ノンフィクション・ジャンルからチョイスした気になる本の紹介です(刊行順・販価は税別)。
◆武塙麻衣子『酒場の君』書肆侃侃房 9/2刊 1500円
『群像』2024年6月号より小説「西高東低マンション」を連載中の作家である著者が、「私には私だけの酒場白地図が頭の中にあり、好きなお店や何度も行きたいお店、行ってみたいお店などを、日々その地図に少しずつ書き込んでいく」─こうして仕上がった酒場放浪記から浮かび上がる、ホロ酔い観察のすばらしさが、何とも言えない爽快さを呼び起こす。
◆池澤夏樹 編+寄藤文平(絵)『来たよ! なつかしい一冊』毎日新聞出版 9/2刊 1800円
人気作家50人が夢中で読んだ「私だけの一冊」を、イラストと文章で紹介。本が醸し出す密かな楽しい世界へ誘われること間違いなし! 草野仁が選ぶ五味川純平、吉田豪が選ぶアントニオ猪木、山田ルイ53世が選ぶ西村賢太、南沢奈央が選ぶ宮本輝……まずは手に取ってみてください。寄藤文平のイラストも楽しい<とっておきのブックガイド>!
◆トマ・ピケティ『平等についての小さな歴史』(広野和美訳) みすず書房 9/17刊 2500円
『21世紀の資本』が刊行され、日本でピケティブームが起こって10年。だが他の著作も含め、どれも1000頁を超える大作では手が出なかった。ところが本書は、ピケティ自らが格差や平等について分かりやすく凝縮させた、初心者おすすめの1冊となっている。さらに「格差に対処し克服する野心的な計画を提示」し、学ぶところが多い。
◆栗原康『幸徳秋水伝: 無政府主義者宣言』 夜光社 9/18刊 2800円
大杉栄の兄貴分にして元祖日本のアナーキスト・幸徳秋水。自由民権運動に触れた少年時代、中江兆民の書生時代、万朝報での記者生活、堺利彦らとの平民社時代、クロポトキンとの文通、足尾暴動、管野須賀子との恋愛、大逆事件など、波乱万丈の明治時代に生きた幸徳秋水を克明に追い、日本のアナーキズム黎明期とその青春群像を活写した力作。
◆布施祐仁『従属の代償 日米軍事一体化の真実』講談社現代新書 9/19刊 980円
いつの間にか日本が米国のミサイル基地になっていた! 米軍が日本全土に対中戦争を想定した、核搭載ミサイルを配備しようとしている! だが日本政府は、こうした米軍の動きを隠し、かつ巧妙な「ウソ」をつき、国民をだまくらかしている。その「ウソ」を、ノンフィクション作品でJCJ賞など多くの賞を受賞した、気鋭のジャーナリストが見破る! 多くの人たちに読んでほしい安全保障を論じた力作。
◆ジェレミー・ドロンフィールド『アウシュヴィッツの父と息子に』(越前敏弥訳) 河出書房新社 9/27刊 2900円
著者は、デビュー作のミステリ『飛蝗の農場』がベストセラーになった。その後2015年からは歴史ノンフィクション作家としても活動し、数多くの著書を刊行している。本書は「アウシュヴィッツに収容された父を追い、家族がいるところに希望があるとして、父を守るため、息子自らがアウシュヴィッツ行きを志願した」─さてそこでの行動は、手に汗握る感動のノンフィクション!