与党が過半数割れという歴史的な衆議院選挙になったのに、投票率は極めて低調。テレビの選挙報道も、盛り上がりに欠けたことは否めない。
与党敗北の大きな要因は、やはり「しんぶん赤旗」のスクープ「裏金非公認に2000万円」だろう。自民党の二枚舌に有権者の怒りが爆発した格好だ。このニュース、新聞や民放各社はほぼすぐに後追い報道をしたが、なぜかNHKは『ニュース7』でも『ニュースウオッチ9』でも一切触れず、それなのに10月24日の『ニュースウオッチ9』は、各党党首の選挙戦を報じる中で、自民党の石破茂総裁が「(2000万円は)政党支部に出したもので非公認候補に出しているのではない」と街頭演説で弁明していたことだけを報じるという“掟破り”に出た。27日の開票特番では各局ともこの2000万円の問題を自民党議員らに生中継で質問したりしていたのだから、それだけ重大なニュースをちゃんと扱わないで報道機関としての看板を掲げられるのか、と首をひねりたくなる。
民放の開票特番は、自民党系議員の「裏金ランキング」を見せたフジテレビや、議員に「裏金」マークを付けた日本テレビやテレビ朝日と、ちょっと悪ノリが目についた。テレビ東京は恒例の「池上無双」が出演せず。TBSは開票速報と日本シリーズ第二戦中継の合体特番で、ときには左右に並べた二画面放送だったが、これは選挙速報を見たい視聴者にもプロ野球ファンにも不満の残ったのではないだろうか。
しかし、そのTBSでは、11月2日放送の『報道特集』が出色だった。低投票率の要因の一つにメディアの報道もあったことを検証した企画だ。
20年前の「小泉郵政選挙」当時と今回とで、選挙公示日翌日の報道時間数を調査会社のデータに基づいて比較すると、ほぼ半分程度に減少していたという。これまでの間に自民党側からテレビ側にさまざまな圧力があったこと、その背景として政府が放送免許を直接掌握している問題があることなどを、砂川浩慶・立教大教授が解説。選挙期間中のテレビ報道が乏しいことは大学生らも指摘していた。ネット活用が奏功して議席を増やしたとされる国民民主党の玉城雄一郎代表はインタビューで、テレビの選挙報道が短時間なためキャッチフレーズ型の政治となる弊害を語っていた。
こうしたテレビの自己検証で、問題点のありかははっきりした。それではこれを乗り越えるために一体どうするのか、来年の参院選報道が改めて問われることになる。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年11月25日号