2010年06月03日

放送法改正案の慎重審議を求めます=開かれたNHKをめざす全国連絡会

2010年5月31日
開かれたNHKをめざす全国連絡会
世話人:松田浩 隅井孝雄 醍醐聰 岩崎貞明

 5月25日、衆院総務委員会において審議打ち切り・強行採決された放送法改正案は、参議院に審議の舞台が移されました。私たちは、 放送法制定以来の全面的な「大改正」だという審議が、乱暴な手続きで拙速に進められることに強い危惧を覚えます。ここに、 以下の各点に留意の上、慎重審議を心がけていただきたく、申し入れる次第です。

 

1.ハード・ソフト分離規律は表現の自由の脅威となる

 改正案では、あらゆる放送についてインフラ設備(ハード)と番組(ソフト)を分離する規律にして、 ハード事業には従来どおりの免許制度、ソフト事業には総務大臣による「認定」手続きが導入されることになっています。 これは現行の放送法でも導入されている規制手法ですが、認定手続きに際して番組内容の判断権を行政が握っていることは、 本来表現の自由を侵害するおそれを含んでいると思われます。諸外国では政府から独立した規制機関が放送行政を担っているのは、 少なくとも形式的には政府が放送の内容に踏み込んで判断することがないようにすることを目的としているものです。日本でも、 同種の行政改革が一日も早く望まれます。
 また改正案の174条では、地上波のテレビ・ラジオなど以外の放送事業者に対して、 法違反などが認められた場合に総務大臣が最大三ヵ月間の業務停止を命令できる権限が加わっています。 地上波の放送事業者には電波法76条が放送局の免許停止などについて規定していますが、こちらは行政からの独立性が脆弱な組織とはいえ、 電波監理審議会の諮問・答申を経ることが絶対条件になっていることを考えれば、この174条は行政権限の不当な拡大といわざるを得ません。 もしこの条文が時の行政権力によって恣意的に運用され、政府が個別の番組内容に踏み込んだ判断をすることがあれば、 まさに表現の自由の侵害以外の何ものでもないことになります。

2.あいまいな「放送」の定義

 改正案では、放送の定義が「公衆によって直接受信されることを目的とする電気通信の送信」と、従来の「無線通信」 から拡大されています。有線テレビジョン放送法などを統合することによるものだと理解できますが、ここで懸念されるのはインターネットが 「放送」の概念に含まれるかどうか、です。衆院での審議で、原口大臣や内藤副大臣は「インターネットは直接受信には当たらない」 と説明していますが、今後の技術革新によって、また条文の拡大解釈の危険性は払拭されていません。明文上で明らかな規制が設けられない限り、 インターネットのサイトやブログを開設している一般の人々が、いつのまにか「放送事業者」 にされてしまうおそれが残されていると考えられます。

3.NHKの経営と執行の分離を

 NHK経営委員会に会長を正式メンバーとして加える改正については、衆院総務委で削除の修正提案も出されましたが、 採決の結果却下されました。しかし、私たちは、海老沢会長時代までは経営委員会がNHK執行部の企画・立案を追認する機関にすぎず、 古森経営委員長時代は逆に経営委員会がNHKの企画・執行機能にまで干渉した苦い経験を踏まえ、NHKにおける企画・ 執行機能と監督機能を分化するガバナンス体制を堅持することが極めて重要と考えています。その意味から、 NHK会長を経営委員会のメンバーに加えようとする第30条第1項を削除するよう要望します。
 むしろ、経営委員会の人選に関しては委員の公選制導入も視野に入れて、選考過程を透明化するような法改正が筋ではないでしょうか。

4.誰もが理解できる法律にするために

 デジタル時代を迎え、私たちの周りにはさまざまな放送サービスが展開し、私たちはそうしたサービスを比較的安価で、 安全に利用できるようになりました。いつでもどこでも誰でもが、ほぼ自由に情報を発信できるという時代です。 放送や通信サービスがこのように飛躍的に拡大し、人口に膾炙するようになった現在、それらを規律する法律も、 市民の理解しやすいものが望まれるのは言うまでもないことだと思います。
 その観点からすると、今回の改正案はいかにも複雑で、およそ専門家以外には理解しがたい法案になってしまっているのではないでしょうか。 それに、国民各層による広汎な議論もないままに、このような法改正をどんどん進めてしまうことは、民主主義の原則に反していないでしょうか。 「民主主義の発達に資する」とその目的にうたっている放送法が、このような審議で大幅に改正されるようでは、 日本の民主主義の底の浅さが露呈するようで、後世に禍根を残すことになるのではないでしょうか。
 私たちは、現在の改正案をいったん撤回して根本的に見直すことを含めて、改めて慎重な議論を行うことを心から求めます。

以 上

この申し入れに関する連絡先:090−2915−8263(岩崎 携帯)

posted by JCJ at 14:19 | TrackBack(0) | パブリック・コメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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