1月20日の就任から1カ月を経て、2期目のトランプ米大統領の政策が次第に明らかになっている。「ウクライナ戦争停戦」「ガザ休戦」などへの「努力」が宣伝されているが、「動機」は巨額な献金と引き換えに約束した「ウクライナのレアメタル開発」と「ガザ海岸のリゾート化」だとも取り沙汰されている。2月下旬までに発せられた大統領令や、覚書、宣言などは公私混同が目立ち、100本を超す乱発ぶりだ。並べてみると、その内容は、国際機関や取り決めからの脱退だけでなく、現代文明の歪みの中で、人類の将来を築くため合意されてきた原則を壊し、「共存」よりまさに「アメリカ第一」の路線を露骨に打ち出している。
目立つ「様子見」
石破首相は2月7日トランプ大統領と会談、共同声明を発表したが、普段政府寄りとされる新聞も「こうした独善的な言動まで、手放しで支持するわけに行かない。日本は、法の支配や国際協調の重要性を粘り強く米側に呼びかけていかねばならない」(読売)「トランプ氏に是々非々で対応すべきなのはいうまでもない。その中には‥‥気候変動や公衆衛生といったグローバルな課題も含まれる」(日経)と批判。多くの新聞の「トランプ流に物申したか」に同調した。しかしまだ就任後間もないこともあって、トランプ大統領の路線には「様子見」だ。
旧態然の国家観
トランプ氏が右翼的思想の持ち主であることは既に明解だが、2期目に当たっての言動は、「ガザは米国が領有する」「カナダを米国の州に」「グリーンランドを領有する」「パナマ運河を米国に」「メキシコ湾をアメリカ湾に」などいかにも旧態依然。
現地のネイティブ・アメリカンを武器で「制圧」して建国し、領土を拡張してきた旧帝国主義時代の発想だ。外国にも、国際法と将来の人類と地球を考える国際常識とは逆の軍隊とカネで世界を支配する政策ばかりだ。
関税にしても、米国の世界支配のために、他国のことは構っていられないという発想で、地球環境などはどうでもよくて「掘って掘って掘りまくれ」と宣言。「わが亡き後に洪水よ来たれ」の政策ばかり。しかもそのカネは、イーロン・マスクに代表されるように、自分に関わりがある大企業の経営者などが獲得する仕組み。戦争も、開発も、自分たちの利益のためには何でも進める構えだ。
問われる主体性
「トランプ流」は、問題を「実利」で考え、「ディール」で物事を処理する。大事なのは、日本が「日米同盟」頼みでなく、中国、東南アジア、韓国などと「立ち位置」を確認して、本当の国益のための外交を構築することだ。
外務省は「同盟国日本の防衛を確約させた」と得意げだが、中国、ロシアとの関係を優先する立場は、「アジアにおける米国の覇権」であって「同盟の絆」などではない。
戦後80年、戦争をしなかった日本、米国も戦争に使うことができなかった日本を改めて見つめ直し、「憲法9条を持つ日本」を旗印に、中国、韓国、東南アジア各国を米国と対等においた主体的な外交を取り戻すチャンスではないだろうか。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年2月25日号