放送番組の作り手と、受け手の双方向で意見交換する場を目指す「放送を語る会」が11月末「敗戦から79年今改めて戦争と平和を考える」をテーマに、コロナ禍をはさみ5年ぶりの開催した。
講師はNHKエデュケーショナルでプロデューサーを務める塩田純さん=写真=。この夏放送されたETV特集「無差別爆撃を問う」を取り上げ、具体的に検討した。
長年、日本とアジアの近現代史をテーマにNHKスペシャルやETV特集などの作品を制作してきた塩田さんは、裁判の再検証を進めている神奈川県弁護士会の動きを追いながら、当時の裁判の論点を示し、日本の弁護団が「名古屋空襲や台湾空襲など米軍の無差別爆撃が戦時国際法に違反するのではないか」と指摘していたことを明らかにした。そのうえで視聴者に、国際社会が今も止められないでいる無差別爆撃について考えてもらいたいと、ロシアのウクライナ侵攻、イスラエルのガザ攻撃など具体例を挙げ訴えた。
日中戦争やアジアとの戦後補償、日韓問題、昭和天皇と戦争、憲法9条など多岐にわたる番組を制作してきた塩田さんの番組作りの姿勢は「一次資料と証言で事実を明らかにしていく」こと。「日本のジャーナリズムは戦争の被害は多く語るが、日本の加害の歴史については弱い。それを突破していきたい」と話した。
塩田さんは「ジャーナリズムは過去から何を学び取ったのかを伝えていかなければならない」。「一方で戦争体験を語れる証言者が高齢で相次いで亡くなっていく。証言を記録するというやり方はもうできない。ジャーナリズムはそのための何らかの方法論を考えていかなければならない」と最後に提起した。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年12月25日号