2009年05月05日

NHKは「政治家への事前説明」をやめ、放送と政治の分離を明確にすべきだ=石井長世

 すでに新聞報道などで伝えられている通り、放送界の第三者機関であるBPO(放送倫理・ 番組向上機構)の放送倫理検証委員会は、8年前の従軍慰安婦を扱ったNHK教育テレビの番組「問われる戦時性暴力」の改変問題で、 4か月に亘る審議を経て、先月28日、「自主自律の観点から問題があった」とする意見書を公表した。
 その中では、「番組制作部門の責任者である放送総局長が、放送前日に当時の安倍官房副長官と面談して、番組内容を説明したりした行為は、 公共放送の自主・自律を危うくするもの」また、「日頃国会議員を接触する立場の担当局長が、面談に立ち会った後、 現場のプロデューサーやディレクターに直接改変を指示したほか、NHK幹部が入れ替わり立ち替わり改変を指示し、番組が散漫になった」 と指摘。公共放送として、やってはならない行為だという見識を示した。

 これに対してNHKは、「番組が政治的圧力で改変されたり、国会議員の意図を忖度したりした事実はない」「放送・ 制作部門の担当者が、放送前に個別の番組内容を国会議員等に直接説明することは、 NHKの自主自律について無用の誤解を与える可能性が否定できず、こうしたことがないよう留意したい。なお、現在は行っていない」 とコメント。

「無用な誤解を与えるので、今はやめている」と軌道修正をにおわす一方で、この問題を巡るBPOとのやりとりでは、この際の面談を 「予算説明の際、必要な範囲で説明したもので問題ない」と正当化し、さらに、「国会議員等への説明は国会担当の担当者が行うのが基本だが、 他部門の者が説明した方が合理的な場合は、一切認めないものではない」と今回のコメントと矛盾する回答をしている。 本当のところはどうなのだろうか?

 また、放送総局長らが安倍晋三氏と面談し、持論を聞かされたことによる政治的圧力についても頭から否定し、 安倍氏をかばう姿勢を崩していない。
こうした姿勢の背景には、NHK経営が政権与党との関係を密接に保つため、必要ならば番組についても予算説明に名を借りた事前説明の道を、 今後も残しておこうという思惑が見え隠れしており、今回問題になった放送・制作部門の職員による事前説明をきっぱり廃止する決意がないのは、 一視聴者として納得できない。

 NHK予算の承認を国会に握られているという放送法上の弱みがあるだけに、BPOが意見書で提案しているように、NHKはなおさら、 放送・制作部門を国会対策から明確に分離することを、この際きちんと表明すべきではないか? 8年前に起きた番組改変事件の全体像について、 NHKが組織をあげて検証し、中でも放送職場の一人ひとりが放送の自律とは何か、 真摯に向き合うことで視聴者の信頼を回復してほしいと願わずにはいられない。

 


BPO意見書
http://www.bpo.gr.jp/kensyo/decision/001-010/005_nhk.pdf
(報道資料)平成21年4月28日付NHK広報部「BPOの意見についてのNHKコメント」
http://www.nhk.or.jp/pr/keiei/otherpress/090428.html

 

posted by JCJ at 15:15 | TrackBack(0) | 放送 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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