◆KADOKAWAは、6/8に起きたシステム障害について、その経緯と調査の進捗、今後の対応などの報告を15日発表した。「ニコニコを中心としたサービス群を標的として、当社グループデータセンター内のサーバーがランサムウェアを含む大規模なサイバー攻撃を受けたものと確認された」としている。
サーバーのシャットダウンという緊急措置を講じたため、ウェブサイトだけでなく、基幹システムの一部にも機能停止が発生し、書籍の流通に影響が出ている。完全な回復は6月末となる。
◆経産省が進める「書店振興プロジェクト」の方針に、書店の減少を食い止めるため、書店と図書館との連携による文字・活字文化の振興、および書店活性化が盛り込まれる見通し。12日に開催の第2回「車座会議」で外務相や文科相、また書店や作家からも発言があり、いかにして本の魅力を伝え、書店の活性化を図るか、活発な議論が展開された。
齋藤・経産相も注目すべき事例として、東京都狛江市で昨年閉店した啓文堂書店が、市民有志グループが起こした「エキナカ本展」などに呼応するため、6月27日に再度出店することになった事例を紹介した。
◆政府のクールジャパン戦略が5年ぶりに改訂され、これまで5兆円の予算を2033年までに20兆円に引き上げるという。その骨子のうち知的財産については、海外向けの作品流通と海賊版対策を2本建てにして展開、それにともなうクリエイター支援の実施が揚げられている。
特にマンガ(出版)については、スマートフォンの普及により日本マンガの人気は高まっている。海外での電子コミック売上げは約 3,200 億円(2022 年)と大きく増加、今後も拡大傾向が見込まれる。ただし現地版の発刊にタイムラグが生じるため、海賊版が横行する原因になっている。それへの対策が急がれる。
◆文化通信が6月17日から「こどものための100冊」キャンペーンを始める。子育て中の著名人や書店員、図書館員が選んだ<子どもの本100冊>を収載した冊子を、書店や図書館、保育園、子ども商品の通販などを通して15万部配布する。キャンペーンは今回で4回目。父兄や書店から好評で、子どもに本を与えるための参考になり、かつ書店の売上につながる好循環が歓迎されている。
◆「文学フリマ」って、知っていますか。文学好きが自分たちで作った作品を展示即売するイベントである。毎年、主要都市で開催されている。その来場者の多さと熱気はビックリするほどだという。文化通信の星野渉さんが、次のような一文を寄せている。
<老若男女が集まり、手作り感満載の冊子を販売。人気の書き手には行列もできる。今年12月に開く「東京39」は、出展応募の増加に対応して、これまでの東京流通センターから東京ビッグサイトに会場を移す。
「文学」でこれだけ人が集まるのかと思わされる。出版社社長は、本を読む人は一定数いるのに届いていないのではないか、と感想を漏らした。いろいろなチャンネルで本の情報を届ける大切さを感じる>
◆有名人を登場させ、勧誘や取引を促す詐欺的なSNSやWEBが社会問題になっている。出版においても悪質な出版 Web サイトが見つかっている。出版のあっせんや販売の方法などを紹介する詐欺から身を守ることが肝心となっている。
著者と出版者の保護に取り組んでいるAmazonは、詐欺的手法について警鐘を鳴らし、アドバイスをしている。まずKindle ダイレクト・パブリッシングと、詐欺的なりすましサイトの違いを特定し、詐欺から身を守るために、KDP Community にアクセスしてくださいとのこと。
◆講談社 本田靖春ノンフィクション賞 最終候補作品
大森淳郎『ラジオと戦争─放送人たちの「報国」』 NHK出版
春日太一『鬼の筆─戦後最大の脚本家・橋本忍之栄光と挫折』文藝春秋
木寺一孝『正義の行方』 講談社
宋恵媛+望月優大+田川基成(写真)『密航のち洗濯 ときどき作家』 柏書房
乗京真知『中村哲さん 殺害事件実行犯の「遺言」』 朝日新聞出版
森合正範『怪物に出会った日─井上尚弥と闘うということ』 講談社