マスコミを動員した自民党総裁決選投票を経て、石破茂氏が総裁に就任した。最初から波乱含みである。
石破氏は総裁就任後に、10月27日投開票の日程で衆院選を実施すると表明。読売10月1日社説は「異例ずくめの船出である。首相就任前に衆院解散・総選挙の断行を表明するのは前代未聞」と。毎日5日社説も「まだ解散の権限を持たないにもかかわらず、就任前に衆院選の日程を表明したことは、憲政の常道に反する」と批判する。石破氏は総裁選では、国民が判断する材料を提供するのは新しい首相の責任などと述べていた。
石破首相は所信表明演説で「ルールを守る」と述べたが、政治不信を招いた裏金問題の解明に及び腰。「安倍派を中心とした反発に追い込まれ」(朝日4日)、衆院選で裏金議員を原則公認を決めたが、世論反発で一部非公認に軌道修正。
総裁選の最中に明らかになった旧統一教会と自民党との組織的な関係についても、演説は素通り。総裁選で健康保険証廃止について「併用も選択肢として当然だ」と述べていたが、「従来の日程通りに進めていきたい」と。相次ぐ豹変、手のひら返しに、国民の批判が高まるばかりだ。
総選挙では裏金問題はもちろんだが、安倍政権から続く軍拡、改憲策動、経済財政運営のあり方などが問われる。とりわけ岸田政権が進めてきた軍拡、防衛費激増は、今後の日本の行方を左右する。物価高に苦しむ国民生活にも大きな影響をもたらす。大軍拡は石破首相の持論であり要注意だ。
野党の動向も問題だ。立憲民主党代表に就任した野田佳彦氏は、保守層の取り込み、日本維新の会や国民民主党への接近を図るが、与党と差別化できるのか。なかでも落ち目の維新との「住み分け」などの主張は、論外だ。わが国が歴史の岐路に立つ中、野党のあり方自体が鋭く問われている。
大阪・関西万博についても触れておく。開幕予定まで半年を切ったが、いまだ盛り上がりに欠け、入場券販売も低迷を続ける。会場の大阪湾の人工島・夢洲は災害リスクが大きく、安全で安心できる万博なのかが地元で話題になる。万博、夢洲IRカジノについても、メディアの姿勢を厳しくチェックしたい。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年10月25日号