2009年05月20日

NHKは番組改変の経緯を反省し、放送倫理の確立に努めるべきである

09年5月14日
日本ジャーナリスト会議

 01年1月に放送されたNHKの「問われる戦時性暴力」の改変問題について、NHKと民放でつくる第三者機関・BPO(放送倫理・番組向上機構)の放送倫理検証委員会は、4月28日、放送直前にNHK幹部が番組内容を事前に国会議員に説明したことについて、「公共放送にとってもっとも重要な自主・自律を危うくし、視聴者に重大な疑念を抱かせる行為」とする意見書を公表した。
 BPOはその中で、番組改変の実態に触れ、NHKの国会担当局長と放送総局長らが放送前日に安倍官房副長官(当時)と面談した後、制作担当のチーフプロデューサーらに改変を指示、その結果「放送人の倫理として、当然目指すべき質の追求という番組制作の大前提をないがしろにした」と指摘した。
 その上で、こうした一連の行為は、NHKにとって生命線とも言うべき「自主・自律の堅持」原則に疑念を持たせると述べ、政治家への番組事前説明は「いまもなお繰り返されうることを示されており、改善は現在の課題だ」と、NHKと政治家との関係に警鐘を鳴らしている。
 意見書は最後に、視聴者の信頼を築くためには、放送の現場で働く職員一人ひとりが、今回の改変の経緯を自ら確かめ、放送の自律とはなにか考えてほしいと、特に若い人々に呼びかけている。日本ジャーナリスト会議は、この意見書について、BPOが、今回の改変問題に内在する放送倫理と番組のあり方ついて真剣な検証を重ね、公共放送のあるべき姿を大胆に示した見識ある見解であると考える。
 しかし、NHKは意見書について、「国会議員の意図を忖度したりした事実はない。放送倫理上の観点から番組の質を論ずることに強い違和感を覚える」と反論している。
 日本ジャーナリスト会議は、NHKが意見書の内容を真摯に受け止めることを求める。
 NHKの最高意思決定機関である経営委員会の小丸成洋委員長は5月8日、政治家への番組の事前説明は「絶対にあってはならない」と表明している。
 BPOの意見書は、NHKにとって極めて重い内容になっている。NHKは視聴者の期待と信頼に応えて、21世紀の公共放送としてふさわしい放送局になるため、意見書を真正面から受け止めて対応するべきだ。
 日本ジャーナリスト会議は、NHKがこの意見書を今後の番組つくりに活かし、NHKの自主・自律と放送倫理の確立に全力を挙げて取り組むことを強く要望する。

posted by JCJ at 19:00 | パブリック・コメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする