2024年05月01日

【おすすめ本】見たり聞いたり編さん委員会『見たり聞いたり 東海地方のマスコミ70年の歩み 』─メディアが果たした役割と影響を綿密に辿る=山本邦晴(JCJ東海・元共同通信社)

 東海地方のマスコミを対象とする業界紙「新聞報」が創刊70年を機に、新聞、放送、広告業界の出来事を振り返った。
 太平洋戦争の敗戦を経て恵まれた平和は、この地方でもブロック紙の中日新聞をはじめ、新聞の部数増をもたらし、ラジオ、テレビ放送各社の創設と拡大を促した。

 1951年に民放として、日本で初めてラジオ電波を発信した中部日本放送(CBC・名古屋)は、「中日新聞が中部地区の財界を巻き込んで設立にこぎ着けた」放送局だ。
 放送メディアは財界の輿望を担ってスタートしたといってよい。経済の高度成長と共に増え続け、1983年のテレビ愛知開局で主要なラジオ2波、テレビ5局が出そろった。

 新聞も2000年に中日新聞が270万部を超え、朝日新聞(地方版)は43万部とブロック紙並みの部数を誇り、1975年に中部地方への進出を果たした読売は19万部に伸ばした。新聞と放送が、この地方の社会・文化に大きな影響を与えたことは間違いない。
 しかし、バブル崩壊後の経済低迷とIT技術の進展による情報伝達の多様化は、新聞の部数急減と放送の広告出稿減を招き、マスコミ業界が大きな危機に直面しているのは、東海地方も同様だ。
 部数減の中でも高い信頼性を誇る新聞が「第4の権力を発揮すること」が未来につながるとの見方を示し、放送には「知的好奇心を満たす」ことが大きな役割だとして、IT技術を活用した業務の展開を期待する。
 <ビートルズ日本公演の主催者はCBCと読売新聞><さだまさしを全国区に押し上げた深夜放送の力>といったエピソードも紹介している。(三恵社2000円)
             
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posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする