2024年04月06日

【映画の鏡】「飯塚事件」が問う司法の姿『正義の行方』当事者たちが語る真実と正義=鈴木賀津彦

                           
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          NHK
 インタビューで本音を引き出すには取材される側とする側の信頼関係がなければ実現しない。1992年に福岡県飯塚市で2人の小学1年女児が殺害された「飯塚事件」をめぐり、事件に関わった当事者たちの本音がガチでぶつかり合う展開は、ドキュメンタリーなのにまるでドラマを観ているような感覚になる。
 捜査に当たった元警察官、再審を目指す弁護士、地元紙の西日本新聞の記者ら立場を異にする当事者たちが、対立する「真実」と「正義」を語り、3者がぶつかり合う姿をそのまま提示しているのだ。それぞれの本音を引き出した木寺一孝監督の取材力のすごさが映像から際立ち、感服した。

 映画のキャチコピーには<これは私たちの「羅生門」>とある。羅生門?と疑問を持ったが、監督の説明に納得した。<ヒントは芥川龍之介の原作に題材を採った黒澤明の『羅生門』にある。登場人物の目線によって事件の見え方が変わり、観客がまさに「藪の中」に迷い込む演出は、海外では「羅生門スタイル」と呼ばれ、手法の一つとして定着している。><弁護士・元警察官・新聞記者の3者の「正義」をフェアに聞き取り、それぞれの考えを『羅生門』のように並べていこうと考えた>という。なるほど今求められているのは「何が真実なのか」を観る側が自分で考えることなのだ。

 死刑執行された元死刑囚の妻による第2次再審請求で、福岡地裁の判断が4月以降に出るという。再審が始まることになれば死刑執行事件で初となり、この国の司法の在り方が大きく揺らぐ。公開は4月27日から。
       JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年3月25日号
                   
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | 映画の鏡 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする