2024年07月21日

【おすすめ本】神野 直彦『財政と民主主義 人間が信頼し合える社会へ』―市場と為政者に委ねて良いのか 民主主義の危機を問う=友寄英隆(経済研究者)

 本書は、「あとがき」で述べているように、著者が網膜剥離と言う視覚障害の危機をのりこえて、渾身の思いをこめてまとめた一書である。  

「財政と民主主義」というタイトルであるが、狭い意味の財政問題の書にとどまらず、日本の経済と民主主義のありようを根源から問い直し、人間らしく生きられる社会を構想したスケールの大きな新書である。

 序章の「経済危機と民主主義の危機」と第1章の「『根源的危機の時代』を迎えて」では、新自由主義の浸透による格差と貧困、環境破壊などについての、著者の時代認識が示されている。
 第2章の「機能不全に陥る日本の財政」では、コロナ・パンデミックが日本財政の矛盾を白日のものにしたことが分析され、続く第3章「人間主体の経済システムヘ」ではスウェーデンの「参加型社会」と対置することによって、岸田政権の「人間不在の『新しい資本主義』論」を厳しく批判する。

 具体的な財政分析という意味では、第4章「人間の未来に向けた税・社会保障の転換」は説得力がある。日本財政の歪み、矛盾、改革の方向が描き出されている。財政民主主義のあるべき方向として、中央政府、地方政府、社会保障基金政府からなる「三つの政府体系」に再編成することが必要だと主張する。

 著者は最後に「本書では、共同体意識に裏打ちされた社会の構成員が、自分たちの運命を自分たちで決定できる共同意思決定空間を下から上へと積み上げて、代表民主主義をも活性化させる途を模索してきた」(243n)と述べている。この文言が評者には重く響いて残った。(岩波新書1000円)
「財政と民主主義」.jpg

posted by JCJ at 02:00 | TrackBack(0) | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年07月20日

【焦点】子どもの万博動員≠ウらに拍車、大阪で無料専用列車も 夢洲は依然ガス爆発危険性あり=橋詰雅博

 2025年4月に開幕予定の大阪・関西万博では、大阪府・市は万博への学校単位での子どもを無料で招待する事業を進めている。バスの数の不足や地下鉄の混雑問題などで会場までの交通手段確保の課題を解消するため大阪の横山英幸市長は、校外学習での利用を目的とした「子ども専用列車」の運行を大阪メトロと協議していることを今月に明らかにした。これを受けて大阪府の吉村洋文知事も「協力していきたい」と賛同。実現となればこれも無料招待となる。

 これまで国公私立校を対象とした関西6府県の万博子ども無料招待事業の中身と予算額はこんな具合だ。
●大阪府=4歳から高校生(人数約102万)19億3千万円
●兵庫県=小中高校生(約56万)8億(このうち一部は県内企業による寄付)
●京都府=小中高校生(約25万)3億3千4百万
●奈良県=小中高校生(約12万7千)1億7千万
●滋賀県=4歳から高校生(約18万)4億から5億
●和歌山県=小中校生(約6万7千)1億8千万

 この事業に関西6府県は合計約38億円を投じる見込み。これに「子ども専用列車」の費用が上乗せされる。どのくらいのお金がかかるのかはわからないが、かなりの額だろう。
 「いのち輝く」をテーマにした万博のすばらしさを子どもたちが体験できるなら多額の税金をかける価値は十分にあるが、問題は会場だ。
 3月に工事現場で、土壌から発生したメタンガスに溶接の火花が引火し爆発する事故が起きた。事故現場はトイレ設置予定地。コンクリート床約100平方bが損傷した。付近には受付ゲートや飲食ブースなどが予定されており、来場者が多く集まる場所だ。

 会場の夢洲(ゆめしま)は今も使われているごみの最終処分場。しゅんせつ土砂やPCB・ダイオキシンなどの有害物質が埋められている。メタンガスは引火しやすく、爆発の危険性がある。このため当初から問題視されていた。2月から5月の間には基準値を超えるメタンガスが76回も検知していたと日本国際博覧会協会が6月下旬に明らかにしている。

 協会は開催中毎日ホームページで測定値の公表を検討するとしているが、根本的な対策はないようだ。こんなメタンガス爆発の危険性がある会場に子どもたちを入場させるのは、「いのちの危険」の恐れがある。

 それなのに文部科学省は全国の学校へ修学旅行先として万博をすすめる通達を出している。危険性を知ってか知らずか、来年の修学旅行は万博と決めた千葉県や福島県の学校もある。
 関西の無料招待事業も修学旅行先通達も政府が音頭を取る万博動員<vランの一環だ。
 子どもが犠牲になったら誰が責任をとるのだろうか。
 
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | 焦点 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年07月19日

【オピニオン】政府主導の改組に抗議 学術会議歴代会長が声明発表=編集部

 2020年の菅政権による学術会議会員候補者の任命拒否を契機に政府が進めている同会議法人化の議論に対し、歴代の学術会議会長6氏が6月10日、岸田首相に「政府主導の見直しを改めることを要望する」とした声明を発表した。

 前会長の梶田隆章・東京大卓越教授は、日本記者クラブでの会見で「日本の学術の終わりの始まりとなることを強く懸念する。極めて危うい」と述べた。
 声明には吉川弘之・東大名誉教授(工学)、黒川清・東大名誉教授、東海大特別栄誉教授、広渡清吾・東大名誉教授(法学)、大西隆・東大名誉教授(工学)、山際寿一・京大名誉教授(人類学)、梶田隆章・東大特別栄誉教授(物理学・ノーベル賞受賞者)の1997年の17期以降、25期までの各会長が署名した。
 声明は、政府が進める「法人化」方針について、
20年に発覚した会員6人の任命拒否問題を「正当化するためと疑われる」と批判。会員選びに外部有識者が意見を述べる「選考助言委員会」設置案についても、「学術会議の独立性と自主性に手をつけるもの」だと懸念を表明。学術会議のあり方は、社会や与野党を超えて国会で議論すべきだとの考えを示した。

理由頑なに拒否 

 菅政権が、推薦された新会員候補者105人のうち、芦名定道・京大教授、宇野重規・東大教授、岡田正則・早大教授、小沢隆一・東京慈恵医大教授、加藤陽子・東大教授、松宮孝明・立命館大教授の6人の任命を拒否した問題は、同会議のほか90を超す学会団体が抗議声明を出すなど、広く反対運動が起きた。
 だが、政府は「任命拒否」の理由説明を拒み、その一方で役員任命や、委員会、分科会などの組織改革や「見直し」が必要だとして問題を学術会議の組織問題にすり替え、強引に改革論議を進め、「総合科学技術・イノベーション会議」の有識者懇談会から「学術会議の在り方に関する政策討議とりまとめ」を得て、内閣府の「日本学術会議の在り方についての方針」を発表。「法人化」の方針を決定した。

