今年から新たに「ネットメディア」部門が加わりJCJ賞は、「新聞」「出版」「放送・映像」「ネットメディア」の4つの分野を対象に選考することとしました。
各分野から、様々な作品が推薦されてきて、選考委員会が9月1日に開かれました。もちろん賞に選ばれなかった作品が劣っていたということではありません。それぞれが、ひとつのテーマを追って懸命に作り上げた素晴らしい作品であったことは間違いありません。
ここでは、惜しくも選に漏れた作品を中心に、今年の傾向などを振り返ってみたいと思います。
◎新聞部門
琉球新報社の「うるま市石川陸自訓練場新設計画の断念に至る報道と特定利用港湾・空港への石垣港、那覇空港指定の特報」は見事なキャンペーン報道でした。
東京新聞社会部特別取材班「東京電力福島第一原発事故と柏崎刈羽原発についての報道」は今回に関してはやや焦点が拡散している点で、残念ながら受賞を逃しました。
◎出版部門
今回は全体として、素晴らしい著作が揃っていて受賞作との差異はほんのわずかだったと思われます。
大森淳郎さんの『ラジオと戦争 放送人たちの「報国」』(NHK出版)作品の素晴らしさは衆目の一致するところで、著者の苦悩をもあぶり出した作品でした。
『ルポ低賃金』(東海林智著、地平社)も素晴らしいルポ作品でした。
半田滋さんの『台湾侵攻に巻き込まれる日本 安倍政治の「継承者」岸田首相による敵基地攻撃・防衛費倍増の真実』(あけび書房)は、緻密な解説が目からうろこの著作です。安倍政権から菅政権、そして岸田政権へと移る中で、ますますキナ臭さを増す日本の防衛安保政策の危うさを、資料を基に、しっかりと捉えています。
◎映像・放送部門
NHKの人材と機動力を投入した作品が図抜けていました。受賞作の『冤罪≠フ深層』以外にも、Nスぺ『未解決事件File10 下山事件第2部』も戦後最大の謎に挑む迫力あるものでした。
同じNHKのETV特集『膨張と忘却〜理の人が見た原子力政策』も、故人(吉岡斉さん)の遺した様々な文献資料を基に、日本の原子力政策の根本を問い直す視聴者を引き込む出来でした。
NNNドキュメント24『半透明のわたし 生きる権利と生活保護』(北日本放送)も、貧困問題に焦点を定めた取材姿勢には好感を持ちました。この取材視点は大切なものと感じました。
◎ネットメディア部門
新部門の応募作品は、8本。候補作品を探しましたが、ネット本来の機動性、動画や映像を加味するような新しい試みは、あまり見当たりませんでした。
「経口避妊薬」の問題が調査報道という面で推薦作品となりましたが、ここからの新しい展開がこれからの課題だと感じました。
ネットメディア部門は、まだ認知度が浅く、これからもっと多くの応募作品が集まることを期待します。
来年度も、もっともっと優れた作品に出会えることを期待しております。
他に最終選考作品ではありませんが、放送・映像化されたもの、新たな試みというべきものもありました。
◎映画・その他
映画「ヤジと民主主義 劇場拡大版」(北海道放送)や、福島から問う「ALPS処理水」放出(相馬高校放送局)は地域出版社ウネリウネラ社の協力という珍しい形で、60分の映画にまとめられ、東京の地域映画祭の江古田映画祭で上映されました。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年10月25日号