12月17日、菅内閣が、新たな「防衛計画の大綱」(今後10年間の防衛力整備の指針)と中期防衛力整備計画(中期防、 2011年度から5年間の防衛力整備)を決定した。中国の軍事動向について「地域・国際社会の懸念事項」であると指摘し、 テロや北朝鮮ミサイルを含めた多様な事態に機動対処する「動的防衛力」への転換をめざすという内容。
こうした情勢認識をもとに、日米関係は「アジア太平洋地域の安定化を図るため、同盟を深化させる」と強調するとともに、 オーストラリアや韓国(米国の同盟国)との「二国間及び米国を含めた多国間での協力を強化」するとしている。 <武器輸出三原則の見直し>については明記を見送ったが、先進諸国では<国際共同開発・ 共同生産による高性能化やコスト高への対応が主流になっている>として、 こうした変化に対応する方策について検討するとする姿勢を盛り込んでいる。
中国の軍事動向を<脅威>として、南西諸島防衛を強化する方針を示し、那覇基地の戦闘機部隊の増強 (潜水艦を16隻から22隻へと増)、関連する中期防では、沖縄県・与那国島を念頭に陸上自衛隊の沿岸監視部隊を新設するとしている。 南西諸島の防衛強化には、陸上自衛隊の戦車200両、火砲を200門を削減し、南西諸島の防衛重視の観点から海上、 航空両自衛隊の装備を強化するという考え方。
対空防衛ではPAC3(地対空誘導弾パトリオット)を3基から6基に増やし、イージス・システム搭載護衛艦も4隻から6隻に増やす。 現在1個飛行隊の航空自衛隊那覇基地のF15戦闘機部隊を2個飛行隊に拡充(現在は1個飛行隊)、<中国空軍機の領空侵犯に備え>て、 緊急発進(スクランブル)能力を高め、また現在、青森県三沢基地のE2C早期警戒機13機の約半数を西部方面に移して、 南西諸島上空で警戒活動に充てるというシフトの変更・拡充を含んでいる。これには、老朽化するF4戦闘機の後継機として「新戦闘機」 を12機調達するとした方針もかかわってくる。
中期防衛力整備計画(中期防、2011〜15年度))の総額は23兆4900億円。前中期防(05〜09年度) と比較して7500億円の減少。上記のように、陸上自衛隊の戦車や火砲などを削減する一方で、南西諸島の防衛重視の観点から海上・ 航空両自衛隊の装備を強化するとする特徴を有する<方針>から、 陸上自衛隊の定員を現大綱から1000人削減して15万4000人とするとしている。
要するに、中国や北朝鮮の<動向>を理由に、海上・航空両自衛隊の装備を一新・強化して配備シフトを西部に移動、その費用(原資) の捻出先として<費用対効果>の名目が立つかのように、陸上自衛隊の一部削減を盛り込んだにすぎない。明らかに中国を<警戒><敵視>した 「防衛計画」「整備計画」を策定しながら、中国との関係について<戦略的互恵>をいう自己分裂的姿勢はいかにも米国的で、 同国を軸とした軍産複合体の論理に振り回されている印象が否めない。こうした、自民党時代から引き続いてきた日本政府のおかしな姿勢が、 本音の部分では、長くアジア諸国に奇異な感じを与えてきたこともまた否めないのではないか (下の自民党の反応に顕著だが、米国ではなく米軍の傘下に国自体を従属させた日本の防衛の歩みは、かつての「専守防衛」 の枠に留めることを原則とした抑制的なものから、<多様な事態に機動対処する「動的防衛力」>へとその性格をここへきて変えるに至った。 それも国民的な議論もなしに。いまの野党・自民党がよりその枠を超えた軍事路線を唱導するに比較して、菅・ 民主党政権はまだおとなしく見えるところがミソで、これへのメディアの鈍感な対応があまりに心許ない)。
<日本の自民党の反応>
産経新聞は18日、政府の新たな防衛計画大綱と来年度から5年間の中期防衛力整備計画(中期防)について、自民党は
「日本の安全を確保できるとは到底思えない」とする見解を取りまとめたことが17日、わかったと報じた。
自民党は大綱、中期防ともに「政権奪回後、即時に見直す」と強調しており、自民党はその見解で、1)日本周辺の安全保障環境について
「中国をはじめ各国が防衛費を増額する現状だ」と指摘し、「依然、不安定な状況にある」と分析していること、2)そうした認識から
「防衛予算の縮減傾向に歯止めをかけ、多様化する任務に対応する人員を確保しなければならない」と訴えている、という。
また、上記の陸上自衛隊の定員と戦車・火砲の削減方針などについて批判しており、 <武器輸出三原則の見直し>についてはその明記を見送ったことについて、「(政府は)社民党に配慮してトーンダウンした。防衛力の生産・ 技術・教育等の維持すらも困難となる」と警告しているという。
<中国の反応>
こうした日本の<新たな>防衛計画策定について中国は<不快感>を表明。中国外務省の姜瑜報道官は、17日午後、 「中国の発展は平和的なもので、いかなる国の脅威にもならない」(NHK)との談話を発表した。また、大綱が、 中国が周辺海域で活動を活発化させていることについて<国際社会の懸念事項>だとしたことに不快感を示し、 「個別の国が国際社会を代表するかのようにふるまい、無責任な態度で中国の発展をとやかく言う権利はない」としている。
また、中国メディアの論調について、NHKは国営の中国中央テレビと中国共産党系の新聞「中国青年報」を紹介、 国営の中国中央テレビがニュース番組の中で、東京駐在の記者による電話中継や専門家の解説を交えて詳しく伝えたこと、またニュースが 「専門家の間からは、新たな『防衛計画の大綱』は、日本が掲げる専守防衛の理念に反するのではないかという懸念の声も出ている」 と指摘したこと、17日付けの中国共産党系の新聞「中国青年報」は、「強圧的な姿勢は周辺の国を不安にし、日本自身にとってもよくない」 と強くけん制する姿勢を示したことを紹介して、<中国は日本が中国軍の活動に警戒感を強めていることに反発するとともに、 尖閣諸島を含む南西諸島の防衛態勢を強化するという方針に神経をとがらせています>と報じた。
(小鷲順造/日本ジャーナリスト会議会員)
新防衛大綱を閣議決定 中国抑止で機動対処(共同通信)
http://www.47news.jp/CN/201012/CN2010121701000213.html
新防衛大綱、南西諸島の防衛強化へ 中国に懸念(AFP)
http://www.afpbb.com/article/politics/2779995/6592432?utm_source=afpbb&utm_medium=topics&utm_campaign=txt_topics
中国念頭、南西諸島の防衛力強化へ 新大綱を閣議決定(1/2ページ)
http://www.asahi.com/politics/update/1217/TKY201012170219.html
防衛大綱:中国外務省、新大綱に強く反発(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/world/news/20101218ddm003010144000c.html
中国 新防衛計画大綱に不快感(NHK)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20101217/k10015925141000.html
新防衛大綱に自民「安全確保できず」(産経新聞)
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/politics/snk20101218096.html
中期防予算23兆4900億円=安保会議で了承(時事通信)
http://news.goo.ne.jp/article/jiji/politics/jiji-101214X061.html
海空自衛隊の装備強化=総額は減少―中期防
http://news.goo.ne.jp/article/jiji/politics/jiji-101217X681.html


