2008年06月15日

<JCJ声明>NHK裁判での最高裁の不当な判決に抗議する

2008年6月13日 
日本ジャーナリスト会議

 従軍慰安婦問題の番組改変を巡るいわゆるNHK裁判で、最高裁は12日、NHKに取材協力者の期待の侵害と説明義務違反の不法行為があったとして損害賠償を命じた東京高裁の2審判決を破棄し、原告バウネット(『戦争と女性への暴力』日本ネットワーク)の訴えを退けて、NHKの逆転勝訴の判決を言い渡した。

 日本ジャーナリスト会議は、この判決がNHK・メディア側の「編集の自由」を盾にした裁量権を過大に許容し、国民の知る権利、取材対象者の権利や人権に対する配慮を欠いた不当なものといわざるを得ず、さらに、政治家による圧力で編集の自由が侵されることを黙認し、現在の政治状況に屈服したものとして、強く抗議する。

 判決は、原告が主張した取材対象者の期待や信頼が保護されるのは、取材対象者が「格段の負担」を被る極めて例外的な場合であると限定し、今回のように番組内容が編集段階で変えられたとしても、メディアの自律的判断が優先し、取材対象者の期待や信頼は法的には保護されないと、形式的な一般論に寄りかかった判断を示した。
 また、注目された番組への政治家の圧力・介入について、判決は正面からとり上げることを回避し、暗に政治家の圧力を認めた二審の判断から大きく後退した。

 新聞各紙は一様に、取材対象者の期待権を認めた高裁判決が破棄されたことを評価する論調を掲げたが、もしメディアが最高裁判決をより所にして編集の自由をふりかざし、取材対象者の声に耳を貸さないとすれば、それは国民の知る権利と取材対象者の権利を侵害することにつながることを、知るべきである。取材対象者との信義や、それらの人々の権利をどう守るかという高い報道倫理が、メディア側に求められるのは言うまでもない。

 今回のNHK裁判では、政治家の意図を「忖度」したNHK幹部が、自ら編集の自由を放棄したばかりでなく、制作現場の人々の表現の自由をも踏みにじり、番組を無残に改変した経緯や、政治家の顔色をうかがうNHK幹部の体質が、白日の下にさらされた。

 日本ジャーナリスト会議は、NHKが今回の事件を教訓に、取材対象者の人権と現場制作者たちの表現の自由を最大限保障するよう求める。さらに、政治家などによる圧力に毅然として対処し、公共放送としての自主自立の姿勢を貫くよう強く求めるものである。

posted by JCJ at 16:03 | TrackBack(0) | パブリック・コメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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