2025年02月25日
【JCJ12月集会】栗原氏講演 戦争は80年続行中だ 藤森氏 権力との対峙崩さず 中村氏 「報道愛国」か=古川英一
「メディアは8月に集中して戦争体験などを取り上げるが、戦闘は終わっても戦争の被害は続いている。広義の戦争は未完だ」毎日新聞記者の栗原俊雄さんが強い口調で訴えた。
JCJの12月集会は、太平洋戦争が始まった12月にちなみ「なぜ戦争を止められなかったか」をテーマに暮れの22日に東京で開かれた。講演に立った栗原さんは20年近く戦争や戦後補償の問題などの取材を続けている。
講演では、明治憲法体制には、首相が軍部を抑えることができずシビリアンコントロールが効かなかったシステムエラーがあったこと。軍部は願望の上に空想を載せた終戦構想しか持っていなかったこと。さらに総力戦になったらどのくらいの被害を受けるのか誰も想像できなかったことをあげ「もしメディアが政府・軍部の嘘やインチキを暴いていたら国民の世論も違っていたのではないか」と指摘した。だからこそ戦争を防ぐためには「メディアは戦争被害の実態を具体的な例で伝えていき、市民は政府に対して戦争が起きた場合にどのような被害があるのかを算定させて明らかにさせることが必要だ」と述べた。
続いて共にJCJの代表委員で、元朝日新聞論説委員の藤森研さんと、フォトジャーナリストの中村悟郎さんが加わりシンポジウムが行われた。
問題提起のなかで、藤森さんは新聞が戦争を止めることができなかった分岐点は満州事変にあり、その時「普選と軍縮」を唱えた朝日などが軍事行動の追認へと社論を転換したこと、絶対天皇制や、右翼・軍の圧迫、国民から孤立する恐怖などが臨界達したことが要因。では戦後の今はどうか「記事で『わが国』と書くように「権力への姿勢は変わったのだろうか」とメディアへの疑問を呈した。
一方、中村さんは戦後中国からの引き揚げの際に軍は真っ先に逃走して国民を守らなかったと、引き揚げ体験を語った。また自身も取材したベトナム戦争は、メディアがアメリカの世論を動かしたが、多くのジャーナリストが命を落とし、その半数近くの17人が日本人だったことを挙げた。一方で大手メディアの幹部が政府の委員になるなど戦前の「報道愛国」の現代版が進んでいると危機感を示した。
今も世界ではウクライナやガザで戦闘が続き、日本政府は中国への脅威を煽り軍拡へとひた走る。こうした状況に、栗原さんは「8月だけでなく、『常夏記者』として取材を続けていきたい」と決意を述べた。
藤森さんは「記者同士、メディア同士、そして国際間で共同、連帯していければ」と語った。そして中村さんは「自衛隊は基地内にシェルターを作っている。でも住民にシェルターはない。ではどこに逃げればいいのだろう」と疑問を投げかけた。
最後にJCJは集会アピールで「過去から学び、二度と戦争への道に踏み込んではならない、そのために、私たちが、日常の中でできることは何なのか」と問いかけた。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年1月25日号