2025年02月13日

【Bookガイド】2月の“推し本”紹介=萩山 拓(ライター)

  ノンフィクション・ジャンルからチョイスした気になる本の紹介です(刊行順・販価は税別)

◆望月衣塑子『軍拡国家』角川新書 2/10刊 900円
 軍拡に舵を切るこの国で、私たちの生活はどう変わる? 5年で43兆円の防衛費増、敵基地攻撃能力の保有など、周辺諸国の脅威が声高に叫ばれる中、専守防衛という国の在り方は大転換した。防衛問題を追い続けてきた著者による最新レポート。
 著者は東京新聞社会部記者。入社後、東京地検特捜部などを担当。官邸での官房長官記者会見で、真実を明らかにするべく鋭い質問を続ける。現在は社会部遊軍記者。
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◆朝日新聞取材班『ルポ 大阪・関西万博の深層─迷走する維新政治』 朝日新書 2/13刊 900円
 4月に開幕する大阪・関西万博。必死なてこ入れで、お祭りムードが醸成されるだろう。しかし、本当にそれでいいのか。会場予定地での爆発騒ぎや、建設費の2度の上ぶれ、パビリオン建設の遅れなど、問題が噴出し続けた。巨額の公費をつぎ込んだからには、成果は厳しく問われるべきだし、その出費や使いみちも検証されるべきだ。。朝日新聞取材班が万博の深層に迫った渾身のルポ。
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◆宮崎拓朗『ブラック郵便局』新潮社 2/17刊 1600円
 異常すぎるノルマ、手段を選ばない保険勧誘、部下を追い詰める幹部たち。巨大組織の歪んだ実態に迫る驚愕ルポ。街中を駆け回る配達員、高齢者の話に耳を傾け寄り添うかんぽの営業マンなど、利用者のために働いてきた局員とその家族が疲弊し追い込まれている。窓口の向こう側に広がる絶望に光を当てる。
 著者は京都大学卒。西日本新聞社入社。「かんぽ生命不正販売問題を巡るキャンペーン報道」で第20回早稲田ジャーナリズム大賞。現在は北九州本社編集部デスク。
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◆今村美都『「不」自由でなにがわるい─障がいあってもみんなと同じ』 新日本出版社 2/20刊 1500円
 本書の主人公は、重度の脳性まひがある「ともっち」こと山下智子さん。24時間介助が必要ですが、楽器も弾くし、水泳もするし、ゲームもする。サッカーJリーグの観戦にも出かける。障害があるからできないわけじゃない、工夫と行動でみんなと同じをやってきたともっちさんの半生記はすごい!
 著者は津田塾大学国際関係学科卒、早稲田大学大学院演劇映像専修修士課程修了し、ダンス雑誌の編集者に。その後、医療コンサルを手がけるIT企業へ、そして医療福祉ライターとして独立。
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◆油井大三郎『日系アメリカ人─強制収容からの<帰還>』岩波書店 2/21刊 2900円
 1942年2月19日。米国大統領ローズヴェルトの発した立ち退き令が引き金となり、強制収容所に送られた日系アメリカ人。極小マイノリティであるばかりか、収容体験を葬り去るべき「トラウマ」として抱え込んだ彼らが、なぜ謝罪と補償(リドレス)を実現できたのか。アメリカ現代史の第一人者である著者が、30年にわたって追ってきた研究の集大成をまとめた画期的な書。
 著者は東京女子大学現代文化学部特任教授、東京大学名誉教授。
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◆伊藤和子『ビジネスと人権─人を大切にしない社会を変える』岩波新書 2/25刊 1000円
 人を人とも思わないやり方で搾取し蹂躙する社会が国内外の企業活動で生じている。企業は国際人権基準を尊重する責任を負い、国家には人権を保護する義務があり、人権侵害には救済が求められる。私たち一人一人が国連の「指導原則」が示す「ビジネスと人権」の発想を知り、企業風土や社会を変えるための一冊。
 著者は国際人権NGOヒューマンライツ・ナウの副理事長、ミモザの森法律事務所所属弁護士。
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posted by JCJ at 02:00 | TrackBack(0) | 出版 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする