連載「大震災の現場を行く」(2)は次回以降に掲載することとし、前々回の「大震災と自衛隊」(1)の続編をアップする。
これと関連して、『朝日新聞』5月7日付オピニオン面「耕論 3.11自衛隊」に、元陸上自衛隊中部方面総監や元防衛庁長官と並んで、
私のインタビュー記事が掲載された。今回は主として米軍との「トモダチ作戦」について述べることにしよう。なお、
被災地における自衛隊の具体的活動については、「大震災の現場を行く」のなかでも触れる。
5月3日、憲法記念日の講演を福岡県大牟田市で行った。その翌日の夕方、「一被災者として、この発言は許せません」というメールが来た。
そこに、前日の講演を伝える『毎日新聞』大牟田版のベタ記事がはりつけてあった。
《水島教授は、憲法9条で「日本は集団的自衛権を行使できない」と強調。
「米軍は 遺体捜索と同時に上陸作戦の演習をやったのではないか。トモダチ作戦を『日米同盟の深化』などと言うと
『次は自衛隊が米軍を助ける番だ』との議論が出てくる」と訴えた。》
メールには、「遺体捜索をしてもらった人の思いを踏みにじっている。想像力を持ち合せない人が学問をするのはおかしい。
大学教授の肩書を捨ててほしい」といった厳しい言葉が並ぶ。ほかにも、この記事を見たという人たちから、「お前はそれでも人間か」
といったメールが次々に届いた。ブログや掲示板、ツイッター上でも、私のことを罵倒する書き込みがかなり出ているようである。「騒ぎ」
のもとになったこの記事では、講演の内容を断片的にほんの2、3行でしか伝えていないが、実際の講演は、質疑を入れて2時間ほどであった。
これは私の話の内容を十分に伝えていない。講演は、憲法と日米安保や沖縄問題についてさまざまな角度から論じつつ、
東日本大震災の現地報告を加えたものだった。記事は、それらを短い言葉でつなげてしまっている。これが誤解を呼ぶことになった。
私は「遺体捜索と同時に上陸作戦の演習をやった」とは言っていない。前後でいろいろな問題を論じており、
そのような単純な評価はしていない。ただ、講演という場でそのように受け取られたとしたら、
それは私の説明の仕方も十分ではなかったかもしれない。後に詳しく述べるように、被災者救援や遺体捜索という、
それ自体としては被災地の人々にとって緊急かつ重要な活動と、この「作戦」
全体を米軍がどのように位置づけているかという問題とは区別して論ずる必要がある。私は遺体捜索を上陸作戦の演習と言ったのではなく、
「トモダチ作戦」全体が、個々の救援活動の感動的エピソードや懸命な遺体捜索活動を超えて、
日米の軍事的協力関係を高めていく方向で活用されているという問題を指摘したのである。
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*水島朝穂の「今週の直言」に飛びます。