2024年06月16日

【内政】日本の民主主義の破壊 自民 地方自治法改正案=編集部

 岸田政権は「非常事 態」を名目に国の指示権 を拡大する地方自治法改 正案を国会に提出。連休 明けの7日、衆院本会議 で審議入りした。同法案 には「対等」なはずの国 と地方の関係を主従関係 に逆戻りさせ、国の意志 を地方に強要する武器に しようと狙う危険な思惑 が透けて見えている。
 「新しい戦前」を推し 進めるためのこの法案は、 戦前の反省から憲法92 条が明記する地方自治の 本旨「地方自治は国から 独立した団体によって運 営される」を内側から掘 り崩し、憲法を空洞化し て壊す「懐憲」法案に他 ならない。

「非常事態」
具体例答えず

 日本は、法的拘束力が ある「指示権」を個別の 法律で定め、国の「指示 権」の規定は災害対策基 本法や感染症法などにあ るが、地方自治法にはな い。あるのは「助言・勧 告」権だ。法案はこれを 地方自治体への「指示権」 にするのが目的で、政府 は、「重大事態時の国の指 示権拡大は新型コロナ禍 で個別の法で対処できな い事態が起きた教訓を踏 まえたものだ」とする。
 だが、政府は個別法で 対処できない「非常事態」 の具体的事例を説明せず 「現時点で想定しうるも のはない」(松本剛明・総 務相)と繰り返す。

個別法で対応
本当に不可能か

 「非常事態」が想定で きないなら改正の必要は ないし、指示権を規定す る個別法で対応できない 事態が存在するのかも、 そもそも疑問だ。
 今回の改正案は昨年 12月、岸田首相の諮問機 関「地方制度調査会」が 答申した「地方自治法上、 国が自治体に必要な指示 を行えるようにすべき だ」がベースだ。だが、 20年2月の大型クルー ズ船集団感染をめぐる混 乱は、未知のコロナウイ ルスへの国の対応と調整 遅れが原因だし、安倍首 相(当時)が、地方自治 体に事前の根回しもなく 独断で、全国の小中高と 特別支援学校に「一斉休 校」を突然要請。各地で 混乱を招いたことも記憶 に残る。それをすり替え、 国の指示が必要だとする のは本末転倒だ。

恣意的行使
懸念が拭えず

 岸田政権は@非常事 態なら国は個別法に規定 がなくても自治体に対策 実施を指示できるとする が、前提条件の非常事態 の範囲は曖昧だ。A国と 地方の関係を「対等・協 力」と定めた地方分権の 原則は維持とするが、指 示権は国と地方を「上 下・主従」関係に再編す る。B指示前には事前に 自治体の意見を求めると するが、単なる努力義務 だ。C国会承認や国会報 告義務付けは「機動性を 欠く」ので盛り込まない とした。これは「国会」 の役割を全否定し、日本 の戦後民主主義を根幹か ら破壊する暴挙だ。
 2012年の第2次 安倍政権以後、自民党は 数を背景に法をないがし ろにし、閣議決定による 政策決定を常態化。国会 を空洞化してきた。

 岸田首相は、就任直後 に「安倍政治の継承」と 「改憲」を掲げ、大軍拡 を推し進めてきた。地方 自治法改正案も明らかに それと連動する。私たち は、これを座して見過ご してはならないと呼びか ける。
     JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年5月25日号
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする