自民党の派閥裏金事件に端を発した「政治とカネ」の問題。連日大きく報じられているが、見過ごされているのは衆議院憲法審査会の動向だ。メディアはほとんど報道しないが、実は自民、公明、維新、国民民主などが一体となり改憲への作業を着々と進めている。
その突破口となっているのは国会議員の任期延長論だ。任期延長論と改憲、一見無関係に見えるが、大災害など自然災害やパンデミック(感染症の世界的大流行)を口実して、国家有事・武力攻撃(戦争)事態が起こったときも、適正な選挙の実施が困難と予想されるので、内閣の判断で半年又は1年(再延長ではそれ以上)任期延長を認めるよう憲法を変えようというものだ。自民党の中谷元筆頭幹事は、具体的な条文起草作業機関の設置を昨年12月に提案している。
改憲問題対策法律家6団体連絡会事務局長の大江京子弁護士はその本質をこう述べている。
「国会議員の任期延長論は、憲法に武力攻撃(戦争)を明記し、内閣の恣意的な判断で、民主主義の根幹であり、国民主権原理に基づく基本権である国民の選挙権を制限(停止)できるとする改憲です。非戦の憲法に堂々と『戦争』が書き込まれることとなり、国民主権と平和主義に大きな例外を認めるものです。(中略)戦争できる国づくりの一環という本質を持ったものです」(2024年4月20日新婦人しんぶん)。
日本では戦前「選挙を行うと挙国一致体制整備に疑いを生じさせる」という理由で1941年(昭和16年)2月に衆議院選挙が1年延期された。その間に国民の抑圧を可能にした国防保安法や治安維持法が制定改正され、反戦論を封じ込めた。その年の12月に米国との太平洋戦争に突入した。
22年末に安保3文書改定(防衛費の大幅増額や敵基地をたたく反撃能力保有など盛り込む)を閣議決定し、憲法9条に基づく専守防衛の基本を捨てた岸田文雄内閣は、バイデン米政権の意向に沿い対中国と戦う態勢を進めている。
自民党は国会議員任期延長を憲法に盛り込み、最終的に9条2項(陸海空軍その他の戦力は保持しない。国の交戦権は認めない)の改憲を狙う。国会議員任期延長改憲はその布石と大江弁護士は見ている。
国民の知らぬ間に危険な改憲すなわち戦争する国づくりが間近に迫る。いまこそ自由や平和な生活を奪う「軍拡・戦争準備」に断固反対の声を上げなければならない。