◆<トランプ勝利>で影響力が低下する米国大手メディアの苦悩
今回の大統領選挙で、トランプが「トリプルレッド」を手にした背景には、戦いの場を新たなメディアの戦場に移したからだとも言われている。ポッドキャスト(Podcast)やゲーム配信、サブスタック(Substacks)やティックトック(TikTok)などでのニュース配信や討論も含め、活用メディアが多様化し、新たな情報環境を作り出している。
選挙報道などでは、これまで主流だった新聞やテレビなどの大手メディアが、試練に立たされている。米国の成人の14%がティックトックから定期的にニュースを入手。18〜29歳の若年層に限れば、2023年には32%(2020年9%)へと跳ね上がっている。
こうした新メディアの多くは選挙期間中に、視聴者に向けて自信に満ちた解説をし、候補者への支持をバックアップするなど、従来にない役割りを果たした。その一方、一部の主流メディアは、どの候補者を支持するか、社説や論調をどうするか、内部での混乱や対立や苦悩が顕在化し、改めてジャーナリズムの誠実性や経営陣と現場の自主性をめぐる論争が巻き起っている。
◆驚くべきトランプ政権の閣僚人事─イーロン・マスク氏の狙い
来年1月から発足する第2次トランプ政権の閣僚人事が、次々に公表されている。わかっただけでも、その驚くべき経歴のメンバーが登用されている。まさにトランプ独裁・お気に入りの私的人事そのものだ。
典型がイーロン・マスク氏。「政府効率化省」トップに就く。大統領選では自らが所有するX(旧ツイッター)で約2億人のフォロワーに向け、連日トランプ氏への支持を訴え、巨額の政治献金までしている。彼は米電気自動車大手テスラ、米宇宙企業スペースXなどを経営する世界有数の起業家。
おそらく彼は自社の業績・利潤の拡大に向け、政府と一体となって、辣腕を振るうだろう。ブラジルや英国、カナダなど世界からXへの批判や規制・停止の動きが強まっているだけに、まずは「効率化」をタテに米国内のXからの撤退・批判封じの画策に手をつけるだろう。
そのためにはヘイトニュースの意識的な拡散、メディアの再編、さらには「言論・表現・出版の自由」にまで介入する危険は大いにある。米国だけではない、世界に波及しかねない。楽観は決して許されない。
◆10月期の書店・店頭売上げ96.0%(前年10月比)
10月期は、雑誌部門で週刊誌が前年超えとなり、特にゲーム実況者のキヨが表紙を飾る週刊誌「anan (アンアン)」(マガジンハウス・2024 年10月9日号)が、<ときめきカルチャー2024>と題した特集が好評で、雑誌全体の売上げを牽引し、前年10月比98.5%となった。雑誌の落ち込みを防ぐ結果となった。
書籍は前年10月比97.2%、総記・ビジネス書が前年超えし、ビジネス書では安藤広大『パーフェクトな意思決定』(ダイヤモンド社 9/25刊)などが好調。コミックは、芥見下々「呪術廻戦28」(ジャンプコミックス)など、人気作品の新刊が売上げを伸ばしたが、前年には及ばない結果となった。
◆地元の図書館でも本が買える?「販売窓口」設置へ
全国的に書店が減少し、店舗がない自治体もある中、図書館で本を販売する実証実験が来年から始まる。図書館の利便性を向上させ、地域の人が本に親しむ機会を増やすことが狙い。実証実験は、各地で図書館サービスを手がける図書館流通センター(TRC)と出版取次大手の日本出版販売(日販)が、複数の図書館で行う。
図書館の貸出窓口とは別に、購入用の窓口を設ける。販売用の書籍を用意したり、図書館で読んで気に入った本を注文できたりする仕組みを整え、インターネット通販を利用しにくい児童生徒や高齢者が手軽に本を購入できるようにする。
◆小学館から文芸誌「GOAT」(月刊)が創刊・11/27発売
電子書籍・デジタル化の時代に、あえて紙の文芸誌「GOAT」を刊行! 紙を愛してやまない《ヤギ》にちなんで誌名をGOATとし、<Greatest Of All Time(=史上最高の)>文芸誌を目指す。ジャンルや国境を越えて素晴らしい執筆陣が結集。
小説、詩、短歌、エッセイ、哲学……など充実したコンテンツに加え、第1号の特集「愛」をテーマに、作家の小池真理子さんと俳優の東出昌大さんの対談も。さらに「愛と再生」をテーマに気鋭の詩人・作家6名が詩を書くスペシャル企画に、最果タヒさんの参加も決定。用紙は米のもみ殻を再利用して作ったサステナブルな紙を使用している。
◆朝日出版社の買収を巡る不可解な動きと労組結成
東京・九段下にある朝日出版社で、不可解な買収騒動が起きている。これまで大学向けの教科書や書籍を刊行し実績を上げてきた。その創業者の会長・原雅久氏が昨年4月に死亡。遺族(2名)が創業者100%保有の株を相続。今年の5月、合同会社戸田事務所が買収の意向を示し、現社長に遺族からの株式譲渡と買収金額などを提示。
だが当時の取締役会は全員一致で、この買収の不透明さや低い金額などを理由に、株式譲渡に反対。従業員も反対の意思を会社側に伝え、労働組合を結成し出版労連に加盟した。ところが9月に入って取締役6名全員の解任。労働組合も新たな経営役員に団交を再三申し入れているがナシのつぶて。
しかもいつの間にか「朝日出版社HD」という会社が、朝日出版社と同じ住所で新規に設立登記されていたのだ。今後の動きがどうなるか、予断を許さない緊迫した状況が続く。