東日本大震災に伴う福島原発事故への政府の対応は、方針も示せないまま揺れる揺れる、ぶれるぶれる。26、
27両日に共同通信社が実施した全国電話世論調査によると、福島原発事故への菅内閣の対応について「評価していない」58・2%、
「評価している」39・3%だった。一方で、被災地対策は「評価している」57・9%だった。
原発事故への対応についての回答の内訳は、「あまり評価していない」38・6%、「全く評価していない」19・6%、「大いに評価」4・
9%、「ある程度評価」34・4%。菅首相の「リーダーシップ」について、「あまり発揮していない」「全く発揮していない」を合わせ63・
7%に達することとあわせてみると、菅内閣の危機対応が、いかにふがいないか(ふがいないことが伝わっているか)わかろうというものである。
いかに「安心」「安全」をいいつつ、世間を一喜一憂の渦に巻き込んで、
そのすきになんとか最悪の状況を脱すればよいとの姑息なごまかしを決め込んでも、国民はそんなものにはだまされないのである。
(JCJふらっしゅ「Y記者のニュースの検証」=小鷲順造)
「核の脅威」を相手に、人間社会だけに目をおいた有象無象の卑屈ないいわけや理屈やおためごかなしなど、通用するはずもない。 きちんと「核」に正対して、最終的に墓に葬るまでの道筋を見失わずに歩まないで、なんとしようというのか。あわよくば、 「日本はよく核をコントロールした、あの制御技術は一流だ」などと、この大惨事をテコに日本の原発を世界に売り込もうなどと、 余計なことを考えたりしているからぶれにぶれるのである。出てくる情報も、いまどこの地点・どの段階にいるのか、 全体像を示そうとしないから、一進一退に一喜一憂するだけの安っぽいドラマ仕立てになりかねない勢いで、どうしてもずるずると「部分」 へ「細部」へとのみ傾斜していく。いま起きていること、なされていることの全体像はいっこうに見えてこないのである。メディアは断片を追うことに汲々としながらも、なんとか視野を広くもとうと努力を続けているが、それらもすぐに断片の一部に過ぎなくなっていく。その状況に留意する必要があるだろう。政府及び関係機関による情報の出し方のなかに、明らかに、報道を大事なところから遠ざけようとする力が働いていないか。そこを敏感に感じ取り、掘り崩していく作業が必要な段階に入っているように思う。
なんとか上手く水量のバランスを取り続けながら、冷し続けなければ重大な破局のときが訪れるという緊急事態が引き続く中、 それでもビジョンと目標がなければ、東電の下請け作業員、自衛隊、消防庁、警察の必死のがんばりも、 当面の<冷却>だけの使い捨て要員ということになりかねない。それはいくらなんでもひどすぎるだろう。ありえない、と思いたいが、 本当のところどうなのか。内閣、原子力安全委員会、原子力安全・保安院、事業者(東電)のいずれからも、 いまだに最終地点を明確に見据たシナリオは出ていないことに、いまさらながら気づかされる。
周辺住民や周辺環境への被害を最小に食い止めながら、暴走する原子炉を軟着陸させる。 最終地点は廃炉以外に最初からなかったはずではないか。ところがどうだろう。驚いたことに、きょう(29日)の参議院予算委員会で、 社民党の福島みずほ党首が、「福島原子力発電所、福島市議会から廃炉にしてくれという意見書が出ています。廃炉でよろしいですね」 と訊ねると、菅氏はなんと、「最終的には一定の安定状況になった後に専門家のご意見を聞いて決めることになると思いますが、 その可能性は高いと思っています」と答えたのだ。驚愕以外のなにものでもない。
それでは出てくる情報も、中途半端になってあたりまえである。ゴールを「廃炉」とはっきりさせないでもまだ、「核」の暴走を鎮めて「正常復帰」ができるかもしれない とでも思い込んでいるのだろうか。見る人によっては、強大な大量破壊兵器を相手に、 竹やりで立ち向かっているようにも映りかねない事態なのである。それでも「核」への畏怖があればこそ笑い話どころか真剣な闘争となっているのである。 ガス抜きと必死の放水が暴発をなんとか鎮め、小康状態に持ち込み、そこでそもそもの冷却装置の駆動をだめにした電源回復を試みてきた。 その間に方々から大量の放射性物質を放散させつつも、建屋の電灯だけは灯いた。だが建屋は惨憺たる状況で、 放射性物質の飛散は避難させた周辺地域どころか、地球を一周する勢いに達していて、 高濃度の放射性物質が福島第一原発周辺全体に染み出している。世界が注視する中、高濃度の放射性物質を含んだ水を、こっそり海に捨てることなどできない。
本稿3月14日付の「ひどすぎる福島第1原発緊急事態をめぐる政府、保安院、東電の対応」の記事でも紹介したように、早い段階から、
1号炉冷却のための海水注入は、<廃炉も覚悟した「最後の手段」>との海外からの見方が出ていた。
日本の政府及び関係機関では、そういうことではなかったのだろうか。いまさらながら、事故発生時の日本の初動姿勢はちがったのか?
当初はまだ別の方法があると思われる状況だったのか、考えさせられてしまう。
それとも廃炉の決断をはっきり国民に告げる前に、なんとか改めて福島第1原発にかわる原発新設の計画を打ち出してほしいとか、 そのためのムードづくりをしてから廃炉を告げてほしいという要望でも、関係団体や企業などから受けてでもいたのだろうか。
ウオールストリートジャーナル日本版が28日付「原子力監督機関と電力会社は一心同体」の記事で、<日本の原子力監督当局は、
監督対象の業界に近づきながら権力を増大してきた。
この傾向が福島第1原子力発電所の事故を引き起こした過ちにつながった可能性がある>と書き出している。続けて、
――世界の標準に反して、経済産業省は原子力業界の監督と国内外での日本の原子力技術の推進という二つの役割を担っている。
この二つは相反することも多い。
この体制は、昨年のメキシコ湾での原油流出事故以前の米国の沖合掘削の監督体制を思い出させる。つまり、同じ機関が業界を監督しつつ、
沖合ガス・油田開発を促進していたのだ。事故後にまずオバマ政権がしたことの一つが、この機関の解体だ。
米国では、原発を監督する原子力規制委員会は、原子力の研究・推進をするエネルギー省から独立した組織だ。
フランスはかつて日本と似たような体制だったが、2006年に独立した機関を設置した。日本の監督当局がより強い独立性を確保していたら、
原発の安全性に関する規則はより厳格であった可能性があり、福島第1原発の危機は回避できた、
あるいはこれほど深刻化しなかったとの批判がある――
と指摘している。
大震災の発生翌日の12日に、菅直人首相がヘリコプターで福島第一原発を視察したことについて28日、 原子力安全委員会の班目委員長が、参院予算委員会で、「総理が『原子力について少し勉強したい』ということで、私が(視察に)同行した」 と語った。この菅氏の原発視察は、東京電力の初動対策に遅れを生じさせたとの指摘が出ている。
班目氏は「総理が行かれたことで、特に何か現地で混乱があったとは承知していない」と述べ、菅首相は29日午前の参院予算委員会で、 「重大な事故だという認識を持っていたので、現場の状況把握は極めて重要だと考えた。私が視察に行ったことによって(対応が) 遅延したという指摘はまったくあたっていない」(朝日新聞)と答弁した。さらに、当初から格納容器からの排気(=ベント) を行うよう東電に伝えていたとも主張している。
こんなところで首相と事業者の責任の擦り付け合いをしていても仕方がない話のように思えるが、ただ、 あのヘリでのご視察がそれほど大事だったのだとすれば、菅氏はよほどパフォーマンス好きか、パフォーマンスと政治を混同する気味があるのか、 どちらかなのだろうと想像しておくほかない。実害があったのだとすれば、東電はそれを社内でうやむやにしたり、 もみ消すようなことがあってはなるまい。東電の一時国有化の話も出ている。それに具体性が出てくるようであるなら、なおさらだろう。
菅氏のヘリ視察が、まだ「廃炉」を選択せずになんとかなった状況を悪化させたというのなら、これは大変なことである。 また初動段階においては、まだ事故の状況が把握できておらず、「廃炉」を意識するも何も、当面、 無我夢中で熱をおさえることだけに集中していた、というのであれば、これは原発の事業者も専門家もない。 それ以前の状態であったことを自ら露呈しているようなものである。
電源を確保してコントロール・ルームに電気が灯いたといっても、 それは事故発生から<正常復帰>をめざしたプロセスには入っていないはずだ。それを隠して、 まるで安心な状態に近づいているかのような幻想をまきちらすから、その幻想に自らも飲み込まれて、現実に裏切られる。 一進一退しながらずるずると後退しながらも、なんとか一喜一憂のタネを引っ張ってきて、一喜一憂させようとするから、 市民はじわじわと政府及び関係機関に対する不信感を募らせている。
ウオールストリートジャーナルが24日付で、原子力安全・保安院の西山英彦審議官へのインタビュー記事を出している。 たいへん重要なインタビューで、とても参考になる。ぜひサイトで全文に目を通していただきたい。ここでは細部ではなく、本稿のテーマである 「何を目指しているのか」に的を絞って紹介するに留めることにする。
――勝利宣言にはどのくらい時間がかかるか。
との質問に対して、西山審議官は、
「まだわからない。もうだいぶいい所まで来ているのではないかと思うが、今のところ、まだ何合目とか、最終段階とは言いにくい状況にある。
何か常に不安があるというわけではない」と語り、作業の細部の話に入り、そして、「出来るところから順次やっている。
本来の姿に戻せればいいと思う。そのためには電気が必要。入り口のところまで来ているので、あとは中にだんだん浸透させていけばいい」
と答えている。
私が気になるのは、「本来の姿に戻せればいいと思う」との部分だ。西山氏のいう「本来の姿」とは、いったい何か。
――復旧作業を指揮しているのは誰か。
との質問に対して、西山審議官は、
「所長を中心に、現場のチームが前線ですべてコントロールしている。今回のオペレーションは自衛隊や警察なども関与しており、
東京電力の本店に統合本部が設けられた。そこにテレビ電話の回線が引かれていて、現場の状況を所長を中心にリアルタイムで報告する。
その上で、その場で決めて行く体制を取っている」と答えている。
「私も参加する時がある。保安院の別の者がそこに参加している。海江田経済産業相も行っている。そして各省庁のほかの者もいて、
一気に決めて行く」という。
――日々の最優先事項がそこで決まるのか。
「そうだ。ただ、そこは現場の意向が強く働く。現場でどこまでできるかを知らせ、その上で、行けというか、
もう少しこうしたらどうかということをこちらがアドバイスする」
――現場がわかっている分、現場の方が強いのか。
「そうかもしれない。できないものはできない、ということになる」
どうしても、方針や目標としてのゴールや見立てが出てこないのが気になる。現場の指揮と全体の判断・指揮命令系統の混乱があるのか、 それとも意図してその部分を外して答えているのか。わからない。すでに政府及び関係各機関に暗黙の了解でも出来上がっていて (あるいは政府はつまはじきか、一オブザーバーのような存在でしかないのか?)、すでにそこに重大な緘口令・隠蔽が生じているのか。
――根本的に原子力への流れが変わってしまうとは予測できないか。日本は特に、原発については過剰反応とも思える事象が時々ある。
との問いかけに対して、西山審議官は、
「間違いなく住民の反発があるだろう。これから先、福島(第1原発)を動かす時期がもう一回、仮に来るとすれば、そのときの為に、
住民の方に分かっていただけなければいけないこともあるだろう。きっと、反対もあるだろう。それから、全国の原発のある地域でも、
危険視する動きが出てくると思う。
しかし、そうは言っても、電気のない生活も考えられない時代になっている。
やはり現実的にいかにこういう非常事態にも対応できるものを作っていくかということでいくしかないと思う。ただ、
感情的な面も含む一般の国民の反発があるため、原子力政策がそれに対し、どううまく答えを出せるか、非常に重要な場面に来ていると思う」
と答えている。
私が気になるのは、ここでは「これから先、福島(第1原発)を動かす時期がもう一回、仮に来るとすれば」と答えていることである。 さっきは「本来の姿に戻せればいいと思う」と語っていた。ここでは、「動かす時期がもう一回、仮に来るとすれば」である。 これは何を意味するのか。最初の「本来の姿に戻せればいいと思う」は、<復帰>のことではなく、別のことを言っているのだろうか。 例えば一時的に、本来の冷却機能を取り戻して、なんとか沈静させることができれば――という意味であれば、後の「動かす時期がもう一回、 仮に来るとすれば」と矛盾しない。
だが西山氏の言葉は、具体的な作業のことなど以外は、解釈の仕様によってさまざまに受け取れるところが多い気がする。 「本来の姿に戻せれば」を文字通り「復旧」をめざしていると受け止めても、後の「動かす時期がもう一回、仮に来るとすれば」のほうを、 いったん「復旧」はしたが、事故を起こした以上、そのまま運転再開というわけにはいかないだろうから―― という前提で話していると受け止められないこともない。
しかし、現実の福島第1原発は水素爆発をおこし、海水を大量に浴び、 格納容器などの損傷部分もかかえて放射性物質を大量に放散している状態にあるわけだから、もはや「本来の姿に戻り」「復旧」して、 原発として稼動し始めることなど考えられない状態にある。それにもかかわらず菅首相は、「福島廃炉でよろしいですね」 との福島みずほ社民党党首の質問に、「最終的には一定の安定状況になった後に専門家のご意見を聞いて決めることになると思いますが、 その可能性は高いと思っています」と、種々条件付のかたちで、あいまいさも残しながら答えているのである。
政府は一刻も早く、「廃炉」の決断をすべきではないのか。少なくともシナリオは明確になる。紆余曲折はあっても、 向かうべきゴールは明確になる。逆に、ほかにどのようなゴールを想定できるというのだろうか。そのゴールを菅首相は、 首相として明確に示さねばならないだろう。それを示すことができないのだとすれば、 これまでの避難命令やその範囲の拡大はいったいなんだったのか、ということになってしまう。
また、「最終的には一定の安定状況になった後に専門家のご意見を聞いて」の、その「一定の安定状況」とは、どのような状態なのか。 どのような状態になったら、専門家の意見を聞いて、廃炉とするかしないかを決めるというのだろうか。 その状態を具体的にはっきりと示さないかぎり、事故発生以後、 廃炉以外の選択肢をも排除しないできたことを正当化することはできないはずである。
目標がいいかげんだったり、ふらふらそのときそのときで揺れたり、 「最終的には一定の安定状況になった後に専門家のご意見を聞いて決めることになると思う」などといってみたりして、 寄り道などしている余裕はないはずである。それとも、日本には、 世界の技術者にも専門家にも明かしたことのない秘密の技術でもあるのだろうか。秘策を隠しもっていて、それを明かしたくないから、 菅首相はここに至っても、どのような状態かも具体的に話さない「一定の安定状況」を待っているというのだろうか。
社民党の福島みずほ党首が重要な質問をおこなったこの日、共産党の志位和夫委員長が、藤井裕久首相補佐官と首相官邸で会談して、
重要な提言をしている。毎日新聞によると、志位氏は、福島第1原発事故の被害を受けた福島県飯舘村と南相馬市の視察を踏まえ、
(1)原発施設外の放射能汚染のデータを被災自治体と住民に継続的に提供する
(2)原発から半径20〜30キロ圏内に「避難指示」を出さないなら、人の往来を保障し物資を確実に届ける
(3)風評被害の全面補償を明確にする
――ことなどを要請したという。
さらに志位氏は同日の記者会見で、「どういう戦略で今の原発危機を収束させようとしているのかを政府が被災地に示すことが大事だ」
(毎日新聞)と語ったという。
政府は、どのように今起きている原発危機を収束させようとしているのか。それを示すことなく、こんどはこっち、こんどはここまで、 あ、やっぱりこっちね、などといくらそのときどき頭をひねって知恵をめぐらせたつもりでも、それを受け取る側は何も理解できず、 自らの工夫や智恵を生かして力を発揮することもままならないまま、その度に振り回されることになる。方針がころころ変れば、 いたずらに徒労感を募らせ、不信感へと凝縮していくだけである。リーダーシップを問う以前の問題であろう。危機に直面しているときに、 そうした稚拙な指令は、予想外のところで被害を発生させたり増大させかねない。政府が決してやってはならない部類のことだと思う。
冒頭に紹介した共同通信の世論調査では、今後の原発の在り方も訊ねている。
「減らしていくべきだ」「直ちに廃止」の合計は46・7%を占めている。
また私が見た共同通信の記事では、なぜか「現状維持」と「増設」の合計を出していて、その数値は46・5%となっている。
ここで仮に「減らしていくべきだ」を脱原発、「直ちに廃止」を反原発と読み替えた場合、「現状維持」をどう位置づけるか。 ここのところが大事になってくる。「現状維持」は、原発の発電量に占める規模のことか、原発の数のことか、いずれにも取れる設問のようだ。 それでも「現状維持」は、これ以上増やすな、とか、この程度にしておくことが望ましいと受け止めるのが妥当であろうから、これは「新設」 を望まないという意味と受け止めていいように思う。そのなかには、その状態から「脱原発」をめさしていくことが望ましいと考える回答者も 含まれると考えられる。
また日本政府は、世界全体の温室効果ガスを2050年までに半減するとの観点から、 日本社会が重点的に開始すべき技術の供給部門の候補として、1)原子力発電(次世代軽水炉・高速増殖炉サイクル等)、2)天然ガス火力、 石炭火力、二酸化炭素回収貯留(CCS)、3)再生可能エネルギー(太陽光発電・風力発電)をあげ、そのうちの1)原子力発電 (次世代軽水炉・高速増殖炉サイクル等)については、2020年をめどに発電電力量に占める「ゼロ・エミッション電源」の割合を50% 以上とすることを目指すとしてきたから、「現状維持」と「増設」ではまったく意味が異なるのである。「現状維持」はこれまでの政府の 「方針」と真っ向から対立する。
そういう意味で、私にはなぜ共同通信が、自分のところの世論調査の結果を報じるに際して、「減らしていくべきだ」 「直ちに廃止」の合計は46・7%、「現状維持」と「増設」の合計は46・5%で、拮抗しているという書き方をしているのか不思議でならない。
もし単純に、脱・反原発派と、原発容認・賛成派とを文字面というか図式的な判断で切り分けてそうしたのであれば、
あまりにずさんといわざるをえないであろう。現実はもはや、そのずっと先を走っている。これも共同通信が報じているが、20日付のスイス紙ル・マタンによると、
将来的にスイス国内の原発廃止を望む意見が87%に達したという。
そのスイスは、2009年の調査では73%が「原発は必要」と答えていたのである。「フクシマ」はすでに世界に対して、
それほどの震撼を与え、影響している。
EUや米国への影響については、ここであえて触れる必要もないだろう。
原子力発電の問題を、もはや<脱・反原発派><原発容認・ 賛成派>とを単純に対立させてとらえて済ませることのできない時代に入ったと考えるべきではないかと思う。人類は、地球社会は、 温室効果ガス削減という重大な共通テーマをかかえながら、いかに原子力や核の脅威を脱していくか、どうしたら脱していけるのか。 深刻かつ重大な、地球社会の未来にかかわる大事な課題に取り組んでいくことになるのだと思う。
そして日本は、プルトニウムが検出される事態となり、まだ微量でも、原子炉の溶解が疑われている。また、京都新聞によると、 京都大原子炉実験所の今中哲二助教(原子炉工学)が、福島県飯館村の汚染レベルが、 チェルノブイリ原発事故による強制移住レベルを超えているとの試算をまとめたという。今中助教は「避難を考えた方がいいレベルの汚染。 ヨウ素やセシウム以外の放射性物質も調べる必要がある」(同)として、飯館村で土壌汚染を調査する方針という。
放射性物質は放出され続けている。作業員の必死の努力によって、最悪の事態は食い止められている。 一方で放射性物質の漏えいは継続している。目前の原発の難題を一歩一歩、解決へと導く方法を模索しながら、土壌、地下・地下水、大気など、 汚染の長期化を懸念すべき段階へと突入している。政府には一刻も早く「廃炉」を決断し、 そのゴールへ向けて国内外の知識と智恵と技術を結集して、総力を注ぎ込むことが求められる。他の危険な原発の停止も緊急課題だ。 原発依存体質から脱出をはかる計画を盛り込んだエネルギー供給部門のビジョン練り直しも急がねばならない。そこにこそまさに日本の総力を結集して、大災害に苦しむ日本が自ら率先して、新機軸を切り開いていく元気な姿を、謝意も込めて世界に示すべきではないだろうか。
