2008年08月20日

自国周辺の情勢に対するロシア政府の懸念を理解すべき 元英陸軍参謀総長

 元英陸軍参謀総長・マイク・ジャクソン氏が、17日の英サンデー・ テレグラフ紙への寄稿で、グルジアにおけるロシア軍の武力行使について、自国周辺の情勢に対するロシア政府の懸念を理解すべきだと主張、「欧米諸国が取るべき正しい道は、自らの立場や価値観について妥協するのではなく、ロシアが今回の行動に走った理由をより深く理解し、周辺の旧ソ連諸国に対するロシアの懸念をもっと理解することだろう。政治家や外交官らにとってこれは新たな課題だ。軍事戦略的な敵意や衝突は過去のものにしなければならない」(AFP)と警告を発している(→AFP)。
 同氏は2003−06年に英陸軍参謀総長を務め、コソボでNATO主導のコソボ自治州国際治安部隊、ボスニア・ヘルツェゴビナでは国連平和維持軍の司令官だった人で、寄稿の中で、コソボにおけるNATOの武力介入を正当化したのは「民族浄化のように、一国の政府が自国民に対して犯す人道的危機を抑止することは、その国家の主権を尊重するより優先すべき場合があるという、当時国際法の中で登場してきていたドクトリン」だと指摘、「われわれが好むと好まざるとにかかわらず、グルジア侵攻でロシア政府が展開したのはまさしくこの論法だ」などとして、ロシア政府の懸念を理解すべきとしている。
 北京オリンピックに合わせるように弾けたグルジアの南オセチア自治州。
 グルジア軍が8月8日、同国からの分離・独立を目指す南オセチア自治州への大規模攻撃を開始した。グルジア内務省は、同自治州の州都ツヒンバリを包囲したと発表した。南オセチア自治州側も、ツヒンバリがグルジア軍の砲撃を受けていることを訴えた。
 緊張を高めてきたグルジアと南オセチア自治州。グルジアはNATOへの加盟を強く志向し、南オセチア自治州は親ロシアの立場をとり独立性を強めてきた。90年代前半からすでに事実上の独立状態を続けてきた。両者は、危機打開のために協議することで合意したと報じられていたが、グルジア政府は「憲法秩序を回復する」(グルジア平和維持部隊将軍)ことを目的に、南オセチア自治州への攻撃を開始したとしている。
 この事態を受けて、ロシアは国連安全保障理事会に緊急会合を召集を要請した。またグルジアの南オセチア自治州への攻撃開始をうけ、ロシア軍は、同自治州に戦車を含む地上軍を派遣、グルジアとロシア両国の武力衝突へと発展した。
 つまり、グルジアのサーカシビリ大統領は8日に、テレビ演説で「グルジア軍は一部地域を除き南オセチア自治州全域を支配し、ツヒンバリを掌握した」(AFP)と胸を張って見せたわけだが、その直後に南オセチア自治州はこの声明を否定する。
 そしてサーカシビリ大統領は、今度は「ロシア軍の攻撃を受けている」と被害者を気取る発言へと態度を一転させ、米国のライス国務長官が「ロシアはグルジアの領土保全を尊重すべきだ。空軍やミサイルによるグルジアへの攻撃停止と地上軍の撤退を求める」との声明を発表するという経過(段取り?)をたどった。
 このグルジアのサーカシビリ大統領の「グルジア軍が南オセチア自治州全域を支配し、ツヒンバリを掌握した」発言から、「ロシア軍の攻撃を受けている」発言への態度の豹変の裏側については、サルコジ仏大統領に随行してロシアとグルジアの調停のためにモスクワとトビリシを訪問した仏政府高官の言葉が明確にしている。
 同仏高官は13日、「サーカシビリ大統領は真夜中に(南オセチアを)攻撃するほど頭がおかしかった」と語り、それにロシアが反撃した結果、「グルジアは自らの過ちのために攻撃を受け、粉砕された」というわけである。同高官は、グルジアのサーカシビリ大統領が「五輪期間中はプーチン首相は反撃しないだろうと考え」て、グルジアからの分離独立を目指す南オセチア自治州を攻撃した、というのである。
 米国への傾斜を強めようとするグルジアは、ロシアと親密な関係を保とうとするアブハジア自治共和国や南オセチア自治州をめぐるロシアとの緊張関係を名目に、種々のトラブルや情報戦を繰り広げたが、そこへライス国務長官にとどまらず、ブッシュ大統領までが割ってはいり、ロシアをけん制するというあからさまな「自演」を繰り広げるに至っている。グルジア側は、ロシアが南オセチアを占領しようとしていると非難するキャンペーンにやっきになるという始末。
 ブッシュ氏は4月の段階でウクライナとグルジアのNATO加盟を支持する発言をしていた。これについてはフランスやドイツが難色を示している(ドイツが今回の戦闘で南オセチアやアブハジアを含むグルジアのNATO加盟を支持する姿勢に(?))。5月にはグルジアのサーカシビリ大統領が、南オセチア自治州同様、グルジアからの独立を主張するアブハジア自治共和国をめぐる緊張がロシア政府との間で高まっており、ロシアとの戦争突入の可能性を示唆する発言を打ち出していた。アブハジア自治共和国は4月、5月と、グルジアの無人偵察機の撃墜を発表している。(J・K)
posted by JCJ at 03:50 | TrackBack(0) | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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