2024年11月07日

【おすすめ本】 高野 真吾『カジノ列島ニッポン』―「IRの真の姿」と危うさと ギャンブル大国の未来に警鐘=栩木誠(元日本経済新聞編集委員)

 「カジノ開業ほぼ確実に 大阪IR運営事業者、解除権破棄へ調整」(「毎日新聞」、9月7日付)。不評が渦巻き開催反対の声が高まる一方の大阪万博の陰に隠れるかのように、2030年秋の開業に向け、着々と準備が進められている大阪IR(統合型リゾート)の大きな動きが、こう報じられた。万博と同様、世論の強い反対を無視しての強行策だが、カジノ問題の実態の解明を試みた、本書は時宜を得た1冊である。

 闇カジノで足をすくわれた友人の存在が、「カジノ取材の原点」とする著者の取材は、大阪市をはじめ市民の力で撤退した横浜市、不認定の長崎市、アジアの代表的IRのシンガポール、マカオなど内外各地に及ぶ。豊富な取材を通じて、描き出そうとしたのが、一般にはあまり知られていない「IRの真の姿」。そして、「ギャンブル依存症の日本人がこれから大量に生み出され」ようとしている、「ギャンブル大国」日本の現実だ。

 ただ、大阪市や横浜市などで、当事者の生の声を丁寧に聞き取り、紹介することに重きを置いているためか、カジノ問題への本質的な切込みには、やや弱さを感じる。その中でも、着目すべきは、未だ消えぬ「東京カジノ構想」の1章である。

 小池都政の下、いくつかの「カジノ予定地」が構想されるなど、都民に直接目に触れない水面下で、“東京IR”の動きが、うごめいているのである。構想の現場を歩き、関係者や反対運動の市民らから丹念に取材した著者のレポートは、大阪が決して「対岸の火事」でないことを実感させる。(集英社新書、1100円)
             
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posted by JCJ at 02:00 | TrackBack(0) | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする