経済産業省が12月17日に発表した第7次エネルギー基本計画(エネ基)原案で最大限活用に転じた原子力発電所だが、肝心の原発建設費はどうなっているのか。今の物価高騰に伴い建設費も大幅にアップしている情勢を鑑みると相当に上がっているのは予想がつくが、具体的な数字を見てみたいと思い調べてみた。国際環境NGO「FoE Japan」のブログ(24年10月10日)によると、原発建設費は当初予算の数倍の数倍も膨らみ、今や数兆円は当たり前と報告している。各国の実例はこうだ。
●2023年本格稼働したフィンランドのオルキルオト原発3号機(出力160万キロワット)。建設期間が16年以上に及び、当初計画よりも12年も延長しました。当初見積もられていた建設費用は30億ユーロ(4,800億円)でしたが、実際にはその3倍以上の110億ユーロ(1兆7,000億円)にも達しました。
●23年7月と24年4月に相次いで稼働したアメリカのボーグル原発3、4号機(出力110万キロワット)。スリーマイル島原発事故後、米原子力規制委員会が30年ぶりに建設許可を出した原発として原子力産業界の期待を集めました。2013年に着工しましたが、工事は何度も遅延し、総工費は当初計画の2倍以上の計310億ドル(約4.4兆円、一基あたり約2.2兆円)にまで膨らみました。これはウエスチングハウス(WH)の経営破綻につながり、当時WHの親会社であった東芝は債務超過に陥る事態となりました。
ボーグル原発の建設費の膨張は、各世帯の電気代に転嫁されました。毎日新聞の連載「原発・出口なき迷走 米国編/1 電気代、年間100万円 怒り(その2)安価な電力“神話”は昔」(24年9月30日)では、驚くことに、同原発では、特例措置により、完成前から建設費の一部を電気料金に上乗せされており、1世帯平均で累計約1000ドル(約14万円)も支払われてきたというのです。そういう意味では、今日本で検討されているRABモデルの制度を先取りしたともいえます。
●07年に着工したフランスのフラマンビル原発は、12年に完成予定でしたが、さまざまなトラブルが発生。工事が大幅に遅れ、17年後の24年9月に稼働しました。建設予算は30億ユーロ程度でしたが、総費用は132億ユーロ(約2.1兆円)に達しました。
●イギリスで建設中のヒンクリーポイントC原発でも、工事がどんどん遅延しています。16年5月当時、EDFエナジー社は2基で180億ポンドと試算していましたが、24年1月段階では、総工費は310〜340億ポンド(約5.8〜6.4兆円)に増加しました。当初25年までの運転開始を予定していましたが、30年前後に延期。物価上昇率を考慮すれば、一基当たり約4.6兆円になると見込まれます。
翻って日本はどうか。政府の「発電コスト検証ワーキンググループ」では原発の発電コストの前提として原発建設費用+追加安全コストを6,169億円としています。「これは最近の世界の原発の建設費からみると、かなりの過小評価」と分析している。
建設費の爆上がり≠ヘ結局、利用者の電気料金に上乗せというツケが回されることになる。原発コストは安いはウソだ。