2025年03月08日

【月間マスコミ評・出版】フジテレビと文春と女性の人権=荒屋敷 宏

 昨年12月19日発売の『女性セブン』1月2・9日号が「中居正広 巨額解決金 乗り越えた女性深刻トラブル」を掲載した後、12月26日発売の『週刊文春』1月2・9日号は「中居正広9000万円SEXスキャンダルの全貌」との記事を出した。文春の記事は『女性セブン』の後追いだった。

 フジテレビは、X子さんに対する編成幹部A氏の関与を一貫して否定している。報道機関であるにもかかわらず、1月17日の記者会見を一部メディアに制限し、生中継や映像撮影を拒否したことで批判を浴びた。
 日付をまたいでの10時間半近い「やり直し会見」(1月27日〜㉘日)の後も、フジテレビへの批判は止まるところを知らず、文春が電子版で訂正記事を出したため、メディアの問題としても炎上することになってしまった。
 文春が訂正したのは「X子さんはフジ編成幹部A氏に誘われた」との箇所だ。その後の取材により「X子さんは中居氏に誘われた」「A氏がセッティングしている会の延長≠ニ認識していた」ことが判明したため、第二弾以降は取材成果を踏まえた内容を報じてきたと、文春は2月6日号の【編集長より】で弁明した。しかし問題の事実関係は、いまだに明らかになっていない。

 そもそも問われているのは、性暴力に対する企業倫理や組織のあり方である。上司の誘いを断れば、仕事を奪われるのではないかという恐怖、地位や権力を利用した性暴力の問題は後を絶たない。フジテレビの大株主である米投資ファンドのダルトン・インベストメンツがいち早く声を上げ、日本の企業がCMから撤退するなどの流れになった。
 1月23日号の『週刊文春』が報じたフジテレビ問題第三弾の記事中にある「女性アナ接待のDNA」という角度からの追及にも期待したい。日本の企業社会に巣くう女性の人権軽視という暗部を明らかにする機会にすべきであろう。問題が起きたことを知りながら、中居正広氏を番組MCに起用し続けたフジテレビ経営幹部の姿勢が厳しく問われている。

 女性セブンは、フジテレビから文句を言われることなく続報を続けており、週刊文春のほかに、週刊新潮、週刊ポスト、サンデー毎日もこの問題の追及に参戦し、報道は過熱している。しかし、女性の人権問題として追及する姿勢が弱いのは、どうしたことだろうか。メディアの側も「重い十字架」を背負っているというべきであろう。
     JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年2月25日号
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする