4月末、日本の新聞・テレビは、米報道に基づいて、イスラエルが「恒久停戦提案」と大きく報じた。パレスチナ・ガザ地区でのハマスとの「戦闘」についてである。米国などの圧力を受け、これまで一貫して応じてこなかった強硬姿勢を譲歩したというのである。「ハマスはきわめて寛大な提案を受け取った。速やかな受け入れを」とブリンケン米国務長官。
ガザへの激しい攻撃を続け多数の死者・犠牲者をだしながらの提案である。報道をよく読むと「恒久的停戦」とは「ガザの持続的な平穏」と表現されており、「戦闘終結が含まれる停戦は受け入れない」というのがイスラエル側の姿勢である。その後、仲裁国の修正がありハマス側は
その受入れを表明、イスラエルは「要求からかけ離れている」と避難民あふれる南部ラファ地域への攻撃を継続している。
昨年10月、ハマスのイスラエル攻撃から始まった「戦争」であるが、イスラエル側の無差別攻撃は度を越しており、南アフリカが国際司法裁判所に提訴したように、まさに「ジェノサイド」そのものだ。当初、イスラエルを全面支持し武器供与などの支援をしていた米欧諸国は国内外の強い批判を受けて、停戦を説くようになってきてはいる。だが、軍事的・政治的なイスラエル支援は不変である。
こうした状況を受け、コロンビア大学はじめ米国の大学で反戦運動が4月中頃から始まった。英・仏・加、豪など世界にも急速に拡大している。米学生たちはイスラエル関連企業への投資の停止、イスラエル支援組織・個人からの寄付拒否などを大学側に求めている。そのことによって「ジェノサイド」を止めさせるということらしい。
学生の行動に対し「反ユダヤ主義」だとする者たちが乱入したり大学執行部が警察を導入したりで衝突や負傷者や逮捕者がでている。5月3日には、米30以上の大学で1600人超の若者が逮捕された。バイデン大統領は「反ユダヤ主義・違法行為を認めない」と言い、トランプ元大統領は「素晴らしい」と大学での強制排除を称賛している。
コロンビア大学の学長は議会の公聴会に召喚され「反ユダヤ主義の運動を学内で許している」と尋問された。学生たちの行動に共感を示す教員たちの解職やバッシングも各地でおこっているという。
米国は第二次世界大戦後、自由と民主主義の国として世界に君臨してきた。上記の事例はその内実を赤裸々に示していると言わざるをえない。その米国にピッタリと寄り添ってきたのが日本の自民党政府である。4月初頭訪米した岸田首相は、日本は「世界のリーダーである米国のグローバル・パートナー」と、さらに踏み込んだ。
「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」日本国憲法前文を締めくくる言葉だ。この日本の理念、世界の宝を葬ろうともしている。日本のメディアよ、戦争直後の決意を思い出せ!