インボイス制度を考える会は、制度による取引の実態を明らかにするためアンケート調査を3月29日から実施している。告知から2日間で4000件超の回答があった。同会は制度への危機感のあらわれとみている。目標回答は1万件。締切は4月11日(金)の予定。
↓アンケートはこちらから↓
https://forms.gle/5eJksFfHBdDuSnWY6
また、アンケートのQRコードを記載したチラシも用意
知り合いなどにぜひ案内を。
https://drive.google.com/drive/folders/1e9Mthc1xlSOVmhHCG7an-tmX1LzOfV2U?usp=sharing
以下はその要項。
【対象】フリーランス・個人事業主、経営者、会社員など、インボイス制度に関わるどんな立場の方でも参加可能
【所要時間】5〜10分ほど
【調査主体】インボイス制度を考えるフリーランスの会(問い合わせ先:stopinvoice2021@gmail.com)
【調査協力】株式会社七夕研究所
※主要な取引先との関係において答えてください。
※インボイス制度によって転職・廃業などをした方は、直近のお立場で回答してださい。
※書き込んだ内容・コメントなどは、個人が特定されないかたちで処理した上でメディアや国会議員などへ届けるほか当事者からの声として資料を公表する予定です。
2025年03月31日
2025年03月30日
【月刊マスコミ評・新聞】予算全体像の評価が分からない社説=白垣 詔男
政府の25年度予算案が3月4日、自民、公明、維新3党の賛成で衆議院を通過した。新聞各紙は5日(朝日、読売、産経)、6日(毎日、西日本)の両日、朝刊社説で「予算案通過」を論評した。しかし、「国会外での政党間の駆け引きが目に付き」(朝日)、その点に対する経過説明が主な内容で、どこの社説も、予算全体像の評価をしないで素通りしている。
予算案は、政府が国会に提出した日に各紙とも詳しい内容を載せているので、予算案が衆院を通過した日に、その中身を知らせなかったのか。もちろん、予算案の詳細について言及することは必要ないものの、全体像から指摘できる問題点や、改正すべきと判断できる点があれば、社説で訴える必要があるのではないか。
加えて、維新が要求して与党が譲歩した「高校無償化」については「公立離れや教育格差の拡大を招きかねないとの懸念がつきまとう」(毎日)、「公立離れの弊害、私立の授業料値上げを誘発する懸念が指摘されていた。高所得世帯が支援対象になることへの異論もある」(西日本)と書くが、いずれも新聞社として「高校無償化」に対する賛否は明らかにしていない。
また、合意に至らなかったものの国民民主が主張して与党の回答が「満額」とはならず、国民民主が予算案反対に回った「103万円の壁・所得制限撤廃」についての賛否も書いていない。
社説は、新聞社を代表して、各種事象に対して、どう考えどう対処したらいいのか、その事案の賛否を明らかにする欄ではないのか。そこをあいまいにしては、「社説欄は解説欄」と言われても仕方がない。
最近の「社説」は、この種の「解説」で終わるものが大半だ。あるニュースを取り上げて、それを論評するのではなく、経過を詳しく紹介するのはいいが、それをどう「切る」か。読者が社説を読む第一の目的は、そこにある。しかし、「経過と解説」で終わってしまう日が続くと読者の社説離れが起きる。従って「社説は読まれない」ことになってしまう。
新聞は「公平・公正」を掲げているからといって社説では、事案ごとに「どう判断するのか」を踏まえ、しかも「全体の評価」が分かる内容にしてほしい。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年3月25日号
予算案は、政府が国会に提出した日に各紙とも詳しい内容を載せているので、予算案が衆院を通過した日に、その中身を知らせなかったのか。もちろん、予算案の詳細について言及することは必要ないものの、全体像から指摘できる問題点や、改正すべきと判断できる点があれば、社説で訴える必要があるのではないか。
加えて、維新が要求して与党が譲歩した「高校無償化」については「公立離れや教育格差の拡大を招きかねないとの懸念がつきまとう」(毎日)、「公立離れの弊害、私立の授業料値上げを誘発する懸念が指摘されていた。高所得世帯が支援対象になることへの異論もある」(西日本)と書くが、いずれも新聞社として「高校無償化」に対する賛否は明らかにしていない。
また、合意に至らなかったものの国民民主が主張して与党の回答が「満額」とはならず、国民民主が予算案反対に回った「103万円の壁・所得制限撤廃」についての賛否も書いていない。
社説は、新聞社を代表して、各種事象に対して、どう考えどう対処したらいいのか、その事案の賛否を明らかにする欄ではないのか。そこをあいまいにしては、「社説欄は解説欄」と言われても仕方がない。
最近の「社説」は、この種の「解説」で終わるものが大半だ。あるニュースを取り上げて、それを論評するのではなく、経過を詳しく紹介するのはいいが、それをどう「切る」か。読者が社説を読む第一の目的は、そこにある。しかし、「経過と解説」で終わってしまう日が続くと読者の社説離れが起きる。従って「社説は読まれない」ことになってしまう。
新聞は「公平・公正」を掲げているからといって社説では、事案ごとに「どう判断するのか」を踏まえ、しかも「全体の評価」が分かる内容にしてほしい。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年3月25日号
2025年03月29日
【JCJオンライン講演】右派雑誌の現状と限界 講師:梶原麻衣子さん(編集者兼ライター)4月12日(土)午後2時から4時
■開催趣旨
現代の日本の右翼雑誌といえば、『WiLL』と『Hanada』の両月刊誌が代表格だろう。2004年11月創刊の『WiLL』は、『週刊文春』の編集長を務めた花田紀凱氏が立ち上げた。朝日新聞批判や嫌韓反中の特集記事で部数を伸ばし公称発行部数10万を超えたこともあったという。花田氏自身が安倍晋三首相のファンということもあって12年以降安倍政権応援を誌面に反映させた。ところが発行元のワック社長と花田編集長との編集方針の違いが原因で雑誌は分裂。飛鳥新社に移った花田氏は『WiLL』と体裁がそっくり『Hanada』を16年4月に創刊した。2つの月刊誌で花田編集長のもと13年余り編集に携わった現在、フリー編集者兼ライターの梶原麻衣子氏は、自らの体験記『「右翼℃G誌」の舞台裏』(星海社新書)を昨年11月に刊行した。「思想的に最右翼」を自認する梶原氏が「右派雑誌の現状と限界」を語る。
■講演者プロフィール:梶原 麻衣子(かじわら・まいこ) 編集者兼ライター
1980年、埼玉県生まれ。中央大学文学部史学科東洋史学専攻卒業。IT企業勤務後、月刊『WiLL』、月刊『Hanada』編集部を経て現在はフリーの編集者・ライター。13年余の編集部経験をまとめた初の著書『「右翼℃G誌」の舞台裏』(星海社新書)は『中央公論』主催の新書大賞で9位に。梶原さんの公式サイトは https://kajiwaramaiko.themedia.jp/。
■zoomにてオンライン 記録動画の配信有り
■参加費:500円
当オンライン講演会に参加希望の方はPeatix(https://jcjonline0412.peatix.com)で参加費をお支払いください。(JCJ会員は参加費無料)
■主催:日本ジャーナリスト会議(JCJ)
03–6272-9781(月水金の13時から18時まで)
https://jcj.gr.jp/
■JCJ会員の方はJCJホームページ・ユーザー登録をすることで記録動画をご覧になれます。
2025年03月28日
【オピニオン】大統領令乱発 トランプ政権2期目1か月 人類「共存」より「米第一」=丸山 重威
1月20日の就任から1カ月を経て、2期目のトランプ米大統領の政策が次第に明らかになっている。「ウクライナ戦争停戦」「ガザ休戦」などへの「努力」が宣伝されているが、「動機」は巨額な献金と引き換えに約束した「ウクライナのレアメタル開発」と「ガザ海岸のリゾート化」だとも取り沙汰されている。2月下旬までに発せられた大統領令や、覚書、宣言などは公私混同が目立ち、100本を超す乱発ぶりだ。並べてみると、その内容は、国際機関や取り決めからの脱退だけでなく、現代文明の歪みの中で、人類の将来を築くため合意されてきた原則を壊し、「共存」よりまさに「アメリカ第一」の路線を露骨に打ち出している。
目立つ「様子見」
石破首相は2月7日トランプ大統領と会談、共同声明を発表したが、普段政府寄りとされる新聞も「こうした独善的な言動まで、手放しで支持するわけに行かない。日本は、法の支配や国際協調の重要性を粘り強く米側に呼びかけていかねばならない」(読売)「トランプ氏に是々非々で対応すべきなのはいうまでもない。その中には‥‥気候変動や公衆衛生といったグローバルな課題も含まれる」(日経)と批判。多くの新聞の「トランプ流に物申したか」に同調した。しかしまだ就任後間もないこともあって、トランプ大統領の路線には「様子見」だ。
旧態然の国家観
トランプ氏が右翼的思想の持ち主であることは既に明解だが、2期目に当たっての言動は、「ガザは米国が領有する」「カナダを米国の州に」「グリーンランドを領有する」「パナマ運河を米国に」「メキシコ湾をアメリカ湾に」などいかにも旧態依然。
現地のネイティブ・アメリカンを武器で「制圧」して建国し、領土を拡張してきた旧帝国主義時代の発想だ。外国にも、国際法と将来の人類と地球を考える国際常識とは逆の軍隊とカネで世界を支配する政策ばかりだ。
関税にしても、米国の世界支配のために、他国のことは構っていられないという発想で、地球環境などはどうでもよくて「掘って掘って掘りまくれ」と宣言。「わが亡き後に洪水よ来たれ」の政策ばかり。しかもそのカネは、イーロン・マスクに代表されるように、自分に関わりがある大企業の経営者などが獲得する仕組み。戦争も、開発も、自分たちの利益のためには何でも進める構えだ。
問われる主体性
「トランプ流」は、問題を「実利」で考え、「ディール」で物事を処理する。大事なのは、日本が「日米同盟」頼みでなく、中国、東南アジア、韓国などと「立ち位置」を確認して、本当の国益のための外交を構築することだ。
外務省は「同盟国日本の防衛を確約させた」と得意げだが、中国、ロシアとの関係を優先する立場は、「アジアにおける米国の覇権」であって「同盟の絆」などではない。
戦後80年、戦争をしなかった日本、米国も戦争に使うことができなかった日本を改めて見つめ直し、「憲法9条を持つ日本」を旗印に、中国、韓国、東南アジア各国を米国と対等においた主体的な外交を取り戻すチャンスではないだろうか。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年2月25日号
目立つ「様子見」
石破首相は2月7日トランプ大統領と会談、共同声明を発表したが、普段政府寄りとされる新聞も「こうした独善的な言動まで、手放しで支持するわけに行かない。日本は、法の支配や国際協調の重要性を粘り強く米側に呼びかけていかねばならない」(読売)「トランプ氏に是々非々で対応すべきなのはいうまでもない。その中には‥‥気候変動や公衆衛生といったグローバルな課題も含まれる」(日経)と批判。多くの新聞の「トランプ流に物申したか」に同調した。しかしまだ就任後間もないこともあって、トランプ大統領の路線には「様子見」だ。
旧態然の国家観
トランプ氏が右翼的思想の持ち主であることは既に明解だが、2期目に当たっての言動は、「ガザは米国が領有する」「カナダを米国の州に」「グリーンランドを領有する」「パナマ運河を米国に」「メキシコ湾をアメリカ湾に」などいかにも旧態依然。
現地のネイティブ・アメリカンを武器で「制圧」して建国し、領土を拡張してきた旧帝国主義時代の発想だ。外国にも、国際法と将来の人類と地球を考える国際常識とは逆の軍隊とカネで世界を支配する政策ばかりだ。
関税にしても、米国の世界支配のために、他国のことは構っていられないという発想で、地球環境などはどうでもよくて「掘って掘って掘りまくれ」と宣言。「わが亡き後に洪水よ来たれ」の政策ばかり。しかもそのカネは、イーロン・マスクに代表されるように、自分に関わりがある大企業の経営者などが獲得する仕組み。戦争も、開発も、自分たちの利益のためには何でも進める構えだ。
問われる主体性
「トランプ流」は、問題を「実利」で考え、「ディール」で物事を処理する。大事なのは、日本が「日米同盟」頼みでなく、中国、東南アジア、韓国などと「立ち位置」を確認して、本当の国益のための外交を構築することだ。
外務省は「同盟国日本の防衛を確約させた」と得意げだが、中国、ロシアとの関係を優先する立場は、「アジアにおける米国の覇権」であって「同盟の絆」などではない。
戦後80年、戦争をしなかった日本、米国も戦争に使うことができなかった日本を改めて見つめ直し、「憲法9条を持つ日本」を旗印に、中国、韓国、東南アジア各国を米国と対等においた主体的な外交を取り戻すチャンスではないだろうか。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年2月25日号
2025年03月27日
【トランプ政策】米大統領就任以来、2月下旬まで打ち出した主な大統領令、覚書、布告=丸山 重威
【関税・通商】
・不公正貿易を調査 他国の不公正な貿易慣行、為替操作など貿易赤字の原因を調査する
・メキシコ・カナダ・中国に関税発動
メキシコとカナダからの輸入品に25%、中国には10%の追加関税(3月4日まで猶予、中国は一部当面停止)
・アルミニウム輸入に25%の関税
・鉄鋼輸入に25%の関税
・全ての鉄鋼に25%の関税
・「相互関税」検討 米国製品に高い関税をかける国には米国も同水準まで引き上げを検討
【国際関係】
・WHO(世界保健機関)から脱退
・「パリ協定」(気候変動対策)から離脱
・OECD(経済協力開発機構)合意の法人税の国際課税ルールから離脱
・海外援助見直し 米国の利益や外交政策に一致しない海外援助プログラムの見直し
・イエメンの武装勢力フーシ派を「テロ組織」と再指定
・対イラン強硬策の復活
・国連機関との関係見直し 「国連人権理事会」脱退、「国連パレスチナ難民救済事業機関」(UNRWA)への資金拠出停止、「ユネスコ」への関与見直し
・国際刑事裁判所(ICC)への制裁 イスラエル首相への逮捕状を出したのは不当。捜査した人物に制裁
・南アへの援助停止 南アは白人の権利を侵害しており援助を停止する
【多様性】
・性別は男女だけ
・DEI(多様性・公平性・包摂性)推進廃止
・トランスジェンダーの子どもの支援見直し ホルモン療法など医療保険の対象外に。
・学校教育の「過激な洗脳」廃止 ジェンダーや人種を優遇する考え方を学校で教えることをやめ、代わりに愛国教育をする
・男子の女子スポーツ参加禁止 トランスジェンダー選手の女性競技への参加禁止
【移民問題・国境管理】
・国境に非常事態宣言 メキシコ国境に軍隊派遣、追加の壁の建設
・「侵略する外国人」の入国禁止 医療情報、犯罪歴を提供しない外国人の入国制限
・国籍ルールの見直し 米国で出生の子が米国籍を得る「出生地主義」を大幅に制限
・麻薬カルテルをテロ組織に指定
・難民受け入れの一時停止
・グアンタナモ基地に不法移民収容 キューバのグアンタナモ米軍基地に、拘束した不法移民を収容。3万人規模の計画とされる
【エネルギー】
・エネルギー非常事態宣言 前政権でエネルギー供給が不安定になった。国内のあらゆる資源の活用を命じる
・国内のエネルギー資源活用 電気自動車普及策は撤廃、液化天然ガス(LNG)の新規輸出許可の審査を再開
・アラスカの資源活用 アラスカのLNG開発を優先的に進める
・風力発電を見直し 連邦政府が管理する土地の風力発電のための貸与や認可を停止
・国家エネルギー会議の設立 国内エネルギー生産拡大に内務長官をトップとする国家エネルギー会議を設立
【連邦政府の改革】
・「政府効率化省」の新設 政府効率化省を大統領府内に新設。トップはイーロン・マスク氏が指名された
・人事区分「スケジュールF」の復活 政府キャリア職員の人事区分を変更。解職を容易にする
・リモートワークの終了 政府職員のリモートワークを終了し、職場勤務を義務づけ
・政府機関の人員削減 各省庁に大規模な人員削減を命じ、新規採用を限定的とする
・外交官の改革 全外交官に大統領の政策の忠実な実施を求める
【ソーシャルメディア】
・TikTok停止を猶予 中国発のTikTokの米国内での停止を75日間猶予
・政府による検閲を終わらせる 前政権の検閲、政府による言論の自由の剝奪を禁止
【米軍】
・トランスジェンダー思想を排除 米軍内でのトランスジェンダーの思想を徹底的に排除する
・米軍でDEIの取り組みを廃止 DEI推進の米軍内の部署、取り組みを廃止
・ワクチン接種拒否の兵士復職 コロナ・ワクチンの接種を拒否し除隊となった兵士に復職の機会を与える
・ミサイル防衛システムの開発 極超音速など次世代ミサイル防衛開発計画を開始
【その他】
・バイデン政権の政策取り消し 前政権の大統領令など78件を取り消す。「人種の公平性支援」「性自認に基づく差別防止」「気候変動への取り組み」など
・議会襲撃事件をめぐり恩赦 2021年1月の連邦議会議事堂襲撃事件に関係した支持者ら約1500人に恩赦を与える
・地名の変更 アラスカ州の北米最高峰デナリを旧称の「マッキンリー」にもどす。メキシコ湾を「アメリカ湾」に改称する
→使わなかったAPを排除
・死刑の忠実な執行
・デジタル金融技術の促進 暗号通貨などデジタル資産の利用を保護・促進。中央銀行デジタル通貨は禁止
・ケネディ暗殺事件の資料の機密解除
・人工知能(AI)既存政策取り消し AI開発に人工知能行動計画を策定
・ロサンゼルスの山火事対策 必要な水源の確保に向けた緊急措置命令
・中絶に関連する政府事業の廃止 中絶や避妊などの医療アクセス措置撤回
・「反ユダヤ主義」対策強化 ユダヤ系学生への嫌がらせや暴力行為の取り締まり
・反キリスト教的な偏見根絶 前政権の反キリスト教的偏見根絶に向け作業部会
・紙ストローの調達と使用強制の終了 連邦政府の調達から紙ストロー排除、プラスチック製のストローを不利に扱う政策廃止
・海外腐敗行為防止法の一時停止 海外公務員への贈賄禁止の方針見直し
・MAHA(米国を再び健康に)委員会の設立 精神疾患や肥満、糖尿病、他の慢性疾患の増加に対応
・コロナワクチンが義務の学校への資金停止 コロナワクチンの接種を義務づけている学校や大学には連邦政府の資金を停止する
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年2月25日号
・不公正貿易を調査 他国の不公正な貿易慣行、為替操作など貿易赤字の原因を調査する
・メキシコ・カナダ・中国に関税発動
メキシコとカナダからの輸入品に25%、中国には10%の追加関税(3月4日まで猶予、中国は一部当面停止)
・アルミニウム輸入に25%の関税
・鉄鋼輸入に25%の関税
・全ての鉄鋼に25%の関税
・「相互関税」検討 米国製品に高い関税をかける国には米国も同水準まで引き上げを検討
【国際関係】
・WHO(世界保健機関)から脱退
・「パリ協定」(気候変動対策)から離脱
・OECD(経済協力開発機構)合意の法人税の国際課税ルールから離脱
・海外援助見直し 米国の利益や外交政策に一致しない海外援助プログラムの見直し
・イエメンの武装勢力フーシ派を「テロ組織」と再指定
・対イラン強硬策の復活
・国連機関との関係見直し 「国連人権理事会」脱退、「国連パレスチナ難民救済事業機関」(UNRWA)への資金拠出停止、「ユネスコ」への関与見直し
・国際刑事裁判所(ICC)への制裁 イスラエル首相への逮捕状を出したのは不当。捜査した人物に制裁
・南アへの援助停止 南アは白人の権利を侵害しており援助を停止する
【多様性】
・性別は男女だけ
・DEI(多様性・公平性・包摂性)推進廃止
・トランスジェンダーの子どもの支援見直し ホルモン療法など医療保険の対象外に。
・学校教育の「過激な洗脳」廃止 ジェンダーや人種を優遇する考え方を学校で教えることをやめ、代わりに愛国教育をする
・男子の女子スポーツ参加禁止 トランスジェンダー選手の女性競技への参加禁止
【移民問題・国境管理】
・国境に非常事態宣言 メキシコ国境に軍隊派遣、追加の壁の建設
・「侵略する外国人」の入国禁止 医療情報、犯罪歴を提供しない外国人の入国制限
・国籍ルールの見直し 米国で出生の子が米国籍を得る「出生地主義」を大幅に制限
・麻薬カルテルをテロ組織に指定
・難民受け入れの一時停止
・グアンタナモ基地に不法移民収容 キューバのグアンタナモ米軍基地に、拘束した不法移民を収容。3万人規模の計画とされる
【エネルギー】
・エネルギー非常事態宣言 前政権でエネルギー供給が不安定になった。国内のあらゆる資源の活用を命じる
・国内のエネルギー資源活用 電気自動車普及策は撤廃、液化天然ガス(LNG)の新規輸出許可の審査を再開
・アラスカの資源活用 アラスカのLNG開発を優先的に進める
・風力発電を見直し 連邦政府が管理する土地の風力発電のための貸与や認可を停止
・国家エネルギー会議の設立 国内エネルギー生産拡大に内務長官をトップとする国家エネルギー会議を設立
【連邦政府の改革】
・「政府効率化省」の新設 政府効率化省を大統領府内に新設。トップはイーロン・マスク氏が指名された
・人事区分「スケジュールF」の復活 政府キャリア職員の人事区分を変更。解職を容易にする
・リモートワークの終了 政府職員のリモートワークを終了し、職場勤務を義務づけ
・政府機関の人員削減 各省庁に大規模な人員削減を命じ、新規採用を限定的とする
・外交官の改革 全外交官に大統領の政策の忠実な実施を求める
【ソーシャルメディア】
・TikTok停止を猶予 中国発のTikTokの米国内での停止を75日間猶予
・政府による検閲を終わらせる 前政権の検閲、政府による言論の自由の剝奪を禁止
【米軍】
・トランスジェンダー思想を排除 米軍内でのトランスジェンダーの思想を徹底的に排除する
・米軍でDEIの取り組みを廃止 DEI推進の米軍内の部署、取り組みを廃止
・ワクチン接種拒否の兵士復職 コロナ・ワクチンの接種を拒否し除隊となった兵士に復職の機会を与える
・ミサイル防衛システムの開発 極超音速など次世代ミサイル防衛開発計画を開始
【その他】
・バイデン政権の政策取り消し 前政権の大統領令など78件を取り消す。「人種の公平性支援」「性自認に基づく差別防止」「気候変動への取り組み」など
・議会襲撃事件をめぐり恩赦 2021年1月の連邦議会議事堂襲撃事件に関係した支持者ら約1500人に恩赦を与える
・地名の変更 アラスカ州の北米最高峰デナリを旧称の「マッキンリー」にもどす。メキシコ湾を「アメリカ湾」に改称する
→使わなかったAPを排除
・死刑の忠実な執行
・デジタル金融技術の促進 暗号通貨などデジタル資産の利用を保護・促進。中央銀行デジタル通貨は禁止
・ケネディ暗殺事件の資料の機密解除
・人工知能(AI)既存政策取り消し AI開発に人工知能行動計画を策定
・ロサンゼルスの山火事対策 必要な水源の確保に向けた緊急措置命令
・中絶に関連する政府事業の廃止 中絶や避妊などの医療アクセス措置撤回
・「反ユダヤ主義」対策強化 ユダヤ系学生への嫌がらせや暴力行為の取り締まり
・反キリスト教的な偏見根絶 前政権の反キリスト教的偏見根絶に向け作業部会
・紙ストローの調達と使用強制の終了 連邦政府の調達から紙ストロー排除、プラスチック製のストローを不利に扱う政策廃止
・海外腐敗行為防止法の一時停止 海外公務員への贈賄禁止の方針見直し
・MAHA(米国を再び健康に)委員会の設立 精神疾患や肥満、糖尿病、他の慢性疾患の増加に対応
・コロナワクチンが義務の学校への資金停止 コロナワクチンの接種を義務づけている学校や大学には連邦政府の資金を停止する
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年2月25日号
2025年03月26日
【出版トピックス】オーディオブックへの強い期待=出版部会
◆2月出版物売上げ前年比92.7%
2月期の売上げは、雑誌では「文藝春秋 3月号」や「小学一年生 4月号」、プロ野球の選手名鑑などが健闘したものの、すべてのジャンルで前年を下回った。
書籍も前年を下回るが、総記・ビジネス書・学参は1月期に引き続き前年超えとなった。ビジネス書では『改訂版 本当の自由を手に入れる お金の大学』が、学参では英検・TOEICの関連書が好調。コミックは、「転生したらスライムだった件 28」「ワールドトリガー 28」など人気作品が売上を伸ばしたが、前年には及ばない結果となった。
◆オーディオブック点数2千突破
小学館が制作・配信するオーディオブックの点数が、累計2000点を突破。2018年にオーディオブック事業を開始し、22年には「小学館 音声Project」を立ち上げて本格参入。文芸・新書・ライトノベル・児童書など幅広いジャンルを展開している。
「本屋大賞2025」の候補となった3点もオーディオブック化。早見和真『アルプス席の母』はすでに配信し、一穂ミチ『恋とか愛とかやさしさなら』と朝井リョウ『生殖記』は現在制作中。話題作も網羅していく。
オーディオブックの普及は、視覚・読字障害者への救済に役立つだけでなく、普通の人々にとっても、すきま時間を学習や娯楽に充てられるので、ニーズは急増している。今やオーディオブックの市場規模は260億円(2024年度)に達する。
◆護憲の「マガジン9」創刊20周年
「マガジン9」の前身の「マガジン9条」がネット上に誕生したのが、2005年3月1日。憲法9条や護憲の啓蒙運動を主旨とするウェブマガジン「マガジン9条」発足。
発起人は石坂啓(漫画家)、上原公子(前国立市長)、小山内美江子(脚本家)、姜尚中(東京大学教授)、きむらゆういち(絵本作家)、小室等(ミュージシャン)、斎藤駿(カタログハウス相談役)、佐高信(評論家)、椎名誠(作家)、毛利子来(小児科医)、森永卓郎(経済アナリスト)、吉岡忍(ノンフィクション作家)、渡辺一枝(作家)。
「護憲の旗」だけはきちんと掲げようと、「マガジン9条」と名づけた。世の中の流れに歯向かう小さな抵抗の拠点として、言わずにはいられないことを言う場。このプラットフォームを潰したくないの思いで続けてきた。5月31日、「マガジン9」の「創刊20周年記念イベント」を開催する予定(詳細は追って告知)。
◆「情プラ法」第三者削除要請が問題
総務省は、SNS上での誹謗中傷への対応を迅速化する「情報流通プラットフォーム対処法」(情プラ法)を一部改正し、4月1日に施行すると閣議決定。月間平均アクティブユーザー数が1000万を超える事業者は、ガイドラインに沿って具体的な投稿の削除基準を「できる限り具体的に」決めて公表し、削除要請を受けた日から「7日以内」に対応を決める。しかし第三者からの削除要請も受け付けるという内容が問題となっている。
◆東野圭吾『少年とクスノキ』刊行
実業之日本社から東野圭吾『少年とクスノキ』(本体1800円)が5月1日、刊行される。昨年5月に刊行し、20万部のベストセラーとなった、前作『クスノキの女神』の作中に登場していた少年の願いを、東野氏が新たな1つの物語として仕上げた。絵は画家としても活動する、よしだるみ氏が担当。この初の子ども向け絵本について、今年、作家生活40周年を迎える東野氏は「主人公はあなたかもしれません。楽しんでいただけたら幸いです」とのコメントを寄せている。
2月期の売上げは、雑誌では「文藝春秋 3月号」や「小学一年生 4月号」、プロ野球の選手名鑑などが健闘したものの、すべてのジャンルで前年を下回った。
書籍も前年を下回るが、総記・ビジネス書・学参は1月期に引き続き前年超えとなった。ビジネス書では『改訂版 本当の自由を手に入れる お金の大学』が、学参では英検・TOEICの関連書が好調。コミックは、「転生したらスライムだった件 28」「ワールドトリガー 28」など人気作品が売上を伸ばしたが、前年には及ばない結果となった。
◆オーディオブック点数2千突破
小学館が制作・配信するオーディオブックの点数が、累計2000点を突破。2018年にオーディオブック事業を開始し、22年には「小学館 音声Project」を立ち上げて本格参入。文芸・新書・ライトノベル・児童書など幅広いジャンルを展開している。
「本屋大賞2025」の候補となった3点もオーディオブック化。早見和真『アルプス席の母』はすでに配信し、一穂ミチ『恋とか愛とかやさしさなら』と朝井リョウ『生殖記』は現在制作中。話題作も網羅していく。
オーディオブックの普及は、視覚・読字障害者への救済に役立つだけでなく、普通の人々にとっても、すきま時間を学習や娯楽に充てられるので、ニーズは急増している。今やオーディオブックの市場規模は260億円(2024年度)に達する。
◆護憲の「マガジン9」創刊20周年
「マガジン9」の前身の「マガジン9条」がネット上に誕生したのが、2005年3月1日。憲法9条や護憲の啓蒙運動を主旨とするウェブマガジン「マガジン9条」発足。
発起人は石坂啓(漫画家)、上原公子(前国立市長)、小山内美江子(脚本家)、姜尚中(東京大学教授)、きむらゆういち(絵本作家)、小室等(ミュージシャン)、斎藤駿(カタログハウス相談役)、佐高信(評論家)、椎名誠(作家)、毛利子来(小児科医)、森永卓郎(経済アナリスト)、吉岡忍(ノンフィクション作家)、渡辺一枝(作家)。
「護憲の旗」だけはきちんと掲げようと、「マガジン9条」と名づけた。世の中の流れに歯向かう小さな抵抗の拠点として、言わずにはいられないことを言う場。このプラットフォームを潰したくないの思いで続けてきた。5月31日、「マガジン9」の「創刊20周年記念イベント」を開催する予定(詳細は追って告知)。
◆「情プラ法」第三者削除要請が問題
総務省は、SNS上での誹謗中傷への対応を迅速化する「情報流通プラットフォーム対処法」(情プラ法)を一部改正し、4月1日に施行すると閣議決定。月間平均アクティブユーザー数が1000万を超える事業者は、ガイドラインに沿って具体的な投稿の削除基準を「できる限り具体的に」決めて公表し、削除要請を受けた日から「7日以内」に対応を決める。しかし第三者からの削除要請も受け付けるという内容が問題となっている。
◆東野圭吾『少年とクスノキ』刊行
実業之日本社から東野圭吾『少年とクスノキ』(本体1800円)が5月1日、刊行される。昨年5月に刊行し、20万部のベストセラーとなった、前作『クスノキの女神』の作中に登場していた少年の願いを、東野氏が新たな1つの物語として仕上げた。絵は画家としても活動する、よしだるみ氏が担当。この初の子ども向け絵本について、今年、作家生活40周年を迎える東野氏は「主人公はあなたかもしれません。楽しんでいただけたら幸いです」とのコメントを寄せている。
2025年03月25日
【JCJ賞情報】第68回日本ジャーナリスト会議賞(JCJ賞) 応募と推薦のお願い=JCJ事務局
日本ジャーナリスト会議(JCJ)は、年間のすぐれたジャーナリズム活動を顕彰するため、1958年以来「JCJ賞」を設け、贈賞してきました。今年は第68回となります。
自薦または他薦によって応募といたします。今年度も優れた労作の多数応募を期待しています。
■日本ジャーナリスト会議賞(JCJ賞) 応募要項
〈ジャンルと応募資格〉
@新聞 A出版 B放送 Cネットメディアの各部門のほか、映像作品、市民運動や地域活動なども含み、個人・グループを問いません。提出期限までの1年以内に発表された作品 (連載の場合は同期間に発表したもの) を対象とします。
〈提出条件〉
◆ 書籍は、その現物1冊。
◆ 雑誌、新聞は、その掲載部分のコピー(カラーの場合はカラーで)の1セットです。
上記の2項目については、1作品に1枚エントリーシートを必ず同封。特に連絡先、担当者、電話、メールアドレスは必ず明記。郵送または宅急便で下記の提出先にお送りください。 なお、FAX、メールによる送稿は受け付けません。
◆放送作品、ネットメディア作品は、閲覧できるURL、または作品データをダウンロード出来るURLを提出してください。
ファイル形式はMP4 (mp4)でお願い致します。
1作品に1枚エントリーシートを必ず明記。特に連絡先、担当者、電話、メールアドレスは必須です。放送作品は、元番組に字幕が付いている場合は、字幕も再生できる仕様にしてください。なお、動画URLの提出が困難な場合は、従来通りDVD送付も可とします。
〈エントリーシートの入手方法〉
応募要項、エントリーシートはJCJホームページ(https://jcj.gr.jp/recentactivity/13873/)からダウンロードできます。このシートはword形式ですので文章を打ち込むことができます。
〈提出期限〉
◆2025年5月30日(金) 郵送の場合は当日消印までが有効です。
〈提出先〉
〒101‑0061 東京都千代田区神田三崎町3−10−15富士ビル501号
日本ジャーナリスト会議 「JCJ賞」 応募作品係 (赤で目立つように表記してください)
○日本ジャーナリスト会議 「JCJ賞」 応募作品係 (赤で目立つように表記してください)
○応募作品は返却いたしません。選考経過,理由などについてのお問い合わせには応じておりません。
○選考結果は「ジャーナリスト」および主要新聞に公表ほか、JCJホームページに掲載致します。
○選考結果の確定は8月末、公表は9月上旬、贈賞式日程は追ってご案内します。
2025年3月15日 日本ジャーナリスト会議
JCJ事務局長 古川英一
JCJ賞推薦委員会統括責任者 大場幸夫
(問い合わせ先) JCJ事務所(受付は月・水・金曜日 13時〜17時)
電話: 03–6272-9781 Eメール:office@jcj.gr.jp ホームページ:https://jcj.gr.jp
〒101―0061 東京都千代田区神田三崎町3–10-15 富士ビル501号
電話:03–6272-9781
FAX:03–6272-9782
電子メール:office@jcj.gr.jp
自薦または他薦によって応募といたします。今年度も優れた労作の多数応募を期待しています。
■日本ジャーナリスト会議賞(JCJ賞) 応募要項
〈ジャンルと応募資格〉
@新聞 A出版 B放送 Cネットメディアの各部門のほか、映像作品、市民運動や地域活動なども含み、個人・グループを問いません。提出期限までの1年以内に発表された作品 (連載の場合は同期間に発表したもの) を対象とします。
〈提出条件〉
◆ 書籍は、その現物1冊。
◆ 雑誌、新聞は、その掲載部分のコピー(カラーの場合はカラーで)の1セットです。
上記の2項目については、1作品に1枚エントリーシートを必ず同封。特に連絡先、担当者、電話、メールアドレスは必ず明記。郵送または宅急便で下記の提出先にお送りください。 なお、FAX、メールによる送稿は受け付けません。
◆放送作品、ネットメディア作品は、閲覧できるURL、または作品データをダウンロード出来るURLを提出してください。
ファイル形式はMP4 (mp4)でお願い致します。
1作品に1枚エントリーシートを必ず明記。特に連絡先、担当者、電話、メールアドレスは必須です。放送作品は、元番組に字幕が付いている場合は、字幕も再生できる仕様にしてください。なお、動画URLの提出が困難な場合は、従来通りDVD送付も可とします。
〈エントリーシートの入手方法〉
応募要項、エントリーシートはJCJホームページ(https://jcj.gr.jp/recentactivity/13873/)からダウンロードできます。このシートはword形式ですので文章を打ち込むことができます。
〈提出期限〉
◆2025年5月30日(金) 郵送の場合は当日消印までが有効です。
〈提出先〉
〒101‑0061 東京都千代田区神田三崎町3−10−15富士ビル501号
日本ジャーナリスト会議 「JCJ賞」 応募作品係 (赤で目立つように表記してください)
○日本ジャーナリスト会議 「JCJ賞」 応募作品係 (赤で目立つように表記してください)
○応募作品は返却いたしません。選考経過,理由などについてのお問い合わせには応じておりません。
○選考結果は「ジャーナリスト」および主要新聞に公表ほか、JCJホームページに掲載致します。
○選考結果の確定は8月末、公表は9月上旬、贈賞式日程は追ってご案内します。
2025年3月15日 日本ジャーナリスト会議
JCJ事務局長 古川英一
JCJ賞推薦委員会統括責任者 大場幸夫
(問い合わせ先) JCJ事務所(受付は月・水・金曜日 13時〜17時)
電話: 03–6272-9781 Eメール:office@jcj.gr.jp ホームページ:https://jcj.gr.jp
〒101―0061 東京都千代田区神田三崎町3–10-15 富士ビル501号
電話:03–6272-9781
FAX:03–6272-9782
電子メール:office@jcj.gr.jp
2025年03月24日
【種子島】防衛省は国民の知る権利に答えよ=丹原 美穂
馬毛島に上陸した住民訴訟原告団
馬毛島から10Km離れた種子島の暮らしは変わった。漁場は壊滅、漁ができない漁師は自分の船で工事関係者を運んでいる。寿司屋は廃業し、スーパーに並ぶ魚は鹿児島から運ばれる。島は多くの車が行きかいごみ問題も出ている。工事関係者5000人のうち馬毛島には3030人が簡易宿舎に。宿泊施設不足で1泊1万3000円。
種子島で増え続ける簡易宿舎
他方 飲食店は工事関係者でにぎわい、弁当屋も増えた。学校も生徒数がふえた。工事終了後はどうなるのだろうか。
評価額20億円の馬毛島の政府の買収額160億円。算出根拠も土地取得状況も非公開。国民の知る権利が公然と侵されている。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年2月25日号
馬毛島から10Km離れた種子島の暮らしは変わった。漁場は壊滅、漁ができない漁師は自分の船で工事関係者を運んでいる。寿司屋は廃業し、スーパーに並ぶ魚は鹿児島から運ばれる。島は多くの車が行きかいごみ問題も出ている。工事関係者5000人のうち馬毛島には3030人が簡易宿舎に。宿泊施設不足で1泊1万3000円。
種子島で増え続ける簡易宿舎
他方 飲食店は工事関係者でにぎわい、弁当屋も増えた。学校も生徒数がふえた。工事終了後はどうなるのだろうか。
評価額20億円の馬毛島の政府の買収額160億円。算出根拠も土地取得状況も非公開。国民の知る権利が公然と侵されている。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年2月25日号
2025年03月23日
【馬毛島に再上陸】住民訴訟原告団 ドローンで自衛隊施設工事現場を空撮=丹原 美穂
私たち基地反対住民訴訟原告団は、工事着工満2年前日の1月11日、昨年11月に続き馬毛島に再上陸。前回、防衛省の妨害で果たせなかった工事の進捗状況確認ため沖縄ドローンプロジェクトの協力を得て空撮を行った。防衛省職員は今回も上陸した私たちの前に立ちふさがって妨害。「工事中で危険(ドローンを)飛ばさないで」との文を読み上げた。だが私たちは「禁止する法的な根拠はない」伝え、ドローン空撮を開始。最新の現場映像を撮影した。昼夜を問わずの突貫工事で緑がはぎとられた島で自衛隊施設整備工事はまだまだ続くが、完工は予定より約3年遅れの30年3月末という。
防衛省職員は立ちふさがり空撮妨害をした
報道陣も同行した
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年2月25日号
防衛省職員は立ちふさがり空撮妨害をした
報道陣も同行した
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年2月25日号
2025年03月22日
【放送開始100年】報道の質とあり方で岐路=砂川 浩慶(立教大学教授・社会学部長)
この3月、日本の放送は開始100年を迎える。この間を20年ごと、5つの区分で考えてみた。
第1期(1925年〜45年)
・社団法人 日本放送協会のラジオのみ。国家が「無線電信及無線電話ハ政府之ヲ管掌ス」(旧無線電信法)と放送内容まで合法的に関与できた時代。それが大本営発表につながる。放送が国民を戦争に駆り立てた時代。
第2期(1946年〜65年)
・電波3法の施行(1950年)、電波監理委員会の廃止(1952年)・民放の誕生 NHK・民放併存体制の誕生・テレビの誕生(1953年)・皇太子ご成婚(1959年)・臨放調(臨時放送法制調査会)答申(1962〜1964年)NHKK・民放連とも独立行政委員会に賛成・東京オリンピック(1964年)・テレビ東京開局(1964年)⇒民放テレビ5系列化へ
第3期(1966年〜85年)
・テレビ広告が新聞広告を抜く(1975年)⇒テレビ全盛時代へ・民放テレビへの政権からの圧力で放送中止相次ぐ・1980年代「楽しくなければテレビじゃない」フジテレビの時代・ニューメディア時代・1987年NHKBS開始
第4期(1986年〜2005年)
・地上テレビ127社完成 テレビ朝日平成新局・テレビ広告費最大値2兆793億円(2000年。同年の新聞広告費1兆2474億円)・1993年CS放送開始/椿事件・2000年BSデジタル放送開始・2005年「通信・放送の在り方に関する懇談会」(竹中平蔵総務大臣)・2003年東名阪地上デジタル
第5期(2006年〜25年)
・2006年全ての県庁所在地で地上デジタルスタート完了(2011年アナログ終了、2012年被災3県も終了)・2012年から2020年 第二次安倍政権 ⇒テレビへの攻撃・分断・2015年Tverスタート・2019年インターネット広告費がテレビ広告を抜く・2021年インターネット広告費がマス4媒体広告費を抜く
そして、100年目の今年早々フジテレビ騒動が起こった。日枝久氏が編成局長になったのが80年。以来、前述の第4期・第5期と40年を超える長老支配、そして女性軽視のメディアの“男社会”の弊害が赤裸々に2度の「記者会見」で明らかになった。
一般視聴者・購買者を背景とした広告主の引き上げは、「信なくば立たず」は政治のみならずメディア界にも当てはまることを如実に示した。
この4月からフジテレビの系列局に入社が決まっている、私のゼミ生(女性)から「こんな状態で系列局に入社して良いのか迷っている」との相談を受けた。
「この時期だからこそ、今までの男社会を変えようとするはず。入ってみてどう変わるか見てみたら。ピンチはチャンス」とアドバイスした。
メディアはどう変わるのか。フジテレビに限らない。この記事をお読みになっている方でも、今ならセクハラ、パワハラで大問題になる「不適切にもほどがある」経験をお持ちの方が数多いことを私は確信を持って言える。
大学だってかつては「ゼミ合宿で女子学生は浴衣着用マスト」と公言していた教員が民放テレビのコメンテーターをしていたが、それを是正してきた歴史を持つ。私の学部の3つの学科は、学科長が全て女性であり、良い意味で私は毎日勉強になることばかり教えてもらっている。男社会の弊害は「オールドボーイズ」には理解できないのだ。
100年を迎えた放送は、都知事選、総選挙、兵庫知事選といった選挙報道に続き、今回のフジテレビの問題で、メディアのあり方そのものまで問われるに至った。
アップデートを求められているのは放送だけでなく、メディアに関わる者全てだ。「どう自分ごととして考え、現実を変えていけるのか」が今改めて問われている。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年2月25日号
第1期(1925年〜45年)
・社団法人 日本放送協会のラジオのみ。国家が「無線電信及無線電話ハ政府之ヲ管掌ス」(旧無線電信法)と放送内容まで合法的に関与できた時代。それが大本営発表につながる。放送が国民を戦争に駆り立てた時代。
第2期(1946年〜65年)
・電波3法の施行(1950年)、電波監理委員会の廃止(1952年)・民放の誕生 NHK・民放併存体制の誕生・テレビの誕生(1953年)・皇太子ご成婚(1959年)・臨放調(臨時放送法制調査会)答申(1962〜1964年)NHKK・民放連とも独立行政委員会に賛成・東京オリンピック(1964年)・テレビ東京開局(1964年)⇒民放テレビ5系列化へ
第3期(1966年〜85年)
・テレビ広告が新聞広告を抜く(1975年)⇒テレビ全盛時代へ・民放テレビへの政権からの圧力で放送中止相次ぐ・1980年代「楽しくなければテレビじゃない」フジテレビの時代・ニューメディア時代・1987年NHKBS開始
第4期(1986年〜2005年)
・地上テレビ127社完成 テレビ朝日平成新局・テレビ広告費最大値2兆793億円(2000年。同年の新聞広告費1兆2474億円)・1993年CS放送開始/椿事件・2000年BSデジタル放送開始・2005年「通信・放送の在り方に関する懇談会」(竹中平蔵総務大臣)・2003年東名阪地上デジタル
第5期(2006年〜25年)
・2006年全ての県庁所在地で地上デジタルスタート完了(2011年アナログ終了、2012年被災3県も終了)・2012年から2020年 第二次安倍政権 ⇒テレビへの攻撃・分断・2015年Tverスタート・2019年インターネット広告費がテレビ広告を抜く・2021年インターネット広告費がマス4媒体広告費を抜く
そして、100年目の今年早々フジテレビ騒動が起こった。日枝久氏が編成局長になったのが80年。以来、前述の第4期・第5期と40年を超える長老支配、そして女性軽視のメディアの“男社会”の弊害が赤裸々に2度の「記者会見」で明らかになった。
一般視聴者・購買者を背景とした広告主の引き上げは、「信なくば立たず」は政治のみならずメディア界にも当てはまることを如実に示した。
この4月からフジテレビの系列局に入社が決まっている、私のゼミ生(女性)から「こんな状態で系列局に入社して良いのか迷っている」との相談を受けた。
「この時期だからこそ、今までの男社会を変えようとするはず。入ってみてどう変わるか見てみたら。ピンチはチャンス」とアドバイスした。
メディアはどう変わるのか。フジテレビに限らない。この記事をお読みになっている方でも、今ならセクハラ、パワハラで大問題になる「不適切にもほどがある」経験をお持ちの方が数多いことを私は確信を持って言える。
大学だってかつては「ゼミ合宿で女子学生は浴衣着用マスト」と公言していた教員が民放テレビのコメンテーターをしていたが、それを是正してきた歴史を持つ。私の学部の3つの学科は、学科長が全て女性であり、良い意味で私は毎日勉強になることばかり教えてもらっている。男社会の弊害は「オールドボーイズ」には理解できないのだ。
100年を迎えた放送は、都知事選、総選挙、兵庫知事選といった選挙報道に続き、今回のフジテレビの問題で、メディアのあり方そのものまで問われるに至った。
アップデートを求められているのは放送だけでなく、メディアに関わる者全てだ。「どう自分ごととして考え、現実を変えていけるのか」が今改めて問われている。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年2月25日号
2025年03月21日
【福島原発事故シンポジウム】2号機格納容器が破裂なら4000万人避難、2400兆円の損害、日本は破滅に 元裁判官の樋口英明さん語る=橋詰雅博
一橋大学名誉教授でノーモア原発公害市民連代表世話人の寺西俊一氏が1月28日のシンポジウム「原発と司法―いま私たちに問われていること」で登壇した元裁判官・樋口英明さん(弁護士)の特別講演をJCJ2月25日号機関紙でこう紹介していた。
<1月初旬に刊行された岩波ブックレット最新刊『原発と司法―国の責任を認めない最高裁判決の罪』のエッセンスを非常に分かりやすく嚙み砕いたものだった>。
樋口さんは自分の著書を引用しながらの講演だったが、その詳細は書かれていなかった。新婦人しんぶん3月15日号では要旨を報じている。「司法は法の番人の役割はかせ=vがタイトルだ。福井地裁で大飯原発の差し止め判決を下した樋口さんは、原発は核燃料を核分裂させて発生する熱で水を沸騰させ蒸気でタービンを回し発電する。仕組みは簡単で、火力発電も同じ(蒸気でタービンを回す)方式。ただトラブルが起き時、火力発電は運転を止めれば沸騰も止まるが、原発は運転を止めても沸騰が続く。空だきを防ぐため電気で水を送り、原子炉を冷やし続ける必要がある。
停電でメルトダウンした東電福島第一原発2号機は、奇跡的に格納容器の破裂を免れた。もし破裂なら、東京を含む半径250キロbが避難区域に、4000万人が避難しなければならず、被害の大きさははかり知れないものになっていた。原発事故による損害は25兆円と東電100年分の利益が吹き飛んだが、2号機の格納容器が破裂の場合の損害は2400兆円、日本は破滅していただろう。
私は退官後、原発反対運動に参加したのは「日本で原発を動かすことは、耐えがたいほど正義に反する」からだと語った。
樋口さんが講演する「原発と司法」オンライン学習会は4月7日(月)18時から19時30分。
Zoom ID:810 0899 1508
パスコード:0407
主催:原発をなくす全国連絡会(https://www.no-genpatu.jp/)
<1月初旬に刊行された岩波ブックレット最新刊『原発と司法―国の責任を認めない最高裁判決の罪』のエッセンスを非常に分かりやすく嚙み砕いたものだった>。
樋口さんは自分の著書を引用しながらの講演だったが、その詳細は書かれていなかった。新婦人しんぶん3月15日号では要旨を報じている。「司法は法の番人の役割はかせ=vがタイトルだ。福井地裁で大飯原発の差し止め判決を下した樋口さんは、原発は核燃料を核分裂させて発生する熱で水を沸騰させ蒸気でタービンを回し発電する。仕組みは簡単で、火力発電も同じ(蒸気でタービンを回す)方式。ただトラブルが起き時、火力発電は運転を止めれば沸騰も止まるが、原発は運転を止めても沸騰が続く。空だきを防ぐため電気で水を送り、原子炉を冷やし続ける必要がある。
停電でメルトダウンした東電福島第一原発2号機は、奇跡的に格納容器の破裂を免れた。もし破裂なら、東京を含む半径250キロbが避難区域に、4000万人が避難しなければならず、被害の大きさははかり知れないものになっていた。原発事故による損害は25兆円と東電100年分の利益が吹き飛んだが、2号機の格納容器が破裂の場合の損害は2400兆円、日本は破滅していただろう。
私は退官後、原発反対運動に参加したのは「日本で原発を動かすことは、耐えがたいほど正義に反する」からだと語った。
樋口さんが講演する「原発と司法」オンライン学習会は4月7日(月)18時から19時30分。
Zoom ID:810 0899 1508
パスコード:0407
主催:原発をなくす全国連絡会(https://www.no-genpatu.jp/)
2025年03月20日
2025年03月19日
【「日銀レビュー」読む】無理な緩和 負の影響 過度な円安/ゾンビ企業/緩む財政規律‥‥=志田 義寧
導入当初に想定していたほどの効果は発揮しなかった−−−−。日銀は過去25年間の金融政策を評価した「金融政策の多角的レビュー」で、黒田東彦総裁(当時)のもとで実施した量的・質的金融緩和(異次元緩和)について、効果が限定的だったことを認めた。当然だ。黒田総裁が打ち出した「2年で2%の物価上昇」を達成できなかったのだから、それを手放しで評価する方が無理がある。ただ「全体としてみれば、わが国経済に対してプラスの影響をもたらした」と前向きな見方も示した。筆者はこの結論には賛成できない。
今後の副作用
経済学者警戒
日本経済新聞は1月18日付朝刊で、経済学者47人を対象とした日本経済研究センターとの共同アンケート調査結果を掲載した(回答は46人)。それによると、日銀のこのプラス評価が妥当か否かについては、ほぼ半数の49%が「どちらともいえない」と回答した。「どちらともいえない」と答えた経済学者の間では、今後の副作用を警戒する意見が目立ったという。筆者も同意見だ。足元では円安などの副作用の影響がどこまで広がるかまだ分からず、その分析を抜きにして結論を出すのは時期尚早だ。
円安は輸出企業にとってはプラスとなるが、輸入物価の上昇が直撃する中小企業や家計にとってはマイナスでしかない。レビューは円安と異次元緩和との関連については言及を避けたが、物価上昇2%を目指した無理な緩和が影響した可能性は否定できない。為替は現在も円安水準で推移しており、交易条件悪化の一因になっている。負の影響は当面続くだろう。
資産バブルを
生んだ低金利
筆者は異次元緩和について、@無理な2%目標にこだわった結果、過度な円安を招いたA低金利のぬるま湯が長く続いたことで「ゾンビ企業」が増加し、経済の活力を削いだB日銀が大規模に国債を買い入れたことで財政規律の緩みにつながったC首都圏マンション価格の上昇など局所的な資産バブルを生んだ−−−−などの問題点があったと認識している。
黒田総裁は異次元緩和導入時の会見で「資産バブルが膨れ上がるという懸念は持っていない」と強調したが、2023年に東京23区で売り出された新築マンションの平均価格は1億1483万円となり、初めて1億円を超えた(不動産経済研究所調べ)。24年は若干下がったものの、依然として1億円台をキープしており、もはや庶民が買えるレベルではない。価格高騰の背景には人材不足や資源高などがあるが、低金利も一因になっているのは間違いない。
Bについても検証が必要だ。レビューでは「金融政策の目的は物価の安定であり、政府による財政資金の調達支援が目的の財政ファイナンスではない」と日銀の主張を繰り返したが、異次元緩和では財政ファイナンスと受け止められても仕方がない直接引き受けに近い金融市場調節(オペ)も実施した。そうした姿勢が財政規律の緩みにつながった可能性も否定できず、この分析を避けて異次元緩和は評価できない。
2%物価目標
すべての元凶
筆者はすべての元凶は日本の実態に合わない2%の物価目標にあると判断している。レビューは引き続き2%の物価目標のもとで金融政策運営をしていくことが適切との方針を示したが、無理な目標がもたらした弊害は指摘した点以外にも多岐にわたる。将来、同じ過ちを繰り返さないためにも、これらの副作用から目を背けてはならない。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年2月25日号
今後の副作用
経済学者警戒
日本経済新聞は1月18日付朝刊で、経済学者47人を対象とした日本経済研究センターとの共同アンケート調査結果を掲載した(回答は46人)。それによると、日銀のこのプラス評価が妥当か否かについては、ほぼ半数の49%が「どちらともいえない」と回答した。「どちらともいえない」と答えた経済学者の間では、今後の副作用を警戒する意見が目立ったという。筆者も同意見だ。足元では円安などの副作用の影響がどこまで広がるかまだ分からず、その分析を抜きにして結論を出すのは時期尚早だ。
円安は輸出企業にとってはプラスとなるが、輸入物価の上昇が直撃する中小企業や家計にとってはマイナスでしかない。レビューは円安と異次元緩和との関連については言及を避けたが、物価上昇2%を目指した無理な緩和が影響した可能性は否定できない。為替は現在も円安水準で推移しており、交易条件悪化の一因になっている。負の影響は当面続くだろう。
資産バブルを
生んだ低金利
筆者は異次元緩和について、@無理な2%目標にこだわった結果、過度な円安を招いたA低金利のぬるま湯が長く続いたことで「ゾンビ企業」が増加し、経済の活力を削いだB日銀が大規模に国債を買い入れたことで財政規律の緩みにつながったC首都圏マンション価格の上昇など局所的な資産バブルを生んだ−−−−などの問題点があったと認識している。
黒田総裁は異次元緩和導入時の会見で「資産バブルが膨れ上がるという懸念は持っていない」と強調したが、2023年に東京23区で売り出された新築マンションの平均価格は1億1483万円となり、初めて1億円を超えた(不動産経済研究所調べ)。24年は若干下がったものの、依然として1億円台をキープしており、もはや庶民が買えるレベルではない。価格高騰の背景には人材不足や資源高などがあるが、低金利も一因になっているのは間違いない。
Bについても検証が必要だ。レビューでは「金融政策の目的は物価の安定であり、政府による財政資金の調達支援が目的の財政ファイナンスではない」と日銀の主張を繰り返したが、異次元緩和では財政ファイナンスと受け止められても仕方がない直接引き受けに近い金融市場調節(オペ)も実施した。そうした姿勢が財政規律の緩みにつながった可能性も否定できず、この分析を避けて異次元緩和は評価できない。
2%物価目標
すべての元凶
筆者はすべての元凶は日本の実態に合わない2%の物価目標にあると判断している。レビューは引き続き2%の物価目標のもとで金融政策運営をしていくことが適切との方針を示したが、無理な目標がもたらした弊害は指摘した点以外にも多岐にわたる。将来、同じ過ちを繰り返さないためにも、これらの副作用から目を背けてはならない。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年2月25日号
2025年03月18日
【追悼】元JCJ代表委員 桂 敬一さん逝去を悼む 深い洞察、鋭いメディア批判 広範な活動=吉原 功(JCJ代表委員)
鋭いメディア批判で警鐘を鳴らし続けた桂敬一さんが、1月19日逝去された。89歳。会うは別れのはじめというけれど、半世紀以上の知古を頂いた者としてはやはり辛い。
最初の出会いは1960年代初頭。新聞協会に訪ねたとき、桂さんは同協会新聞研究所のホープとして光輝いていた。「君ね、研究ばかりじゃダメだよ、運動もしなきゃ!」。この言葉を研究者、そして組合のリーダとして実践していた桂さんは、同研究所所長を経て、東大新聞研の教授になり活動の場を広め深めた。JCでは精力的にジャーナリズムのあり方や課題について提言。JCJ賞選考委員代表も担われた。97年には代表委員に就任。2004年春まで7期にわたり務めた。
ソ連圏崩壊の90年代初頭、桂さんは城戸又一先生とともにパリに視察に来られ、研究休暇中でかの地にいた私はお二人と楽しい貴重な時間を持つことができた。1930年代、東京日日新聞の欧州総局長としてパリを拠点に大活躍した城戸先生の話を聞きながらモンマルトル界隈を3人で散策したことは忘れられない思い出た。「このカフェでね、ハンガリーから亡命してきたキャパがドアーボーイをしていたの。で僕のライカをあげてね、カメラマンになりなさい、と言ったんだ」と城戸先生。
先生が青年知識人たちに呼びかけてフランスのナチス化をいかに防ぐかを議論したのがこのカフェ、つまりフランス人民戦線の発祥の地でもあった。スペイン内乱取材の話もお聴きした。桂さんと私はジャーナリストのあるべき姿を目の当たりにしたのである。
帰国して数年後の96年、桂さんは、石川真澄、斎藤茂男、鳥越俊太郎、門奈直樹、安江良介といった錚々たるメンバーとの連名で「市民とマスコミに携わる人たちとの連帯を考える当面の行動目標」と題するアピールをJCJ6月集会に提起した。その全文は同年7月号の「ジャーナリスト」に掲載されているが、「ジャーナリズム精神の衰退」を克服・復権しようという、今でも、むしろ今こそ読み返し議論すべき呼びかけである。
その後、雑誌「世界」で2008年に始めたコラム「メディア時評」は鋭い筆鋒が多くの読者を引き付け長期連載となった。筆者名の神保太郎は実はペンネームで数人のメンバーの集合名。その中心が桂さんだった。
桂さんは2019年『メディア、お前は戦っているか』(岩波書店刊)の「まえがき」で「集合知」という言葉ひいてジャーナリズムには「集合知」が必要だ」と説いた。
戦後80年の今こそ、私たちには桂さんの所説・提言を学び直し、実践していくことが問われているのではなかろうか。合掌
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年2月25日号
2025年03月17日
【お知らせ】世田谷区史編さん争議解決報告集会(リアル・オンライン参加併用)4月5日(土)14時半から16時半 エデュカス東京地階会議室=出版部会
本年1月7日、世田谷区史編さんをめぐる争議が解決しました。解決にご尽力いただいた多くの方々に心より感謝します。
今回の解決では、和解文書に「著作者人格権の尊重」が明記された点に最大の意義があります。全国の自治体史にかかわる人々、歴史研究者はもとより、フリーランス・クリエーターの権利にも大きな影響を与える内容です。この闘いの意義について、皆様と共有したいと思います。
下記の要領で解決報告集会を開きますので、お誘いあわせの上、ご参加ください。(オンライン+リアル:どちらもお申し込みが必要です)
■日時:4月5日(土)14時開場
■場所:全国教育文化会館エデュカス東京地階会議室(千代田区二番町12-1/地学会館の隣) 最寄り駅は、JR市ヶ谷駅、地下鉄麹町駅
■参加費:1000円(リアル、オンライン参加とも)
■共催:出版ネッツ、世田谷区史のあり方について考える区民の会
■お申し込み
・オンライン参加 https://nets-setagaya.peatix.com/view
・リアル参加 https://forms.gle/qNRy3FxRdTipmoRp8
※申し込み締め切り:3月28日(金)18時
※リアル参加では、二次会の申し込みも受け付けます(参加費は別途当日徴収)
争議の経過についてはブログ御所巻に掲載 https://setagayakushi-chosakuken.hatenablog.com/
今回の解決では、和解文書に「著作者人格権の尊重」が明記された点に最大の意義があります。全国の自治体史にかかわる人々、歴史研究者はもとより、フリーランス・クリエーターの権利にも大きな影響を与える内容です。この闘いの意義について、皆様と共有したいと思います。
下記の要領で解決報告集会を開きますので、お誘いあわせの上、ご参加ください。(オンライン+リアル:どちらもお申し込みが必要です)
■日時:4月5日(土)14時開場
■場所:全国教育文化会館エデュカス東京地階会議室(千代田区二番町12-1/地学会館の隣) 最寄り駅は、JR市ヶ谷駅、地下鉄麹町駅
■参加費:1000円(リアル、オンライン参加とも)
■共催:出版ネッツ、世田谷区史のあり方について考える区民の会
■お申し込み
・オンライン参加 https://nets-setagaya.peatix.com/view
・リアル参加 https://forms.gle/qNRy3FxRdTipmoRp8
※申し込み締め切り:3月28日(金)18時
※リアル参加では、二次会の申し込みも受け付けます(参加費は別途当日徴収)
争議の経過についてはブログ御所巻に掲載 https://setagayakushi-chosakuken.hatenablog.com/
2025年03月16日
【沖縄ジャンプナイト】歴代知事 突破口探る 沖縄タイムス部長 「地域外交」解説 問題解決能力欠く政府
JCJ沖縄ジャンプナイトは2日、第33回オンラインイベントを開いた。沖縄タイムス編集局の福元大輔政経部長が「沖縄県の地域外交」と題して講話。玉城デニー沖縄県知事が主要政策として掲げる地域外交の現在地と、その背景について語った。
県の「地域外交」を報じた沖縄タイムス紙面
玉城知事提唱
「三つのD」
2018年に初めて知事選に立候補した玉城知事。その出馬会見で表明したのが自身の政策の根幹となる「三つのD」だった。ダイバーシティー(多様性)、デモクラシー(民主主義)、ディプロマシー(外交)だ。福元さんは「玉城氏は当初から辺野古新基地建設を止める手立ての一つとして地域外交を考えていた」とする。
2期目の23年県庁内に地域外交室を創設。翌24年には、県がもともと香港や上海などアジア7カ所に構えていた海外事務所などを統合し「地域外交課」とした。
一方「外交は国の専管事項」と言われ、玉城知事の地域外交に批判的な報道もある。
地方自治法1条2項に国が行う事務として「国際社会における国家としての存立に関わる事務」と明記されていることを根拠にしたものだが、福元さんは地域外交課が他県にも存在すると指摘。「地方自治法は国と地方の立場を対等と定めるものであり、そもそも外交を国の排他的な権限で進めることを想定したものではないのでは」と見た。
沖縄の特殊性
米基地問題に
沖縄県の地域外交の特殊性は「基地問題にある」と強調。知事による直接の訪米外交は復帰後初の保守系知事の西銘順治氏(在任期間1978〜90年)から始まっていることを紹介した。
以降、大田昌秀、稲嶺恵一、仲井真弘多の歴代知事は訪米を繰り返し、その時々に基地問題の解決を米国政府に求めている。
福元さんは「米軍普天間飛行場の返還は大田知事時代に表明されたが、最初に普天間の返還を要請したのは西銘知事だった」と指摘。「沖縄の基地問題で大きな方向性が示される背景には歴代知事による外交の積み重ねがある」とした。
玉城知事の地域外交の特徴としては、基地問題だけでなく経済や平和交流もともに推進するという姿勢があるという。@東アジアの緊張緩和A県産品のアピールB沖縄の技術貢献―の3点が玉城県政の掲げる外交目標とした。
パラオの排他的経済水域(EEZ)内での漁業実現や、韓国・済州島との友好都市連携など経済・平和交流面では一定の成果があった。一方、基地問題に関する「玉城外交」の評価は割れているという。
政治日程優先
政府事件隠蔽
福元さんは沖縄の知事が外交を推進せざるを得ない背景に、日本政府の問題解決能力の欠如と、本土メディアの無関心を挙げる。
昨年判明した米兵による少女の誘拐暴行事件は日米の政治日程を優先する政府によって半年近くも県民に隠されてきた。「政府による情報操作があからさまになっている」と批判。同時に「半年もの間、事件について県内メディアが気づけなかったことはもちろんだが、官邸を取材する本土メディアからも報道がなかったことも深刻だ」と問題視した。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年2月25日号
2025年03月15日
【リレー時評】沖縄戦から80年「この国」の現実は=金城正洋(JCJ沖縄世話人)
沖縄は旧暦で各種行事を行う。今年の旧正月は1月29日だった。県内各地の漁港では漁業者(ウミンチュ)たちが航海安全と豊漁、家族の健康を願い、漁船に大漁旗を掲げるのが習わしだ。
旧正月のころ台湾や中国、香港など中華圏は新年の「春節」。ベトナムは「テト」。韓国、東南アジアも新年に沸く。民族の大移動といわれる春節。沖縄も海外の観光客であふれている。
カンヒザクラ(緋寒桜ともいう)の淡いピンクの花が青空に映える中、初春の沖縄の風物詩・プロ野球の春季キャンプも真っ盛り。どの球場も県内外からのファンで連日賑わいをみせている。
「球春」で沸く沖縄。今年は住民を巻き込んだ沖縄戦から80年が経とうとしている。東京大手や各県問わずマスメディアでは80年を振り返る記事が動き出した。不思議なのは沖縄を含め一部に例外はあるものの、そのほとんどが戦争終結を起点とした「戦後80年」モノで埋め尽くされている感があることだ。
そもそも「戦後」とは何なのか。戦後という前提には「戦前・戦中」という時代があった。それは第二次世界大戦に至る前の15年戦争であり、忘れてはならないこの国の負の歴史である。
1945年以前にこの国が何をし、自国、他国を含めてどれだけの尊い命が失われたのか。物心ついた80年前の10歳の子は90歳になる。戦争体験の記憶は風化していく。しかし、糸満市摩文仁の「平和の礎」に刻銘された24万人余りの犠牲者の名前は、戦争の歴史を問い続けていくだろう。
ところがだ。「台湾有事は日本の有事」「南西諸島防衛」「住民避難計画策定」とか先走り、台湾に行って勇ましく「戦う覚悟」までぶち上げて「戦意高揚」に行きつこうとする勢力が台頭。戦後80年の「この国」の現実でもある。
「戦う覚悟」とは台湾は中国と戦え、台湾の後ろには日米同盟が控えているという意味だろう。他国への干渉は国際法上ご法度だが、台湾と中国の戦争をけしかけるようなモノ言いはもってのほかではないか。
戦場は東京圏から遠く離れた台湾に近い沖縄諸島。だから沖縄諸島に自衛隊基地を造ったとでも言いたいのかと勘ぐってしまう。沖縄をウクライナやパレスチナのガザ地区などと同様の戦場にしようとでも考えているだろうか。軍需産業への支援だろうか。浮かれている場合ではない。
この国の保守陣営が息巻く「中国憎しと台湾有事」という点に関し、果たしてアメリカは動くのか。大国アメリカと大国中国が真正面からぶつかることはあり得ない。それは第三次世界大戦への出口の見えない終わりの始まりであることを、米中とも熟知しているはずだからだ。
戦後80年、さび付いたこの国の指導者たちに対抗するのは、戦争のない平和と自由と平等を諦めない気構えだ。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年2月25日号
旧正月のころ台湾や中国、香港など中華圏は新年の「春節」。ベトナムは「テト」。韓国、東南アジアも新年に沸く。民族の大移動といわれる春節。沖縄も海外の観光客であふれている。
カンヒザクラ(緋寒桜ともいう)の淡いピンクの花が青空に映える中、初春の沖縄の風物詩・プロ野球の春季キャンプも真っ盛り。どの球場も県内外からのファンで連日賑わいをみせている。
「球春」で沸く沖縄。今年は住民を巻き込んだ沖縄戦から80年が経とうとしている。東京大手や各県問わずマスメディアでは80年を振り返る記事が動き出した。不思議なのは沖縄を含め一部に例外はあるものの、そのほとんどが戦争終結を起点とした「戦後80年」モノで埋め尽くされている感があることだ。
そもそも「戦後」とは何なのか。戦後という前提には「戦前・戦中」という時代があった。それは第二次世界大戦に至る前の15年戦争であり、忘れてはならないこの国の負の歴史である。
1945年以前にこの国が何をし、自国、他国を含めてどれだけの尊い命が失われたのか。物心ついた80年前の10歳の子は90歳になる。戦争体験の記憶は風化していく。しかし、糸満市摩文仁の「平和の礎」に刻銘された24万人余りの犠牲者の名前は、戦争の歴史を問い続けていくだろう。
ところがだ。「台湾有事は日本の有事」「南西諸島防衛」「住民避難計画策定」とか先走り、台湾に行って勇ましく「戦う覚悟」までぶち上げて「戦意高揚」に行きつこうとする勢力が台頭。戦後80年の「この国」の現実でもある。
「戦う覚悟」とは台湾は中国と戦え、台湾の後ろには日米同盟が控えているという意味だろう。他国への干渉は国際法上ご法度だが、台湾と中国の戦争をけしかけるようなモノ言いはもってのほかではないか。
戦場は東京圏から遠く離れた台湾に近い沖縄諸島。だから沖縄諸島に自衛隊基地を造ったとでも言いたいのかと勘ぐってしまう。沖縄をウクライナやパレスチナのガザ地区などと同様の戦場にしようとでも考えているだろうか。軍需産業への支援だろうか。浮かれている場合ではない。
この国の保守陣営が息巻く「中国憎しと台湾有事」という点に関し、果たしてアメリカは動くのか。大国アメリカと大国中国が真正面からぶつかることはあり得ない。それは第三次世界大戦への出口の見えない終わりの始まりであることを、米中とも熟知しているはずだからだ。
戦後80年、さび付いたこの国の指導者たちに対抗するのは、戦争のない平和と自由と平等を諦めない気構えだ。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年2月25日号
2025年03月14日
【Bookガイド】3月の“推し本”=萩山 拓(ライター)
ノンフィクション・ジャンルからチョイスした気になる本の紹介です(刊行順・販価は税別)
◆鈴木エイト『統一教会との格闘、22年』角川新書 3/10刊 1040円
なぜ22年間、一人で追い続けられたのか。2002年、街頭で偽装勧誘活動を偶然、目撃したのをきっかけに、統一教会とかかわるようになった著者。さまざまな嫌がらせ、脅迫、圧力を受けながらも、世間に衝撃を与えた組織の実態を追究し、メディアや多くの人々に訴えてきた貴重な記録である。
著者は1968年、滋賀県生まれ。ジャーナリスト。著書『自民党の統一教会汚染』(小学館)でJCJ大賞を受賞。
◆藍原寛子『フクシマ、能登、そしてこれから─震災後を生きる13人の物語』婦人之友社 3/11刊 1500円
災害大国で生きる全ての人へ届けたい。東日本大震災から14年、能登半島地震から1年。それぞれが語る被災体験の貴重な内容は、命と生活を守るための「痛みを伴う教訓」である。内外の被災地を歩く福島在住の国際ジャーナリストが贈る待望のルポ。著者は福島県生まれ。福島民友新聞記者を経てJapan Perspective Newsを設立。阪神・淡路大震災、東日本大震災で支援、取材活動を重ね、能登半島地震では直後から被災地に通い、被災者の様子を伝えた。日本外国特派員協会の2024年報道の自由賞受賞。
◆椎名 誠『哀愁の町に何が降るというのだ。』本の雑誌社 3/12刊 1800円
装いも新たに『哀愁の町』のメンバーが登場! 新設の荒くれ高校での沢野ひとしとの出会いから、同級生たちとの椿事の数々、瀕死の重傷を負った交通事故での入院、年上人妻との初体験、克美荘での共同生活、そして新生活への旅立ちまで、44 年後の目線で、これまで書けなかったエピソードを中心に、昭和の若者の日々を描き直した傑作。哀感と追憶、入り混じるヒューマンな筆致が心を揺さぶる。
著者は1944年、東京生れ。「本の雑誌」編集長を経て、旅と食の写真エッセイと著書多数。
◆河崎秋子『父が牛飼いになった理由』集英社新書 3/17刊 1000円
『ともぐい』で直木賞を受賞した著者は、10年にわたって自然や動物と対峙する作品を書き続けきた。実家は父・崇が「脱サラ」し開業した<河ア牧場>。なぜ、父は牧場経営を始めたのか。その謎を辿るため戦国時代からの家系図を遡る。金沢で武士だった先祖、満洲で薬剤師をしていた祖父、満洲から大阪、そして北海道へと移り住んだ父、そして牧場経営の苦労を背負った祖母と母……。
400年以上に及ぶファミリーヒストリーが、20世紀の日本と戦後の北海道の酪農史へと繋がっていくノンフィクション。
◆笹田昌宏『鉄道「幻」巡礼』イカロス出版 3/18刊 2000円
ヒグマに怯えながら北海道の山中で捉えた未開業のコンクリート橋梁、都会の真ん中で切れ切れの姿となった貨物高架橋、戦時中に蒸気機関車を隠すために掘られた機関車避難壕、一般客は乗れなかった「幻」の寝台客車の特別潜入回想、そして一度は完成しながら解体されて姿を消した九州の連続高架橋…。日本全国に散在する「幻」の鉄道、そのリアルな姿を実踏に基づいて解き明かす。
著者は1971年、大阪府生まれ。医師。作家。第10回旅のノンフィクション大賞受賞。著書に『廃駅。』『日本の保存車100 感動編』など。
◆後藤正治『文品−藤沢周平への旅』中央公論新社 3/24刊 2300円
あの「静謐な物語と文体が体内の深い部分に触れてくる感触である。空洞をふさいでくれる…折もあった。癒されていたのかもしれない」と、著者は言う。歳月が持つ哀しみ、自分なりの小さな矜持、人生への情熱、権力の抗しがたい美味と虚しさ。時代小説を舞台に、静謐な文体で人の世の「普遍」を描き続けた作家・藤沢周平。ノンフィクションの名手が、その人と作品の魅力に迫る。
著者は1946年、京都市生まれ。ノンフィクション作家。『遠いリング』で講談社ノンフィクション賞、他に『奇蹟の画家』など。
◆小林美穂子+小松田健一『桐生市事件─生活保護が歪められた街で』地平社 3/28刊 1800円
生活保護を受給する人数が10年で半減の桐生市。そこで何が起きていたのか。保護費を毎日1000円だけ手渡し、残りは金庫にしまうなど、信じがたい運用が発覚した。桐生市の生活保護行政の暗部を暴く。助けを求める市民を威圧し、支給を徹底的に削る姿勢が、次第に明らかになっていく。支援と取材の現場から迫ったルポルタージュ。
著者の女性は、群馬県出身、生活困窮者の居場所「カフェ潮の路」主宰。共著者は東京新聞前橋支局長を経て出版部在籍。24年6月に「地域・民衆ジャーナリズム賞2024」受賞。
◆鈴木エイト『統一教会との格闘、22年』角川新書 3/10刊 1040円
なぜ22年間、一人で追い続けられたのか。2002年、街頭で偽装勧誘活動を偶然、目撃したのをきっかけに、統一教会とかかわるようになった著者。さまざまな嫌がらせ、脅迫、圧力を受けながらも、世間に衝撃を与えた組織の実態を追究し、メディアや多くの人々に訴えてきた貴重な記録である。
著者は1968年、滋賀県生まれ。ジャーナリスト。著書『自民党の統一教会汚染』(小学館)でJCJ大賞を受賞。
◆藍原寛子『フクシマ、能登、そしてこれから─震災後を生きる13人の物語』婦人之友社 3/11刊 1500円
災害大国で生きる全ての人へ届けたい。東日本大震災から14年、能登半島地震から1年。それぞれが語る被災体験の貴重な内容は、命と生活を守るための「痛みを伴う教訓」である。内外の被災地を歩く福島在住の国際ジャーナリストが贈る待望のルポ。著者は福島県生まれ。福島民友新聞記者を経てJapan Perspective Newsを設立。阪神・淡路大震災、東日本大震災で支援、取材活動を重ね、能登半島地震では直後から被災地に通い、被災者の様子を伝えた。日本外国特派員協会の2024年報道の自由賞受賞。
◆椎名 誠『哀愁の町に何が降るというのだ。』本の雑誌社 3/12刊 1800円
装いも新たに『哀愁の町』のメンバーが登場! 新設の荒くれ高校での沢野ひとしとの出会いから、同級生たちとの椿事の数々、瀕死の重傷を負った交通事故での入院、年上人妻との初体験、克美荘での共同生活、そして新生活への旅立ちまで、44 年後の目線で、これまで書けなかったエピソードを中心に、昭和の若者の日々を描き直した傑作。哀感と追憶、入り混じるヒューマンな筆致が心を揺さぶる。
著者は1944年、東京生れ。「本の雑誌」編集長を経て、旅と食の写真エッセイと著書多数。
◆河崎秋子『父が牛飼いになった理由』集英社新書 3/17刊 1000円
『ともぐい』で直木賞を受賞した著者は、10年にわたって自然や動物と対峙する作品を書き続けきた。実家は父・崇が「脱サラ」し開業した<河ア牧場>。なぜ、父は牧場経営を始めたのか。その謎を辿るため戦国時代からの家系図を遡る。金沢で武士だった先祖、満洲で薬剤師をしていた祖父、満洲から大阪、そして北海道へと移り住んだ父、そして牧場経営の苦労を背負った祖母と母……。
400年以上に及ぶファミリーヒストリーが、20世紀の日本と戦後の北海道の酪農史へと繋がっていくノンフィクション。
◆笹田昌宏『鉄道「幻」巡礼』イカロス出版 3/18刊 2000円
ヒグマに怯えながら北海道の山中で捉えた未開業のコンクリート橋梁、都会の真ん中で切れ切れの姿となった貨物高架橋、戦時中に蒸気機関車を隠すために掘られた機関車避難壕、一般客は乗れなかった「幻」の寝台客車の特別潜入回想、そして一度は完成しながら解体されて姿を消した九州の連続高架橋…。日本全国に散在する「幻」の鉄道、そのリアルな姿を実踏に基づいて解き明かす。
著者は1971年、大阪府生まれ。医師。作家。第10回旅のノンフィクション大賞受賞。著書に『廃駅。』『日本の保存車100 感動編』など。
◆後藤正治『文品−藤沢周平への旅』中央公論新社 3/24刊 2300円
あの「静謐な物語と文体が体内の深い部分に触れてくる感触である。空洞をふさいでくれる…折もあった。癒されていたのかもしれない」と、著者は言う。歳月が持つ哀しみ、自分なりの小さな矜持、人生への情熱、権力の抗しがたい美味と虚しさ。時代小説を舞台に、静謐な文体で人の世の「普遍」を描き続けた作家・藤沢周平。ノンフィクションの名手が、その人と作品の魅力に迫る。
著者は1946年、京都市生まれ。ノンフィクション作家。『遠いリング』で講談社ノンフィクション賞、他に『奇蹟の画家』など。
◆小林美穂子+小松田健一『桐生市事件─生活保護が歪められた街で』地平社 3/28刊 1800円
生活保護を受給する人数が10年で半減の桐生市。そこで何が起きていたのか。保護費を毎日1000円だけ手渡し、残りは金庫にしまうなど、信じがたい運用が発覚した。桐生市の生活保護行政の暗部を暴く。助けを求める市民を威圧し、支給を徹底的に削る姿勢が、次第に明らかになっていく。支援と取材の現場から迫ったルポルタージュ。
著者の女性は、群馬県出身、生活困窮者の居場所「カフェ潮の路」主宰。共著者は東京新聞前橋支局長を経て出版部在籍。24年6月に「地域・民衆ジャーナリズム賞2024」受賞。
2025年03月13日
【支部リポート】福岡 障害ある人にも映画を 「みらいシネマ福岡」設立=白垣 詔男
2021年度にJCJ賞を受賞した、植村隆さんの裁判を中心に描いた映画「標的」の監督・製作を務めた福岡支部会員・西嶋真司さんが、昨年末、「すべての人生に映画の感動を」と銘打って特定非営利活動法人「みらいシネマ福岡」を設立した。
同法人の創立趣意書には「私たちが暮らす社会には様々な人々がいます。この社会は多数を占める健常者に都合のいいように造られてきました。視覚障がい者や聴覚障がい者にとって、映画館で映画の感動に接する機会は決して多くありません。…(この団体は)音声ガイドや字幕を利用して、障害がいがある人もない人も、すべての人が一緒に映画を楽しむ『ユニバーサル映画』を拡めるNPO法人です」とある。
上映会では、映画監督や俳優、知識人らを招きトークショーも行う計画だという。同時手話通訳や音声認識によるトーク内容を表示して、誰もが製作者や出演者らの生の姿と話に接することができ、映画の感動が、より深いものになるようにすると意欲を見せる。会場は、今年はすべて、福岡市中央区の福岡市科学館のホール(300人収容)で、近く公式ホームページを開設して、参加予約ができるようにするという。
既に、監督の森達也さんや是枝裕和さんには、これからの上映会への来場、スピーチをするよう依頼して快諾を得ているという。
初企画は5月5日(月・祝)の「港に灯がともる」。阪神淡路大震災の翌日に生まれた在日3世の女性・灯をめぐるストーリー。
その後、1〜2カ月に1回、映画会を予定している。既に8月16日(土)に計画している、第二次世界大戦末期、東京都品川区の保育士たちが幼い園児たちと集団で疎開し、東京大空襲の戦火を逃れた「疎開保育園」の実話を描いた「あの日のオルガン」上映会には、平松恵美子監督(山田洋次監督の下で助監督・脚本を担当、日本アカデミー賞優秀脚本賞を何度も受賞)と主演・大原櫻子さんの出演が決まっている。12月には、中村哲さんを描いた「荒野に希望の灯をともす」を、中村さんの命日・4日に合わせて追悼上映する予定だ。
西嶋さんは「背景の違う様々な人々が映画を通して他者を知り、お互いを尊重する場が生まれる。思いやりや優しさにあふれた、開かれた社会の実現を、この団体を通じて目指したい」と意欲を話す。白垣詔男
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年2月25日号
同法人の創立趣意書には「私たちが暮らす社会には様々な人々がいます。この社会は多数を占める健常者に都合のいいように造られてきました。視覚障がい者や聴覚障がい者にとって、映画館で映画の感動に接する機会は決して多くありません。…(この団体は)音声ガイドや字幕を利用して、障害がいがある人もない人も、すべての人が一緒に映画を楽しむ『ユニバーサル映画』を拡めるNPO法人です」とある。
上映会では、映画監督や俳優、知識人らを招きトークショーも行う計画だという。同時手話通訳や音声認識によるトーク内容を表示して、誰もが製作者や出演者らの生の姿と話に接することができ、映画の感動が、より深いものになるようにすると意欲を見せる。会場は、今年はすべて、福岡市中央区の福岡市科学館のホール(300人収容)で、近く公式ホームページを開設して、参加予約ができるようにするという。
既に、監督の森達也さんや是枝裕和さんには、これからの上映会への来場、スピーチをするよう依頼して快諾を得ているという。
初企画は5月5日(月・祝)の「港に灯がともる」。阪神淡路大震災の翌日に生まれた在日3世の女性・灯をめぐるストーリー。
その後、1〜2カ月に1回、映画会を予定している。既に8月16日(土)に計画している、第二次世界大戦末期、東京都品川区の保育士たちが幼い園児たちと集団で疎開し、東京大空襲の戦火を逃れた「疎開保育園」の実話を描いた「あの日のオルガン」上映会には、平松恵美子監督(山田洋次監督の下で助監督・脚本を担当、日本アカデミー賞優秀脚本賞を何度も受賞)と主演・大原櫻子さんの出演が決まっている。12月には、中村哲さんを描いた「荒野に希望の灯をともす」を、中村さんの命日・4日に合わせて追悼上映する予定だ。
西嶋さんは「背景の違う様々な人々が映画を通して他者を知り、お互いを尊重する場が生まれる。思いやりや優しさにあふれた、開かれた社会の実現を、この団体を通じて目指したい」と意欲を話す。白垣詔男
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年2月25日号
2025年03月12日
【映画の鏡】国家に「棄権」を命じられ『TATAMI』スポーツと政治の関係を鋭く問う=伊藤良平
2033 Judo production L.L.C. All Rights Reserved
柔道の国際大会でイランの選手は優勝を目前に政府からイスラエル選手との対戦を避けるために棄権を命じられる。この映画は実話に基づいた金メダル候補の柔道選手の不屈の戦いを描いた作品で
ある。
ジョージアで行われている女子世界柔道選手権でイラン代表のレイラは60キロ級のトーナ メント戦に出場して勝ち進んでいく。2回戦に勝利するとイラン政府が、けがを装って棄権しろと柔道チームの監督とレイラ選手に圧力をかけてくる。もしイスラエル選手と対戦して負けることになったらイランのメンツが失われることになるからだ。
これは2019年8月に日本で行われた世界柔道選手権に出場したイランの男子柔道選手サイード・モラエイに起こった実際の事件を基にしている。この大会でモラエイは敵対するイスラエル選手との試合を棄権するようにと政府に圧力をかけられた。もしこれを拒否すれば国家への反逆となる。勝利をめざして練習を重ねてきた選手にとって試合途中で棄権を余儀なくされることは、いかに国の方針だとはいえどのような心中であろうか、現実にはなかなか切り離されることがないスポーツと政治の問題に焦点をあて問いかける。
またこの作品はイラン出身監督とイスラエル出身監督による共同演出であることも興味深い。この作品はイランに秘匿で制作されて、参加したイラン出身者は全員亡命したという。モノクロで描かれる迫力ある試合のシーンとその裏側で行われる駆け引きも見どころの一つだ。
第36回東京国際映画祭で審査委員特別賞と最優秀女優賞を受賞。2月28日より新宿ピカデリーほか全国順次公開
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年2月25日号