政府決定に懸念 

 一方、学術会議も今年4月「政府決定の『学術会議法人化に向けて』に対する懸念」を決議として発表。国の在り方や政府の政策への「基盤勧告機能」など「より良い役割」果たすための要件として@十分な財政措置A組織・制度の政府からの自律性、独立性の担保B海外の多くのアカデミーも採用する会員自身が次期候補者挙げ、選考委員会が推薦する「コ・オプテーション方式」会員選出、会員による会長選出を改めて声明した。
 歴代会長の声明はこれを受けたもので、「世界が直面する人類社会の自然的、共生条件の困難さは一層大きく学術の役割を要請している。学術会議の在り方について政府主導の見直しを改め、学術会議の独立性と自主性を尊重し擁護することを要望する」としている。

提訴し真相解明

 一方、任命を拒否された6人の教授は今年2月、国を訴え「拒否理由」関係文書開示などを求めて立ち上がった。「学術会議は憲法の『学問の自由』に沿い作られた。任命拒否の真相を明らかに」と訴えている。既に6人の氏名と肩書、「R2・6・12」の文字や大きなバツ印が書かれた公文書が明らかになった。
 学術会議が発足当初から何度も「科学者は軍事研究に従事すべきでない」と決議していることや、6人が安倍政権の軍事化推進姿勢などに何らかの形で異議を申し立てたことなどが問題にされ、任命拒否されたと言われている。

 頑なな「説明拒否」で追い詰められた政府が「学術会議改組」で「対抗」しているのも明らかだ。かつて戦争前夜の日本で、研究機関や大学で政府の見解に沿わない研究者が次々とパージされた。主体的な学問研究は政策推進の邪魔とされた。「学問の自由」への攻撃は「思想、信条、の自由」への攻撃に直結する。「ものを言う自由」「研究の自由」をどう守るのか、重要な闘いが始まっている。
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | オピニオン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年07月18日

【JCJ広島支部】8・6ヒロシマで何が起きようとしているのか 7月21日(日)午後1時30分から4時30分 リアルととオンラインによるハイブリット開催

          
JCJ広島_7.21集会_sp.jpg

■開催趣旨:
今年の8・6平和記念式典で広島市は、平和公園の全域に入園規制をかけようとしている。原爆ドーム、原爆供養塔をはじめ多くの慰霊碑がある一帯すべてが午前5時から9時までの4時間、「安全対策の強化」を理由に手荷物検査を受けて許可されないと入れなくなる。
被爆者や遺族の人たちは早朝から平和公園のあちこちで手を合わせておられるが、この人たちにも手荷物検査が行われる。ゼッケン、たすきなどは着用できない。プラカードやのぼり、横断幕の類も持ち込みを禁止される。核戦争の危機が現実化しているなか、今年こそ平和公園から「NO WAR」「NO NUKES」を訴えたいと思っている人は多い。しかし、様々な工夫を凝らした表現活動はできない。広島市は、規制に「法的な根拠はない」としながら、従わなかったら退去を命じるという。これはいったい何なのか。「安全対策」を口実にすれば、憲法が認めた「表現の自由」を奪っても構わない、と言わんばかりだ。
このたびは、札幌市で5年前、安倍元首相の遊説中 に政権批判の声をあげた市民を警察官が取り囲んで排除した事件を取り上げたドキュメンタリー「ヤジと民主主義」の制作者を広島に招いて、平和公園での規制強化は、全国で起きている「言論・表現の自由」封殺と通底していないか、市民の皆さんとともに考えたい。

■プログラム:
 ◎8・6規制強化の経過 日本ジャーナリスト会議広島支部
 ◎法的根拠のない規制強化 田村 和之・広島大学名誉教授
 ◎講 演
  どんな声も、かき消されてはならない!・・・『ヤジと民主主義』は何を暴いたのかー
         山ア裕侍さん(北海道放送報道部デスク)
 ◎市民討論

■講演者プロフィール:山ア 裕侍 (やまざき ゆうじ) 
HBC北海道放送エグゼクティブマネージャー、報道部デスク。主なドキュメンタリー作品に「命をつなぐ〜臓器移植法施行から10年・救急医療の現場から〜」「赤ひげよ、さらば。〜地域医療再生≠ニ崩壊≠フ現場から〜」「ネアンデルタール人は核の夢を見るか〜核のごみ≠ニ科学と民主主義〜」「性別は誰が決めるか〜『心の生』をみつめて〜」「アイヌとヘイト〜文化振興の陰で〜」「クマと民主主義〜騒動の村から〜騒動の村からトップランナーへ〜」など。日本民間放送連盟賞、ギャラクシー賞、文化庁芸術祭賞、放送文化基金賞、日本ジャーナリスト会議JCJ賞、日本記者クラブ特別賞、文化庁芸術選奨(個人)など受賞。


■会 場:広島弁護士会館 3階大会議室(広島市中区上八丁堀2-73 ※広島城の東側)

■開催方式:7月21日(日)13:30〜16:30(会場リアルとzoomでのオンラインのハイブリッド開催。オンラインでの参加者には記録動画の配信有り)

■参加申し込み:会場参加、オンライン参加共に資料代 1,000円。(会場参加:学生・障がい者は無料)
https://jcj0721.peatix.com

■主催:日本ジャーナリスト会議広島支部(お問い合わせ先:090-9060-1809(藤元)
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | お知らせ&行動要請 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年07月17日

【JCJ声明】相次ぐ米兵の女性暴行事件と、政府による隠ぺいに抗議する

 「楽しいはずのクリスマスイブの日を、これから少女は毎年つらい思いで過ごさなければならない」。米軍兵士による16歳未満の少女に対する誘拐暴行事件が起きたのは去年の12月24日、クリスマスイブの日。被害にあった少女について沖縄に住む人たちは絞り出すように語った。

 日本政府が一体となって沖縄県に事実を隠し続けたこの事件が、琉球朝日放送の昼のニュースで第一報が報じられ明るみに出たのは6月25日。外務省や防衛省、そして県民の警察のはずの沖縄県警は、県に連絡しなかった理由として「被害者のプライバシーへの配慮で慎重な対応」とオウムのように同じ言葉を繰り返した。 

 沖縄の人たちの言葉と比べた時、政府側の言葉の軽さが浮かび上がる。建前の裏側に、辺野古新基地建設に向けた国の代執行、岸田首相訪米、沖縄県議会議員選挙、「慰霊の日」追悼式などへの政治的影響を考えた、地元沖縄県に対する隠ぺいの意図が透けて見える。
 この問題について日本ジャーナリスト会議沖縄(JCJ沖縄)は、いち早く6月27日に抗議声明を出し、「今回の事件が発覚するまでの半年間の経緯をみれば、日米政府は捜査・司法当局も含めて、県民に対して事件を隠ぺいしたと言わざるを得ない。沖縄県民の安全や尊厳をないがしろにする姿勢が暴露されたのである」と指摘し、「米軍の特権を支えるために県民を犠牲にする日本政府や当局に断固抗議する」と訴えた。

 さらにJCJ沖縄が声明を出した後も、米軍による性的暴行事件が次々に明るみになり、県警が発表しなかった米軍による性的暴行事件は昨年以降合わせて5件あったこともわかった。「県民に強い不安を与えるだけではなく、女性の尊厳を踏みにじるものだ」とする玉城デニー知事をはじめ沖縄の人々の強い怒りに、政府はようやく7月5日に、捜査当局が米軍人を容疑者と認定した性犯罪事件については非公表であっても例外なく沖縄県に伝達する方針を表明した。
 日本ジャーナリスト会議(JCJ)は沖縄の人々と連帯し、政府の隠ぺい行為に強く抗議し、沖縄県への伝達については速やかに確実に履行することを政府に求める。 

 沖縄県には在日米軍基地の7割が置かれている。基地問題が引き起こす性暴力の数々は、人間の尊厳に対する蹂躙であり、女性を軽んじるジェンダーの権力構造を露骨に示している。「国家の安全保障」が、一人ひとりの人権に優先するものであるのか、政府は沖縄の人々が置かれている現状と真摯に向きあい自問してほしい。
 そのうえでJCJは、政府に対して米軍への再発防止の徹底の申し入れと、日米地位協定の見直しに取り組むことを強く求める。

                                                    以上

   2024年7月12日
  日本ジャーナリスト会議(JCJ )
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | お知らせ&行動要請 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年07月16日

【トピックス】鹿児島県警・内部通報と「情報源暴き」=萩山 拓(ライター)

◆県警・不祥事の3カ月
 鹿児島県警の元巡査長による捜査資料漏えい事件の発生から、すでに3カ月以上が経過する。県警は4月8日、県警に批判的な報道を続けるニュースサイト運営者を漏えい事件の関係先として家宅捜索し、パソコンのデータを押収し、その内容をもって巡査長を地方公務員法(守秘義務)違反容疑で逮捕した。
 この捜索で得た関連資料や証拠を基に、さらに前県警生活安全部長も漏洩容疑で逮捕した。こうし漏洩事件が起きる背景には、県警トップの事件もみ消し・隠蔽の動きに対し、不満が県警内に充満していたと考えられる。
 現に逮捕された当事者からは、「資料を公表して県警内の体質を変えたかった」と、動機の説明がなされている。

◆踏みにじる「情報源の秘匿」
 しかも県警が行ってきた一連の捜査は、極めて異常なやり方だといわざるを得ない。パソコンのデータを始め、メールや携帯でのやりとりなど、捜査・検索・閲覧の範囲そして押収は通常の限度を超えている。
 こうした捜査に対して、新聞社の「社説」および新聞労連や出版者協議会を始め、メディアにかかわる多くの組織や有識者が、鹿児島県警による異様な「情報源暴き」に抗議の声を挙げてきた。
 そこには「捜査権の乱用」のみならず、「情報源の秘匿・保護」や「表現・報道の自由」が脅かされる重大な危険がはらんでいるからだ。民主主義社会では許されない権力の暴走を感じ取ったからに他ならない。

◆公益のための内部通報
 この暴走をくい止めるため、東京都の出版社「リーダーズノート出版」の木村浩一郎社長は、鹿児島県警トップの野川明輝本部長らを、特別公務員職権乱用などの罪に当たるとして告発した。ところが鹿児島地検は7月5日付で、野川本部長らを嫌疑なしで不起訴処分とした。
 しかし同社長は、地検の不起訴処分は不当だとして、7月10日、鹿児島検察審査会へ審査を申し立てたと明らかにした。「不法・不当に当該報道機関の強制捜査を行った疑惑があり、強制捜査は取材源の秘匿に関わり、日本国憲法にも違反する」うえに、「地検の捜査は短期間で不十分だ」という世論もあるとしている。
 とりわけ逮捕された前生活安全部長は「県警本部長が県警職員の犯罪行為を隠蔽しようとしたことが許せなかった」「書類を送れば積極的に取材してくれると考えた」と述べているだけに、隠された組織内部の腐敗を告発しようとする公益通報の意図が明確である。こうした事情をどう汲みあげるのか、これからの審査が注目される。
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年07月15日

【焦点】鹿児島県警不祥事事件の全容″数ュ文受け取った札幌市のライターが地元誌で報じる 県警の文書提出強要を拒否=橋詰雅博 

kagosima県警.jpg
             相次ぐ不祥事で県民の信頼揺らぐ鹿児島県警
 県内外が注目する鹿児島県警の不祥事隠ぺい事件。新聞報道だけでは全容がわかりづらい。関係者の話を総合すると、この事件は地方公務員法(守秘義務)違反の疑いで4月に逮捕され起訴された巡査長の藤井光樹被告(49 懲戒免職)と北九州の福岡市のデジタルニュースサイト「HUNTER」との関係が原点のようだ。藤井被告から受け取った県警のさまざまな不祥事情報を「HUNTER」は報じていた。組織維持のため目障りと県警は警務部長をトップとした50人からなるプロジェクトチームが調査にあたり、「HUNTER」のネタ元が藤井被告であることを突き止めた。「HUNTER」と藤井被告との間で金銭的なやり取りがあったかは分からない。

 県警は4月8日に「HUNTER」編集部を家宅捜索。パソコンに残っていたPDFファイルを見て驚愕した。未発表の盗撮事件(後日発表)やストーカー事件などの概要が記録されていた。匿名だったので告発者が誰なのか不明だったが、送信元は北海道札幌市に住む月刊誌「北方ジャーナル」記者の小笠原淳氏(55)。

 小笠原氏は「北方ジャーナル」7月号でその経緯を自ら書いている。概要はこうだ。<闇をあばいてください>という文言で始まる匿名の文書が4月3日に届く。消印は「鹿児島中央」「3・28」。鹿児島市内から6日間を経て札幌市在住の彼の元に。告発文書を「なぜ鹿児島の人がこれを札幌に」と首を傾げた。情報を共有する考えで日ごろから付き合いのあった「HUNTER」の中願寺純則編集長に文面などをデータ化したPDFをメール送信した。3日の午後3時過ぎだった。

