帽大きく振る】天野武雄
 【帰りなば疎み嫌はるるは必定のその故郷をただに恋(こ)ほしむ】小山蛙村
 【病む吾とみまもる母の乗りたれば客車の扉に錠下ろされつ】山本吉徳
 すらすらとはとても読めない。一行読んでは本からしばし目を離し、衝撃を噛みしめては、また次の一行に目をおとす。
 【幼な子の己が病苦も知らぬげに遊べるさまのなほあはれなり】浅野日出男
 【追ひ来るを追ひ返し追ひ返し別れたる子が四十年ぶりに会ひに来ぬ】長谷川と志
 苛酷な現実を映す苛烈なる抒情。人はなぜ生き、なぜ<詠う>のか。そうした根源的な問いに向き合うことを、この本は読む者に迫る。
 【あなたはきっと橋を渡って来てくれる】辻村みつ子
 これが巻頭の第一句だ。この本の副題ともなっている。さあ、最初からもう一度じっくり読み返すとしよう。「肩のこらないエッセー集」は、そのあとでいい。
        
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2024年04月12日

【NHK】経営委 議事データ公開命令 文書開示訴訟で判決=小滝一志

 NHK「クローズアップ現代+」の「かんぽ生命保険不正販売問題」スクープへの森下俊三・経営委員長の介入を巡る「NHK文書開示等請求訴訟」で東京地裁は2月20日、森下委員長の議事録開示妨害、NHKの債務不履行を不法行為と認定。損害賠償とともに、経営委員会議事の録音データ公表をNHKに命じた。NHKは、判決を当日午後6時のニュースでは報じたが、7時のニュース、9時の「ニュースウオッチ9」では扱わず、森下氏と共に控訴。疑惑解明に背を向け続けている。

 スクープが大きな反響を呼んだ5年前の2018年、番組続編取材の動きを知った日本郵政の鈴木康雄・筆頭副社長(元総務事務次官)が、旧知の森下氏(当時、NHK経営委員長代行。元NTT西日本社長)と面談。郵政三社(日本郵政・日本郵便・かんぽ生命)が「犯罪的営業を組織ぐるみでやっている印象を与える」と強く抗議し、その後経営委員会に抗議文を提出した。
 森下氏はその後、「番組は極めて稚拙で取材をしてない」などと、郵政の意向を代弁する番組攻撃を展開。経営委員会での議論を主導して上田良一・NHK会長(当時)を「厳重注意」とし、その結果番組の続編は1年近く放送延期となった。

 森下氏の番組介入は2019年9月、毎日新聞が「経営委員会の議事録隠し」をスクープし、明るみに出たが、森下氏は議事録作成・公表を頑なに拒み続け、その後、経営委員長に昇格。放送法に様々に違反する森下氏の言動を憂慮し、百人を超す原告が訴えていた。
 森下氏が議事録などの公表を拒み続けた理由は、放送法3条の「放送番組は、何人からも干渉され、規律されることがない」違反のほか、経営委員の個別番組への介入を禁じた同32条、委員長に遅滞なく議事録作成・公表を義務付けた同41条違反などが明るみに出ることを恐れているからに他ならない。

 森下氏に「放送の自主自律」など念頭にないことは、判決後「(経営委員の個別番組への干渉を禁じた)放送法に違反していない、と総務大臣が言ってる」などと述べていることでも明らかだ。
 なぜこのような見識のない経営委員が選ばれるのか。NHK経営委員は国会の同意が必要だが、任命は内閣総理大臣。背景には安倍政権以降の恣意的な「お友だち」人事横行や、政権のNHK支配が強まっていることがある。

 国会の同意を過半数から3分の2に引き上げる、野党推薦枠を設けるなど政権の恣意を排除する改革が必要ではないか。さらに言えば、独立行政委員会制度の導入など、政権のメディアに対する干渉・支配を排除する制度改革も議論の時期に来ていると思う。
     JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年3月25日号
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2024年04月11日

【支部リポート】広島 松井市長に中止要請 「教育勅語」引用の講話=井上俊逸

 広島支部は2月16日、教科書問題を考える市民ネットワーク・ひろしま(教科書ネット・ひろしま)と連名で、広島市の松井一実市長に対し、新規採用職員や新任課長の研修で長年続けている「教育勅語」を引用した講話の中止を要請するとともに、教育勅語を評価する市長の見解をただす質問書を提出した。

 この問題が新聞報道で明るみに出た昨年12月、支部はいち早く松井市長に抗議し、教育勅語の不使用を求める声明を発表、市長に届けた。その後、教科書ネットをはじめ、さまざまな市民団体や被爆者団体、広島弁護士会などのほか、多くの市民個人からも同様の抗議や使用中止を求める意見が市には寄せられた。
 しかし、市長は今年1月の記者会見でも「私の考え方とかけ離れた議論になっている。どういったものかをちゃんと知ったうえで対処するという大切さを職員に分かってもらうために使っている」と抗議に反発。「教育勅語の英訳を読むと民主主義のすばらしいことが書かれている」などと言い、今後も研修で教育勅語の引用を続ける意向を示した。

 このため支部は、教科書ネットが開示請求をして入手した2020年度から23年度までの新任課長研修での市長講話の録画で、教育勅語を引用した部分の発言を同ネットとともに検証。浮かび上がった疑問点などを踏まえ、改めて松井市長に「教育勅語は戦後、国会において排除、失効確認が決議され廃止となっている。また、その文言は現憲法の理念・原則とは相容れないもので、憲法尊重擁護義務を負う公務員たる市長が公務員の研修に用いることは明らかに誤りである」と指摘し、研修での教育勅語引用をやめるよう申し入れた。

 併せて次の3点を質問し、文書による回答を求めた。
@引用した教育勅語のどこが民主主義なのか、具体的に説明をA教育勅語全文の結論となる言葉は「天壌無窮のわが帝位の繁栄を守り維持せよ」、つまり天皇のために命を捧げよと命じるものであり、部分的な引用では職員に誤った認識を与えるのでは?B教育勅語は英文が先にあり、それを日本文に、さらに漢文に訳したとする理解は事実誤認ではないか。

 これに対して2月29日付であった回答は、ほとんどまともに答えないばかりか、市長名ではなく研修センター長名の回答になっていた。支部と教科書ネットは抗議と再質問を行い、引き続きこの問題に取り組んでいくことにしている。
   JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年3月25日号

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2024年04月09日

【月刊マスコミ評・放送】NHK夜ドラ「つくたべ」にハマる=岩崎 貞明

  NHKの夜ドラ『作りたい女と食べたい女』シーズン2が2月末に終了した。原作マンガも読み、一昨年のシーズン1から入れ込んで視聴していた筆者としてはシーズン2への期待が大きかったが、結果としては予想以上の好番組だったと思う。

 料理が好きだが小食な野本さん(比嘉愛未)と、たくさん食べたい春日さん(西野恵未)の二人がたまたま出会い、仲良くなる話だが、グルメ番組かと思いきや、さまざまな社会的課題がドラマに盛り込まれている。女性が男性のために料理する、または女性はたくさん食べない、といった無意識の偏見や圧力にモヤモヤする感じを覚えるのがシーズン1だったが、シーズン2では、お互いの恋愛感情を自覚した二人が家探しをして、同性婚が認められていないことによる社会的な差別に直面するようすも描かれる。他人といっしょに食事することができない「会食恐怖症」の南雲さん(藤吉夏鈴)と、野本さんとSNSで知り合った矢子さん(ともさかりえ)も、ほぼ原作どおりのキャラクターとして登場する。
 演じている俳優陣がマンガのイメージにぴったりで、とくに春日さん役の西野恵未は、本業がミュージシャンでドラマ初出演だそうだが、朴訥で誠実そうな人柄が、まさに原作のキャラクターそのものの印象だった。

