2008年12月06日

NHK経営委員候補・所信表明=桂 敬一

所 信 表 明

2008年12月3日 桂  敬 一

「開かれたNHK経営委員会をめざす会」の推薦に応え、同委員会委員候補となることをお受けした私を待つ難局と課題は、以下のようなものであると考えます。このような私の考え方をご理解いただける方々のご支援を心からお願いいたします。

1.2010年・2011年・2012年―NHKを襲う3つの危機

(1)新法「情報通信法」がめざす「放送」の解体

 早ければ2010年、「竹中懇談会」が構想、安倍政権の菅総務相の下で研究会が報告をまとめた「情報通信法」が制定され、通信と放送の境界を取り払うメディア・ビッグバンへの突入が実現する。そうなると、公共性が担保できる事業者への免許の独占的授与、集中排除原則の適用などを特徴とする、非市場的・競争制限的制度の産物とされてきた放送のあり方が一変する。通信と融合させられた放送は市場的産物と化され、一見自由の領域に解放されるかに見えるが、その実、無限定な自由はあり得ず、境界不明な行政の規制監督下に置かれ、国家権力からの放送の独立と自由が消失するおそれが強まる。一方、メディア・ビッグバンのなか、国内外の巨大な複合型の情報産業がデジタル通信技術と市場の自由を武器に放送に襲いかかり、民放だけでなく、NHKもその攻勢の前に立たされる。

(2)地上波デジタル化完了・アナログ停波の難問

 政府は2011年に地上波デジタル化の完了、アナログ放送の停波を実施するというが、現在、地デジ受信可能な受信機の普及は50%にも満たず、2年後に地デジが完了するとはとても思えない。送り手側、各放送局としてもそのころ、デジタル化の追加投資に追われているのが実情だ。NHKの資金が潤沢で、視聴者がみたがる良質のデジタル番組を大量に制作・送出、放送界共用の中継施設建設などの費用負担も買って出れば、状況変化を加速できるかも知れないが、古森経営委員長の異例の経営介入で2012年からの受信料10%引き下げ方針が決まっているから、そうすることは困難だ。一方で、家電業界はアナログ停波に伴うデジタル受信機の大量注文到来を待ち望んでいる。だが、高機能化されたデジタル受信機を使い切れない高齢者にとって、まだ使えるアナログ受信機は有用なものだ。政府とNHKは、家電業界と視聴者のどちらの方に顔を向け、この問題に対処するのか。

(3)満3年先の受信料10%引き下げに縛られる苦しみ

 2012年は、古森経営委員長の強引な協会執行部の経営計画案拒否、10%受信料引き下げ方針が実施される初年度だが、それはまた、情報通信法施行と、地デジ完了を名目とするアナログ停波とに、もろにぶつかる時期となる。メディア・ビッグバンに伴い、NHKもネット対応の事業など新規事業の拡大に迫られるが、当分収益は期待できず、投資の継続で資金需要が累増するだけだろう。また、デジタル化投資もまだ峠を越えていないはずだ。こうした資金需要増を前に、2012年以降の年600億円もの受信料減が控えているため、それ以前の時期では赤字が出せず、これ以降は即、資金不足に追い込まれるおそれがある。古森経営委員長の責任は重いが、その路線の見直しが必要となるのではないか。

2.危機に乗じてNHKを変質させる政界と財界

 NHKの「国営化」を目論む政府・与党:小泉政権以降、政府与党の政治はポピュリズムの色彩を濃くし、プロパガンダ・大衆教化のため、メディアへの介入・操作を強める動きが強まった。NHKの従軍慰安婦問題の番組改変に対する安倍晋三・中川昭一両自民党議員の介入が好例だ。さらにNHKの人事・財政に対する影響力を及ぼす傾向が露骨になったのも目立つ。安倍政権が古森富士フイルムホールディングス社長をいきなり経営委員長に押し込んできたことが、まず指摘できる。財政面では、安倍政権の菅総務相が、受信料を罰則付きの支払い義務制にし、値下げをせよと迫ったことが忘れられない。古森委員長の値下げ要求はその地続きのところにあった。2012年に10%値下げを実施し、収納率が急落したら、政府はまた、罰則付き支払い義務制の法定化を策するおそれがある。もしそうなったら、NHKは体質的に「国営放送」となってしまう。権力に対するメディアの独立、言論報道の自由を、経営基盤において失うことになる。

 財界はNHKの「民営化」がぜひとも欲しい:産業界では最近、業種を問わず、大企業ほど、デジタル情報事業を自グループ内の中核的事業部門に育てようとし、有力なメディア・コンテンツ事業者との提携関係強化を図るようになっている。近年の経団連の著作権処理の簡便化・迅速化に対する政策的取り組みは、そうした事情を反映している。一方、放送、出版、娯楽などのメディア・コンテンツ事業者側も、デジタル・コンテンツ配信、ハイテク端末機器製造などに携わる有力企業と手を組みたがっている。そうしたなかでNHKは12月から、連続ドラマ「篤姫」などの人気コンテンツの有料ネット配信事業を開始した。財界はこのようなNHKの「民営化」を歓迎する。多くの野心的企業が、そこに絡み合い、NHKの膨大なコンテンツを利用する機会を見出そうとしているのだ。NHKが受信料収入以外の財源を求めねばならなくなるのも、そうした野心を持つ企業には、好都合のはずだ。最近のNHK役員(経営委員・理事)にはかつてみられないほど、財界主流の企業代表者・幹部が多数、顔をそろえている。それはけっして偶然の産物ではない。

3.NHKをめぐる当面の問題の望ましい解決めざす

 「ETV2001」問題の本当の解決:NHK従軍慰安婦番組の改変問題は、最高裁判決で原告(VAWW−NETジャパン)敗訴と決したが、本当の解決に至っていない。原告勝訴とした高裁判決は、NHKの改変に対する政治家の影響を認めたものだったが、最高裁判決はこの点に触れず、「編集権」の字義解釈に終始しただけだったからだ。このような事実をめぐる調査・検討は本来、NHKが検証番組を作成、自ら行うべきであるのに、それが行われていない。そこで視聴者・市民団体が放送界の自主機関、BPO(放送倫理・番組向上機構)の放送倫理検証委員会にこの事案の検証と判断を行うよう申し入れたが、NHKはBPOが審理を行うことになったら、誠実にこれ対応し、協力すべきである。

 国民が知りたいことは放送せよ:11月11日、参院に招致された田母神俊雄前空自幕僚長・参考人と各党議員との一問一答を、NHKは同時中継で放送しなかった。その申し入れもしていなかった。抗議の視聴者に対して「NHKの編集権に基づく独自判断でしたことだ」と、広報担当者が応じていたが、このような姿勢は改めさせなければならない。

 国際放送の国策会社化を許さない:NHKは2009年2月の事業開始を予定し、日本国際放送を設立したが、出資企業には、米マイクロソフト、NTTコミュニケーションズ、総合商社、民放4社、大手銀行・証券など13社が参加している。安倍政権下の構想では、海外向けには国策宣伝の志向が強かった。また出資者の顔ぶれからは、グローバルな情報ビジネス市場への進出が主たる関心事となりそうだ。だが、言論報道機関としての公正さを貫き、国際的な放送文化に資することを、日本国際放送はめざすべきだ。

以 上


 

 

■署名を呼びかけています。「開かれたNHK経営委員会をめざす会」の推薦するNHK経営委員候補にぜひご賛同ください。

( 賛 同 署 名 用 紙 )
この部分のみ、ご返送ください。 

「NHK経営委員候補者の推薦に関する申し入れ」および桂敬一さんと湯山哲守さん
の二人を経営委員として推薦することに、賛同します。 

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お 名 前 │ ご所属あるいは肩書きなど(賛同署名簿に表記します)
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賛同署名送り先(開かれたNHK経営委員会をめざす会事務局)
mail:  kkotaki@h4.dion.ne.jp 小滝一志
FAX:048-257-3490 松原十朗
郵送:小滝一志  〒196-0015 東京都昭島市昭和町 3−3−6

posted by JCJ at 18:18 | TrackBack(0) | パブリック・コメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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