 県警はこのPDFを8日の家宅捜査で発見・押収したわけだ。割り出した告発者は県警前生活安全部長の本田尚志氏(60)。本田氏は3月に定年退職し、在職時の階級は警視正。本田氏は5月31日に国家公務員法(守秘義務)違反で逮捕された。ノンキャリアだったが、幹部だったので国家公務員法が適用される。
 小笠原氏は6月4日に鹿児島県警組織犯罪対策課の捜査員と名乗る男性から電話を受け取る。「うちの元生活安全部長が逮捕された件で、証拠品が小笠原さんに送付されていたことがわかりまして‥‥」。「重要な証拠品ということで、返還していただきたいと思いまして」
 ――返還?どういうことですか。
「簡単に言いますと、証拠品として押収させていただきたいと」
 ――押収?令状か何か出てるんですか。
「今のところは、ないです」
 ――ああ、任意ってことですね。
「はい、お願いベースになります」
 ――私の職業とか知っていますよね。
「そうですね、はい」
 ――誰からどういう情報を貰ったとか、普通、外部には言わない仕事なんですけど。
「‥‥ああ」
 ――それやっちゃたら、この仕事できなくなるんで。
「ああ、なるほどですね」
 ――出さないと強制捜査(家宅捜索など)になるんですか。
「なんとも言えないところです。ただまあ、重要な証拠品であると判断しておるところで」
 ――普段どういう報道対応なさってるかわからないんですけど、報道関係者はこういうの出さないですよ。
「そこをですね、どうにかお願いできないかなあと‥‥」

 県警からはこの後複数回の打診があったが、小笠原氏は提出を拒否した。さらに任意聴取の要請に対しては「弁護士同席」「録音」「撮影」などの許可の条件を示したうえで「何を問われても答えない」と表明した。その結果、県警側は要請を断念した。

 藤井容疑者は一審で罪を認め結審、「野川明輝県警本部長(警察庁のキャリア官僚)の指示で事件はもみ消された」と告発した本田容疑者は、拘置所から保釈されこれから裁判が始まる。本田容疑者が県警不祥事の公益通報だとして無罪を訴えるのかどうかが注目される。
 
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | 焦点 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年07月14日

【JCJ沖縄声明】南城市長の取材対応に抗議する

 古謝景春南城市長が琉球新報の記者を突き飛ばしたと報道された。事実であれば、取材を暴力と威嚇で妨害しようとするものであり、公人としての資質を欠くと言わざるを得ない。市長は琉球新報社の抗議を真摯に受け止めるべきだ。

 報道によると、6月18日の南城市議会終了後、市長は、歩きながら記者からセクハラ疑惑について質問され、記者の背中を突き飛ばした。記者は「暴行を振るったということでいいのか」と市長に問いただしたが、市長は無言で市長室に入った。

 記者は、市長の発言を録音するためレコーダーを差し出しながら横向きの姿勢で質問していたところ、市長に背中を突き飛ばされ、「あやうく倒れそうになるのを、足を踏ん張りどうにかこらえた」と述べている。

 翌19日、琉球新報社は島洋子統合編集局長名で「今事案は暴力によって記者の安全を脅かし、取材活動を妨害したものだと考える」と市長と南城市宛てに抗議文書を送付し、謝罪と経緯の説明を申し入れた。これに対し市は25日に文書で回答し「突き飛ばし行為の事実はない」と否定。逆に「行き過ぎた取材活動があった」と記者を批判した。琉球新報社は「(記者の)録音データでは記者は丁重に質問をしており、職員の指示にも従っている」と反論する再抗議文を同日送付した。

 市長のセクハラ疑惑を巡っては、訴訟になっている元市長車運転手の女性のほか、市議会特別委員会が実施した職員アンケートでも複数の被害が訴えられている。しかし、市長は十分な説明をしておらず、記者が市長に説明を求めるのは当然のことだ。追及を避けるため突き飛ばしたとしたら言語道断である。

 突き飛ばし行為は、それによりけがを負うことがあれば傷害罪も成立し得る暴力だ。今後、市を取材する他の記者への対応にも影響しかねず看過できない。

 記者・ジャーナリストの取材活動は、知る権利を守り、社会正義の実現を目指すものだ。市長は市民の知る権利にきちんと向き合うべきであり、暴力行為があったとしたら断じて許されない。市長の不誠実な対応に抗議する。

                                        

 

 2024年7月10日
                日本ジャーナリスト会議沖縄(JCJ 沖縄)
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | 九州・沖縄 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年07月13日

【JCJ北海道支部】北海道内民放3局 ドキュメンタリー相次ぎ映画化 情熱と覚悟 課題 担当3氏が語る=渡辺 多美江

                       
4面写真20240526JCJ北海道支部トークイベント.jpg
トークイベント「ドキュメンタリーが面白い!」でテレビ番組から映画制作の経緯や意義を語る、北海道民放3局の担当各氏=5月26日、札幌

 JCJ北海道支部は5月26日、トークイベント「ドキュメンタリーが面白い!/テレビ局はなぜ映画を作るのか/道内民放3局の制作者が語る」を札幌で開催。登壇した山ア裕侍さん(HBC報道部デスク・「ヤジと民主主義 劇場拡大版」監督)、吉岡史幸さん(UHB取締役・「新根室プロレス物語」プロデューサー)、沼田博光さん(HTB報道部デスク・「奇跡の子 夢野に舞う」監督)の3氏が、昨年から今年にかけ映画化されたドキュメンタリー番組の取材や制作意図、現場の課題などを本音で語り、参加者約90人の共感を呼んだ。    

「首相批判」排除
おかしくないか

 山アさんは、2019年、札幌で街頭演説した安倍晋首相(当時)にヤジを飛ばした市民が、警察官に強制排除された問題に迫った。
「地声で『安倍やめろ』と10数秒言っただけで排除。『プラカードが風にあおられて危ない』と移動させられた市民もいたが、安倍首相応援のプラカードは排除されなかった。これはおかしい」と感じたことが、番組とその後の映画化を含めての出発点となった。
「TBSドキュメンタリー映画祭出品が上映の機運を呼び、『劇場拡大版』のKADOKAWA配給に」と話した。

「思い実現を」
プロデュース

 吉岡さんは「根室の人たちの思いを実現させたかった」と、初代リーダーを病で失った根室のアマチュアプロレス団体の「奮闘ドラマ」をプロデュースした。「映画の起点は長く映像を撮り、編集を続けたカメラマンと編集マン。それが番組につながった」と振り返った。当初検討された俳優を使っての映画化は、紆余曲折の末、ドキュメンタリーになったという。

農家の声今こそ
7年追い続けた 

 沼田さんは空知の長沼町で「タンチョウを呼び寄せマチおこしをしよう」とする14人の農家を、自力で7年間追った。農家は1981年の「五六水害」被害者。その治水対策だった千歳川放水路計画は、自然保護論争の末に中止された。
「14人は『自然保護団体は大嫌い』だった長沼の普通のお父さん」。「僕は当時、農家の人たちの声を取材していなかった。それを今、映画にしたいと思った」と、一人で制作に手を挙げた理由を語った。

映画化に意義も
現状には危機感 

 映画化の意義を、山アさんは「採算ラインはともかく社のブランド力は上がり、お金に代えられない価値がある」。吉岡さんも「テレビは視聴率競争が厳しいが、映画で良質なものを作るという原点に帰れた」と評価。沼田さんは「お客さんの感想を直接聞ける映画は製作者を鍛える。この経験を後輩に伝えたい」と意気込みを語った。

 一方、ドキュメンタリーの現状には「放送枠は毎週あるが、作りたいとアピールする記者が少なくなった。記者がデジタル情報の用意のために忙しい」(山アさん)。「合間仕事だったデジタル作業がいまや本業を圧迫し、記者もデスクも忙しい。長い視点で取材する仕事ができなくなっている」(沼田さん)。「国の石炭政策などのひずみが起きた北海道では、かつて良いドキュメンタリーが多く作られたが、近年は『夕方ワイド戦争』で、情報番組にニュースも組み込まれ、制作が難しくなってきた」(吉岡さん)と、3氏は揃って危機感を口にした。
       JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年6月25日号


posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | 北海道 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年07月12日

【おすすめ本】菅原 出『民間軍事会社 「戦争サービス業」の変遷と現在地 』─国の安全保障や企業防衛の最前線に立つ実施部隊=前田哲男(軍事評論家)

 「民間軍事会社」と聞いて思い浮かべるのは、ロシア・ウクライナ戦争さなかに起きた、「ワグネル」「プリゴジンの乱」だろう。この事件、現代戦の暗部が資本主義国アメリカだけでなく、旧ソ連=ロシアにも存在する事実を照射してくれた。
 もちろん本書にも詳述されている。「ロシア国家によるワグネル乗っ取り」「プリゴジン暗殺」の章は、読みどころの一つだ。

 だが本書は、もっと広範に、アメリカ「戦争請負会社」の活動からアフリカの地域紛争や湾岸戦争、イラク戦争にもおよび、「民間軍事会社」が 現代の戦争に不可欠なものであることを教えてくれる。
 あまり知られていないが、日本の自衛隊にも民間会社の利用が浸透し、隊員不足を補うために拡大する勢いにある。

 本書を読んで再読したのが、カイヨワの『戦争論』(法政大学出版局1974年)とプレティヒャ『農民戦争と傭兵』(白水社2023年)である。「傭兵」を戦争の民間人利用と考えれば、その起源は古い。
 両著とも「歩兵」のルーツを「傭兵」に求めている。「マスケット銃が歩兵を生み、歩兵が傭兵を生んだ」(カイヨワ本)というわけだ。この「傭兵」の現代版・適用例が「民間軍事会社」だといえなくもない。

 しかし、現代資本主義が向かい合う「テロとの戦い」においては、「民間軍事会社」は、「各国の安全保障政策や企業のセキュリティ対策を最前線で履行する実施部隊である」(本書あとがき)。
 そう考えれば岸田政権が掲げた「GDP2%防衛費・5年間43兆円」の使途とも無縁ではない。その意味でも広く読まれるべき書である。(平凡社新書1050円)
          
gunnji.jpg
  
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年07月11日

【リレー時評】「戦死手当」まで検討⁉ 経済的徴兵だ=中村 梧郎(JCJ代表委員)

 北富士演習場で、手榴弾訓練中の陸自隊員が5月末に被弾死した。岐阜の日野射撃場では昨年、3人を殺傷する兵が出た。演習は戦争ごっこ≠ナはない、敵を殺す能力を新兵に叩き込む場であり、危険と紙一重である。自衛隊のポスターはカッコ良さを演出し、若者らのあこがれを煽る。でも戦場は甘くはない。敵と遭遇したら殺すか殺されるかの世界である。

 銃弾も爆弾も大量殺害の手段である。だから軍はそれを扱う殺人のプロを育てる。戦艦も戦車も殺人装置。その最上位にある戦闘攻撃機の輸出を岸田内閣は決めた。明白な憲法違反である。

 ウクライナやガザではクラスター爆弾が使われている。50年前に終わったベトナム戦争で登場したこの爆弾(当時はボール爆弾)は何なのか、という解説が日本のメディアの多くで誤っている。
 「カプセルから野球ボール大の子爆弾数百が飛散し広域を破壊する。その3割が不発で地雷と化すから非人道的」という説明だ。だが地雷を凌ぐ残虐兵器なのだ。子爆弾は無数の弾丸を内包、爆発で放射状に飛び散る。ビルは破壊できないが、人間は全身に弾を浴びて即死、遠くでも何発かは貫通する。つまり殺害専門の「対人殺傷爆弾」なのだ。非人道性はそこにある(もっとも人道的兵器≠ヘありえないが…)。  

 自衛隊への応募者が減った。一昨年6月、野田聖子・内閣府大臣は日経日曜サロンで「少子化は自衛官の減少をもろに受ける。国の安全保障、国防にも影響する」と発言、少子化対策を急ぐ狙いが実は将来の自衛官の確保にあることを漏らした。

 機密保護法、経済安保法も揃った。だが権力を監視すべき新聞TVはなぜか糾弾を避ける。「防衛力の抜本的強化に関する有識者会議」には読売新聞グループ本社の山口寿一社長が名を連ねている。今年、日本のジャーナリズムの自由度は世界70位へと順位を下げた。先進国中最下位。政権広報機関への転落、という評価なのだろう。

 徴兵制をやめた米国では給与を増額、低賃金労働者を誘ってイラクやアフガンに送る兵とした。日本では兵役適齢の市民学生の情報が自治体から自衛隊に渡されている。北海道では、子ども食堂に隊員募集パンフを配布したことも発覚した。貧困家庭のはず、という勧誘である(『週刊金曜日』5月24日号)。
 徴兵制がなくとも貧しさがあれば兵は募れる。防衛省は奨学制度の拡大も図る。学生に月5万4千円を貸与し、卒業後に自衛官となれば返還免除。サイバー分野の人材なら幕僚長並みの給与支給が可能だという(「赤旗」1月20日)。その上なんと「戦争(戦死)手当」の導入を検討している。安心して死んでくれ、というわけだ。

