積み上がる建設費に運営費、チケット売り上げ絶不調、汚染まみれで超不便な立地など、問題山積で「不要論」が国民の 圧倒的多数派を占める。
しかし「IR(カジノな ど統合型リゾート)との二兎」を追い、4月13日の開催に向け、突き進んできた大阪・関西万博。「人類共通の課題解決を目指し、人類の英知を結集する」との理想が、空しいほど惨憺たる国際イベントは、2021年の東京五輪と双璧だ。
同万博が本格実現に動いた一大転機は、本書も指摘するように、日本政治史に“負の足跡”を遺 してきた、安倍晋三・菅 義偉元首相、橋下徹・松 井一郎元大阪府知事という、4人組による2015年12月の夜の談合だった。「時の政局から生 み出され、その政局の変遷によって移ろい、準備段階で大きく迷走した万博」の動きを、本書は丹 念に追っている。
「大阪の負の遺産」である夢(ゆめ)洲(しま)が、なぜ選定されたのか。その経緯や際限なく膨張し続けてきた費用、遅れる海外パビリオンの建設など、大阪維新や政府、経済界のお家の事情も絡みあい、間断なく噴出し続けてきた万博「失敗の縮図」の要因を辿る上で本書は最適だ。
「万博の成否にかかわらず、本書が国家プロジェクトを検証する一助になれば」と、本書の「お わり」で記す。だが万博 の延長線上、否、本丸で ある夢洲で建設中の「IRプロジェクト」との関連や決定への深層解明など「検証」としては物足りなさも感じる。取材班には開催後も問題噴出が必至の“歴史的負の遺産” の実態追究、明快な分析を期待したい。(朝日新書840円)