もうすでに世界では、「フクシマ」に衝撃を受け、エネルギー政策の練り直しが始まっているというのに、菅首相はなぜ「廃炉」 とエネルギー政策の抜本的転換を、いまここからスタートさせると、国民に向けてはっきりと力強く誓うことができないのだろうか。
(こわし・じゅんぞう/日本ジャーナリスト会議会員)
原発対応「評価せず」58% 共同通信世論調査(共同通信)
http://www.47news.jp/CN/201103/CN2011032701000396.html
首相の原発視察は「勉強のため」 原子力安全委員長(朝日新聞)
http://www.asahi.com/politics/update/0328/TKY201103280444.html
首相、福島第一原発は廃炉の可能性高い(TBS)
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4686594.html
志位委員長:原発被害で要望 藤井首相補佐官と会談(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/weathernews/news/20110330k0000m010018000c.html
震災翌日の原発視察、首相「初動対応の遅れない」(朝日新聞)
http://www.asahi.com/politics/update/0329/TKY201103290147.html
「原発廃止を」87% スイス(共同通信)
http://www.okinawatimes.co.jp/article/2011-03-21_15708/
伊、原発再開議論を1年凍結 国民投票前に反対強く
http://www.47news.jp/CN/201103/CN2011032301001056.html
欧州の原発政策 路線転換図る動き 依存脱却は困難
http://www.47news.jp/47topics/e/202614.php
原子力監督機関と電力会社は一心同体(ウオールストリートジャーナル)
http://jp.wsj.com/Japan/node_211377
【インタビュー】
原子力安全委との二重チェック体制は機能=保安院の西山審議官
http://jp.wsj.com/Japan/node_208711
福島第1原発:汚染水流出は「格納容器から」…安全委見解(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/weathernews/news/20110328k0000e040081000c.html
内閣府 総合科学技術会議基本政策推進専門調査会 エネルギー分野PT
・最新のものは第15回会合(2011/2/16)
http://www8.cao.go.jp/cstp/project/bunyabetu2006/energy/
・例えば第10回会合(平成21年2月)で提出された資料など
http://www8.cao.go.jp/cstp/project/bunyabetu2006/energy/10kai/haihu10.html
http://www8.cao.go.jp/cstp/project/bunyabetu2006/energy/10kai/siryo4-2-3.pdf
http://www8.cao.go.jp/cstp/project/bunyabetu2006/energy/10kai/siryo1-1-2.pdf
土壌汚染「チェルノブイリ強制移住」以上 京大助教試算(京都新聞)
http://www.kyoto-np.co.jp/top/article/20110328000068