◆ペンクラブが声明「国会の空洞化に抗議」
日本ペンクラブ(桐野夏生会長)は9日、「国会の空洞化に抗議します」と題する声明を発表した。その内容はペンクラブ内にある4つの委員会が、政府が進める法案や緊急テーマについて、危惧される課題や審議の不足などを指摘し警鐘を鳴らしている。
政策言論表現委員会は、「経済安保秘密保護法の廃案を求める」意見書をまとめ、秘密の範囲があいまいで、民間人の人権を侵害し、報道の自由に制約をかける恐れがあると指摘した。
獄中作家・人権委員会は、6月10日に全面施行される「改定入管難民法」の問題点を詳細に指摘し、外国人排斥・外国人嫌悪があることを深く憂慮すると表明した。
女性作家委員会は、「共同親権法」について、DV被害者を追い詰め、子どもの意思や権利が損なわれる法案であるとし、廃案を含め慎重かつ十分な国会審議を求める意見書をまとめた。
環境委員会は、原発の廃炉のめどさえ立っていないのに、再稼働を急ぐ政府や、気候変動、食糧自給、地域経済の疲弊、森林や海の異変など、重要な政治課題について、国民の合意を得るような議論が進んでいない。国会をはじめ、政治の活性化を訴えると表明した。
桐野会長は会見で、国境なき記者団が3日に発表した「報道の自由度ランキング」で、日本は70位だったことを挙げ、「日本の言論表現の自由が危機的な状況にある中で…いちばん議論しなくてはいけない国会の場で、最も言葉が軽くなり中身のある議論がされていないのではと危惧している」と訴えた。
◆日本の漫画5万点をAI翻訳で輸出へ
AI(人工知能)翻訳を使って日本の漫画輸出を5年間で3倍以上に増やす、官民共同の取り組みが始まる。小学館や経産省が所管する産業革新投資機構(JIC)系など10社は、AIで漫画を翻訳する新興企業に29.2億円を出資。翻訳速度を最大10倍に高めて漫画の輸出作品数を増やし、日本のコンテンツ産業の成長を促す。
AI翻訳を担う新興企業のオレンジ(東京・港区)が、7日に小学館などからの出資の詳細や漫画の輸出計画の概要を発表した(日経新聞5/6)。
漫画の吹き出しに特化して翻訳するAI翻訳には、これまで東京大学発ベンチャーで大日本印刷も絡んでいる「Mantra」が、1.5億円の資金を調達して発足している。主に集英社の漫画作品を多言語サイマル配信している。
今回の新興企業のオレンジが調達する資金額は「Mantra」の20倍。翻訳だけでなく、自ら海外向け電子書店の運営をするという(HON.jp News Blog 鷹野)。
◆「ツタヤブックストア」カンボジアに進出
日本の出版社・書店が海外進出を加速させている。CCCと双日の合弁会社「ツタヤブックス マレーシア」は、2034年までにカンボジアで「ツタヤブックストア」を6店舗出店する。その第一歩として、2025年にカンボジアの首都プノンペンで1号店をオープンする。
カンボジアは安定した経済成長を続け、今後も人口増加が予測されている。しかも通貨に日本国旗が印刷されるほど、親日国家であることを踏まえ、契約締結と「ツタヤブックストア」の進出が決定した。
これまでにCCCは台湾に計11店舗、中国本土に計12店舗、マレーシアに計2店舗出店している。今後はアジア太平洋地域におけるビジネスの強化を図る計画という。
◆「無書店」の自治体が全国で28%
この3月の調査によると日本全体で書店が一つもない「無書店」の自治体は、全国で27.7%(482自治体)を占める。1書店以下の自治体は47.4%(825自治体)に上る。書店や取次、出版業者らで作る出版文化産業振興財団(JPIC)の調査で判明した。
また日本書店商業組合連合会(日書連)の加盟書店数は2536店(4月1日現在)、前年比129店減、12店の新規加入があったが141店が脱退。加盟書店数は1986年の1万2935店をピークに37年連続で減少。組織の規模はピーク時の2割弱まで縮小している。
◆紙の出荷量ピーク時の半分 に
ペーパーレス化が進み、紙の需要は減少が続く。昨年度の国内出荷量は948万トン。初めて1000万トンを下回り、2007年度のピークからおよそ半分に落ち込んだ。
背景にあるのは、ペーパーレス化やデジタル化の拡大で、製紙業界やオフィス向けの複合機業界では、原材料の調達や生産面での技術協力などで提携する動きが進む。事業再編や業界再編の動きが加速するのは避けられない。