2009年12月26日

<駐米大使、米国務長官から「異例」の呼び出し>報道と基地問題、米軍再編問題の行方

 クリントン米国務長官が21日、藤崎一郎駐米大使を米軍普天間飛行場移設問題で呼び出したとした日本メディアの報道について、 クローリー米国務次官補(広報担当)が22日の記者会見で、「藤崎大使の方から訪れた」と否定した。米政府の見解として「 (普天間移設問題は)日米間において重要な問題であり、日本政府との協議は継続していく。現行計画は、沖縄の負担軽減と日本防衛、 地域の安全維持という点において最善なものだと信じている」と強調した。これを報じた琉球新報の記事は、毎日新聞のサイトでも読める。

(JCJふらっしゅ:Y記者のニュースの検証=小鷲順造)

 日本のテレビや新聞が、駐米大使がクリントン長官から「異例」の呼び出しを受け、「辺野古への移設計画を実行するよう求められた」 と報道、「米国の日本政府に対する不信感は頂点に達している」などと解説していた。(→しんぶん赤旗)

 25日、内閣は2010年度予算案の閣議決定、鳩山由紀夫首相は普天間飛行場移設問題について、「(来年) 5月までに新しい移設先を決定していきたい」(時事通信)と表明して、移設先決定後の訪米を模索していることを明らかに。
 首相は26日、普天間の国外移設に関し「果たして抑止力という観点から、十分かどうかという議論は、やはり相当大きくある」(アール・ エフ・ラジオ日本。時事通信)と強調し、その上で、米海兵隊約8000人のグアム移転で米側と合意していることを指摘、「それ以上 (の国外移転)というのはなかなか難しい」とも語った。

 首相は辺野古以外の新たな移設先を社民、国民新両党と協議の上、来年5月までに結論を出す方針を表明している。首相は25日、 「米国に対し、新しい移設先が決まれば必ず予算が付くと伝えることが重要だ。理解を得ることは十分可能だ」(時事通信)と強調した上で、 「5月ごろに訪米という話が出てくる可能性もある」(同)と述べて、オバマ米大統領に政府方針を直接伝えたいとの意向を示している。

 米軍基地撤収の課題を、利権をベースに移設計画にすり替えた自民党政権、自公政権時の成り行き的推移を、米国も日本も政権がかわったにもかかわらず、 踏襲・存続させようとする勢力が依然跋扈している。米国防総省周辺をベースにした論議・論調を根拠に「米国の日本政府に対する不信感」 をキャンペーンする日本のメディアが目立っている。

 基地の国外移設や米海兵隊のグアム移転などの課題は、ブッシュ政権当時に推進された米軍と自衛隊の「融合」「再編」 の議論や計画を抜本的に見直す作業のなかで、解決していくべき問題である。それは「計画」 にぶらさがる軍需企業や関連業者の利権をめぐる目先の論理に左右されることなく、オバマ政権の打ち出す「核廃絶」 のプランと動きを大事にしながら、唯一の核被爆国としての日本が世界に果たすべき大事な役割を盛り込む形で、中・ 長期的な視野に立って巨大な予算を振り向ける中身の検証とともに、練り上げなおす必要があるはずだ。

 基地撤去・国外移設問題は、米国防総省の傘下にある国として対応すべき課題でもなければ、 国務省の指導の下におかれた国として折衝すべき問題でもない。計画の中身からいっても、予算規模からいっても、 アジア社会ひいては世界に与える影響の大きさからいっても、米国と日本は、 いかなる地球社会を今後の築き上げていくかというトップマターに属する課題である。 米側との米海兵隊約8000人のグアム移転合意の件も含んでいる。今の日本のメディアの論調は、オバマ政権がイラク、 アフガンに足をとられているあいだに、ブッシュ政権時に計画された米軍再編計画(米軍と自衛隊の融合) をどんどん実体化すべきだというメッセージを自動的に含み込んでしまいかねないことを、どこまで自覚しているだろうか。

 それともそれは、結局、鳩山政権が基地問題について普天間基地移設問題だけに目を奪われているところに起因するのだろうか。 であるならばなおさら、日本のメディアは、「普天間で日米がぎくしゃく」とか「米国が怒っている」などという皮相かつ断片的、 情緒的すぎる報道ではなく、日米の安全保障体制を根本から問い直す論議を広くしかけていくべきときではないのだろうかと思う。

 その視点からみて、この時期の首相の「グアム移転」を無理と否定するような姿勢の表明は、おかしい。いかにもブレた観がある。 日本国を、米国の軍部の下請けとして位置付けてやまないメディアの「米国が怒っている」キャンペーンに、 まんまと足をすくわれてのことだとすれば、「政権交代」の名も腐る。市民とジャーナリストは連帯して、メディアの検証を強め、 首相のこのブレに対して断固抗議の声を広げる必要があるように思えてならない。

(こわし・じゅんぞう/ジャーナリスト会議会員)

米国務次官補「大使が会いに来た」 「呼び出し」報道を否定(琉球新報)
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-154729-storytopic-3.html
米国務次官補:大使「呼び出し」報道を否定(毎日新聞)
http://mainichi.jp/area/okinawa/news/20091224rky00m040003000c.html
“米国務長官が呼び出し”は虚偽? 藤崎大使が自ら訪問 米側発表(しんぶん赤旗)
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik09/2009-12-25/2009122502_03_1.html
普天間問題「もうしばらく時間が必要」、駐米大使が米国務長官に(AFP、23日付)
http://www.afpbb.com/article/politics/2677710/5078790
普天間、国外移設を否定=「抑止力の点でグアム無理」−鳩山首相(時事通信)
http://news.goo.ne.jp/article/jiji/politics/jiji-091226X703.html
普天間移設先、5月までに決定=消費税「4年間上げない」− 首相
http://news.goo.ne.jp/article/jiji/politics/jiji-091225X545.html

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藤崎駐米大使のこと
Excerpt:  国務長官に呼びつけられたと騒いだ大使。日刊ゲンダイの記事を示します。「藤崎駐米大使はクビにしろ」という記事です。
Weblog: 過去と未来の間
Tracked: 2009-12-28 09:52