2025年03月16日
【沖縄ジャンプナイト】歴代知事 突破口探る 沖縄タイムス部長 「地域外交」解説 問題解決能力欠く政府
JCJ沖縄ジャンプナイトは2日、第33回オンラインイベントを開いた。沖縄タイムス編集局の福元大輔政経部長が「沖縄県の地域外交」と題して講話。玉城デニー沖縄県知事が主要政策として掲げる地域外交の現在地と、その背景について語った。
県の「地域外交」を報じた沖縄タイムス紙面
玉城知事提唱
「三つのD」
2018年に初めて知事選に立候補した玉城知事。その出馬会見で表明したのが自身の政策の根幹となる「三つのD」だった。ダイバーシティー(多様性)、デモクラシー(民主主義)、ディプロマシー(外交)だ。福元さんは「玉城氏は当初から辺野古新基地建設を止める手立ての一つとして地域外交を考えていた」とする。
2期目の23年県庁内に地域外交室を創設。翌24年には、県がもともと香港や上海などアジア7カ所に構えていた海外事務所などを統合し「地域外交課」とした。
一方「外交は国の専管事項」と言われ、玉城知事の地域外交に批判的な報道もある。
地方自治法1条2項に国が行う事務として「国際社会における国家としての存立に関わる事務」と明記されていることを根拠にしたものだが、福元さんは地域外交課が他県にも存在すると指摘。「地方自治法は国と地方の立場を対等と定めるものであり、そもそも外交を国の排他的な権限で進めることを想定したものではないのでは」と見た。
沖縄の特殊性
米基地問題に
沖縄県の地域外交の特殊性は「基地問題にある」と強調。知事による直接の訪米外交は復帰後初の保守系知事の西銘順治氏(在任期間1978〜90年)から始まっていることを紹介した。
以降、大田昌秀、稲嶺恵一、仲井真弘多の歴代知事は訪米を繰り返し、その時々に基地問題の解決を米国政府に求めている。
福元さんは「米軍普天間飛行場の返還は大田知事時代に表明されたが、最初に普天間の返還を要請したのは西銘知事だった」と指摘。「沖縄の基地問題で大きな方向性が示される背景には歴代知事による外交の積み重ねがある」とした。
玉城知事の地域外交の特徴としては、基地問題だけでなく経済や平和交流もともに推進するという姿勢があるという。@東アジアの緊張緩和A県産品のアピールB沖縄の技術貢献―の3点が玉城県政の掲げる外交目標とした。
パラオの排他的経済水域(EEZ)内での漁業実現や、韓国・済州島との友好都市連携など経済・平和交流面では一定の成果があった。一方、基地問題に関する「玉城外交」の評価は割れているという。
政治日程優先
政府事件隠蔽
福元さんは沖縄の知事が外交を推進せざるを得ない背景に、日本政府の問題解決能力の欠如と、本土メディアの無関心を挙げる。
昨年判明した米兵による少女の誘拐暴行事件は日米の政治日程を優先する政府によって半年近くも県民に隠されてきた。「政府による情報操作があからさまになっている」と批判。同時に「半年もの間、事件について県内メディアが気づけなかったことはもちろんだが、官邸を取材する本土メディアからも報道がなかったことも深刻だ」と問題視した。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年2月25日号