2010年09月13日

8月集会・記念鼎談<沖縄差別>=普天間は沖縄の負の歴史の象徴

 8月集会鼎談 松元剛「琉球新報」政治部長、長元朝浩「沖縄タイムス」論説委員長、桂敬一「マスコミ九条の会」呼びかけ人。 鼎談内容は以下の通り。
 沖縄二紙の企画は普天間問題について、 昨年秋から迷走の果てに鳩山政権がついえる手前までを扱っている。受賞の仕事を踏まえ、その先に何があるのか。

松元 沖縄の民意が日米安保体制の中にインプットされることが、 民主主義の本当のあり方ではないのかという問題意識で連載に取り組んだ。
 日本政府は米軍普天間飛行場を辺野古に移設するという呪縛から抜けられない。
 守屋武昌元防衛事務次官の自筆メモを入手し、そのメモをもとに、日米交渉担当者で当たれる人は全て取材し、いくつかスクープした。
 1996年の日米行動委員会で、日本側から北海道移設案を提案していたこと。
 2004年にヘリ墜落事故があり、辺野古の見直し機運が高まった。移設先として沖縄県外も可能性があると、アメリカ側から打診があったが、 日本政府は移転先を探さず、打診があった事実を含め封印される。
 昨年末に官僚が政治家を説き伏せたが、鳩山首相は頑張った。
 本土のメディアは日米安保を順守しないとアメリカが怒るという報道だけだった。
 いま基地のある沖縄に押し込めておくのが一番いいという永田町の論理がメディアを席巻した。
長元 JCJ創立の1955年は、沖縄に核兵器が初めて導入された年だ。 同じ年に原水爆禁止世界大会が開かれている。沖縄は核基地の島になり、日本本土では反核運動が盛り上がっていた。 この構図が象徴的に表れている。
 去年は1609年の薩摩侵攻から400年に当たった。沖縄タイムスはその特集企画をした。我々にとって普天間問題はその延長だ。
 普天間に沖縄の負の歴史が凝縮され、象徴的に現れている。
 「普天間」は人権、地方自治、主権など様々な問題だが、うちなんちゅうにすれば、なぜ自分たちが自己決定できないかという尊厳の問題だ。
 沖縄の人は本土メディアに不信を募らせている。
 大手紙の論説委員は「我々の考えているのは国益だ」という。しかし、官僚とのサークルの中で発想している彼らは、ネーション・ステートの 「ステート」としてしか、国益を考えていないのではないか。
 オバマ政権の軍事偏重の見直しの一方、民主党政権下の新安保懇で、 非核三原則見直しや集団的自衛権などの方向が出てきた。
松元 マイケル・グリーンやアーミテージばかり登場する報道がおかしい。 琉球新報ではワシントン特派員を派遣した。
 民主党に近いシンクタンクの人は海外の基地に経費をかけすぎていると言っているが、日本では報道されない。
長元 旧安保条約が不平等だったのは朝鮮戦争があったからだ。今も中国の軍艦や北朝鮮の動きなど、 条件は厳しい。しかし情勢は変わってきている。日本政府が東アジアで脱冷戦のイニシアチブを取るべきだ。
 マスコミ九条の会とJCJでは、アメリカに呼びかける運動を考えている。
松元 高知新聞が米軍ヘリ墜落6周年の琉球新報の紙面を、そのまま転載する紙面を作ってくれた。 こういう問題意識を持った地方のメディアが、沖縄に寄り添ってくれるという動きも出ていることを付け加えたい。

(JCJ機関紙「ジャーナリスト」2010年8月号より)

posted by JCJ at 12:34 | TrackBack(0) | JCJ賞情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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