2010年09月17日

菅直人首相の勝利に、米国保守派などから安堵の声

 民主党代表選は、菅直人首相が、小沢一郎前幹事長に勝利した。その際、菅首相支持の国会議員206名に対して、 小沢氏にも200名存在することもわかった。AFPは、 「選挙戦で米軍基地問題を持ち出した小沢氏の敗北に同盟国の米国は安堵したことだろう」と報じた。

 外交政策分析研究所・アジア太平洋研究所のウェストン・コニシ副所長は、その安堵感は「菅氏のほうが、まだまし」というもので、 「菅氏が日米同盟を推進するのか、普天間問題を解決に導けるのかは不透明だ」と語っているという。

 また、保守派の米シンクタンク「ヘリテージ財団のブルース・クリンガー上級研究員は、 小沢氏の一党独裁の中国と米国を同列に扱うような姿勢について、<米国は同盟国がそのような態度をとることを望まない>と指摘し方、 菅氏については「遅まきながら民主党も、ようやく中国や北朝鮮の脅威を認識した、 ということだろう><鳩山前首相や政権交代直後の民主党よりは、アジアに対して現実的な対応をすると思われる」と期待を示したという。

 また、米ジョンズ・ホプキンス大学・エドウィン・ライシャワー東アジア研究センターのケント・カルダー所長は、 横浜で11月に開催されるAPECアジア太平洋経済協力首脳会議で、議長を務める菅首相について、 「菅氏は日米関係の重要性をよく理解している。もちろん国際社会での存在感を強めている中国も大事だが、 米国と中国の違いをはっきりと認識して対応できるはずだ」と述べ、「世界の健康や環境問題など、 オバマ大統領と協調して日米共通の利益を推し進める絶好の機会となるだろう」などと語っている。

◇菅政権 このまま米国との「調整・妥協」に終始して、終了か?

 15日、アーミテージ元米国務副長官が日本記者クラブでの講演で、<日米の緊密な関係を維持、 発展させるためには名護市辺野古への移設に固執すべきではない>との考えを明らかに。同元副長官氏は、「普天間の全面移設にはならなくとも、 同盟を維持できる程度の解決案はある」と述べ“事実上の閉鎖状態”に至る解決の可能性を示唆(→沖縄タイムス)、辺野古移設は 「名護市議選と11月の(沖縄県)知事選によって不可能になってしまうかもしれないが、今はまだ『難しい』(の段階)だ」 との現状認識を示したという。

 だが、菅政権の面々は硬直姿勢から抜け出られないでいる。菅首相の「米国同調路線」に加え、例えば仙谷官房長官は14日、 米軍普天間飛行場の代替施設に垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが配備された場合、現行案(V字案) を前提として進められている環境影響評価(アセスメント)の見直しの可能性について、「そういう認識ではない」(沖縄タイムス)と述べ、 <見直しは不要>との考えを示している。ただ民主党幹事長が内定した岡田外相は同日、日米専門家協議について 「オスプレイを前提に議論したとは思っていない」と述べ、仙谷氏との見解の相違を見せていたりする。
 
 米国との「調整・妥協派」を決め込む(というよりそれしかできない?)菅首相は、対米だけでなく国内についても「調整型」(「参加型」 などと初歩的な民主主義の概念をもちだして、殊更にそれを強調しなければならない水準が、それを顕著に物語る)の政治にとどまっている。 そこにのみ評価が集まり、首相がその上に安住するにとどまれば、政権交代の意味を見出すことは早晩、不可能になるだろう。

 毎日新聞の「発信箱」が16日付で、<「小沢外相」の勧め>を書いて、痛快・痛烈な皮肉を投げかけている。<どうだろうか、 小沢外相という人事は。多分、米国と外務省は嫌がるだろう。離米派と見られているからだ。だが、 菅首相にはそれくらいの度量が欲しい>と注文。沖縄タイムス14日付の<[日米首脳へ]仕切り直しの時が来た>の記事とあわせて、 必読というべきではないだろうか。

 沖縄タイムスの同記事は、<昨年の政権交代以来の沖縄の政治状況を見ると、 日米両政府は辺野古にこだわればこだわるほど出口の見えない袋小路に入ることが分かるはずです。 地元にとっては地域コミュニティーを混乱させ、内部対立を深めるだけです。オバマ大統領は11月に来日します。日米両政府はこの機会を、 仕切り直しの交渉を始めるときにすべきなのです>と、菅調整内閣に対して、 至極当然のことをきちんと当然と見極めた政治を行うよう求めている。

(小鷲順造/日本ジャーナリスト会議会員)


民主党代表選、小沢氏敗北で米国に安堵(AFP)
http://www.afpbb.com/article/politics/2756243/6184614
普天間移設「次善の策検討を」 アーミテージ氏が指摘(沖縄タイムス)
http://www.okinawatimes.co.jp/article/2010-09-16_10263/
アセス見直し否定 普天間移設 官房長官 オスプレイ配備でも
http://www.okinawatimes.co.jp/article/2010-09-15_10235/
外相、打診認める オスプレイ日本配備 知事不快感
http://www.okinawatimes.co.jp/article/2010-09-11_10090/
発信箱:「小沢外相」の勧め(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/opinion/hasshinbako/news/20100916k0000m070125000c.html
[日米首脳へ]仕切り直しの時が来た(沖縄タイムス)
http://www.okinawatimes.co.jp/article/2010-09-14_10218/

posted by JCJ at 14:54 | TrackBack(1) | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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属国日本の首相に安堵
Excerpt:  属国日本の首相は菅氏。ご主人様のアメリカがお喜びですぞ。外相も前原氏で、アメリカはご満悦。
Weblog: 過去と未来の間
Tracked: 2010-09-17 22:02