 原作にはないドラマオリジナルの存在は、野本さんの職場の同僚・佐山さん(森田望智)。ドラマでは彼女が野本さんの理解者の立場で、視聴者の気持ちを代弁するような役回りを演じていて好感が持てた。同性愛者ではない佐山さんが、同性婚が認められていない日本の現状に憤りを吐露するシーンなど、まさに「アライ(LGBTの支援者)」の重要性を社会に訴えている場面だったと思う。

 折しも、日本テレビ系のドラマ『セクシー田中さん』をめぐって、マンガ原作者とドラマ制作側との間で生じた問題で原作者が自死してしまうという、何ともやりきれない事件が起きたばかりで、原作と脚色の関係について考えさせられる事態となっている。この『つくたべ』は、そもそも扱っている題材が「性の多様性」のように極めてデリケートなテーマであることから、そのあたりは原作者や監修者などと制作陣が綿密にコミュニケーションを取っているようすがうかがえる。
 ゆざきさかおみ氏による原作マンガはまだ連載が続いている。ここはぜひ、ドラマの方も「シーズン3」の放送を期待したいところだ。
     JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年3月25日号

  
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2024年04月08日

【おすすめ本】中川 浩一『ガザ 日本人外交官が見たイスラエルとパレスチナ』―断ち切れぬ負の遺産 和平の困難さ詳細に=川上泰徳(中東ジャーナリスト)

 イスラエル軍のガザ攻撃の最中に刊行された本書のタイトルを見れば、ガザや、ガザのイスラム組織ハマス、またはガザ戦争についての情報を期待するだろうが、それは本書の中心ではない。しかし、悲惨な戦争に到るパレスチナとイスラエルの関係を理解するには有益な本である。
 筆者は外務省でアラビア語の研修後、1998年から駐イスラエル日本大使館のパレスチナ自治政府担当になり、ガザやヨルダン川西岸に頻繁に行き、自治政府関係者や主導したファタハの幹部らと接触し、和平を支える日本外交を現地で担った。しかし、2000年9月に第2次インティファーダ(民衆蜂起)によって和平の枠組みは崩れていった。

 筆者は2000年夏、当時のクリントン大統領の仲介でイスラエルのバラク首相とアラファト議長の首脳会談で、パレスチナ国家樹立を目指した最後の試みの失敗と、その後の和平が破綻する状況に外交官として立ち会った。第2章「中東和平が最も実現に近づいたとき」と第3章「和解の道見途絶えた」は本書の肝であり、若い外交官が見た貴重な歴史の境目を臨場感と共に伝えている。
 この経緯は、イスラエルの譲歩にも関わらず、和平を決断しなかったアラファト議長を責める言説が多い中で、パレスチナ側が呑めなかった背景や理由が記述され、和平の困難さについて読者の理解を助けるものである。

 パレスチナ人の暴力の原因に、彼らの生活を圧迫するイスラエルの入植地拡大があると指摘する。さらにパレスチナ人の暴力に対してイスラエルが戦車やミサイルを使って過剰に報復することがパレスチナ人のさらなる怒りを生み、事態を悪化させるという筆者の指摘は、現在のガザ戦争を考えるうえでも参考になる。(幻冬舎新書960円)
          
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2024年04月07日

【JCJ神奈川講演会】防衛大学校の実態は いじめ事件で神奈川支部例会 閉鎖的な環境 悪質かつ幼稚=保坂義久

                   
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 JCJ神奈川支部は2月23日、横浜市内で例会を開いた。テーマは防衛大学校いじめ事件と国賠請求訴訟。原告の代理人の田渕大輔弁護士=写真=が、裁判の経過と防衛大学校の実態について講演した。
 神奈川県横須賀市にある防衛大学校は自衛隊の幹部を養成する国の機関で大学ではない。学生は国家公務員となり、手当てが支給される。授業料は免除で全寮制。入学後4年間、共同生活を送る。
 防大の教育内容で特殊なものに「学生間指導」がある。上級生が下級生を指導するもので、将来の自衛隊幹部を育成するための教育・訓練として位置づけられている。
 神奈川の国賠訴訟の原告は2013年に防衛大学校に入学した。上級生たちからいじめを受け過呼吸を発症して、学内の病院で適応障害と診断された。
 進級してからも上級生によるいじめは続き、原告は次第に言葉を発することができなくなった。しかし、防大当局はなんら対応策を取らず、2017年に、原告は退校させられた。

 田渕弁護士は、この事案のポイントとして3点を指摘した。一つ目はいじめが学校という閉鎖的な環境で行われたため、証拠の壁がある。二つ目は身体に受けた傷はわかりやすいが心の傷は理解されにくい。原告は心理的な傷から言葉を発することが困難になったが、目に見える傷は負っていない。心理的な傷はこれまでも裁判上で軽く見られるケースが多い。3つ目は防衛大学校で起こった点だ。訴えられたいじめ行為は悪質で、また幼稚でもある。防大の卒業生の多くは、自衛隊幹部になる。自衛隊は殺傷能力のある武器を保有した軍隊。有事の時は、防大を卒業した幹部自衛官が、一般の自衛官に危険な任務を命じることになる。その時に人の気持ちや人の尊厳を全く考えられない幹部に多くの自衛官の指揮を任せていいのか。自衛隊は今のあり方が問われる。

 実際にはどのようないじめがあったのか。うどん2キロ分を完食させる「食いしばき」や仰向けにさせて腹部を踏みつける「腹ふみ」、学生間指導として、集団で罵倒する行為などがあったとしている。

 裁判は国と加害者の上級生1人を訴えたもの。防大の教官は原告に対しての不適切な指導を認識していたことが明らかで、安全配慮義務違反があったと原告は主張している。
 国家賠償法では公務員の職務遂行上の行為は個人として責任を負わないとされている。この上級生の責任が認められるかも争点の一つとなる。
 原告が言葉を発せられないことから、裁判も異例の方法で進行した。田渕弁護士は、原告が法廷ではパソコンを使って懸命に証言していること、加害者の上級生が証言したときは、過呼吸を発症したと、原告の心の傷の深さを語った。
 参加者は36人。   
   JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年3月25日号
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2024年04月06日

【映画の鏡】「飯塚事件」が問う司法の姿『正義の行方』当事者たちが語る真実と正義=鈴木賀津彦

                           
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          NHK
 インタビューで本音を引き出すには取材される側とする側の信頼関係がなければ実現しない。1992年に福岡県飯塚市で2人の小学1年女児が殺害された「飯塚事件」をめぐり、事件に関わった当事者たちの本音がガチでぶつかり合う展開は、ドキュメンタリーなのにまるでドラマを観ているような感覚になる。
 捜査に当たった元警察官、再審を目指す弁護士、地元紙の西日本新聞の記者ら立場を異にする当事者たちが、対立する「真実」と「正義」を語り、3者がぶつかり合う姿をそのまま提示しているのだ。それぞれの本音を引き出した木寺一孝監督の取材力のすごさが映像から際立ち、感服した。

 映画のキャチコピーには<これは私たちの「羅生門」>とある。羅生門?と疑問を持ったが、監督の説明に納得した。<ヒントは芥川龍之介の原作に題材を採った黒澤明の『羅生門』にある。登場人物の目線によって事件の見え方が変わり、観客がまさに「藪の中」に迷い込む演出は、海外では「羅生門スタイル」と呼ばれ、手法の一つとして定着している。><弁護士・元警察官・新聞記者の3者の「正義」をフェアに聞き取り、それぞれの考えを『羅生門』のように並べていこうと考えた>という。なるほど今求められているのは「何が真実なのか」を観る側が自分で考えることなのだ。

 死刑執行された元死刑囚の妻による第2次再審請求で、福岡地裁の判断が4月以降に出るという。再審が始まることになれば死刑執行事件で初となり、この国の司法の在り方が大きく揺らぐ。公開は4月27日から。
       JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年3月25日号
                   
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2024年04月05日

【出版トピック】書店・図書館関係者が読書普及に協力へ=出版部会

 出版市場の停滞や書店の減少、図書館の図書購入費の削減が続き、これらが複合しながら本離れが進む。この現状を打開し、いかに読書人口を増やすか、昨年10月に書店・図書館などの関係者および有識者が集まり、話し合いの場が設置された。4月1日に「対話の場」のまとめが公表された。その概要は以下の通りである。
 詳細は https://www.jpic.or.jp/topics/docs/f182a3155191ee900d0eb3171532639290b1f576.pdf を。

ベストセラー本の問題で
 書店や出版関係者の間では、公共図書館がベストセラーを大量に貸す「複本問題」への不満に加え、地元書店からの優先仕入れの推奨、図書館と書店が共存できるルールづくりの検討が求められていた。
 今回のまとめでは、図書館の新刊購入が書籍市場全体への売り上げに与える影響は小さいが、ベストセラー本の過度な複本購入は少なからず影響があるとした。
 地元書店からの図書購入については、ほとんどの図書館が地元で購入している。その一方、図書貸し出し用に本を装備するコストの負担、また値引きを求める自治体がある。その結果、書店側が十分な利益が得られないケースもあり、改善の必要があるとの意見が出された。

「図書館本大賞」創設も
 一方、図書館機能の評価として、入館者数や貸出冊数が重視されるあまり、ベストセラーの複本購入を促しているのであれば、多様な評価指標を取り入れるなどの対応も検討する必要がある。
 そのうえで、図書館や書店の連携モデルとして、本の注文ができる端末を図書館に設置することや図書館で予約した本を書店で受け取れる仕組みを作るなど、本へのアクセス向上を図る工夫が求められる。
 書店がない地域では、図書館が本を販売することも考えられる。さらに発注や在庫管理の簡便化を進め、未経験の若い人でも空き店舗に本屋を出せるような環境づくり、観光ホテルにライブラリーを設けるなど、書店以外でも気軽に本が閲覧・購入できるようにする案も出されている。
 司書らの投票によりお薦めの本を表彰する「図書館本大賞」を創設するアイデアも出されている。読書文化の普及に向けて検討できる事例が数多く挙げられ、各地の優れた取り組みを共有する重要性も指摘され、今後の活発な討議が期待されている。
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2024年04月04日

【おすすめ本】広野真嗣『奔流 コロナ「専門家」はなぜ消されたのか』─政府に都合よく使われた経緯と苦悩を暴く貴重な記録=杉山正隆(歯科医)

 2019年末、中国・武漢市で肺炎の集団発生で明らかになった新型コロナウイルス感染症。当時、私は香港で民主化活動を取材していた関係で状況を日本に伝え、感染症の専門家たちとも連絡をしあった体験が、昨日のように思い出される。
 本書は尾身茂、押谷仁、西浦博の3人への取材を中心にコロナ「専門家」の苦悩を纏めた貴重なノンフィクションである。

 この20年余、ありふれた風邪ウイルスである「コロナウイルス」が変異した感染症が多く発生した。SARS(重症急性呼吸器症候群)、MERS(中東呼吸器症候群)がそうで、感染症の専門家は新型感染症への国家的取り組みを、幾度となく求めてきた中でのコロナ新規感染症だった。
 想定した新規感染症ではあるが難しい対応を求められた。科学者として中立であるべきか、踏み出して積極的に政策立案やメディアへの出演等をすべきか。当時、総理大臣として君臨していたのが安倍氏である。菅、岸田氏と政権は変われど、コロナ専門家は都合の良いように使われ、国民は大きく混乱させられた。

 感染症の専門家が結集する国際エイズ会議では、米国の第一人者アンソニー・ファウチ氏が毎回のように講演やセミナーなどで発信していたが、私の30年来の取材対象であった尾身氏らは、参加すらしていないことが多かった。
 彼らがたいへん苦労したことは分かるが、他の選択肢もあった。トランプ前大統領に苦言を呈してきたファウチ氏を見るにつけ、コロナ「専門家」を作り上げた政府やメディアにも問題があったのではないかと感じる。(講談社1800円)
                
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