卯年は明けたが、「兎ぶ春」になるのだろうか……。どうもそうはいかないようだ。
菅直人首相の年頭会見に対して、全国紙5紙(朝日、読売、日経、毎日、産経)が揃って中身の同じ社説を掲載した。「6月をめどに、
社会保障財源を口実とした消費税増税と環太平洋連携協定(TPP)への参加方針を決めるとした菅首相に実現を迫るもので、
見出しも各社横並びという異様な状況を呈している」(1月9日付「しんぶん赤旗」)という。
同じ紙面にJCJ事務局長・阿部裕さんの話「……戦前・戦中、
新聞が戦争協力に加担していった歴史の教訓が十分生かされていないといわざるを得ません」を載せていたが、まったくその通りである。
TPP問題が浮上してきたとき、「報道ステーション」(テレビ朝日系)のコメンテーターは、「小泉郵政解散のように、
TPP解散でもやればいい」といい、キャスターも「(TPP参加か不参加か)どちらかに決断すべきだ」といっていた。まさに「煽動」
の役割である。
農業関連団体だけでなく、多くの地方自治体から「TPP反対」の大運動が起きている。大メディアだって知らないとは言わせない。でも、
切実な声を聞こうとはしない。知らせようとはしない。
沖縄の基地問題を追及し続けている沖縄紙の記者に対して、ある大手紙の記者が言ったという。「われわれは国益≠考えている。
あなたたちのやっていることは内政≠セ」と。TPP問題も同じ図式である。
いま、オーストラリア北東部が過去最大規模の洪水に見舞われている。この地域は砂糖の生産と輸出で首位の州だという。
サトウキビ畑が水浸しになった。大手メディアは、「あれはオーストラリアの話」として見過ごすのだろうか。世界的規模で気候変動が起き、
食糧危機になったら……と考えるのが普通ではなかろうか。TPP問題は食料自給率をどうするかという問題である。
それとオーストラリア洪水は無関係なはずがない。この二つをつなげて考えようとしないのが、どうも解せない。
「クロスカップリング」で、2人の日本人がノーベル化学賞を受賞した。カップリング反応とは異なる物質を融合させる反応のことだという。
その触媒はパラジウムだという。オーストラリアの洪水とTPP。日本航空の整理解雇問題と大企業の社会的責任……。
関連づけて報道するわけにはいかないのだろうか。
パラジウムの役割を大手メディアに望めなければ、せめてJCJでやるっきゃないことになる。