 戦争遂行の具体的準備が進む。事あれば米・日統合軍司令部のもと、自衛隊が最前線に出る。
 日本はまさしく戦争をする国になりつつあるようだ。
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年6月25日号
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | <リレー時評> | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年07月10日

【JCJ オンライン講演会】「小池氏が都知事に3選 今後の政治への影響を読む」講師:鮫島 浩さん(SAMEJIMA TIMES、元朝日新聞記者)7月27日(土)午後2時から3時

                    
samejima.png

■開催趣旨
アンチ小池票が分散したおかげで小池氏は都知事選で逃げ切った。小池氏をステルス支援した裏金自民党は息を吹き返すかと思いきや、都議補選は2勝6敗と大敗した。自民党への逆風はおさまっていない。この都議選の結果は9月の自民党総裁選、年内にもいわれる解散総選挙、蓮舫ショック≠ノ揺れる立憲民主党を始め野党にどんな影響をあたえるのか。元朝日新聞記者の政治ジャーナリスト・鮫島浩氏が大胆に予測する。

■講演者プロフィール
鮫島浩(さめじま・ひろし)
1971年生まれ。京都大学法学部の佐藤幸治ゼミで憲法を学ぶ。94年に朝日新聞へ入社し、99年から政治部。菅直人、竹中平蔵、古賀誠、与謝野馨、町村信孝ら与野党政治家を幅広く担当し、39歳で政治部デスクに。2013年に「手抜き除染」報道で新聞協会賞受賞。21年に退社し「SAMEJIMA TIMES」創刊。連日ウェブサイトで政治解説記事を無料公開し、ユーチューブでも政治解説を発信。登録者は11万人超。サンデー毎日やプレジデントオンラインに寄稿。ABEMAなど多数出演。近著に『朝日新聞政治部』(講談社22年)、泉房穂・前明石市長との共著に『政治はケンカだ!』(同23年)。6月に『あきらめない政治 ジャーナリズムからの政治入門』(那須里山舎)を刊行した。
■オンライン講演開催日時:7月27日(土)14:00〜15:00(zoomにてオンライン 、見逃し視聴用記録動画の配信有り)

■参加費:500円
当オンライン講演会に参加希望の方はPeatix(https://peatix.com/event/4044104)で参加費をお支払いください。

JCJ会員は参加費無料。jcj_online@jcj.gr.jp に支部名を明記の上お申し込み下さい。先着100名の定員となります。


■主催:日本ジャーナリスト会議(JCJ)
    03-6272-9781(月水金の13時から18時まで)
      https://jcj.gr.jp/

■JCJ会員の方はJCJホームページ・ユーザー登録をすることで記録動画をご覧になれます。
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | オンライン講演 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年07月09日

【福島訴訟】国の賠償免責から2年 「人間の鎖」で最高裁包囲=編集部

 東電福島第一原発の事故は「国が対策を命じても事故は防げなかった。国に賠償責任はない」と国を免責した最高裁を「人間の鎖」で包囲する抗議行動が、判決から2年目の6月17日に行われた。
 2011年3月の原発事故後、被災者が国や東電に賠償を求めた訴訟は全国で約30件を数えた。最高裁は22年6月17日、原告が約3700人にのぼる福島、群馬、千葉、愛媛の4件の訴訟について、「津波対策が講じられていても事故が発生した可能性があった」とし、裁判官4人中、「国の責任を認めるべき」と三浦守裁判官1人を除く3人の多数意見で国策で原発を推進してきた国の賠償を免責した。

原発推進を支持
メディアも批判
 福島原発事故を自然災害とは言えない。国が予測された津波への対策指針を怠った結果が大事故につながった。これを受け原発推進のメディアでさえ、「(国も)被災者支援の取り組みを緩めてはならない」(読売)、「政策の誤りを指摘する意見が少なからずあったことを国は重く受け止めるべきだ」(日経)「賠償責任を免れたことで国が胸をなで下ろしていては大間違いだ」(産経)などと判決を批判した。

大手法律事務所
最高裁と「癒着」
 判決を出した裁判官は、別の裁判で東電側の代理人を務める弁護士が所属し、東電の社外取締役を出す大手法律事務所のOBだったりし、陪席裁判官も、退職後、関係事務所に就職するなど最高裁と大手法律事務所との「癒着」が明らかになっている。
 こうした中で、最高裁判決を第一陣が受けた福島生業(なりわい)訴訟では、第2陣の原告団に約700人が加わった。

広がる抗議の輪
訴訟団連帯行動
 この日の抗議行動は「6.17最高裁共同行動実行委員会」が主催。「人間の鎖」には、被災者や株主代表訴訟の原告たちのほか、子どもの被ばくの責任を問う訴訟や東電株主代表訴訟の原告団、原発事故の刑事訴訟を支援する団体などが参加。数多く残る今後の最高裁審の際「公正な判決を」と求める要請書を約3万人の著名とともに提出。主催者調べで950人の参加者は正午から午後1時まで、最高裁の皇居側にある東門付近から青山通り沿いを経て、国立劇場手前の西門近くまでの約1`を「人間の鎖」で取り囲んだ。
 集会後は国会でシンポジウムを開催。最高裁と原発の癒着を告発したジャーナリストの後藤秀典さんらが報告した。
  JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年6月25日号
 

posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | 福島第一原発事故 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年07月08日

【おすすめ本】是枝裕和・川端和治・早田そうだったのか!ジャーナリズム研究会『僕らはまだテレビをあきらめない』―公権力の放送介入に抗う貴重な論考=長井 暁(ジャーナリスト)

 本書は、安倍晋三政権がテレビ放送への介入を繰り返されていた時期に、BPO放送倫理検証委員会の委員を務めた弁護士の川端和治氏と映画監督の是枝裕和氏による数々の論考と、両氏へのインタビューを中心に構成されている。掲載されている是枝氏が当時ブログに発表した3本の私見は、評者も講演や大学講義で何度も参考にして来た貴重な論考である。

 2015年4月、高市早苗総務大臣は出家詐欺番組を放送したNHKへ行政指導(厳重注意)。同年11月には、一つの番組のみでも政治的に公正と認められない場合があると発言。16年2月には、放送法違反を繰り返した場合、電波法76条に基づき電波停止の可能性があると発言した。

 BPOはNHKへの行政指導について、15年11月に公表した意見書の中で、「放送法が保障する『自律』を侵害する行為そのものと言えよう」と厳しく批判。意見書公表の翌日に是枝氏は私見を発表し、放送法は公権力から放送の「表現・報道の自由」を守るためのものであり、公権力が放送を規制するためにあるのではないと指摘した。

 さらに10日後に発表した私見では、放送法四条(「政治的な公正」など)が成立した経緯を詳しく検証し、この条文は「法規範」ではなく「倫理規範」であると明確に指摘。さらに16年3月の停波発言を受けて発表した私見では、公権力の誤った法解釈や人々の無理解によって、「放送を守るための放送法が、公権力が放送局を監視するための法律」にされてしまっており、その倒錯した状況を改めなければならないと厳しく指摘した。

 映画の製作等で多忙を極める中で、「資料集め及び清書をしてくれた分福のスタッフも呆れています」と言うほど、放送法に関する私見の執筆に熱心に取り組んだ理由について是枝氏は、自分を育ててくれた放送への愛着=テレビ愛があること語っている。本著はメディア関係者必携の一冊である。(緑風出版2500円)
          
484612312X.jpg

         
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年07月07日

【フォトアングル】第18回市民パネル展、視覚障害者教育協会会長がトーク=9日、浦和市、浦和コムナーレ、酒井憲太郎撮影

                     
6gatugou.jpg
    
 アジアとともにをメインテーマにした戦後79年パネル展実行委員会主催による、手づくりパネル展が6月7日(金)〜9日(日)の3日間開かれた。参加した埼玉の十団体のテーマは九条俳句、ヘイトスピーチ禁止条例と多様だ。最終日に、アジア視覚障害者教育協会会長青木陽子さんが「日中における草の根交流」をテーマのトークをした。参加者は25名
    JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年6月25日号
posted by JCJ at 02:00 | TrackBack(0) | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年07月06日

【焦点】海外出稼ぎ売春が急増中 摘発・暴力・だまし‥‥自分守れぬリスク 松岡かすみ氏オンライン講演=橋詰雅博

松岡氏.jpg

 観光ビザなどで入国し、現地で売春する日本女性が急増―。警視庁が4月と5月に相次いで摘発した2つの海外売春あっせんグループで明るみに出た日本女性の数は合計400から600人にも上る。米国やオーストラリア、カナダで売春をしていた。最近では20代の日本女性3人が韓国・ソウルで売春していたことが発覚し、現地の警察に検挙されている。「お金を稼ぎたい」という女性たちはいずれも求人サイト通じて応募していた。『出稼ぎ日本人風俗嬢』(朝日出版新書)の著者のフリーランス記者・松岡かすみ氏(38)は「実態と今後」について5月11日のJCJオンライン講演会で報告した。
でかせぎ.JPG

 松岡氏は同志社大学社会学科卒業後、出版社勤務などを経て2015年から『週刊朝日』編集部記者に。21年からフリーランス記者として活動。週刊朝日時代に2回掲載した特集記事をもとに改めて追加取材・大幅加筆して昨年2月に出版した『出稼ぎ〜』は初の著書だ。

6人から話を聞く

「日本人女性が海外に行き出稼ぎ売春する動きがある」という話をきっかけに22年末から松岡氏は取材を始めた。ここ数年の出稼ぎ経験を話してくれた6人の女性のうちワーキングホリデービザ(日本と協定を結ぶ国などで一定期間働きながら滞在できる制度)でオーストラリアに行った29歳の人は―。英語があまり話せず日本食レストランで仕事したが、最低ランクの賃金に加えて物価高もあり生活は苦しい。シェアハウスのルームメイトの中国人女性から紹介された時給がべらぼうに高いという売春も兼ねるマッサージ店(オーナーは中国人女性)で週2、3回働く。相手は主に中国人で、チップを含め週20万円程度稼いだ。ビザの有効期間である1年で帰国した。

渡航者は4タイプ

 出稼ぎ売春の日本女性は@ワーホリ取得者、A求人サイトでの応募者、BSNSを使った独自開拓の富裕層相手のセックスワーカー、Cほれ込んだホストの借金の返済者。タイプ別にするとこうなる。
Cはホストクラブ独自の「売掛(うりかけ)」システムに原因がある。ホストクラブは、売り上げの半分は店に入り、残る半分がホストの収入になる。例えば会計が50万円だとすると、お金がない女性に代わってホストが半分の25万店に入れる。客は、ホストに支払う分の25万とともにホストに50万借金したことになる。売掛50万の返済については客とホストで決める。こうして膨らんだ借金返済のためホストから紹介されたブローカーを介して女性は売春目的で外国に渡航する。ただ社会問題化したことで売掛システムを見直す店も出てきている。
 「売春がカジュアル化し、ポジティブに海外出稼ぎ売春を選ぶ女性は少なくない」と松岡氏は指摘する。背景には日本経済衰退に伴い海外と比べ広がる賃金格差、急激な円安による物価高騰などがある。海外ならば日本の何倍も稼げるとはいえ、リスクは多い。「警察の摘発、報酬がきちんと支払われる保証がない、ブローカーに騙される、暴力、病気、窃盗などのリスクがある。なによりも違法な出稼ぎ売春の身では、命が危ない場面にあっても自分を守る権利を行使するのは難しい。ここが一番怖い点です」(松岡氏)
 今後について松岡氏「海外では日本よりも圧倒的に稼げますので、この現象は加速するでしょう」と予測した。
 日本社会のひずみが生んだ一つの事象ではないか。
   JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年6月25日号
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | 焦点 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年07月05日

【JCJ広島リポート】「もはや戦争前夜」出撃態勢の機能強化 日鉄呉跡地を軍事拠点にするな 広島支部が学習交流会=井上俊逸

広島支部1報告をする久米さん(中)ら.JPG

 「日鉄呉跡地 止めよう軍事拠点計画 〜呉・岩国・沖縄・広島を結び考える〜」と題した学習・交流会が5月25日、広島市内で開かれた。JCJ広島支部が2024年度総会の後、一般市民にも公開して開催。オンライン視聴を含め約50人が参加し、加速する「戦争する国」への流れをどう食い止めるか、報道のあり方とも併せて議論した。

 初めに、司会進行役を務めた筆者がこの会を企画した趣旨を説明。「ここまで来たのか、戦争準備は!もはや『新たな戦前』どころか『戦争前夜』の様相だ。呉では閉鎖された日本製鉄の土地を防衛省が買い上げ、軍事拠点に使おうとしている。『軍都復活』の動きが公然化してきた。片や、米軍岩国基地では日本の自衛隊と一体となって軍事作戦を展開する態勢が着々と整えられている。これらが『軍事要塞化』と表現される沖縄・南西諸島の自衛隊基地の新設・装備増強とどう繋がっているのか」と問題提起し、「再び戦争のためにペンをとらない」を合言葉に活動しているJCJとしては、こうした状況をメディアはどう報道すべきかといことも含めて、みなさんと一緒に考えてみたいと呼びかけた。

