2011年06月04日

布川事件――検察・警察の「根拠なき見立て」と「消極証拠不開示」体質をただせ!

 1967年、茨城県利根町布川で、大工の男性が殺害され、現金が奪われた「布川事件」。5月24日、水戸地裁土浦支部の同事件再審 (神田大助裁判長)の判決公判で、裁判長は、強盗殺人罪で無期懲役が確定後、96年に仮釈放された元被告2人に無罪を言い渡した。
 この再審で検察側は無期懲役を求刑していたが、無罪判決をうけて、水戸地検は4日までに、新証拠の提出は難しいと判断して、 控訴しない方針を固めた。控訴期限は8日午前0時。地検は、6日に東京高検、最高検と協議し、最終決定する。

 戦後に起きた重大事件で死刑または無期懲役が確定した後、再審で無罪となるのは7件8人目。この事件では2名が容疑者とされたが、 犯行に直接結びつける、1)物証はなく、2)証拠は取り調べ段階の自白、及び3)「現場近くで2人を見た」とする目撃証言だけだった。

 被告となった2名は、法廷で否認を貫いた。しかし一、二審で有罪。78年には最高裁が自白の信用性を認めた。 無期懲役が確定して服役、約29年、自由を奪われた。あくまで犯行を否認し続けた2名が仮釈放されたのは96年になってからのこと。 2名は再審請求を決意、捜査資料を検討した弁護側は、2001年から始まった2回目の再審請求審で、新たに「殺害方法が自白と異なる」 という鑑定書などを提出するに至った。これらをうけて水戸地裁土浦支部は05年、 「鑑定書が確定審の審理中に提出されていれば有罪認定に合理的疑いが生じた」と述べて、再審開始の決定をした(→朝日新聞)。

 毎日新聞は1日、記者の目「布川事件 44年かかった再審無罪」でこの件を取り上げた。 5月24日に出された水戸地裁土浦支部の無罪判決について記者は、<本質には触れない肩すかしの判決だった>と書き出して、1) やってもいないことを「自白」してしまう密室の誘導・強要の恐ろしさ、2)その「自白」を覆すことの難しさを挙げ、3)冤罪(えんざい) 防止には、取り調べ全過程の録音・録画(全面可視化)など刑事司法制度改革が必要であることを、長年の取材過程を振り返り紹介しながら、 提言している。

 なお無罪判決をうけて、この事件、つまり殺人事件と冤罪事件、そして警察と検察の自白強要と自白証拠テープの「編集」 =改ざんの事実や、重要な証拠の隠蔽=元被告以外の人物の目撃証言の存在の隠蔽、 あるいは自白証言にある殺害方法と実際の鑑定結果が示す殺害方法の致命的な食い違いなどにふれた、 傑出した社説が全国各紙の紙上に掲載された。上に紹介した毎日新聞・記者の目とともに、閲読されることをおすすめしておく。

(小鷲順造/日本ジャーナリスト会議会員)

布川事件、控訴しない方針=上級庁と審議し決定へ−水戸地検 (時事通信4日)
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2011060400147
布川事件、再審無罪 発生から44年 水戸地裁土浦支部(朝日新聞5月24日)
http://www.asahi.com/national/update/0524/TKY201105240269.html?ref=recc
全過程可視化無罪2氏訴え 布川事件でシンポ(朝日新聞5月29日)
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK201105290015.html
検察側のみ全文提供=布川事件の再審判決−弁護団「公正疑わせる」・水戸地裁支部
(時事通信1日)
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2011060100758
記者の目:布川事件 44年かかった再審無罪=原田啓之(毎日新聞1日)
http://mainichi.jp/select/opinion/eye/news/20110601k0000m070160000c.html

posted by JCJ at 14:31 | TrackBack(0) | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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