ノンフィクション・ジャンルからチョイスした気になる本の紹介です(刊行順・販価は税別)
◆川崎興太『福島の原風景と現風景―原子力災害からの復興の実相』 新泉社 12/9刊 3000円
「福島の原風景と…」.jpg 福島復興の光と影。時間の経過とともに福島原発事故はローカルな問題となり、忘却の忘却が進む。まるで事故はなかったかになりつつある。都市計画、コミュニティデザイン、社会学などの観点から、福島の復興に関する多彩な原風景と現風景を提示し、福島の問題を当事者として経験する手がかりを提供する。著者は福島大学教授、専門は福島の復興。
◆小林真樹『深遠なるインド料理の世界』 産業編集センター 12/13刊 1800円
「深淵なるインド料理の世界」.jpg 甘いバターチキン、デカすぎるナン、流行りのビリヤニ。インド料理のルーツを求めて、インド亜大陸を東奔西走。元バックパッカーの著者が足繁くインドに通い、ディープなインド料理を求めて、隅々まで食べ歩いた、インドへの深い愛と溢れ出す知識を詰め込んだ食エッセイ。インド食器・調理器具の輸入卸業を主体とする有限会社アジアハンター代表。
◆瀬川至朗編著『「忖度」なきジャーナリズムを考える』早稲田大学出版部 12/13刊 1800円
「忖度なきジャーナリズム…」.jpg 統一教会と政界の癒着、裁判所の事件記録廃棄問題、PFAS汚染、精神科病院の「死亡退院」、南米アマゾンの「水俣病」、新型コロナワクチンの健康被害、性加害問題などなど。権力や権威に屈することなく問題の本質を追い、他のメディアが報じなくてもニュースを伝え、固定化した社会に諦観せず小さな声に光を当てるジャーナリストたちの軌跡をたどる。早稲田大学・人気講座「ジャーナリズムの現在」に登場した9人の講義録。
◆高世仁『ウクライナはなぜ戦い続けるのか─ジャーナリストが戦場で見た市民と愛国 』旬報社 12/16刊 1700円
「ウクライナはなぜ…」.jpg 「ここは私の国です―自由を失うわけにはいきません。私たちは政府も大統領もあてにしていません」─ロシアの軍事侵攻が始まって2年半以上、ウクライナの人々は兵士、民間人ともに現在も粘り強い抵抗を続けている。ボランティアとして、独自に兵士や激戦地の住民へ支援を行う者も少なくない。報道・ドキュメンタリー番組を数多く制作し現在はフリーの著者が、ウクライナを現地取材し戦う彼らの姿を伝える。
◆江渕 崇『ボーイング 強欲の代償─連続墜落事故の闇を追う』新潮社 12/18刊 2200円
[ボーイングの…」.jpg 最新鋭旅客機はなぜ墜落したのか? アメリカ型資本主義が招いた悲劇に迫る。2018年にインドネシア、2019年にエチオピア、ボーイングの旅客機737MAXが立て続けに墜落。事故後、墜落原因となった新技術の欠陥が判明する。なぜアメリカを代表する企業は道を誤ったのか? 株主資本主義の矛盾をあぶり出し、日本経済の行く末を問うノンフィクション! 著者は朝日新聞記者。国際経済報道や長期連載「資本主義NEXT」を主に担当。
◆朝日人文社会部編『ルポ 子どもへの性暴力』 朝日新聞出版 12/20刊 2000円
「ルポ子どもへの性暴力」.jpg 子どもが性暴力に遭う"場面"は身近に潜む。家庭、学校、サークルなどで頻発する実態に迫る。朝日新聞連載「子どもへの性暴力」は、大きな反響を呼んだ。その迫真のルポを書籍化。家族や教師による性暴力、痴漢や盗撮、JKビジネス、男児の被害、デートDV──、被害者たちが語ったこととは何か。誰も思い描けない、想像しえない現実の恐ろしさに身がすくむ。
◆斎藤文彦『力道山─「プロレス神話」と戦後日本』岩波新書 12/24刊 960円
力道山.jpg 空手チョップを武器に外国人レスラーと激闘を繰り広げ、戦後日本を熱狂させた力道山。大相撲から、アメリカで大人気を博していたプロレスへ転じ、テレビの誕生・発展とともに国民的ヒーローとなった。神話に包まれたその実像とは。そして時代は彼に何を仮託したのか。1963年12月15日、力道山が刺されて39歳で死去するまでの軌跡を、長年にわたる取材の蓄積と膨大な資料を駆使して描き出す。著者は1962年生まれ、早稲田大学や筑波大学の大学院でスポーツ科学を学び、現在プロレスライター。
◆永田浩三『原爆と俳句』大月書店 12/25刊 2800円
「原爆と俳句」.jpg 原爆を俳句で記録した人たちの軌跡をたどり、そこに込めた想いをすくいあげる。人類にとって、最も悲惨な原爆という重いテーマに対して、俳句がどのように向き合ってきたのか。原爆投下直後のヒロシマやナガサキで詠まれた俳句を通して、俳句で原爆を記録し、今も火種を絶やさずつなぐ人たちに、長年の取材を通して光をあてる。著者は武蔵大学教授(メディア社会学)。元NHKプロデューサー。