シンポに参加した青木理さん(左)と金城正洋さん
JCJ沖縄は7日、那覇市の沖縄大学で、同大と共催で公開シンポジウム「米兵事件はなぜ隠されたのか―見えない壁の正体」を開催した。昨年12月に発生し、今年6月まで隠ぺいされていた米兵による16歳未満の少女への性暴力事件を巡って、なぜ半年間も隠ぺいされたのかに迫った。オンラインと合わせて約300人が参加した。
シンポはJCJ沖縄世話人の黒島美奈子さんの進行で、事件を最初に報じた琉球朝日放送の、当日のデスクだった金城正洋さんが、報道に至る経緯を報告した。
6月23日の沖縄戦慰霊の日の翌日24日、担当記者が地裁の期日簿のチェックをして事件を知り、25日に起訴状の開示を受け、昼ニュースで報じた。すぐに各社が速報に動き、半年間の隠ぺいへの怒りが広がっていった。
金城さんは、県民の知る権利のために働くメディアとして、ルーティンをしっかりこなし、問題意識を研ぎ澄ましていることの重要性を指摘した。
県警や政府が隠ぺいの理由にした被害者のプライバシーについて「報道する側は常に最大限の配慮をしている。被害者はケアされ、加害者は罰せられないといけない」と隠ぺいの問題点を指摘し、人権に最大限に配慮しながら知る権利を行使する重要性を強調した。
続いてジャーナリストの青木理さんが近年の警察と政治の関係について話した。3人の内閣官房副長官の官僚から起用される1人が、安倍政権では公安警察出身の人物が長年権勢を振るい、岸田政権になっても構図は変わっていないと指摘した。
「警察はあらゆる情報を持っているので、政治にとって便利だ。警察は政治と一体化し、この間、特定秘密保護法などの治安法を次々と手に入れた」と説明した。そして、推測だとしたうえで「米兵事件の情報は警察庁、官邸でコントロールされているのではないか」と指摘した。
黒島さんは、この30年の沖縄の米兵の性犯罪を巡る報道を調べた結果を紹介した。辺野古新基地問題を巡って沖縄県政と政府の関係が険しくなった2017年ごろから米兵事件が広報されなくなり、広報されても発生から時間がたっているケースがあった。
青木さんは「この事件には日米関係のいろんな問題が凝縮している」と述べた上で、地位協定が改定できない背景として日本の人質司法などの問題も考えるべきだとした。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年9月25日号