2025年01月26日
【寄稿】Amazon 配達無料の裏側で‥‥巨大IT企業と配達員=内田聖子さん(アジア太平洋資料センター〈PARC〉共同代表)
11月29日、東京都目黒区のアマゾンジャパン合同会社本社前に、Amazon配達員やその支援者、弁護士、市民ら60人ほどが集まった。この日は世界各国でAmazonはじめネットショッピング・サイトで行われる「ブラックフライデー」と呼ばれる大規模セール期間中。配達員として働く労働者は過酷な数日間の真っただ中にいる。
日本におけるAmazon配達員はアマゾンジャパン社に直接雇用されておらず、一次・二次下請けの配送会社と契約する「個人事業主」であるケースが多い。本来は裁量での労働が認められるべき契約だが、実態は大きく異なる。アマゾン社が推奨する専用のアプリで配送ルートや荷量を管理され、それをこなせないと仕事を終えることができない。1日200個以上の荷物を配送するため、休憩も取れない状態で10〜12時間も働く。1個につき3分程度で配達するために急いで運転することで事故のリスクも高く、また捻挫や腰痛など身体への負担も大きい。しかし配達員たちは、直接雇用される「労働者」には保障されるはずの雇用保険や残業代などを得ることはできない。
毎日大量の荷物を積む配達員に余裕はない=横須賀市
2022年6月、横須賀市・長崎市の配達員たちは、自身の労働者性をアマゾン社に認めさせ、労働環境を改善したいとの思いで「アマゾン配達員労働組合」を結成。同社に対し団体交渉を申し入れた。しかし、会社側は「配達員は従業員ではない」と組合の要求を無視、団体交渉拒否姿勢を崩さず居直り続ける。
2022年6月横須賀市で「アマゾン配達員労組」が結成された
こうした中で2023年9月、アマゾンの配達中に負った怪我について労働基準監督署が労災認定を出した。これは配達員の労働者性を認めた、画期的な判断である。2024年には横須賀市の組合員らが一次下請け会社に対し未払い残業代を求める裁判を提訴した。
Amazonをめぐる問題は、日本だけでなく国際的に大きな運動となっている。2020年11月、ブラックフライデーの期間中に世界のAmazon倉庫労働組合や配達員、Amazonブランドの衣料品を生産する縫製工場の労働者らが一致してアクションをする国際キャンペーン「Make Amazon Pay」運動が始まった。今年は世界30カ国、200カ所以上で同時アクションが行われた。冒頭のアクションはその一環である。労働問題だけでなく、Amazonのプラスチック包装や膨大な電力を消費するデータセンターが環境負荷をかけていると環境活動家も運動に参加している。
私たちが「便利さ」を享受する一方、その裏に過酷で不公正な労働があるのだとしたら、消費者・利用者も決して無関係ではない。多くの人が巨大IT企業に公正で倫理的なビジネスを求める国際的な運動の一員となって、この問題に取り組む必要がある。
◇
2023年11月、ブラックマンデーのMake Amazon Pay世界同時アクション。東京都目黒区のアマゾンジャパン合同会社に向かう
問題提起のDVDも
アジア太平洋資料センター(PARC)は、DVD『Amazon配達員―送料無料の裏で』(土屋トカチ監督)をリリース。消費者・市民・学生などに問題提起している。自主上映会も可能だ。
詳細は下記のURLにアクセスを。https://parc-jp.org/product/amazon/
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年12月25日号