2024年04月14日

【オピニオン】広島平和公園との姉妹協定 真珠湾 まさに戦争記念館 戦争づくしの地ならし=山根岩男(広島支部)

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                   潜水艦博物館
 昨年6月29日市民や市議会に何の説明もなく広島平和記念公園とハワイ真珠湾の「パールハーバー米国立公園」の姉妹公園協定が結ばれた。平和公園の象徴「原爆ドーム」の世界遺産登録に強く反対した米国がなぜ、広島に姉妹公園協定申し入れをしてきたのか――。

 私を含め5人のメンバー広島県被団協(佐久間邦事長)平和公園ガイド団有志は1月20日から24日、「パールハーバー米国立公園」を訪れた。
 百聞は一見に如かず。米国ハワイ州の同公園所在地は米国インド太平洋軍のパールハーバー・ヒッカム統合基地で、各施設はまさに「戦争記念館」だった。旅行会社の案内にも「軍事施設の一部」とあった。「入館」にあたっては、兵士のチェックを受けた。荷物の持ち込みは原則禁止(財布やスマホは透明な小袋に入れる)。ビジター・センターに入ると地面には世界地図が描かれ、音声ガイドは、「米国の命運は真珠湾にかかっている」と戦争に備える軍事態勢の重要性を強調していた。

 アリゾナ記念館は旧日本軍の真珠湾攻撃で海底に沈んだままの戦艦アリゾナの真上に、ちょうど十字の形になるように海面に浮かび、東京湾で戦争終結の調印をした戦艦ミズーリ号と向き合っていた。米国にとっての太平洋戦争の「始まり」と「終わり」を示しているかのようだ。

 太平洋潜水艦博物館には疎開学童が乗った「対馬丸」を撃沈した潜水艦ボーフィン号を係留され、艦橋には沈めた数が「日の丸」で描かれていた。館内には冷戦時代から現在、そして未来への核兵器・核ミサイル開発の歴史展示。目についたのは「WAR」の文字だ。「原爆の子の像」のモデルになった佐々木貞子さんの「折り鶴」もあったが、広島・長崎への原爆投下も放射線被害のの記述もなかった。 
 日ごろ核兵器のない世界をめざし広島平和公園で修学旅行生などに「ノーモア・ヒロシマ」「核兵器廃絶で平和を」と訴えている私たちガイドは、広島とパールハーバーの違いを痛感した。

 両公園の姉妹協定は、米政府が5月のG7サミットを機に強く広島市に締結を求めてきたものだ。広島市はサミット前に平和学習の教材から『はだしのゲン』と「第五福竜丸事件」を削除した。G7広島サミット開催を前に平和学習の教材から削除した。公園の姉妹協定締結後は、「未来志向の和解」を強調し、2024年度から若者・被爆者の「交流」を始めようとしている。
 広島市。教材改訂によって、米国による原爆投下の責任を棚上げにしたばかりか、広島市長は過去12年間にわたり、職員研修で「教育勅語」を引用してきた事実も明らかになった。

 この一連の動きは米国の原爆投下責任を免罪にして日米軍事同盟を強化し、現実に日米一体の戦争態勢づくりを進めるための地ならしにほかならない。広島市長による過去12年にわたる「教育勅語」の職員研修への引用と併せて市民への説明が求められる。

 JCJ広島支部は市民討論会を3月31日に開き、この姉妹公演協定を問う。討論は、教科書問題を考える市民ネットワーク・ひろしま、核兵器廃絶をめざすヒロシマの会(HANWA)とともに行い、後日、内容を詳報する。
     JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年3月25日号

posted by JCJ at 02:00 | TrackBack(0) | 中国・四国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする