会社のデータベースで上脇博之+政治」で検索すると、約260件もの記事があった。最初の記事は1999年2月の「政党助成金311億円のゆくえ」というワッペンの付いた記事だった。
後で贈収賄に発展した元防衛政務次官(当時)の政党助成法違反事件をきっかけに、制度の様々な問題を検証して報道した際、コメントを求めたのだった。以来、25年にわたり、上脇さんには編集各部でお世話になってきたのだと痛感する。
自民党の裏金事件の背景として「政治にカネがかかるから」とよく語られるが、本書を読むと、それは安易な答えだと思えてくる。政治家が裏金作りに走るのは「裏金が簡単に作れるから」など、4つの見立てを挙げて解き明かしていく。
政治家は歳費や経費に恵まれており、さらに特に自民党はお金が集まりやすいため、政治家は一種の「資金中毒者」になっているとの分析は深い。それゆえに効果的な改革は「資金中毒に陥っている国会議員たちに、これ以上余分な金を与えないこと」と明快だ。
政治とカネの問題が繰り返される原因を、法律の抜け道にとどまらず、そもそも90年代の政治改革にあるとの徹底分析は鋭く説得力がある。
「小選挙区制の導入で権力の官邸一極集中が進み、政治は憲法が想定する議会制民主主義とかけ離れた」。その上で提唱する「完全な比例代表制」による選挙制度改革の考察は非常に興味深い。
なぜ長年の市民運動として100件を超す刑事告発を続けるのか。最も興味のあるその答えが、分かりやすさを重視した平易で丁寧な文章からひしひしと伝わってくる。