 引き続き、「日鉄呉跡地問題を考える会」の森芳郎さんをトップに、岩国の「瀬戸内海の静かな海を守る住民ネットワーク」の久米慶典さん、沖縄からオンラインでうるま市の「自衛隊訓練場設置計画の断念を求める市民の会」の伊波洋正さんと沖縄タイムス記者の又吉朝香さん、「広島パレスチナともしび連帯共同体」の湯浅正恵さんの順で、それぞれ報告があった。

 この後、参加者からの質問や意見を交えて議論を深め、最後に久米さんの「呉の問題は岩国の問題であり、もちろん沖縄を含めて日本全体の問題でもある」という認識を共有して締めくくった。
         JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年6月25日号
 


 
posted by JCJ at 02:00 | TrackBack(0) | 中国・四国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年07月04日

【映画の鏡】都知事選で首都圏の上映℃ゥ粛 関心高まる選挙期間中こそ上映を『#つぶやき市長と議会のオキテ【劇場版】』=鈴木賀津彦

               
IMG_7504.JPG

         上映後の舞台トークで    
 東京都知事選の投開票は7月7日。広島県安芸高田市長から転じて出馬した石丸伸二候補にどれほど票が集まるのか、注目している。
 4月の本欄では、広島ホームテレビが市長の石丸氏と議会の対立の様子などを密着取材したドキュメンタリー番組がアーカイブ配信900万回以上の反響があり、映画になった『#つぶやき市長と議会のオキテ【劇場版】』を話題作として紹介した。「地方政治の実態に密着して取材すると、こんなにも面白いドキュメンタリー番組のできることを広島のローカルTV局が示してくれた」と記したのだ。

 なので、石丸市長が都知事選に突然出馬表明した直後の“上映自粛”の対応にはガッカリだった。映画の公式ホームページで5月17日、選挙に影響することを懸念して上映予定を変更、25日から予定通りに公開するものの「東京都での公開を月内でいったん終了」し、首都圏では6月から「選挙後まで行わないことを決定」したと発表した。
 6月29日からだった横浜シネマリンでの上映予定も7月20日からに変更、結局、知事選前に首都圏で上映されたのは都内2館で7日間だけだった。

 この判断を批判するつもりはないが、「本作は石丸伸二市長を応援したり、批判したりするために制作したものではなく、地方政治のあり方」を描いたと説明しているのだから、選挙期間中を含め予定通りに上映した方が良かったのではなかろうか。関心が高まる選挙期間中にこそ政治を身近に考える絶好のネタを提示してくれているのだから。
 首都圏以外では予定通り6月から上映しており劇場に足を運んでほしい。
    JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年6月25日号
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | 映画の鏡 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年07月03日

【支部リポート】神奈川 日本の侵略にも焦点 29回目の戦争展、次代へ=保坂義久

                    
横浜空襲 CIMG4625.JPG
        
 横浜大空襲があっ5月29日の頃には、毎年「平和のための戦争展inよこはま」が開かれる。今年も横浜市・中区のかながわ県民センター1階展示場で開かれた。

 横浜の戦争展は今年で29回目。大空襲後の廃墟や戦時中の生活の写真をはじめ、市内にある戦争遺跡などがパネル展示されている。桐生悠々が批判したことで知られる「関東防空演習」のポスターとその発見の経緯を伝える2007年8月の神奈川新聞の紙面=写真=が興味深かった。戦争展の最近の特徴はアジアにおける日本の侵略に焦点をあてていることだ。

 また今年は朗読劇と講演が5月26日午後に、「戦争・核被害体験を語り継ぐ」という企画は6月1日の午後に、同センターの2階ホールで行われた。

 朗読劇は横浜市立日吉台中学校演劇部による「安全地帯にいる人の言うことは聞くな〜戦場の軍人たちが残した言葉と現在〜」。職業軍人3人の遺した戦争体験をもとに構成した作品で、南方戦線で軍務につき、特攻隊の生みの親と言われた太西瀧治郎中将の副官だった門司親徳少佐の言葉から標題がとられている。
 続く講演、最初は空襲当時5歳だった金子光一さんの体験談。当時の写真などを示しながら、家族とはぐれて見知らぬ人と避難した幼い日の体験を語った。

 次に「日本とガザ・パレスチナ〜平和と共存に向けて〜」と題し、日本中東学会元会長でお茶の水大学名誉教授の三浦徹さんが講演した。三浦さんはイスラエルとパレスチナが民族や宗教の対立と誤解されるなど、日本でのイスラム理解が偏っていることを指摘した。

 6月1日には、横浜商業高校OGが横浜大空襲体験者に聞き取り調査した結果の報告や、母親が広島で被爆した被爆二世が親から聞いた体験談、神奈川学園中学・高校の生徒による核実験場であるマーシャル諸島と神奈川をつなぐデジタルアーカイブについて発表した。戦争体験の伝え方を考えさせる催しだった。
     JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年6月25日号
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | 関東・甲信越 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年07月02日

【お知らせ】JCJの原点 「8月集会」開催します 8・17川崎 哲さん招き講演とシンポ=古川英一(JCJ事務局長)

 
川崎さん写真.JPG

 「再び戦争のために、ペン、カメラ、マイクを取らない」は終戦から10年後にスタートしたJCJの理念であり、活動のバックボーンです。その理念が、来年には戦後80年を迎えようとしている日本で、今まさに試される事態に直面しています。
 第二次安倍政権発足以降、菅首相、岸田首相への引き継がれた自民党政権はこの10年にわたって、憲法を骨抜きにし、軍拡への道をひたひたと突き進んできました。
 
 JCJはこれまで8月、12月に集会を開き、JCJの理念を確認し合ってきましたが、コロナ禍で開催の中断をよぎなくされていました。JCJは今、平和を希求する市民と共に取り組む「戦争への道」に抗う一歩を踏み出すことを決意し、8月の集会を5年ぶりに開催することを決めました。

 8月集会は8月17日(土)の午後、東京麹町のエデュカス東京を会場に開催。オンラインでの同時配信も行うことを計画しています。集会には川崎哲さん=写真=(ICAN・核兵器廃絶国際キャンペーン国際運営委員兼会長、ピースボートの共同代表)を迎え、講演していただきます。その後シンポジウムに移り、軍拡をくい止めるために、メディアや市民が何をするべきかなどを話し合います。また会員の皆さまから事前にメッセージを寄せていただくことなども計画しています。
 詳細は改めてお知らせしますが、この集会を戦後80年へ向けた取り組みのキックオフミーティングにしていきたいと思っています。会員・読者、多くの市民の皆さんの参加を願っています。
     JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年6月25日号
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | お知らせ&行動要請 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする