2025年02月16日

【国民発議制度創設】有権者の請求で国民投票実施 国会に議連、模擬投票も=小石 勝朗(ライター)

国民投票に関する議連の会議風景.JPG

 特定のテーマについて一定数の有権者が請求すれば国民投票が実施される「国民発議」制度の創設へ向けた動きが活発化してきた。国会議員による超党派の議員連盟が昨年暮れに発足=写真・小石勝朗撮影=。市民団体はウェブで模擬投票を行い、制度の周知に注力している。

「諮問型」を想定
 「『国民発議』制度の導入を目指す超党派議員連盟」=には、自民、立憲民主、維新、国民民主など7会派の衆・参院議員約20人が入会の意向を示している。設立総会で共同代表に船田元・衆院議員と桜井充・参院議員(ともに自民)、杉尾秀哉・参院議員(立憲民主)を選んだ。
 当面は、海外の事例調査や課題のあぶり出し、識者の意見聴取などに取り組み、制度の内容を固めて法案を作成することを目標にしている。総会に出席した議員からは「民主主義を根づかせる手段になる」といった声が出た。
 
 憲法41条は国会が「唯一の立法機関」と定めており、選挙による間接民主制を採用しているとして、国民投票のような直接民主制の手法に抵抗感を抱く国会議員も多い。それだけに、国会にこうした議連ができたのは新しい潮流と言える。

 制度化に当たっても同条との関係が問題になる。議連に参加する議員らは、国民投票の結果に法的な強制力を持たせるのではなく、政府や国会に尊重義務を課すにとどめる「諮問型」と位置づけることで、憲法との整合性は保てるとみている。間接民主制を補完する、との位置づけだ。

 国民発議が注目される背景には、政治や行政への根強い不信がある。内閣府の世論調査(23年11月)によると、国の政策に国民の考えや意見が「ほとんど反映されていない」との回答が26・1%、「あまり反映されていない」が49・6%。両者の合計は1年前より4・3㌽上がっている。
 国民投票の対象になるテーマとしては、たとえば夫婦別姓、原発、死刑などが想定される。選挙と違ってテーマごとに意思表示ができるため、実現すれば国民の政治参加を進め、不信の払拭にもつながると期待される。
 
 議連の結成を働きかけたのは、一般社団法人・INIT国民発議プロジェクト。「選挙の時だけでなく365日ずっと主権者でいるために発案・拒否・決定権を行使できる制度を」と22年に発足し、昨年末時点で1820人が賛同者登録している。

 INITは昨年12月の1週間、選択的夫婦別姓、消費税、紙の保険証、NHK受信料、死刑、インボイスの6件をテーマに、ウェブで模擬国民投票を実施した。事前に賛同者に何を発議したいか募り、希望を踏まえてテーマを設定した。
 各テーマについて賛否の代表的な意見をホームページに掲載。一部のテーマでは双方の論客による公開討論会も開くなど本番同様のしつらえにした。

 投票数は、最多の夫婦別姓で3197件。「賛成」が9割近かったが、ほぼ全員が賛否両方の意見を確認したうえで投票していた。INITは「投票結果よりも、学び考えて1票を投じたことが意義深い」と捉えており、国民投票は熟議を促すと自信を深めている。
 年内に「原発・エネルギー」(3月)などをテーマにさらに3回の模擬投票を計画する。多くの人に国民投票を「実感」してもらうとともに、プロセスや結果を検証。議連とも連携して制度設計に生かしていく方針だ。
        JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年1月25日号
 

  

posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする