本日3月11日は、福島第一原発事故から14年目を迎えた。この原発事故について最高裁判決は「国の免責」を認めた。最近では、業務上過失致死傷罪で強制起訴された東電旧経営陣3人らの上告審でも、3月6日、「10メートルを超える津波を予測できたと認めることはできない」と、検察官役の指定弁護士の上告を退け、武黒一郎と武藤栄の両元副社長の無罪が確定した。勝俣恒久元会長は昨年10月に死亡し、起訴が取下げられている。
判決を下した最高裁第2小法廷の岡村和美裁判長と草野耕一裁判官は、東電と関係が深い巨大法律事務所出身だ。岡村裁判官の出身は、東電株主代表訴訟の東電側代理人の長嶋・大野・常松法律事務所(弁護士532人所属)。第2の裁判長を退官した菅野博之弁護士は顧問を務める。草野裁判官の出身は弁護士650人を擁する日本最大規模の西村あさひ法律事務所。判事就任前は事務所の共同経営者で、事務所顧問の元最高裁判事は東電の依頼で最高裁に意見書を提出。しかも事務所弁護士は東電の社外取締役だ。
被害者参加代理人は、審理を担う草野裁判官は、東電と利害関係があり、公正な裁判を妨げるとして3月21日の定年退官後に判断することを求めた意見書を3月3日に最高裁に提出していた。結局、聞き入れられなかったのだ。ちなみに第3小法廷の渡邉惠理子裁判官も長嶋・大野・常松法律事務所の共同経営者だった。
2024年度JCJ賞受賞『東電の変節』(旬報社)の著者のジャーナリスト・後藤秀典氏は昨年11月30日のオンライン講演でこう話した。
「(取材した)巨大事務所のベテラン弁護士は『(巨大事務所出身の)最高裁判事は正義とかということにあまり見解を持っていない。人権や正義のことに全然関心がない』と言っていました」「司法修習を終えた弁護士志望者の第一希望は巨大事務所への所属です。高給が約束されていますので決まったら大喜びするそうです」
後藤氏の取材に対し澤藤統一郎弁護士はこう述べた。
「特定の巨大法律事務所が最高裁裁判官の供給源となり、同時に最高裁裁判官の天下り先ともなっている。こうして形成された最高裁と巨大法律事務所とのパイプを中心に、巨大法律事務所が、裁判所、国、企業の密接な癒着構造を形作っている。司法の独立の危機は、新たな段階にある」
深まる癒着構造は、判決をねじ曲げ司法の信頼を失うことになる。
2025年03月11日
2025年03月10日
【シンポジウム】「原発と司法」問う 再推進呼び込んだ 最高裁判決を正せ=寺西俊一(一橋大学名誉教授/日本環境会議理事長/ノーモア原発公害市民連代表世話人)
去る1月26日(日)の午後、明治大学の駿河台キャンパス・グローバルフロントにて、「日本環境会議」(JEC)主催、「ノーモア原発公害市民連絡会」(以下「市民連」)と「6・17最高裁共同行動実行委員会」(23団体参加)の協賛による<公開市民シンポ 第2弾!>「原発と司法−いま私たちに問われていること」(会場参加約200名弱、オンライン視聴100名余)が開催された。これは、昨年(2024年)6月16日(日)の午後、同じく明治大学の駿河台キャンパス・リバティホールにて開催した「巨大地震と原発―司法のあり方を問い直す」という<公開市民シンポ 第1弾!>(会場参加約400名弱)に続くものであった。ここで、私たちが「司法のあり方」や「原発と司法」に焦点を当てているのはなぜなのか?、ごく簡単に説明しておけば、そこには、次のような経緯と背景がある。
周知のとおり、2011年3月の福島原発事故から14年目を迎えようとしているが、この間、数多くの原発関係訴訟が各地で争われてきた。そうしたなかで、2022年6月17日、福島原発事故による損害賠償訴訟の上告を受けた最高裁第二小法廷の判決(「6・17最判」)が出された。だが、その判決は、国が仮に規制権限を行使したとしても原発事故は避けられなかった、だから「国に責任はない」という、きわめて不当なものであった。しかも、この「6.17最判」以降、その後の日本政府は、「原発再推進」へと明らさまな政策転換を行い、たとえば2025年度からの「第7次エネルギー基本計画」素案でも「最大限活用」を前面に打ち出すに至っているのである。
私たちは、上記のような経緯と背景を踏まえて、とくに福島原発事故における「国の責任」を不当に否定した「6・17最判」を正すことに焦点を当てた取り組みを進めてきた。過日のシンポにおいても、ジャーナリストの金平茂紀さん(市民連」代表世話人)、弁護士の海渡雄一さん(脱原発訴訟弁護団全国連絡会共同代表)、研究者の吉村良一さん(立命館大学名誉教授)らによる一連の講演はそれぞれに貴重なものであったが、やはり何といっても、樋口英明さん(元裁判官)による特別講演がメインの位置を占めていたといえる。とりわけ、今回の樋口さんのお話しは、この1月初旬に刊行された最新刊書(岩波ブックレット:『原発と司法―国の責任を認めない最高裁判決の罪』)(写真データ、参照)のエッセンスを非常に分かりやすく嚙み砕いたものであった。皆さんには、同書そのものをご購読いただくよう、ここに強くお薦めしておきたい。
なお、末尾になったが、当日のシンポ全体の録画やそこでの講演資料等は、「日本環境会議(JEC)」のHPにおける下記のサイトに掲載してあるので、ご参照いただければ幸いである。 http://www.einap.org/jec/subcategory/events/54
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年2月25日号
周知のとおり、2011年3月の福島原発事故から14年目を迎えようとしているが、この間、数多くの原発関係訴訟が各地で争われてきた。そうしたなかで、2022年6月17日、福島原発事故による損害賠償訴訟の上告を受けた最高裁第二小法廷の判決(「6・17最判」)が出された。だが、その判決は、国が仮に規制権限を行使したとしても原発事故は避けられなかった、だから「国に責任はない」という、きわめて不当なものであった。しかも、この「6.17最判」以降、その後の日本政府は、「原発再推進」へと明らさまな政策転換を行い、たとえば2025年度からの「第7次エネルギー基本計画」素案でも「最大限活用」を前面に打ち出すに至っているのである。
私たちは、上記のような経緯と背景を踏まえて、とくに福島原発事故における「国の責任」を不当に否定した「6・17最判」を正すことに焦点を当てた取り組みを進めてきた。過日のシンポにおいても、ジャーナリストの金平茂紀さん(市民連」代表世話人)、弁護士の海渡雄一さん(脱原発訴訟弁護団全国連絡会共同代表)、研究者の吉村良一さん(立命館大学名誉教授)らによる一連の講演はそれぞれに貴重なものであったが、やはり何といっても、樋口英明さん(元裁判官)による特別講演がメインの位置を占めていたといえる。とりわけ、今回の樋口さんのお話しは、この1月初旬に刊行された最新刊書(岩波ブックレット:『原発と司法―国の責任を認めない最高裁判決の罪』)(写真データ、参照)のエッセンスを非常に分かりやすく嚙み砕いたものであった。皆さんには、同書そのものをご購読いただくよう、ここに強くお薦めしておきたい。
なお、末尾になったが、当日のシンポ全体の録画やそこでの講演資料等は、「日本環境会議(JEC)」のHPにおける下記のサイトに掲載してあるので、ご参照いただければ幸いである。 http://www.einap.org/jec/subcategory/events/54
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年2月25日号
2025年03月09日
【フォトアングル】新春鏡開き 千代田区春闘委=1月9日 伊東良平撮影
千代田区春闘共闘委員会による2025年の新春旗開きが東京千代田区のエデュカス東京で開催された。主催者の茂呂千代田区春闘共闘議長の挨拶に続き、春闘勝利をめざして乾杯したのちに、JCJをはじめ千代田区内の労働団体や弁護士演劇関係者など集まった参加者42名がそれぞれの立場から挨拶や報告そして余興などが行われた。JAL争議団は争議解決への呼びかけの後に南京玉すだれを披露して会場から大きな喝さいを浴びた。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年2月25日号
2025年03月08日
【月間マスコミ評・出版】フジテレビと文春と女性の人権=荒屋敷 宏
昨年12月19日発売の『女性セブン』1月2・9日号が「中居正広 巨額解決金 乗り越えた女性深刻トラブル」を掲載した後、12月26日発売の『週刊文春』1月2・9日号は「中居正広9000万円SEXスキャンダルの全貌」との記事を出した。文春の記事は『女性セブン』の後追いだった。
フジテレビは、X子さんに対する編成幹部A氏の関与を一貫して否定している。報道機関であるにもかかわらず、1月17日の記者会見を一部メディアに制限し、生中継や映像撮影を拒否したことで批判を浴びた。
日付をまたいでの10時間半近い「やり直し会見」(1月27日〜㉘日)の後も、フジテレビへの批判は止まるところを知らず、文春が電子版で訂正記事を出したため、メディアの問題としても炎上することになってしまった。
文春が訂正したのは「X子さんはフジ編成幹部A氏に誘われた」との箇所だ。その後の取材により「X子さんは中居氏に誘われた」「A氏がセッティングしている会の延長≠ニ認識していた」ことが判明したため、第二弾以降は取材成果を踏まえた内容を報じてきたと、文春は2月6日号の【編集長より】で弁明した。しかし問題の事実関係は、いまだに明らかになっていない。
そもそも問われているのは、性暴力に対する企業倫理や組織のあり方である。上司の誘いを断れば、仕事を奪われるのではないかという恐怖、地位や権力を利用した性暴力の問題は後を絶たない。フジテレビの大株主である米投資ファンドのダルトン・インベストメンツがいち早く声を上げ、日本の企業がCMから撤退するなどの流れになった。
1月23日号の『週刊文春』が報じたフジテレビ問題第三弾の記事中にある「女性アナ接待のDNA」という角度からの追及にも期待したい。日本の企業社会に巣くう女性の人権軽視という暗部を明らかにする機会にすべきであろう。問題が起きたことを知りながら、中居正広氏を番組MCに起用し続けたフジテレビ経営幹部の姿勢が厳しく問われている。
女性セブンは、フジテレビから文句を言われることなく続報を続けており、週刊文春のほかに、週刊新潮、週刊ポスト、サンデー毎日もこの問題の追及に参戦し、報道は過熱している。しかし、女性の人権問題として追及する姿勢が弱いのは、どうしたことだろうか。メディアの側も「重い十字架」を背負っているというべきであろう。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年2月25日号
フジテレビは、X子さんに対する編成幹部A氏の関与を一貫して否定している。報道機関であるにもかかわらず、1月17日の記者会見を一部メディアに制限し、生中継や映像撮影を拒否したことで批判を浴びた。
日付をまたいでの10時間半近い「やり直し会見」(1月27日〜㉘日)の後も、フジテレビへの批判は止まるところを知らず、文春が電子版で訂正記事を出したため、メディアの問題としても炎上することになってしまった。
文春が訂正したのは「X子さんはフジ編成幹部A氏に誘われた」との箇所だ。その後の取材により「X子さんは中居氏に誘われた」「A氏がセッティングしている会の延長≠ニ認識していた」ことが判明したため、第二弾以降は取材成果を踏まえた内容を報じてきたと、文春は2月6日号の【編集長より】で弁明した。しかし問題の事実関係は、いまだに明らかになっていない。
そもそも問われているのは、性暴力に対する企業倫理や組織のあり方である。上司の誘いを断れば、仕事を奪われるのではないかという恐怖、地位や権力を利用した性暴力の問題は後を絶たない。フジテレビの大株主である米投資ファンドのダルトン・インベストメンツがいち早く声を上げ、日本の企業がCMから撤退するなどの流れになった。
1月23日号の『週刊文春』が報じたフジテレビ問題第三弾の記事中にある「女性アナ接待のDNA」という角度からの追及にも期待したい。日本の企業社会に巣くう女性の人権軽視という暗部を明らかにする機会にすべきであろう。問題が起きたことを知りながら、中居正広氏を番組MCに起用し続けたフジテレビ経営幹部の姿勢が厳しく問われている。
女性セブンは、フジテレビから文句を言われることなく続報を続けており、週刊文春のほかに、週刊新潮、週刊ポスト、サンデー毎日もこの問題の追及に参戦し、報道は過熱している。しかし、女性の人権問題として追及する姿勢が弱いのは、どうしたことだろうか。メディアの側も「重い十字架」を背負っているというべきであろう。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年2月25日号
2025年03月07日
【お知らせ】日本ジャーナリスト会議(JCJ)2025年度定期総会開催。3月29日(土)13時からオンラインで開催=JCJ事務局
日本ジャーナリスト会議(JCJ)はJCJ規約に基ずき、2025年度定期総会(オンライン開催)を開く。本部・各支部・部会等活動報告と2025年度方針の後、JCJ創立70周年、戦後80年の取り組み、会員拡大、JCJ賞、機関紙など意見交換を予定。
会員はどなたでも参加し、発言することができます。。多くの参加を呼びかけます。日本ジャーナリスト会議事務局長 古川 英一
●開催要項
参加対象者:日本ジャーナリスト会議(JCJ)会員
主 催:日本ジャーナリスト会議運営委員会
総会議案書:作成次第会員に送付
●zoomへのアクセスは12時30分からから可能、ファイル共有などの準備出来ます
●zoomによるオンライン(会員には追ってアクセスURLを送付)
2025年03月06日
【おすすめ本】藤原 聡『姉と弟 捏造の闇「袴田事件」の58年』─真に裁かれるべきは警察官・検事・裁判官・記者だ=藤森 研(ジャーナリスト)
「ゆがんだ全能感」─郷原信郎元検事は、相次ぐ検察不祥事の原因を、そう表現した。日本の刑事司法には、そうした人物が、あちこちにいる。
共同通信の記者である著者は、冤罪「袴田事件」を作り上げた人たちの所業を実名入りで書いた。
猛暑の中、19日間も否認を続けた末、意識もうろうとなった袴田さんに「自白調書」の指印を強引に押させたのは、松本久次郎警部だ。
吉村英三検事は、「認めないなら認めるまで2年でも、3年でも勾留」すると迫った。典型的な「人質司法」である。
判決で捏造と認定された「5点の衣類」については、さすがに実行行為者の名はない。今も誰かが隠している。
最初の一審判決は、捜査を強く批判しながらも結論は有罪だった。覆るかと思われた二審は、意外にも、またしても有罪判決。裁判長はリベラル派で著名な横川敏雄判事だった。
逮捕より1か月余りも前に「従業員『H』浮かぶ」と、特ダネ風に報じ たのは、毎日新聞だ。
「殺人犯の家族」とされた一家は、息を潜めて生きた。末っ子の巌さんを可愛がっていた母が逝った後、姉ひで子さんが「母親の無念を晴らすため」、弟の支援にその後 の半生を捧げる。
評者は、大学教員であったとき、学生と一緒にひで子さんに会った。笑顔を絶やさぬ温かみに、多くの学生が彼女を慕った。人柄は支援を広げる核だった。
再審無罪判決は、みそ漬けの衣類など三つの事柄を「捏造」としたが、 不可解な点は、その三つに止まらない。本書を読んで知るのは、くり小刀を始めバスの遺失物、 焼けた紙幣……、いまだ捏造の闇は深い。(岩波書 店2000円)
共同通信の記者である著者は、冤罪「袴田事件」を作り上げた人たちの所業を実名入りで書いた。
猛暑の中、19日間も否認を続けた末、意識もうろうとなった袴田さんに「自白調書」の指印を強引に押させたのは、松本久次郎警部だ。
吉村英三検事は、「認めないなら認めるまで2年でも、3年でも勾留」すると迫った。典型的な「人質司法」である。
判決で捏造と認定された「5点の衣類」については、さすがに実行行為者の名はない。今も誰かが隠している。
最初の一審判決は、捜査を強く批判しながらも結論は有罪だった。覆るかと思われた二審は、意外にも、またしても有罪判決。裁判長はリベラル派で著名な横川敏雄判事だった。
逮捕より1か月余りも前に「従業員『H』浮かぶ」と、特ダネ風に報じ たのは、毎日新聞だ。
「殺人犯の家族」とされた一家は、息を潜めて生きた。末っ子の巌さんを可愛がっていた母が逝った後、姉ひで子さんが「母親の無念を晴らすため」、弟の支援にその後 の半生を捧げる。
評者は、大学教員であったとき、学生と一緒にひで子さんに会った。笑顔を絶やさぬ温かみに、多くの学生が彼女を慕った。人柄は支援を広げる核だった。
再審無罪判決は、みそ漬けの衣類など三つの事柄を「捏造」としたが、 不可解な点は、その三つに止まらない。本書を読んで知るのは、くり小刀を始めバスの遺失物、 焼けた紙幣……、いまだ捏造の闇は深い。(岩波書 店2000円)
2025年03月05日
【月刊マスコミ評・新聞】「沈黙の教訓」欠く新聞のフジ批判=六光寺 弦
元タレント中居正広の性加害問題を巡って、東京発行の新聞各紙はフジテレビ批判に終始している。確かにフジの対応は人権意識を欠いていた。だが新聞各紙に思い当たる節はないのか。
1月17日の閉鎖的な記者会見の直後から、企業のCM見送りの動きが加速。フジは23日になって、第三者委員会の設置と会見のやり直しを表明した。27日の再会見は、日付をまたいで10時間超に及んだ。
最初の会見を在京紙各紙は、1面ではなく社会面や総合面で控え目に扱った。社説も「疑問に答える徹底調査を」(毎日)など、比較的穏当なトーンが目立った。
フジが方針転換を明らかにした23日は、中居の芸能界引退表明もあった。二つの動きが重なり、各紙はフジ批判のトーンを強める。
27日はフジの取締役会で会長と社長の退任が決定。やり直し会見を経て翌28日付紙面は、朝日、毎日、読売、産経、東京の5紙はそろって1面トップに据えた。社説では「メディア不信招いた責任重い」(読売)、「解体的出直しが必要だ」(東京)など、言葉を極めたフジ批判が並んだ。マスメディアとして教訓を共有する姿勢は、朝日が「自らを省みる機会にもしたい」と書いた程度だ。
フジ幹部が自らの人権意識の欠如を認めたように、性加害は人権の問題だ。ただし、そのことは「マスメディアの沈黙」が問われた旧ジャニーズ事務所元社長の性加害問題で指摘されていた。
フジが「沈黙」を巡る自己検証番組を放送したのは2023年10月。中居問題に対応していた時期と重なる。反省は口先だけだったと思われても仕方がない。
新聞も他人事ではない。ジャニーズ問題では同じように「沈黙」が問われた。しかし、編集幹部らの責任で内部調査を行い、外部識者も交えて教訓を導き、それらを紙面や自社サイトで公表したのは、わずかに朝日新聞社だけだ。
通信社も含めて他社は「沈黙」をどう総括し、どんな教訓を得たのか。教訓を組織にどう浸透させているのか。それらが何も見えないままだ。今からでも「沈黙」にさかのぼって自らの人権意識を検証し、結果を公表すべきだ。そうでなければ信頼は得られない。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年2月25日号
1月17日の閉鎖的な記者会見の直後から、企業のCM見送りの動きが加速。フジは23日になって、第三者委員会の設置と会見のやり直しを表明した。27日の再会見は、日付をまたいで10時間超に及んだ。
最初の会見を在京紙各紙は、1面ではなく社会面や総合面で控え目に扱った。社説も「疑問に答える徹底調査を」(毎日)など、比較的穏当なトーンが目立った。
フジが方針転換を明らかにした23日は、中居の芸能界引退表明もあった。二つの動きが重なり、各紙はフジ批判のトーンを強める。
27日はフジの取締役会で会長と社長の退任が決定。やり直し会見を経て翌28日付紙面は、朝日、毎日、読売、産経、東京の5紙はそろって1面トップに据えた。社説では「メディア不信招いた責任重い」(読売)、「解体的出直しが必要だ」(東京)など、言葉を極めたフジ批判が並んだ。マスメディアとして教訓を共有する姿勢は、朝日が「自らを省みる機会にもしたい」と書いた程度だ。
フジ幹部が自らの人権意識の欠如を認めたように、性加害は人権の問題だ。ただし、そのことは「マスメディアの沈黙」が問われた旧ジャニーズ事務所元社長の性加害問題で指摘されていた。
フジが「沈黙」を巡る自己検証番組を放送したのは2023年10月。中居問題に対応していた時期と重なる。反省は口先だけだったと思われても仕方がない。
新聞も他人事ではない。ジャニーズ問題では同じように「沈黙」が問われた。しかし、編集幹部らの責任で内部調査を行い、外部識者も交えて教訓を導き、それらを紙面や自社サイトで公表したのは、わずかに朝日新聞社だけだ。
通信社も含めて他社は「沈黙」をどう総括し、どんな教訓を得たのか。教訓を組織にどう浸透させているのか。それらが何も見えないままだ。今からでも「沈黙」にさかのぼって自らの人権意識を検証し、結果を公表すべきだ。そうでなければ信頼は得られない。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年2月25日号
2025年03月04日
【沖縄リポート】防災訓練? どう見ても軍事演習=浦島悦子
どこまで沖縄をバカにするつもりなのか!
今も暮らしの中に旧暦が息づくウチナーンチュにとって、旧正月は新正月に劣らず大切な日だ。県内各漁港では、各船に大漁旗や松飾などを掲げて祝う。よりによってその旧正月=1月29日に、国は大浦湾の軟弱地盤に砂杭を打ち込む作業を開始した。予定している約7万1千本の杭打ちの手始めだという。
しかし、前号でも述べたように、砂の調達の目途は立っていない。大浦湾に入港した3隻のサンドコンパクション船(砂杭を打設する作業船)のうち稼働しているのは1隻のみで、他の2隻はただ停泊して税金を浪費しているだけ。海中に打ち込む70mの鋼管ドリルが船上に聳える様は、威嚇が目的かと思わせる=写真=。
今や作業船の陳列場と化した感のある大浦湾を日々眺めながら、このあまりにも馬鹿げた工事を1日も早く止めたいと願うばかりだ。
一方、米軍基地に加え、我が名護市でも自衛隊の動きが怪しくなってきた。
1月16日夜遅く、「明日、名護市で陸上自衛隊の訓練があるらしい」と知人から連絡があり、名護市のHPを見ると「お知らせ」として陸自第15旅団による「防災訓練の実施」の通知が出ていた。
1月17日は阪神大震災から30年の節目の日だ。その日にかこつけて「防災訓練」? しかしその内容は、市内各所で「初動部隊展開訓練、航空機離発着訓練、山地機動訓練及び情報収集訓練、徒歩行進訓練」とあり、どう見ても軍事訓練だ。しかも通知は直前の前夜。
訓練場所の一つとして、私の居住区に隣接する汀間地区があったので、翌朝、汀間区公民館に行って聞いてみた。名護市から何の連絡もないという。汀間だけでなく近隣各区の区長も区民も全く知らなかった。汀間地区での「山地機動訓練」がどこでどのように行われたのか、誰も知らない。住民不在の「防災訓練」とは聞いてあきれる!
18日の地元紙報道によると、名護市内を自衛隊が制服姿で行軍したという。市民を軍事行動に慣れさせるための訓練か?と思わざるを得ない。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年2月25日号
今も暮らしの中に旧暦が息づくウチナーンチュにとって、旧正月は新正月に劣らず大切な日だ。県内各漁港では、各船に大漁旗や松飾などを掲げて祝う。よりによってその旧正月=1月29日に、国は大浦湾の軟弱地盤に砂杭を打ち込む作業を開始した。予定している約7万1千本の杭打ちの手始めだという。
しかし、前号でも述べたように、砂の調達の目途は立っていない。大浦湾に入港した3隻のサンドコンパクション船(砂杭を打設する作業船)のうち稼働しているのは1隻のみで、他の2隻はただ停泊して税金を浪費しているだけ。海中に打ち込む70mの鋼管ドリルが船上に聳える様は、威嚇が目的かと思わせる=写真=。
今や作業船の陳列場と化した感のある大浦湾を日々眺めながら、このあまりにも馬鹿げた工事を1日も早く止めたいと願うばかりだ。
一方、米軍基地に加え、我が名護市でも自衛隊の動きが怪しくなってきた。
1月16日夜遅く、「明日、名護市で陸上自衛隊の訓練があるらしい」と知人から連絡があり、名護市のHPを見ると「お知らせ」として陸自第15旅団による「防災訓練の実施」の通知が出ていた。
1月17日は阪神大震災から30年の節目の日だ。その日にかこつけて「防災訓練」? しかしその内容は、市内各所で「初動部隊展開訓練、航空機離発着訓練、山地機動訓練及び情報収集訓練、徒歩行進訓練」とあり、どう見ても軍事訓練だ。しかも通知は直前の前夜。
訓練場所の一つとして、私の居住区に隣接する汀間地区があったので、翌朝、汀間区公民館に行って聞いてみた。名護市から何の連絡もないという。汀間だけでなく近隣各区の区長も区民も全く知らなかった。汀間地区での「山地機動訓練」がどこでどのように行われたのか、誰も知らない。住民不在の「防災訓練」とは聞いてあきれる!
18日の地元紙報道によると、名護市内を自衛隊が制服姿で行軍したという。市民を軍事行動に慣れさせるための訓練か?と思わざるを得ない。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年2月25日号
2025年03月03日
【シンポジウム】『NHK「かんぽ不正」報道への介入・隠蔽を許さない〜裁判勝利の報告〜』出版記念 3月22日(土)14:30〜17:00 立教大学池袋キャンパス 10 号館 X305 教室=NHK とメディアの今を考える会など
『NHK「かんぽ不正」報道への介入・隠蔽を許さない〜裁判勝利の報告〜』出版記念
昨年 12 月 17 日に、東京高裁で実質的に原告勝訴とも言える内容で和解した NHK 文書開示等請求訴訟。この 訴訟は、かんぽ生命保険の不正販売問題の報道を巡り、NHK 経営委員会が 2018 年 10 月に会長を厳重注意した 問題で、市民が NHK と森下俊三・前経営委員長を相手取り、非公開とされた経営委員会の議事録の開示などを 求めたものだった。
シンポジウムでは原告団事務局長の長井暁氏が事件と訴訟の経緯を報告し、弁護団の杉浦ひとみ弁護士、武蔵 大学社会学部教授の永田浩三氏、立教大学社会学部長の砂川浩慶氏が訴訟の意義を解説する。そして、放送 100 年を迎えた今、フジテレビ問題など放送界が抱える問題についても話し合い、放送のこれからについて考える。
■参加費無料
■報告者・パネリスト 長井 暁氏 ジャーナリスト、NHK文書開示等 請求訴訟原告団事務局長 杉浦ひとみ弁護士、NHK文書開示等請求訴訟 弁護団 永田浩三氏 武蔵大学社会学部教授、元 NHK 「クローズアップ現代」編責、 砂川浩慶氏兼司会立教大学社会学部長 、メディア社会学科教授 。
〈主催〉NHK とメディアの今を考える会/立教大学社会学部メディア社会学科・砂川ゼミ 〈共催〉NHK 文書開示等請求訴訟原告団/市民社会フォーラム/あけび書房
(問い合わせ先)小滝一志 090-8056-4161 /長井暁 090-4050-5019
ネット配信 YouTube でライブ配信します。
『NHK「かんぽ不正」報道への介入・隠蔽を許さない〜裁判勝利の報告〜』出版記念
アドレスが右の通りです。https://youtube.com/live/iUjmEKYRV6w?feature=share
昨年 12 月 17 日に、東京高裁で実質的に原告勝訴とも言える内容で和解した NHK 文書開示等請求訴訟。この 訴訟は、かんぽ生命保険の不正販売問題の報道を巡り、NHK 経営委員会が 2018 年 10 月に会長を厳重注意した 問題で、市民が NHK と森下俊三・前経営委員長を相手取り、非公開とされた経営委員会の議事録の開示などを 求めたものだった。
シンポジウムでは原告団事務局長の長井暁氏が事件と訴訟の経緯を報告し、弁護団の杉浦ひとみ弁護士、武蔵 大学社会学部教授の永田浩三氏、立教大学社会学部長の砂川浩慶氏が訴訟の意義を解説する。そして、放送 100 年を迎えた今、フジテレビ問題など放送界が抱える問題についても話し合い、放送のこれからについて考える。
■参加費無料
■報告者・パネリスト 長井 暁氏 ジャーナリスト、NHK文書開示等 請求訴訟原告団事務局長 杉浦ひとみ弁護士、NHK文書開示等請求訴訟 弁護団 永田浩三氏 武蔵大学社会学部教授、元 NHK 「クローズアップ現代」編責、 砂川浩慶氏兼司会立教大学社会学部長 、メディア社会学科教授 。
〈主催〉NHK とメディアの今を考える会/立教大学社会学部メディア社会学科・砂川ゼミ 〈共催〉NHK 文書開示等請求訴訟原告団/市民社会フォーラム/あけび書房
(問い合わせ先)小滝一志 090-8056-4161 /長井暁 090-4050-5019
ネット配信 YouTube でライブ配信します。
『NHK「かんぽ不正」報道への介入・隠蔽を許さない〜裁判勝利の報告〜』出版記念
アドレスが右の通りです。https://youtube.com/live/iUjmEKYRV6w?feature=share
2025年03月02日
【焦点】発がん性物質 PFOA濃度のトップは摂津市の地下水 汚染源はダイキン工場 国・自治体は動かず 第二の水俣病の恐れも 中川七海氏オンライン講演=橋詰雅博
人工的につくられ自然界で消滅しない有機フッ素化合物「PFAS(ピーファス)」。1万種以上あるうち「PFOS(ピーフォス)」と「PFOA(ピーフォア)」は発がん性物質。泡消火剤の原料のPFOSは在日米軍基地や自衛隊駐屯地などから、一方、プライパン、食品包装紙などの製造で使用のPFOAは工場からそれぞれ漏出。2つの有害物質は地下水や河川、水道水、農作物などを汚染している。特に毒性が強いPFOAに関し環境省は濃度の全国調査を実施。2020年6月に公表した結果のトップは、1gあたり1812ナノcの大阪府摂津市の地下水だった。ジャーナリストの中川七海氏は、このケタ外れの値の汚染源はどこかと追及。昨年10月刊行の著書『終わらないPFOA汚染』(旬報社)は21年春からの取材の成果だ。息を抜かず取材を続ける中川氏は1月13日、公害PFOA≠ノついてJCJオンライン講演で報告した。
中川七海氏は、調査報道を手がけるネットメディア『Tansa』の記者。元朝日新聞記者の渡辺周氏が2017年に立ち上げた。企業や行政からの広告費は一切受け取らず、個人のカンパと、編集に不介入の主に海外の基金や財団からの寄付で運営している。専従メンバーは新たに2人が加わり計5人に。中川氏はこれまでPFOA汚染だけで記事約80本を発信した。
大気も汚染し拡散
本題に入ろう。環境省が20年暫定目標値と定めたPFOSとPFOAの合算値1gあたり50ナノcの36倍もの高濃度の摂津市の地下水汚染源は、すぐに判明した。市内のPFOA製造工場、ダイキン工業淀川製作所だ。中川氏は「1960年代後半から2015年までの少なくても45年間もダイキンはPFOAを製造・使用していた」と語った。工場からのPFOAを含む排水は、河川、農業用水、地下水、井戸水、土壌などを汚染した。煙突から排出された粉塵や揮発性ガスに混じるPFOAは大気も汚染し拡散。
25年前米国調査
水や油を弾き、熱にも強いPFOAを米大手化学メーカー、デュポンの社員が1938年に発見し50年代から米国は焦げ付かいプライパンを始め防水スプレー、撥水性の衣服、ハンバーガーの包み紙など広い用途に使っていた。だが米環境保護庁(EPA)は、このドル箱を生む化学物質≠フ使用にブレーキをかけた。PFOAの人体への悪影響を懸念し調査が必要と2000年に公表。デュポンと並ぶ大手化学メーカー、3Mは危険性を認め2年後に市場から撤退した。
デュポンは有害物質という事実を隠蔽し製造を続けた。02年、PFOAに汚染された水道水の健康被害を訴えるウェストバージニア州の住民数千人が集団訴訟を起こした。住民側に7000万ドル(約80億円)をデュポンが支払うことで04年に和解した。さらに和解に関しでデュポンはPFOA疫学調査費用500万ドル(約5億8000万円)負担させられた。
6疾患を誘発する
独立の調査会が行った米国市民7万人の調査結果は12年に発表した。PFOAが誘発する6疾患は@妊娠高血圧ならびに高血圧腎症、A精巣がん、B腎細胞がん、C甲状腺疾患、D潰瘍性大腸炎、E高コレストロール―。
ダイキンも2000年には、内部文書で社員のPAOA曝露を懸念している。
「入手した平成12年9月18日の業務報告書に『データとして粉を扱う箇所、特に粉の状態で取り出しを行う箇所については測定濃度が高く曝露が問題となるであろう』と書かれていた」と中川氏は指摘する。
にもかかわらずダイキンはPAOAの危険性を住民に知らせず、何食わぬ顔で製造を続けた。中川氏は21年11月ごろからダイキンに繰り返し取材。PFOA曝露を社内文書に載せた2000年当時、なぜ製造をやめなかったのかの質問に対し広報担当の芝道雄氏は『急にやめられないですよね。これだけの文明生活を維持するには』と答えた。そして『健康被害が出ていて因果関係がわかれば50年前であっても責任をとる』と住民への補償を明言した。PFOA製造で会社を急成長させた井上礼之(のりゆき)元会長の自宅前で本人に直撃インタビューもした。執行役員の平賀義之氏は『弊社が原因の一つになっていることには間違い無い』と汚染源の一つであることを認めた。ダイキンから補償と汚染源発言を引き出せたのは中川氏の後に引きさがらない徹底した取材が功を奏したのだ。
日本では10年にPFOS、11年後の21年にPAOAも製造・輸入が禁止された。世界保健機構(WHO)は、23年12月、PFOAは「発がん性がある」PFOSも「発がん性の可能性がある」と認定した。
「大阪PFAS汚染と健康を考える会」は大阪府内の住民1190人の血液検査を実施した
血中濃度を発表
PFOAによる健康被害を恐れる摂津市民、淀川製作所に隣接の大阪市東淀川区民らが立ち上がる。その代表格の団体が科学者、医師、市民からなる「大阪PFAS汚染と健康を考える会」。長年PFAS汚染問題に取り組む京都大学の原田浩二准教授と小泉昭夫名誉教授の協力を得て実施された大阪府内1190人の血液検査の分析結果を24年8月に同会は発表した。
摂津市民のPFOA平均値(183人)は全国平均の4・5倍の9・8ナノc/ml、摂津市民+東淀川区民(311人)の平均値も3・7倍の8・1ナノc/ml。ダイキン淀川製作所の周辺住民はPFOAの血中濃度が高いことが証明された。
しかし国は規制に動かない。大阪府も摂津市も対策に前向きではない。相手が大企業のためかマスコミも報道に消極的だ。「健康被害を認識していない」とダイキンは主張を曲げない。
公害温存システム
中川氏は「有害物質を排出する企業があるので公害という問題が起きているのではない。それを傍観する国と自治体、モノ言わぬメディアが絡んでいる。こういう公害温存システム≠ェあるのを知っていただきたい」と語った。
PFOA汚染は全国あちこちで表面化している。小児科医でもある立憲民主党の阿部知子衆院議員は「第二の水俣病になるのではないかと懸念を強くしています」と国会で警鐘を鳴らした。
「市民が勇気をもって立ち上がれば、公害温存システムは崩せる」と中川氏は市民の奮起を期待した。
◇
注目されている岡山県吉備中央町の水道水PFAS汚染問題なども中川氏は取材中です。その報告は3月号で掲載します。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年1月25日号
2025年03月01日
【出版トピックス】コミック市場好調、フリーランス春闘宣言=出版部会
◆24年コミック市場7043億
出版科学研究所の発表によると、標記の金額は電子コミックが牽引し、1・5%増と7年連続のプラス成長となった。内訳は、紙のコミックス1472億円(同8.6%減)、紙のコミック誌が449億円(同9.7%減)、この2部門を合わせた推定販売金額が1921億円(同8.8%減)となる。3年連続の大幅マイナス。
一方、電子コミックは5122億円(同6.0%増)で、コミック市場での占有率は72.7%となる。コロナ禍前の19年からは、ほぼ倍増している。電子書店の積極的な広告出稿やキャンペーンが功を奏しているといわれる。映像化作品だけでなく、独占先行配信・ストアオリジナル作品などが牽引している。
なお、同研究所による紙のコミック推定販売金額は取次ルートのみであり、近年増加している出版社と書店の直接取引や出版社による直接販売は含まれていない。また、電子コミックの市場推計は定額読み放題を含む「読者が支払った金額の推計」で、広告収入や電子図書館向けは含まれない。
◆遠隔複写サービス開始
料金は、資料の種類や複写方法別に規定した「複写物の作成に要する費用」と、図書館等公衆送信補償金管理協会(SARLIB)ホームページで公開されている「図書館等公衆送信補償金規程」に規定された「著作権者に支払う補償金に相当する額」を合算したもの。
SARLIBは1月22日、図書館等公衆送信サービスを実施する「特定図書館」の登録受付を開始。2月13日現在、国立国会図書館や大学図書館など約10館が登録されている。
費用の見積もりが画面上に表示され、本体価格3200円の本を15ページPDFダウンロードで複写してもらうと、推定金額が2700〜3509円と出るそうです。郵送受取の額も同時に表示され、その場で郵送に切り替えることも可能。
◆講談社は減収減益
売上高1710億3800万円(前年比0.6%減)。営業利益108億円(同24.6%減)、経常利益143億円(同16.3%減)、当期純利益93億7000万円(同17.9%減)。9年ぶりに減収減益に。
マンガで累計4000万部の「ブルーロック」や「WIND BREAKER」など、映像化作品が好調だったものの、マンガ「東京卍リベンジャーズ」の好調が続いた前期に比べれば売上高が減ったほか、紙など原材料費や輸送費の負担に加え、グローバル戦略を見据えた海外への投資がかさんだ。
役員人事では、金丸徳雄、古川公平、白石光行の3氏が退任。金丸氏は最高顧問、古川氏と白石氏が顧問に就いた。新任はなし。機構改編については、役員直轄業務改革部を社長室に移管した。
◆新聞発行部数減少続く
新聞のABC部数(2024年12月度)が明らかになった。各社とも部数減に歯止めがかからない。この1年間で朝日新聞は約20万部、読売新聞は約37万部も減らした。中央紙のABC部数は次の通り。
朝日新聞:3,309,247(-200,134)
毎日新聞:1,349,731(-245,738)
読売新聞:5,697,385(-365,748)
日経新聞:1,338,314(-70,833)
産経新聞: 822,272(-63,548)
なおABC部数には、「押し紙」(販促用の部数)が含まれているので、新聞販売店が実際に配達している部数とは異なる。新聞社によって「押し紙」の割合は異なるが、おおよそ販売店に搬入される新聞の3割ほどが「押し紙」といわれるである。従って実際の配達部数は、ABC部数よりも遥かに少ないと推測される。
◆10%増額要求へ
コンテンツ産業を支える創作活動の従事者からすべてのみなさんへ
紙と電子とを問わず、文字、ビジュアル情報に日々接する読者、ユーザーのみなさん、そしてそれを創り出す仕事に勤しんでいるみなさん、表現の現場で働くみなさん、業界のみなさん、経営者のみなさん、すべてのみなさんに訴えます。
私たち出版ネッツは、成果物の正当な対価がフリーランスにも還元される春闘をと、22年以来、フリーランスの春闘宣言を発し、前世紀からずっと据え置かれたままの報酬の、10%アップに取り組んでいます。
この業界に働く、私たちのようなフリーランスの編集者、ライター、カメラマン、デザイナー、イラストレーター、校正者だけでなく、著名な作家、文筆家、ジャーナリスト、脚本家など、技術を伴う創作活動の従事者、文字情報作成従事者、クリエーターの多くが、紙とデジタルとを問わず、実に低廉な報酬、前世紀から据え置かれた報酬で仕事をしています。3日間かかる仕事が2万円、またはそれ以下では、生活していけません。
出版社、コンテンツ・プロバイダー、取次、書店だけが産業ではありません。産業の要請によって輩出され、業界をかたち作っているフリーランスは、コンテンツ産業そのものでもあります。このクリエイティブワークが、替えのきく仕事として軽んじられる業界のままでは、次世代への継承もままなりません。仕事をして生活するという、労働者としての当たり前の循環が危機に瀕しています。創造の源泉である報酬の充実は、どうしても必要です。
「安い日本」という呪縛から抜け出せていない経済に、毎年数%ずつ上昇する物価高騰が追い打ちをかけ、一昨年から始まったインボイス制度が混乱をもたらしています。インボイス制度によって、大半のフリーランスは減収となり、膨大な事務負担に直面しています。誰も得をしない、誰も幸せにしない制度です。
昨年11月、フリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)が施行されました。462万人と言われるフリーランスを、取引適正化で保護しようというものですが、生身の働き手である私たちは、さらに労働法制による保護を求めるものです。
出版産業がコンテンツ・ビジネスへと変容を遂げていく産業状況にあっても、文字情報、ビジュアル情報は、商品であると同時に、文化的で普遍的な価値を持つものです。一方で、何年も何十年もフリーランスの報酬が据え置かれ、クリエイティブワークをコストと見立て、安さにのみ価値を見出すような、働き手を尊ばない産業は必ず衰退します。
この春闘=春季生活闘争の期間を通じて、多くの企業が賃金アップを実施します。急速な人口減、粘着する人手不足、人材流出の危機感から、政府、財界までもが賃上げに取り組む今、フリーランスを含めたすべての働く者の報酬アップは社会的課題と言えるのではないでしょうか。
創造の成果を世に問い、知的生産に向き合う、すべてのみなさんに改めて訴えます。フリーランスの報酬を、10%増額してください。雇用労働者だけでなく、フリーランスにも生活給を保障してください。
フリーランサーは、この宣言を仕事先に示して報酬アップを交渉して下さい。69年目を迎える春闘の果実が、フリーランスにも届く春となることを、すべてのみなさんに訴えます。
出版科学研究所の発表によると、標記の金額は電子コミックが牽引し、1・5%増と7年連続のプラス成長となった。内訳は、紙のコミックス1472億円(同8.6%減)、紙のコミック誌が449億円(同9.7%減)、この2部門を合わせた推定販売金額が1921億円(同8.8%減)となる。3年連続の大幅マイナス。
一方、電子コミックは5122億円(同6.0%増)で、コミック市場での占有率は72.7%となる。コロナ禍前の19年からは、ほぼ倍増している。電子書店の積極的な広告出稿やキャンペーンが功を奏しているといわれる。映像化作品だけでなく、独占先行配信・ストアオリジナル作品などが牽引している。
なお、同研究所による紙のコミック推定販売金額は取次ルートのみであり、近年増加している出版社と書店の直接取引や出版社による直接販売は含まれていない。また、電子コミックの市場推計は定額読み放題を含む「読者が支払った金額の推計」で、広告収入や電子図書館向けは含まれない。
◆遠隔複写サービス開始
料金は、資料の種類や複写方法別に規定した「複写物の作成に要する費用」と、図書館等公衆送信補償金管理協会(SARLIB)ホームページで公開されている「図書館等公衆送信補償金規程」に規定された「著作権者に支払う補償金に相当する額」を合算したもの。
SARLIBは1月22日、図書館等公衆送信サービスを実施する「特定図書館」の登録受付を開始。2月13日現在、国立国会図書館や大学図書館など約10館が登録されている。
費用の見積もりが画面上に表示され、本体価格3200円の本を15ページPDFダウンロードで複写してもらうと、推定金額が2700〜3509円と出るそうです。郵送受取の額も同時に表示され、その場で郵送に切り替えることも可能。
◆講談社は減収減益
売上高1710億3800万円(前年比0.6%減)。営業利益108億円(同24.6%減)、経常利益143億円(同16.3%減)、当期純利益93億7000万円(同17.9%減)。9年ぶりに減収減益に。
マンガで累計4000万部の「ブルーロック」や「WIND BREAKER」など、映像化作品が好調だったものの、マンガ「東京卍リベンジャーズ」の好調が続いた前期に比べれば売上高が減ったほか、紙など原材料費や輸送費の負担に加え、グローバル戦略を見据えた海外への投資がかさんだ。
役員人事では、金丸徳雄、古川公平、白石光行の3氏が退任。金丸氏は最高顧問、古川氏と白石氏が顧問に就いた。新任はなし。機構改編については、役員直轄業務改革部を社長室に移管した。
◆新聞発行部数減少続く
新聞のABC部数(2024年12月度)が明らかになった。各社とも部数減に歯止めがかからない。この1年間で朝日新聞は約20万部、読売新聞は約37万部も減らした。中央紙のABC部数は次の通り。
朝日新聞:3,309,247(-200,134)
毎日新聞:1,349,731(-245,738)
読売新聞:5,697,385(-365,748)
日経新聞:1,338,314(-70,833)
産経新聞: 822,272(-63,548)
なおABC部数には、「押し紙」(販促用の部数)が含まれているので、新聞販売店が実際に配達している部数とは異なる。新聞社によって「押し紙」の割合は異なるが、おおよそ販売店に搬入される新聞の3割ほどが「押し紙」といわれるである。従って実際の配達部数は、ABC部数よりも遥かに少ないと推測される。
◆10%増額要求へ
コンテンツ産業を支える創作活動の従事者からすべてのみなさんへ
紙と電子とを問わず、文字、ビジュアル情報に日々接する読者、ユーザーのみなさん、そしてそれを創り出す仕事に勤しんでいるみなさん、表現の現場で働くみなさん、業界のみなさん、経営者のみなさん、すべてのみなさんに訴えます。
私たち出版ネッツは、成果物の正当な対価がフリーランスにも還元される春闘をと、22年以来、フリーランスの春闘宣言を発し、前世紀からずっと据え置かれたままの報酬の、10%アップに取り組んでいます。
この業界に働く、私たちのようなフリーランスの編集者、ライター、カメラマン、デザイナー、イラストレーター、校正者だけでなく、著名な作家、文筆家、ジャーナリスト、脚本家など、技術を伴う創作活動の従事者、文字情報作成従事者、クリエーターの多くが、紙とデジタルとを問わず、実に低廉な報酬、前世紀から据え置かれた報酬で仕事をしています。3日間かかる仕事が2万円、またはそれ以下では、生活していけません。
出版社、コンテンツ・プロバイダー、取次、書店だけが産業ではありません。産業の要請によって輩出され、業界をかたち作っているフリーランスは、コンテンツ産業そのものでもあります。このクリエイティブワークが、替えのきく仕事として軽んじられる業界のままでは、次世代への継承もままなりません。仕事をして生活するという、労働者としての当たり前の循環が危機に瀕しています。創造の源泉である報酬の充実は、どうしても必要です。
「安い日本」という呪縛から抜け出せていない経済に、毎年数%ずつ上昇する物価高騰が追い打ちをかけ、一昨年から始まったインボイス制度が混乱をもたらしています。インボイス制度によって、大半のフリーランスは減収となり、膨大な事務負担に直面しています。誰も得をしない、誰も幸せにしない制度です。
昨年11月、フリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)が施行されました。462万人と言われるフリーランスを、取引適正化で保護しようというものですが、生身の働き手である私たちは、さらに労働法制による保護を求めるものです。
出版産業がコンテンツ・ビジネスへと変容を遂げていく産業状況にあっても、文字情報、ビジュアル情報は、商品であると同時に、文化的で普遍的な価値を持つものです。一方で、何年も何十年もフリーランスの報酬が据え置かれ、クリエイティブワークをコストと見立て、安さにのみ価値を見出すような、働き手を尊ばない産業は必ず衰退します。
この春闘=春季生活闘争の期間を通じて、多くの企業が賃金アップを実施します。急速な人口減、粘着する人手不足、人材流出の危機感から、政府、財界までもが賃上げに取り組む今、フリーランスを含めたすべての働く者の報酬アップは社会的課題と言えるのではないでしょうか。
創造の成果を世に問い、知的生産に向き合う、すべてのみなさんに改めて訴えます。フリーランスの報酬を、10%増額してください。雇用労働者だけでなく、フリーランスにも生活給を保障してください。
フリーランサーは、この宣言を仕事先に示して報酬アップを交渉して下さい。69年目を迎える春闘の果実が、フリーランスにも届く春となることを、すべてのみなさんに訴えます。
ユニオン出版ネットワーク(出版ネッツ)